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機関誌

2026年9月号バックナンバー

2026年9月1日更新

巻頭言

「JSNDI の国際活動」

塚田 和彦

当協会の活動には,学術・教育・認証の三つの柱があります。学術は,文字どおり非破壊検査技術に関する学術研究ということですが,それには,研究の成果をJIS などの規格にして社会に普及させる標準化活動が含まれます。新しい検査技術を生み出すことを目的とした研究である限り,その技術を実業の場に定着させるための標準化は,欠くことのできない要素です。教育は,その非破壊検査技術を実際の検査において正しく使用できるように教えること,いわゆる技術者に対する講習会事業を指します。そして,認証は,その技術者が,検査対象の安全性を担保できるに十分な技量を有しているかを判定し,その証しとして資格を与える技術者認証事業のことです。

さて,例えば,世界非破壊試験会議(WCNDT)はNDT における国際学術最高の舞台ですが,それを運営している国際非破壊試験委員会(ICNDT)の第1 回会合が1960 年に東京で開催されていることを,会員の方々は,ほとんどご存じないのではないでしょうか。また,国際原子力機関(IAEA)が行っている原子力平和利用に関するアジア太平洋地域への援助活動において,当協会が1980 年から技術者教育のプログラムを提供していることも,関係者を除き,あまり知られていないことでしょう。しかしながら,そういった国際的な活動を協会が創設して間もないころから続けてきたことが,例えば,米国非破壊試験協会(ASNT)との間で2023 年6 月に締結された非破壊試験技術者資格の相互認証へとつながっているのです。

本特集は,このような学術・教育・認証の全ての面における協会の国際活動について,会員の皆様にもっとよく知ってもらいたいとの思いで企画したものです。それらの活動は,毎年8 月号で年次ごとに個別に報告されているわけですが,それらはあくまでも1 年の記録であって,それらをつないで時間的な経過において眺めてみること,言い換えれば,なぜ,そのような現状になっているのかという疑問に答えることは,してこなかったように思います。そこで,執筆者の方々には,できるだけこれまでの経緯も含めて書いていただくようお願いしました。

まず,特集の冒頭には,会長インタビューを掲載しています。国際活動に重きを置きながらも,協会の活動全般について,所信表明というような堅苦しい形式ではなく,現時点の状況を踏まえて,これからどのような方向を目指すのか,落合会長自らの言葉で語っていただいております。このようなインタビューは,あるいは,機関誌において初めてかもしれません。しかし,活動の指揮官たる会長の考えを会員の方々に理解していただくことが,合目的性をもった協会活動につながるものと思ってのことで,今後も会長インタビューが代替わりごとに掲載されることを願っています。

次に続く三つの記事が,本特集の核となる部分です。3 本柱(学術・教育・認証)のそれぞれには,国際活動を所管する委員会が存在します。国際学術委員会,国際教育専門委員会,そして,国際認証委員会です。そこで,現在,それらの委員会で委員長を務めておられる,井原理事,八木理事,井上理事に活動状況についてそれぞれに解説していただております。少し無理を言って内容の切り分けをお願いした面もありますので,それらが,互いの連携・協力のもと,協会全体として行っている活動であることはご理解いただきたく思います。

その次には,協会の国際活動の歴史を語るということで,元会長の大岡紀一顧問のインタビューを掲載しております。同顧問は,1980 年前後から今日に至るまで,協会の国際活動のあらゆる面において,中心的な役割を果たしてこられた方です。国際活動のこれまでの経緯を最もよくご存じの人物として,なぜそのような現状となっているのかという疑問に答えるべく,事の背景も含めて語っていただいております。

国際的な活動を展開するには,やはり,人と人とのつながりが重要なよりどころとなります。そのようなつながりは,短期に獲得できるものではありません。実際に海外に身を置いて,自身の興味に応じる人たちとの深い交流があってこそのことです。研究者においてのそれは,長期研究留学の機会を持つということです。そこで,世界的に有名な非破壊検査の研究機関への留学経験を持っておられるお二人の先生方に,ご自身の経験とともに,若い研究者への啓発も兼ねて,それぞれの研究機関について解説していただいております。

特集の最後には,現時点の国際学術活動の一端を示すものとして,昨年度に当協会主催で開催された二つの国際会議,AITA 2025(神戸,9 月)とIIIAE 2025(名古屋,11 月)の報告を掲載しております。

