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<<1977>>

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機関誌

2021年1月号バックナンバー

2021年1月1日更新

目次

巻頭言①

「新年のご挨拶」阪上隆英

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。昨年,世界的規模で猛威を振るった新型コロナウイルスの感染拡大の終息が見いだせないまま,新しい年を迎えることとなりました。当協会に関係されている皆様におかれましても,様々な面で大きな影響を受けておられることと拝察いたします。心からお見舞いを申し上げたいと存じます。また,新型コロナウイルス禍でのきびしい状況においても,当協会の活動にご支援ご協力を賜りました関係各位に心からお礼を申し上げます。加えて,医療従事者の皆様をはじめ,新型コロナウイルス感染症対策に日夜献身的に取り組んでいただいている皆様に対して,心からお礼を申し上げます。新型コロナウイルス感染症を克服し,感染症が終息する日が1 日でも早く訪れることを,新しい年の始まりにまず祈念したいと思います。
 昨年の当協会の活動を振り返りますと,やはり新型コロナウイルス感染症の大きな影響を一番に取り上げざるを得ません。新型コロナウイルスの感染拡大による世界情勢の大きな変化や我が国における緊急事態宣言の発出を受けて,当協会の活動は,学術,教育,認証,国際関係など,ほとんどすべての分野で活動の中止,延期,見直しを余儀なくされました。一部において,これによる会員サービスの変更を招くことになりましたが,皆様のご理解とご協力をいただいたことに,改めてお礼を申し上げます。幸いにも夏季から秋季にかけて,新型コロナウイルスの感染拡大が少し収まりを見せた時期があり,さらに「ウィズコロナ」の取り組みが始まったことから,当協会の各種事業も徐々に再開をすることができ,現在は関係各位のご尽力のもと,停滞していた事業を回復するため懸命に努力をしているところです。社会インフラの安全・安心を確保する上で必要不可欠な非破壊試験技術者の教育・認証事業では,受講者及び受験者の皆様への迅速かつ的確な情報発信に努めるとともに,できうる限りの新型コロナウイルス感染拡大防止対策を行い再開することができました。現状では,ソーシャルディスタンスによる人数の制約があるものの,ほぼ平常化されてきております。学術活動においては,インターネットを活用したオンラインでの学術講演会を初めて開催いたしました。会員各位のご協力のお陰をもちまして,当初の予想を上回る講演者ならびに聴講者の参加を得て,成功裏に終了いたしました。国際関係の維持においても,以前からオンライン会議を活用していたこともあり,国際認証や国際交流においては,大きな支障が出ないように進めております。日本が会長国及び事務局国を務めるAPFNDT(アジア・太平洋非破壊試験連盟),議長国及び幹事国を務めるISO/TC 135(非破壊試験)各技術委員会等へのオンライン会議による対応,米国非破壊試験協会(ASNT)の総会へのオンライン参加,韓国非破壊試験学会(KSNT)の40 周年記念式典へのビデオレター,台湾非破壊試験協会(SNTCT)のCNDT 2020 講演大会におけるオンライン招待講演などを通じて,各国の非破壊試験関連団体との相互交流の維持を積極的に進めてまいりました。新型コロナウイルスによって,人々の日々の生活における行動変容が求められましたが,学協会の活動においても様々な行動変容が求められることになりました。インターネットを活用したオンライン化はその一つです。学術・国際活動では,無事に学協会における行動変容の第一歩を踏み出したところではないかと思います。当協会の様々な事業に関しましては,これからも会員各位ならびに関連する様々な業界各位の声をお聴かせいただきながら,関係者一同で努力いたしまして改善に努めてまいりたいと存じます。皆様のご協力をお願い申し上げます。
 さて,新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって,以前は「当たり前」であった日常生活が制限され,最悪の場合失われることになり,「当たり前」に暮らせることの有難さを再認識することになりました。社会インフラを適切に維持保全していくことは,人々に「当たり前」の安全・安心な生活を提供し続けることにおいて必須であり,非破壊検査はその一翼を担っています。当協会では,“JSNDI ミッションステートメント「社会に価値ある安全・安心を提供するJSNDI」”ならびに“JSNDI バリュー”を策定し,“JSNDI アクション”として実行しております。コロナ禍にありましたが,昨年も業界バリューチェーンの構築,学術・産業分野の拡大と融合,有効なグローバル展開の強化に資するJSNDI アクションを実行いたしました。第4 次産業革命Industry4.0とともに,NDE 4.0 は近年の非破壊検査に関する世界的な話題となっていますが,本年から開催されるNDE 4.0 に関する国際会議に当協会としてコミットするため,NDE 4.0 に対応する委員会を立ち上げて活動を開始いたしました。また,国土交通省からは,鉄道台車枠の探傷技術開発に関するプロジェクトを継続して受託し,非破壊検査の専門家集団を擁する学術団体として,台車枠の探傷検査に関する調査検討委員会を組織して,鉄道台車枠に対する新しい探傷技術の開発に継続的に取り組みました。
 新型コロナウイルス感染症のように人々から「当たり前」の生活を奪うことがないように,重要な社会インフラを守る非破壊検査技術をより一層発展させるとともにその技術基盤を確保するため,その中枢を担う学術団体・業界団体として,当協会は重要な使命を有しております。本年の当協会の諸活動において

