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機関誌

2005年度バックナンバー巻頭言7月

2005年7月1日更新

巻頭言

「文化財を遺す非破壊技術」特集号刊行にあたって

 奈良県明日香村の高松塚古墳の壁画が劣化している問題で文化庁が壁画の描かれている石室を解体して古墳の外に運び出し,修復・保存する方法を検討している ことが報じられた(2005年4月17日)。7世紀末から8世紀初めに築き上げられたという古墳が千数百年後に発見され,発掘調査で美しい壁画が見つかっ て話題となった。「誰のために?」とか「壁画の意味は?」と考えるだけでもかぎりない古代へのロマンを感ずる。発見されて30数年の間にかびの発生と進行 が抑えられずに急速に劣化が進み,樹脂による漆喰の固定はされたが十分とはいえず今回の解体保存案に至ったもようである。もちろんこれまでに石室の室内温 度・湿度管理をはじめ最良の保存方法と科学的手法を駆使した結果の末であることはいうまでもない。
 文化財の保存・修復は考古学,美術などと自然科学が共同作業となる学際的領域である。発見された先人の遺産に対して「何を優先」し「どんな技術,どんな 形」で保存するかについては門外漢であるが,私ども非破壊検査に携わるものにとって関心を強く持つのは文化財の調査・分析に対して常に非破壊的手法がとら れるという点であろう。例えば材質の分析,修理のための情報収集として蛍光X線は有効となる。また微少量の定性・定量分析のための分光分析の使用や内部調 査のための赤外線,X線の使用などが考えられる。保存環境として光,温度,湿度,ガスなどの調査もある。こうした計測技術が半世紀ほどの間に文化財保存, 修復のための科学的手法のレベルを持ち上げてきたといえる。
 特集ではこうした文化財の非破壊調査の実際を取り上げた。特集の執筆者は元興寺文化財研究所に所属する研究員の方々である。元興寺は南都7大寺のひとつ であり,その解体修理・境内発掘によって発見された多数の民俗資料調査のために発足したのが研究所の始まりと記されている。その後全国各地で確認された資 料の総合的研究によって中世庶民信仰の精神的基盤を究明し出土遺物の保存を研究する機関として元興寺仏教民俗資料研究所を設立し,昭和53年に財団法人元 興寺文化財研究所と改名した。現在,考古学,民俗学,美術史,文献史などの人文科学分野のほかに理学,工学,芸術学などの研究員を要して文化財の調査・研 究および保存処理・修復などを行なっている特定公益増進法人である。この特徴を生かしてそれぞれの担当者から文化財の処理前調査(非破壊検査),保存方法 の検討,処理と仕上げ,処理後の検査等について解説いただいた。
 特集は,6編の解説で構成し,それぞれ次のような視点で解説している。まず,文化財保存の歴史と現状,文化財の調査方法の紹介,保存の意義と役割につい て述べ,元興寺文化財研究所の取り組みを紹介している。つづいて,文化財診断処理に放射線を適用した興味ある具体例を解説し,文化財診断車についても紹介 がある。次に,最近コンピュタを駆使して,埋蔵されている文化財の情報をデータ化して残す研究がはじめられていることから,3次元計測によるデジタル保存 について取り上げている。後半の解説では出土する木器,金属器,土器などを保存修復のための分析や処理方法についての具体的な解説や,埋蔵していた金属製 品や木製品は出土後急速にその環境が変化するため劣化が進行することに対して,保存処理前から処理後まで行なわれるさまざまな工程について五報で概説して いる。ここでは,金属製品の防錆の方法,木製品では水分を含んでいるが自然乾燥させると収縮・変形を伴うことを防止する水分除去の実際などを紹介してい る。最後に,この研究所では人々の歴史を伝える文化財(民俗文化財)についても保存修復を手がけていることから,民具を中心とした民俗文化財を取り上げ て,その分析,保存処理を解説している。対象は農業や漁業などの生業にかかわるものから庶民の生活を物語る衣食住に関わるもの,神社・仏閣に残された絵馬 や仏像など多岐にわたっている。
 本特集が工業的に利用される非破壊試験技術と文化財を遺す手法としての非破壊試験技術との相違などを知り,新しい展開につながれば幸いである。

*特集号編集担当 小堀 修身

 

解説 文化財を遺す非破壊技術

文化財保存の意義と役割
   植田 直見 (財)元興寺文化財研究所

Significance and Role of Conservation of Cultural Properties
Naomi UEDA Gangoji Insutitute for Research of Cultural Property
キーワード 文化財,文化財保護法,保存科学,埋蔵文化財,民俗文化財