以上のように,当協会の国際活動について紹介する本特集は,あらゆる角度から眺めてもらえるようにと,少し欲張った試みであったかもしれません。しかし,やはり,会員の方々によく知っていただく努力は,怠ってはならないと思っております。会員の皆様には,ぜひとも協会の国際活動にご理解をいただくとともに,とくに若い研究者・技術者の方々には,世界とつながる活動への参画をお願いする次第です。

最後に,本特集企画は,国際活動にほとんど携わってこなかった者として,任に余ることではありましたが,企画者の思いに応えていただき,忙しい時間を割いて執筆していただいた方々には,深く謝意を表するものです。

 

インタビュー

会長に聞く-次世代への戦略「Strategic Synergy」とは- 

会長 落合  誠

Interview with the President of JSNDI − What is “Strategic Synergy”, the Strategy for the Next Generation? −
President of JSNDI Makoto OCHIAI

 この記事は,当協会の現会長・落合 誠氏へのインタビューに基づくものです。話は,ご自身が非破壊検査や当協会と関わられるようになった経緯に始まり,非破壊検査の研究の現状と,AI の利用やNDE 4.0 などの今後の動向,標準化や認証における国際協調やアジアパシフィック地域での国際協力の状況,ならびに業界を含めた今後の展開など,協会のさまざまな活動の現況に関するご自身の見解と,会長として掲げられている「Strategic Synergy」という言葉に照らした今後への戦略などに及んでいます。また,最後には,来年8 月末から9 月にかけて当協会主催で開催する「NDT NEXT 2027」について,開催の趣旨や計画されている内容などについて紹介していただいております。

 

解説

JSNDI の国際活動とその戦略(1) 国際学術活動

国際学術委員会委員長 井原 郁夫

JSNDI’s International Activities and Strategies(1)International Academic Activities
Chair of International Academic Committee Ikuo IHARA

キーワード: 非破壊検査,国際学術,国際連携,国際会議,NDT NEXT 2027

 

はじめに
 (一社)日本非破壊検査協会(JSNDI)では,そのミッションステートメントの実現に向けた具体的施策として五つの「JSNDI アクション」を掲げている。その一つである「有効なグローバル展開の強化」では,日本の技術および技術者の国際的位置付けの向上を目指し,国際非破壊試験委員会(ICNDT,International Committee for Non-Destructive Testing),アジア・太平洋非破壊試験連盟(APFNDT, Asia-Pacific Federation for Non-Destructive Testing),ISO 会議等への適切な対応を行うとともに,各国協会との相互交流や認証の相互承認を促進することを活動指針としている。

当協会の国際活動は,国際学術活動をはじめ,国際教育,国際認証,国際標準化など,多岐にわたって展開されている。近年では,技術革新やデジタル化の進展に加え,産業構造や国際情勢が大きく変化する中で,非破壊検査分野においても国際連携の重要性はますます高まっている。そのため,これまで築いてきた国際活動を継続・発展させるとともに,新たな視点や戦略に基づく取り組みが求められている。

このような背景のもと,当協会の国際学術活動は,海外の非破壊検査関連の組織・学協会との密接な連携に加え,国際機関との協力強化,国際会議の企画・運営,さらにはデジタル技術,ロボティクスなど新たな技術領域への展開を通じて,その活動の幅を広げ,内容を深化させてきた。また,アジア太平洋地域でのリーダーシップの発揮や国際的な人的ネットワークの形成においても,国際学術活動は重要な役割を担っている。

本稿では,当協会が展開してきた国際活動のうち国際学術活動に焦点を当て,最近の主要な取り組みと成果を概説するとともに,それらを踏まえた国際学術活動の目指す方向性と今後の展望について述べる。

 

JSNDI の国際活動とその戦略(2) 国際認証活動

国際認証委員会委員長 井上 裕嗣

JSNDI’s International Activities and Strategies(2)International Activities in Certification
Chair of International Certification Committee Hirotsugu INOUE

キーワード: 非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,ISO/TC 135/SC 7,ICNDT

 

はじめに
 (一社)日本非破壊検査協会(JSNDI)では,1969 年から非破壊試験(NDT)技術者の認証(当初は技量認定)を実施しており,本年で58 年目を迎えている。本稿では,NDT 技術者認証の国際的な動向について,一部に国内の状況を交えつつ,過去の発展の経緯,現在の状況,将来の見通しを解説する。NDT 技術者の認証は,そのよりどころとなる規格に従って実施されるため,本稿では関連規格の制定・改正の経緯を中心に説明する。