 

巻頭言②

「機関誌10年の特集と編集そして展望」
記念特集号刊行にあたって 西野秀郎

 70年とは,一体全体どんなようなものでしょう。人の年齢でいえば古稀,70 年生きるのは稀なこと,と古き中国で言われたのが起源のようです。「四十五十は洟垂れ小僧,六十七十は働き盛り」とは渋沢栄一の言葉です。さらに時代は進み,今の70 歳はたかが70 歳かもしれません。されど70 年,立派な伝統ある協会誌ということは間違いないでしょう。それぞれ身近な70 年には,どんな風景があるのでしょう。A4 用紙を持ってきて,
1952
1962
1972
1982
1992
2002
2012
2021
と,書いてみました。雑誌の巻数というやつは,かぞえで年を重ねる訳で,最後は1 年ずれています。大学生から見てみれば,遥か昔に思えるでしょう。逆に数字全部が見渡せる方も居られることでしょう。私も全部に目は届きませんが,随分見渡せる年齢となりました。右の余白は皆さんが,それぞれ埋めていただければと思います。70 年とはかくも簡単に書けてしまうことにまずは驚愕し,されど埋め尽くされぬほどの多くの諸行無常を感じます。数と数の間には,やはり無限の数があるようです。
 さて本誌非破壊検査では,ここ10 年ほど,毎号各部門主査の企画により特集号を発刊しております。本70 巻記念号では,ここ10 年の特集号の内容を各主査に振り返って,そして展望を述べていただきました。望外というと失礼かもしれませんが,とても良いものができたと感じ入っております。各技術の短く分かりやすい説明から主たる検査対象物の明示,そして過去から未来における技術の俯瞰がなされており誠に勉強になりました。そして多くの主査の皆さんが,技術を取り巻く社会情勢に関して多くの側面から書いてくださいました。この点はとても興味深く思いました。毎年8 月号には,単年度の技術動向が各主査により書かれ編纂されておりますが,ここで示した10 年という長い目で見た論評はとても参考になるものです。各主査の皆様には心から感謝申し上げる次第です。
 科学と,そしてそれを基礎とする工学や工業は,知の継承をもって新たな知を作り上げることを特徴とする人類の壮大なしくみです。70 巻という中に多大な知を詰め込んでくださった先輩諸氏に感謝したいと思います。まだ道半ばではありますが,掲載された論文と解説記事のデジタルアーカイブ化そして会員の皆様にアクセスしやすい環境の整備を進めていく所存です。そして一人の研究者として,新たなる知を人類の未来に向けて積み重ねていけるように研鑽したいと思います。

 