1. はじめに
 文化財は歴史的,芸術的および学術的に価値が高いもので,貴重な国民的財産であり,その範囲は多岐にわたる。これらは1950年5月に公布された文化財 保護法によると公共のために大切に保護し,文化的に活用するように努めなければならないとされている。なお,ここで述べる文化財とは一般的には文化財保護 法に基づき,表1に示したように大きく5種類に分けられる。さらにその中で特に重要なものについては重要文化財や,国宝,史跡として国が指定・選定・登録 し保存の対象とされている。これら5種類以外にも土地に埋蔵されている文化財(埋蔵文化財)や文化財の保存技術なども保存の対象となっている。
 今回はこれらの文化財の中でそのままの状態を維持するのに特に化学的な処理が必要な伝世民俗資料(民俗文化財)および出土考古資料(有形文化財,埋蔵文化財)を中心に,最近の現状を紹介しながらその保存についての意義と役割をまとめた。

 

 

歴史を映すX線透過試験
   村田 忠繁 (財)元興寺文化財研究所

Imaging X-ray Radiography Through History
Tadashige MURATA Gangoji Institute for Research of Cultural Property
キーワード 文化財,X線透過試験,保存処理,伝世品,文化財診断車



1. はじめに
 X線透過試験(以下XRTと記す)の技術が日本で定着し始めたころ,同様にXRTは文化財への利用も始まっていた。1934年に大阪府高槻市阿武山古墳 のミイラの調査に撮影されたものが最初のフィルムとして残っている。近年,そのフィルムを東海大学で画像処理を行い,解析の結果,被葬者が藤原鎌足である ことの確認が可能となった。
 文化財の研究において,XRTの必要が関係者の一致した認識となったのは,1978年に当研究所において,埼玉県稲荷山古墳出土鉄剣から115文字の金 象嵌の銘文が発見されたことによる。その後,続いて当研究所において島根県岡田山1号墳出土円頭太刀に「額田部臣」の銀象嵌の豪族名,奈良国立文化財研究 所(当時)において兵庫県箕谷2号墳出土鉄刀に「戊辰年五年」銅象嵌の年号,国立歴史民俗博物館において千葉県稲荷台古墳出土鉄剣に「王賜」の銀象嵌の銘 文が,次々に発見された1)。
 最近では,非破壊検査の様々な手法が利用され,紹介されている2)。
 そうして今日では,出土金属製品を始めあらゆる文化財におけるXRTは,歴史を解明する作業として欠くことのできない日常的な取り組みとなっている。

 

3次元計測による文化財のデジタル保存
   塚本 敏夫 (財)元興寺文化財研究所


Digital Archive of Cultural Properties by Three Dimensional Measurement
Toshio TSUKAMOTO Gangoji Insutitute for Research of Cultural Property
  キーワード デジタルアーカイブ,3次元計測,保存科学,考古学,遺物



1. はじめに
 21世紀は高度デジタル情報化社会の世紀と言われている。近年,文化財関係でもハイビジョン映像技術を使った『デジタルアーカイブ構想』やインターネッ ト上で電脳博物館を創る『バーチャルミュージアム』構想等様々なプロジェクトが立ち上がっている。近年,文化財の分野でもコンピュータが多く利用されるよ うになり,情報のデジタル化や膨大なデータの有効活用が叫ばれるようになっている。
 ここでは文化財一般のうち,埋蔵文化財に焦点を絞って現在,進めているレーザー光を使った非接触式3次元形状計測装置(レンジファインダ)を用いた新しいデジタル保存法について紹介する。

 

文化財保存修復における科学的分析
   川本 耕三 (財)元興寺文化財研究所


Scientific Analysis in Conservation and Restoration of Cultural Properties
Kozo KAWAMOTO Gangoji Insutitute for Research of Cultural Property
キーワード 考古資料,民俗資料,漆,鍍金,顔料