 

JSNDI の国際活動とその戦略(3) 国際教育活動

国際教育専門委員会委員長 八木 尚人

JSNDI’s International Activities and Strategies(3)International Educational Activities
Chair of International Education Committee Naoto YAGI

キーワード: IAEA,NDT-CE,ISO/TS 25107,ISO/TS 25108

 

はじめに
 本稿は,(一社)日本非破壊検査協会(JSNDI,以下当協会)が展開する国際教育活動について解説する。協会内の教育訓練組織の構成や国際教育専門委員会の位置付けを述べ,現在主な活動として実施している国際原子力機関(International Atomic Energy Agency,以下IAEA)との国際協力事例の状況ならびに2026 年4 月に実施した「土木インフラのNDT トレーニングコース」の実施概要を示す。また,筆者が関わっているISO/TC 135/SC 7(資格認証)の訓練に関するワーキンググループ(WG 11)での検討状況を紹介し,国際規格への整合化が国内運用に与える影響および今後の対応について考察する。

 

インタビュー

JSNDI の国際活動の歴史−ISO/TC 135 の活動からAPFNDT 創設まで− 

元会長・ISO 委員会委員長  大岡 紀一

The History of JSNDI’s International Activities −From ISO/TC 135 Activities to the Founding of APFNDT−
Former President, Chair of ISO Committee Norikazu OOKA

 この記事は,長年にわたり当協会の国際活動を牽引してこられた元会長の大岡紀一顧問へのインタビューに基づくものです。話は,ご自身が原子力分野の非破壊検査に携わられるようになった経緯にはじまり,ICNDT(国際非破壊試験委員会)や我が国が幹事国を務めるISO/TC 135(非破壊検査に関する技術委員会)の活動において当協会がこれまで果たしてきた役割などについて,ご自身の経験とともに語っていただいております。また,当協会の国際貢献として内外で高く評価されているIAEA(国際原子力機関)からの委託によって,当協会が1980 年から今日まで続けているアジア地域への非破壊検査技術の啓蒙・普及活動の成果と今後の展開,また,これらの活動を通じて,APFNDT(アジア・パシフィック非破壊試験連盟)の設立に至った経緯などについてお話しいただいております。

 

随想

Center of NDE, Iowa State Univ. CNDE での経験−アメリカの大学と非破壊評価研究−

職業能力開発総合大学校  小坂 大吾

Experience at CNDE
The Polytechnic University of Japan Daigo KOSAKA

キーワード: 応力測定試験,電磁超音波,米国,非破壊評価,ホール係数,留学

 

はじめに
 自身の研究が世界と比べてどの程度の位置にあるのか,学術誌を読むだけでは見えてこない部分がある。論文には当然ながら成功を収めた成果が掲載されるが,実際には途方もない試行錯誤の上に成り立っているものであり,その試行錯誤はノウハウとして貴重である。しかしながらそうした泥くさいプロセスは現地に赴かなければ窺い知ることはできない。なぜその研究が必要なのか,真の背景や理由が隠されている論文も存在する。世界の非破壊検査研究を主導する機関へ留学することは,それらを肌で理解し,かつ海外の研究者とネットワークを持つ絶好の機会である。このような人材が日本非破壊検査協会(以下,JSNDI)の活動を牽引していくことで,我が国の非破壊評価(以下,NDE)に関する研究,ひいてはその産業応用をより高度に発展させられるのではないだろうか。その呼び水的なきっかけになることを期待し,筆者自身の留学中の失敗談を交えて本稿を執筆した。

筆者が留学していた10 年前を思い出しながら,写真を交えて米国におけるNDE 研究の実情や雰囲気について述べたい。最初にCenter for Nondestructive Evaluation以下,CNDE)について説明する。次に筆者がCNDE への留学に至った経緯と当時の研究における試行錯誤などを紹介し,最後にサポートしてくれる周囲への感謝の重要性についてまとめたい。

 

Fraunhofer IZFP の今と昔 −ドイツ在外研究の記憶から−

愛媛大学  中畑 和之

Essays on Fraunhofer IZFP: Past and Present− Reflections on My Research Stay in Germany −
Ehime University Kazuyuki NAKAHATA