座談会

機関誌編集今昔座談会
塚⽥和彦、⾕⼝良一、阪上隆英、⻄野秀郎

Roundtable Talk on the Issues of the Journal by Successive Chief Editors
Kazuhiko TSUKADA, Ryoichi TANIGUCHI, Takahide SAKAGAMI and Hideo NISHINO

 機関誌の中を彩る多様な記事を読まれている方,あるいは執筆されている方も少なからずおられると思います。ここ10年は毎月各部門が企画している特集記事が中心となって誌面を形作っています。特集記事の企画は各部門主査にお願いしているところですが,機関誌の年間のスケジュール立案,横断的な特別企画立案と誌面全体の編集等々は,協会内の編集委員会での作業です。編集委員会は各部門からの委員で構成されており,機関誌に関わる細大によらず重要と思われることを議論しながら機関誌の発行の手助けを行っています。ここでは現在の編集委員長を司会として,過去10 年の編集委員長に参集いただき話を伺いました。

 

総解説

ここ10年の特集記事と展望(放射線部門)
ポニー工業(株)釜田敏光

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Radiographic Testing)

Pony Industry Co., Ltd. Toshimitsu KAMADA

キーワード:中性子線,X 線,γ線源,非破壊検査,デジタルラジオグラフィ,X線 CT

 この10年は2011年の原発事故の発生,広範囲の放射能汚染及びその除染,商業用原子炉及び研究用原子炉の運転の停止などが続いた。そのため,研究用原子炉を利用した中性子線の研究開発などに影響が発生した。さらに原子炉の再稼働まで多くの時間を要した。また,その一方,その後大震災に伴う社会資本の耐震性能などの検査の要求が多くなった。
 2020 年には,COVID-19 の蔓延のため,対面での講演会などが開催できなくなった。その中で,機関誌の特集号は,この10 年,次の話題を中心に解説記事を作成した。
①中性子による材料評価技術
②デジタルラジオグラフィ技術の動向
③デジタルラジオグラフィとX 線CT における規格化の動向
④ X 線の測定と新しいデジタル画像用X 線センサ
⑤放射線による社会インフラ・産業プラントの健全性評価
⑥原発事故に対応する放射線の計測と可視化,原発建屋内の状況把握
⑦ X 線の性質を応用した新しい検査手法
⑧ X 線と中性子線によるイメージングの特徴と相補利用
⑨ X 線CT の計測への応用
⑩放射線による非破壊検査の歩み,その将来

 

ここ10年の特集記事と展望(超音波部門)
大阪大学 林 高弘

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Ultrasonic Testing)

Osaka University Takahiro HAYASHI

キーワード:超音波,非破壊検査,非破壊評価,展望

はじめに
 非破壊検査協会が70 周年を迎えるということで,改めて非破壊検査協会の歴史とご尽力された先輩方の偉大さを感じるとともに,現役世代として身の引き締まる思いである。特に超音波部門は,(一社)日本非破壊検査協会の前身である非破壊検査法研究会が1952 年に設立する当初から,超音波分科会として活動を開始している。60 周年特集号の尾上守夫先生の総説記事1)によると,設立当初のニーズは船や橋梁の溶接部の検査であり,超音波による非破壊検査の発展により溶接品質が飛躍的に向上し,次々と建設される高層ビルの鉄骨接合部がリベットから溶接に変わっていったということである。
 それから半世紀以上がたち,新しい接合方法,新しい材料,新しい装置が出現するとともに,新しい超音波非破壊検査技術も開発されてきた。また産業界の構造変化にも大きく影響を受け,超音波非破壊検査の置かれる状況が変化してきた。この10 年を振り返ると,2011 年の東日本大震災に伴う原子力発電所での事故は非破壊検査業界に大きな影響を与えた。
 本稿では,この10年の超音波非破壊検査技術の発展を概説するため,本誌「非破壊検査」で紹介された解説記事を振り返り,今後の展開への期待を述べたいと思う。

 

ここ10年の特集記事と展望(磁粉・浸透・目視試験部門)
日本電磁測器(株)堀 充孝

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing)