1. はじめに −保存修復と分析との関係−
 文化財保護法に「文化財が我が国の歴史,文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり,且つ,将来の文化の向上発展の基礎をなすものである (第3条)」から,「文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し,これを公共のため大切に保存するとともに,できるだけこれを公開する等その文化的活用 に努めなければならない(第4条 第2項)」とあるように,われわれは時間とともに劣化していく文化財を,博物館などの展示環境において長期間保存できるように処置,すなわち保存修復しな ければならない。
 保存修復は,資料の状態をできるだけ変えない方法が用いられるが,長期間の保存に耐えられるように化学的処理をする以上,失われる情報が生じることは避けられない。
 そこで,例えば資料断面に考古学や文化人類学,民俗学などの人文・社会科学的な情報が存在し,折損を修復すればその局部的な情報が失われる場合,大局的 には折損部を修復する,しない両方の選択がある。前者ではその前に自然科学的な手法によって分析し,情報を保存する必要がある。また,例えば資料を薬液に 浸漬したときの物理的挙動を知るというような,保存修復処理を行なううえで必要な情報を得るため保存修復前に分析が行なわれる場合もある。自然科学的分析 は保存修復を補完する意味で行なわれると考えることができる。
 保存修復後の分析も含め,これらはできる限り非破壊で行なわれなくてはならないが,どうしてもサンプリングをする必要がある分析もある。資料の欠損部な どに生じた小さな破片があれば,これが分析に用いられる。また,遺物を損なうことよりも分析によって得られる情報の価値が高いと判断され,破壊分析が行な われる場合もある。
 ここでは,主として非破壊もしくは微小破片を用いて行なう,保存修復と並行する自然科学的な分析について解説したい。

 

 

埋蔵文化財の保存処理
   中越 正子 (財)元興寺文化財研究所


Conservation of Buried Cultural Properties
Masako NAKAGOSHI Gangoji Institute for Research of Cultural Property
キーワード 埋蔵文化財,保存処理,出土金属製品,出土木製品,出土土器



1. はじめに
 当研究所は,埋蔵文化財関係諸機関の委託を受け,出土金属製品,木製品,土器を中心に埋蔵文化財の保存処理を行っている。埋蔵文化財の中でも,金属製 品,木製品は出土後,急速に劣化が進行する。古来より人間の営みに使用された,または墓の副葬品として埋納されたこれらのものたちは,考古学上の資料に留 まらず,その歴史の変遷を語る上で,人類共有の財産と言える。従って,これらのものを後世にも伝えるべく,保存処理を施し,劣化の進行を食止める(遅らせ る)ことがここでの重要な仕事の一つである。以下に,出土金属製品,木製品,土器の順にその保存処理の現状を紹介する。

 

 

民俗資料の保存修復
   石井 里佳 (財)元興寺文化財研究所


Conservation and Restoration of Folklore Objects
Rika ISHII Gangoji Insutitute for Research of Cultural Property
キーワード 文化財,民俗資料,修復,脱塩処理,樹脂コーティング



1.  はじめに
 民俗文化財とは,家や神社仏閣等に長く伝えられ残されてきたものであり,人々の歴史を今に伝える貴重な文化遺産である。農業や漁業など人々の生業に関わ るものや,庶民の日常的な歴史を物語る衣食住に関わるものから,絵馬や仏像などの信仰に関わるものまで,その対象は多岐にわたる。
 また,同時に,民俗文化財はその構成素材もさまざまである。ごく身近な木,竹,藁から鉄,銅,漆や顔料まで,枚挙に暇がない。最近では,ゴムやベニヤ, プラスチック等が使用された資料が民俗文化財とされる例もある。さらに,長年に渡り伝世されてきた過程において,幾度かの修理を施されて使用されてきたた めに,当初のオリジナル部分と後世の補修部分を併せ持つものも多くある。
 当研究所では,長年,民俗文化財の保存修復を行ってきた。文化財における保存修復とは,現状維持を基本原則としながら,文化財資料の延命処置を図ること である。オリジナルの部材を最大限に生かしながら,経年変化により脆弱化した部材を強化しなければならない。そのためには,資料を科学的に分析・調査し, 資料をよく知ることが必要であり,その上で,最善の保存処理方法を探る必要がある。この際,文化財であるという資料の性格上,分析は非破壊であることが原 則である。
 民俗文化財の保存処理については,これまで,学会発表や論文等でいくつか紹介されているが 1)−5),本稿では,筆者が現在携わっている民俗文化財の保存処理を中心に述べる。

 

 

論文

超音波による締結状態下のボルト軸力測定
   水口 義久/名和 輝好

Ultrasonic Measurement of the Bolt Axial Force of a Bolted Joint after Tightening
Yoshihisa MINAKUCHI* and Teruyoshi NAWA**
Abstract
In order to confirm the reliability of bolted joints, it is important to precisely grasp the bolt axial force. But, practical methods for measuring the bolt axial force in a fastened joint have not yet been proposed. In this paper, an ultrasonic method is proposed to measure the bolt axial force in the fastened joint without loosening the nut. The relationship between bolt axial force and strain was measured by strain gauges put on the bolts, which were made of various materials and had several specifications for the nominal diameter and nominal length. Then, steel plates with a hole were tightened by the bolt at an initial clamping force F. An ultrasonic probe was put on the bolt head, and ultrasound was transmitted into the bolt, to which the tensile load was applied by pulling the bolt head or the thread using a tensile apparatus. And, the tensile load Wo was determined at which the change ratio of the round-trip propagation time through the bolt to the load became non-linear. Thus, the axial force of bolts made of various materials and with several specifications for nominal diameter and nominal length can be obtained by multiplying the pre-determined value of F/Wo to the measured value of Wo.