キーワード: ドイツ,Fraunhofer IZFP,Dresden支所,在外研究

 

はじめに
 本稿では,欧州の代表的な非破壊検査研究機関の一つであるFraunhofer IZFP について紹介する。筆者は,2008 年度に1 年間,ドイツのFraunhofer IZFP Dresden 支所に客員研究員として滞在する機会を得た。当時のFraunhofer IZFP は,Saarbrücken とDresden の2 拠点体制で運営されていたが,その後,組織改編を経て,Dresden 支所はFraunhofer IKTSへと統合された。

本稿の前半では,Fraunhofer 研究機構およびIZFP の概要を述べるとともに,筆者が滞在した当時のIZFP と現在のIZFP・IKTS の変化について概説する。後半では,Dresden支所での在外研究を振り返り,研究環境,研究者との交流,Fraunhofer という組織に触れて感じたことを述べたい。これらは,筆者がその後,NDE 4.0 やデジタルツインに関心を持つようになった背景とも少なからず関係している。

 

資料

The 18th International Workshop on Advanced Infrared Technology and Applications(AITA 2025)神戸の開催報告

大阪工業大学 阪上 隆英

A Report of the 18th International Workshop on Advanced Infrared Technology and Applications(AITA 2025)in Kobe
Osaka Institute of Technology Takahide SAKAGAMI

キーワード: 赤外線計測,赤外線サーモグラフィ,テラヘルツ,応用技術,国際会議,AITA

 

はじめに
 (一社) 日本非破壊検査協会(JSNDI) は,2025 年9 月15 日~ 19 日,神戸市ポートアイランドの神戸大学統合研究拠点において国際会議The 18th International Workshop on Advanced Infrared Technology and Applications(AITA 2025)を開催した。本稿では,18 回目を迎えた国際会議AITA について紹介するとともに,AITA 2025 の開催実績について報告する。

 

第27 回国際AE シンポジウムおよびIIIAE 2025世界会議開催報告

(一財)東海技術センター 奥出 信博
東北大学 森谷 祐一
東京科学大学 水谷 義弘
京都大学 塩谷 智基

Report on 27th IAES & IIIAE 2025 in Nagoya
Tokai Technology Center Nobuhiro OKUDE
Tohoku University Hirokazu MORIYA
Institute of Science Tokyo Yoshihiro MIZUTANI
Kyoto University Yoshihiro MIZUTANI

キーワード: アコースティック・エミッション,国際会議

 

IIIAE 2025について
 International Institute of Innovative Acoustic Emission(IIIAE)は,非破壊検査技術の一つであるAE(Acoustic Emission)に関する世界3 地域の学協会・団体(米国:Acoustic Emission Working Group(AEWG), 欧州:European Working Group on Acoustic Emission(EWGAE),日本:(一社)日本非破壊検査協会AE・音響部門)により構成される国際組織である。その設立は,2008 年に京都で開催された第19 回国際AE シンポジウムにおいて塩谷智基実行委員長の提案を契機として,その後,米国で開催された第53 回AEWG 会議において,公式に提案,各地域の関連団体による設立準備が正式に承認された。先端的な研究成果および実用技術の動向を世界で共有し,学術と産業分野の連携を促進するとともに,国際的な人的ネットワークの形成を目的としている。初代会長には,外務大臣科学技術顧問および日本工学会会長を歴任された東京大学の岸 輝雄名誉教授が就任した。岸会長を筆頭に,翌年の2016 年には京都大学の塩谷智基教授が実行委員長を務め,第1 回会議(IIIAE 2016)を京都で開催した。その後,米国・シカゴ,スロベニア・リュブリャナでの開催を経て,今回,我が国では2 回目となるIIIAE 2025 を名古屋に招致した。また,学会長は,岸 輝雄会長から,塩谷智基会長へと引き継がれた。IIIAE の組織メンバーを表1 に示す。

IIIAE 2025 は,2025 年11 月3 日(月)から7 日(金)までの5 日間で開催され,主催は(一社)日本非破壊検査協会,準備および運営は表2 に示すIIIAE 2025 世界会議実行委員会が担った。なお,本会議は第27 回AE 国際シンポジウムおよび第11 回ICAE(International Conference on Acoustic Emission)も兼ねて開催された。

 

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