Nihon Denji Sokki Co., Ltd. Michitaka HORI

キーワード:磁気探傷試験,浸透探傷試験,目視試験

 磁粉・浸透・目視試験部門では,ここ10 年に「磁粉・浸透・目視試験部門」としての特集号は,
2013 年62 巻11 号 特集 磁粉・浸透探傷試験の最近の動向
2016 年65 巻11 号 特集 磁粉探傷試験の動向
2020 年69 巻11 号 特集 最近の磁粉・浸透・目視試験の技術動向があり,上記3 つの特集号をもとに10 年を振り返ってみたいと思います。

 

ここ10年の特集記事と展望(電磁気応用部門)
EMF応用計測 藤原弘次

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Electromagnetic Testing)

EMF Technology Hirotsugu FUJIWARA

キーワード:電磁気,非破壊検査,材質計測,磁気センサ

 電磁気応用部門ではこの10 年間に下記の3 件の特集記事を企画した。
特集1:高感度磁気センサの非破壊検査への応用
63 巻11 号(2014)
特集2:電磁気を用いた非破壊検査の高度化
66 巻11 号(2017)
特集3:電磁気応用による配管の保守検査技術
68 巻11 号(2019)
 この部門では電流や磁場をエネルギとして用いた検査や計測技術を広く取り扱っている。その中で,磁界の変化を磁気センサを用いて電気的に検出し,その信号を処理することできずの検査や材料物性の計測を行う手法の検討が主要な議題である。特集記事からはこの部門の進展に強く影響する技術の方向性や課題,そして展望が見えてくる。ここではそれらの技術領域について,いくつかピックアップして述べる。

 

ここ10年の特集記事と展望(漏れ試験部門)
(国研)産業技術総合研究所 新井健太

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Leak Testing)

National Institute of Advanced Industrial Science and Technology Kenta ARAI

キーワード:漏れ試験,発泡,圧力変化法,ヘリウム,水素

 漏れはリークとも呼ばれ,「壁の両側の圧力差又は濃度差によって液体又は気体が通過する現象」と定義されている1)。漏れ試験は,漏れを供用前や供用中に見つける非破壊試験であり,我々の安全・安心を確保するために重要な試験である。身近な例として,エアコンでは製造時や点検時に地球温暖化対策の一環として冷媒であるフロン類を周囲に排出しないことを確認するために漏れ試験が行われる。原子力では,放射性物質を環境中に出さないことを確認するために厳正な漏れ試験が行われている。
 漏れ試験は,近代工業の発展とともに発達した。試験方法の標準化の動きは比較的早く,漏れ試験の基本的な部分は1990 年代にJIS として標準化された2)。実際の試験体は様々な大きさ,形状,許容漏れ量であるため,それらに応じた多くの漏れ試験方法が開発・改良されてきた。本稿では,ここ10 年の機関誌「非破壊検査」に掲載された記事を中心にして,最近の漏れ試験の進展を概観する。

 

ここ10年の特集記事と展望(応力・ひずみ測定部門)
豊橋技術科学大学 足立忠晴

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Stress/Strain Measurement)

