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機関誌

2007年度バックナンバー巻頭言3月

2007年3月1日更新

巻頭言

「ライフラインをささえる技術(その3:鉄道編)」特集号の刊行にあたって

 イギリスにて世界ではじめて蒸気機関車による鉄道の営業運転が始まってから遅れること47年。日本では明治5年(1872年)に新橋〜横浜間に初めて鉄道 が開業した。このときの車輌や技術はイギリス製であった。それから130年余り経った今,日本は世界で最先端の鉄道技術を有する国となっている。その大き な要因は昭和39年(1964年)に開業した新幹線の成功であり,この出来事は高速大量輸送に対する世界の認識を一変させ,各国での高速鉄道の開発に多大 な影響を与えた。また日本の新幹線システムが輸出され,台湾にて今年の1月に営業運転を開始したことも記憶に新しいことだろう。
 鉄道はその建設に際し用地の確保を含め多大な費用がかかるものの,日本の鉄道網は世界の中で,もっとも濃密に構築されてきている。その理由は鉄道が数々 の特徴を有しているからであろう。1つは車輌の連結が容易であり,大量輸送に向いた手法であるということである。首都圏では在来線においても12両以上の 編成も珍しくなく,新幹線においては16両を連結することで1度に1300人以上を運ぶことが可能である。また鉄道は専用の軌条をつかうことから他の交通 機関の影響をうけることがなく,定時運行性に優れている点も挙げられる。これらの利点は膨張する都市機能を保つと同時に,鉄道の重要性を高めている。総務 省の統計資料によれば平成15年のバスによる旅客数は年間62億人に対して,鉄道によるそれは218億人と3倍以上に達していることからも明らかである。
 また鉄道の特徴として環境負荷が低い点も挙げられる。鉄道車輌の多くを構成する電車では,排出されるCO2もほとんどなく,エネルギー効率も極めて高 い。これはレールと車輪間の摩擦が低いことに起因しており,エネルギー消費原単位(1人を一定距離運ぶエネルギー量)で換算した場合,乗用車を1とする と,航空機が約0.81,バスが0.27,そして鉄道が0.09と圧倒的に低い。これは日本の産業活動におけるエネルギー効率が世界的にみても高いことの 要因に挙げることができるであろう。
 しかし,数多くの特徴をもつ鉄道であるが,大量輸送が可能な故に,ひとたび事故が発生すればその影響も甚大である。2005年4月の福知山線脱線転覆事 故では100名以上の方が亡くなり,500名以上の方が負傷された。また同年12月には羽越線特急脱線転覆事故では5名の方が亡くなられている。
 鉄道の安全な運用には多くの人々や技術が必要であり,非破壊検査技術も設備や装置の健全性を担保するためには欠かせない。とりわけ鉄道は多くの車輌と レールを有する極めて長大なシステムであり,日本の複雑な地形からもそれらを支える構造物が多く存在する。そのため高精度な検査を効率よく行うために各種 の技術開発が行われ実用化されてきている。今回の特集号では車軸やレール,構造物に関連した検査技術に関して5件の解説記事を掲載した。いずれもわかりや すく解説して頂いており,本特集号が,関心をお持ちの方々の参考となり,お役に立つことができれば幸いである。
 最後にご多忙中にもかかわらず快くご執筆くださった方々に厚く御礼申し上げます。

*(特集号編集担当 藤原弘次)

 

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