Toyohashi University of Technology Tadaharu ADACHI

キーワード:応力・ひずみ測定,ひずみゲージ試験,材料評価,強度評価,実験力学

はじめに
 応力・ひずみ測定部門は,日本非破壊検査協会(JSNDI)の前身である非破壊検査法研究会が1952 年に設立された2年後の1954 年に第4 分科会として発足している。1955 年に本協会が社団法人化し,2012 年に一般社団法人へ移行した後も存続し,現在の名称に変更され,今日に至っている1)。応力・ひずみに関連する測定,評価などの方法および技術の開発を目指すとともに,それらの方法および技術を利用した材料開発,材料特性の評価,構造物の特性の評価を主な対象として研究を進めている。材料および構造物の基本的な物理量である応力,ひずみの測定手法およびデータ処理を含む解析・評価手法の開発・改良,応力・ひずみの測定手法に基づく材料特性評価・強度評価,さらに応力・ひずみ測定手法の様々な分野への応用などで幅広い分野対象としており,それらの学術的成果を公表するとともに実用化,標準化を進め,国内外の研究動向を調査,分析し,所属会員間の情報交換と相互研鑽などを主な目的として活動している。本協会の標準化委員会と協力し,得られた学術的成果に基づいて規格の立案,改正などの維持更新を行っている。日本非破壊検査協会規格(NDIS)において,ひずみゲージに関する10 規格を維持管理しており,現在,格子パターンの位相解析による構造物の変位計測の規格原案を作成している。さらに,NDIS のいくつかを日本産業規格(JIS)に順次,移行することが計画されている。またJIS Z 2305 非破壊試験技術者の資格及び認証で規定されている非破壊検査技術の一つであるひずみゲージ試験に関する教育,認証にも関わっている。本部門は本年度で設立より68年経過しており長年にわたって関連分野に貢献を続けている。

 

ここ10年の特集記事と展望(保守検査部門)
(国研)産業技術総合研究所 津田 浩

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Maintenance Inspection)

National Institute of Advanced Industrial Science and Technology Hiroshi TSUDA

キーワード:インフラ,保守,健全性評価,IT 技術,ロボット,機械学習

 本稿の執筆にあたり保守検査部門が企画した特集号を読み返したところ,2011 ~ 2012 年は社会・産業インフラの大事故が頻発した時期であったことを思い出した。それは2011年11月から10ヵ月の間に我が国を代表する化学会社のプラントにおいて立て続けに発生した3件の爆発事故と,2012年12月に起きた死者が9名に上る大惨事となった中央高速自動車道笹子トンネルの天井板落下事故である。
 一連の化学プラントの事故原因として異常事態発生時の対応マニュアルが整備されていなかったこと,プラントを監視するセンサが少なく,異常事態の発生を検知するまでに時間が掛かったことなどのリスクアセスメントの問題,またプラント管理者や操作担当者の知識不足,過去の事故の教訓が当事者間で共有されていなかったことなどの人的な問題が挙げられた。
 一方,トンネル事故では経年の荷重作用と材料劣化が原因となり,天井板をトンネル天頂部に接合していた接着系ボルトの引抜強度が低下した。その結果,天井板の荷重を支えることができなくなり,接着剤樹脂と覆工コンクリート,または接着剤樹脂とボルト接合面に沿ったせん断破壊が天井板落下をもたらしたと報告されている1)。

 

ここ10年の特集記事と展望(製造工程検査部門)
愛知工業大学 塚田敏彦

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(In-Process Inspection)

Aichi Institute of Technology Toshihiko TSUKADA

キーワード:製造工程検査,特集記事,10 年,振り返り

 製造工程検査部門は,当協会(JSNDI)の応用技術部門の一つとして1979 年に「005 画像処理特別研究委員会」として発足した。その後今日まで,産業界における実用的な画像センシングや画像処理・検査技術の発展を目指して活動を行ってきた。
 製造工程検査部門では,最新の広範囲にわたる画像応用センシング・認識技術を当非破壊検査協会会員へリアルタイムに分かりやすく提供することを一つの大きな役割と位置付けて,活動を行っている。そのための活動の一つとして,本部門は各種学会・研究委員会の枠を超えて連携・協力し,広く画像によるセンシング・認識に関するシンポジウムやワークショップを年に3 回共同企画し協賛している。この活動によって非破壊検査・外観検査・目視検査に関わる画像によるセンシングと認識技術の新たな情報提供を続けている。
 以下に,ここ10 年間に製造工程検査部門の特集テーマと特集記事の題目・著者を示す。

 

ここ10 年の特集記事と展望(アコースティック・エミッション部門)
電気通信大学 結城宏信

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Acoustic Emission)

The University of Electro-Communications Hironobu YUKI

キーワード:アコースティック・エミッション,機関誌特集,解析技術,インフラ健全性評価, Industry 4.0,複合圧力容器

はじめに
 アコースティック・エミッション(AE)部門は2ないし3年に1 回の頻度で機関誌の特集の企画を担当している。ここではこの10 年間にAE 部門が企画した特集の内容をその背景などを交えながら振り返るとともに将来への展望と期待を述べる。

 

ここ10 年の特集記事と展望(新素材に関する非破壊試験部門)
東京工業大学 水谷 義弘

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Non-Destructive Evaluation of New Materials)
Tokyo Institute of Technology Yoshihiro MIZUTANI

キーワード:新素材,CFRP, 3D プリント材料

はじめに
 本協会の部門の多くは試験方法で区分されているが,新素材に関する非破壊試験部門は材料で区分されており,超音波探傷試験,放射線透過試験,渦電流探傷試験,AE 試験など,様々な非破壊試験技術および評価技術の応用を横断的に調査・議論しているところに特徴がある。新素材に関する非破壊試験部門の前身となる特別委員会は1986 年に発足したが,この年は東レ㈱が引張強さ7000 MPa の炭素繊維の開発に成功した年であり,その後,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は航空機構造に次々と採用され,今ではアルミニウム合金に代わって航空機構造の主要材料となっている。このような時代背景もあり,本部門が担当する特集号はCFRP を題材にすることが多かった。一方,部門発足から時間が経つにつれて,CFRPは材料としては新素材とは言えなくなりつつあり,CFRPとは異なる,“高温環境”や“検査・計測方法が未確立”をキーワードにした特集号も組んできた。
 11月26日に部門の幹事会を開催し,今後の部門の展開について議論した。CFRP については,今後も部門で調査・議論をしていくが,最近様々な分野で適用が始まっている3Dプリント材料を部門で取り上げる新たなターゲットに追加することにした。2021 年の70 巻7 号は本部門で特集号を担当するが,3D プリント材料関係の特集にする予定である。
 本稿では過去10 年の特集号などを振り返るとともに,今後の本部門の展望を述べたいと思う。

 

ここ10 年の特集記事と展望(鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門)
東京理科大学 今本啓一

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete Structures)

Tokyo University of Science Kei-ichi IMAMOTO

キーワード:コンクリート,構造物,維持管理,特集

はじめに
 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(RC 部門)は「コンクリート構造物の非破壊試験特別研究委員会(RC 特研)」を前身として1988 年4 月に発足した。本年度で32 年目を迎える。図1 は必ずしも最新のデータではないが,生コンの出荷量はバブル以降減少しており,それとともに住宅着工数も減少していることが分かる。一方,図の下部に記載されている通り,住宅ストックは膨大な量に達している。すなわち,鉄筋コンクリート造の生産技術に関わる非破壊試験技術を継続する一方で,構造物の維持管理のための非破壊検査技術の必要性が徐々にその重要性を増しつつある。

 

ここ10 年の特集記事と展望(赤外線サーモグラフィ部門)
(株)サーモグラファー 山越孝太郎

Review of the Special Issues in the Past Decade and Future Prospects
(Infrared Thermographic Testing)

Thermographers Co., Ltd. Kotaro YAMAKOSHI

キーワード:赤外線,赤外線サーモグラフィ,赤外線センサ,資格制度,状態監視

はじめに
 赤外線サーモグラフィ(TT)部門では,この10年間に2年~3年間隔で4回の特集を行っている。この期間には赤外線サーモグラフィ部門にとって認証制度の開始という大きな変化があった。認証制度は2011 年からNDIS 0604「赤外線サーモグラフィ試験−技術者の資格及び認証」が始まり,5年後の2016 年からISO 18436-7 準拠「機械の状態監視診断技術者(サーモグラフィ)認証制度」が開始された。2019 年にはNDIS 0604 認証はJIS Z 2305 認証に移行することとなり,赤外線に関する資格認証制度はISO 認証とJIS 認証の2 本立てとなった。特集号のテーマも資格認証制度に関する内容が何回か取り上げられている。また,近年の赤外線サーモグラフィ装置の技術的な革新は速く,そのため装置の技術的な解説も数回特集されている。本稿では特集号の内容を振り返りながら今後の展望について述べる。

 

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