1. 緒言
 機械構造物の組み立てに多用されているボルト締結体が強度的に安全であるかどうかを確認するためには,ボルト軸力を正確に把握することが非常に重要であ る。ボルト軸力測定法には,これまでにひずみゲ−ジ法,磁気法1),渦電流法2)および超音波法3)−10)などがある。この中で,超音波法は,ボルト締 結前後においてボルト頭部からボルトの軸端面までを超音波が伝搬する往復時間を測定し,その変化率を利用してボルト軸力を測定している。超音波法を用いて 締結状態下のボルト軸力を測定するには,あらかじめ使用しているボルトに関する軸力と往復伝搬時間の変化量の関係を把握しておき,この関係を利用して,ボ ルトやナットを回転させながらボルト軸力がなくなるまでのボルト中の往復伝搬時間の変化量を測定すれば可能と思われる。しかし,締結状態下にあるボルト軸 力をボルトやナットを回転させずに測定する超音波法は,これまで研究されていないようである。
 本研究では,締結状態下にあるボルト軸力を測定する方法を提案するとともに,本測定法の実用性を明らかにするために,ボルトの材質,直径,長さを種々変 化させた場合についてボルト軸力測定を行い,ボルトの違いが締結状態下のボルト軸力測定に及ぼす影響を検討した。

原稿受付:平成16年3月29日
 山梨大学大学院医学工学総合研究部(山梨県甲府市武田4-3-11)Graduate School of Medical and Engineering Science Department of Research, University of Yamanashi
 山梨大学大学院Graduate School, University of Yamanashi

 

渦電流試験におけるウィナーフィルタを用いたきず形状の再構成
   小井戸純司/山口 博之/星川  洋

Reconstruction of Flaw Shape using Wiener Filer in Eddy Current Test
Junji KOIDO*, Hiroyuki YAMAGUCHI** and Hiroshi HOSHIKAWA*
Abstract
In an inner probe eddy current test for non-ferrous heat exchanger tubes, the authors employed the Wiener filter in order to enhance the restoration characteristic of flaw shape in a 2-D inverse filtering. An inverse filter, whose transfer function was simply derived from a point-spread function, generated much more noise because of the abnormally large value of transfer function in its specific order. The Wiener filter was developed for making noise reduction by utilizing mean square error evaluation. Thus, the SN ratio of a flaw shape restored from ET scanning data by the Wiener filter was much higher than that of a simple inverse filter. In addition, a modification coefficient was introduced into the Wiener filter to adjust the characteristic of de-convolution. When the optimum value of this coefficient was chosen, not only did the SN ratio of the restored flaw shape increase but also the correct flaw depth was given.
Key Words Eddy Current Test, Heat Exchanger Tube, Multi-Coil, Inverse Filter, Flaw Shape, Inverse Problem



1. 緒言
 内挿コイルを用いた渦電流探傷試験は,熱交換器や蒸気発生器などの保守検査で広く用いられている。これらの構造物の保守検査では,一層厳しくなった安全 基準や経済的な背景を満足するために,内挿コイル渦流探傷試験の高精度化を図り,検査の信頼性を向上することが必要である。その一端として,小さなきずの 検出能力を高めるため,あるいは,2次元的なデータによるきずのマッピングを可能とするために,マルチコイルを用いることが増加している1)−3)。
 一方,試験コイルの磁界は拡散するため,これを2次元走査して得た探傷信号を画像として構成すると,いわゆるぼけ画像となってきず形状の正確な同定を難 しくする。そこで,きず信号を発生する原因となっているきずの形状を,結果である探傷信号から推定する,いわゆる逆問題による信号処理が試みられている。 その一つの方法は,信号を発生する物理的なシステムを数学のモデルとして表現し,そのモデルから得られる信号と現実に得られる信号が一致するようにモデル を最適化することによってきずの形状を同定する手法である4)−10)。信号を発生するシステムの数学モデルとしては,渦電流探傷ではマックスウエルの方 程式を用いることが可能である。また,近年ではその近似として有限要素法を用いることが可能となっており,コンピュータの高速・大容量化と相まって現実に 近い問題まで解析できるようになってきている。しかし,比較的に長い計算時間を要すること及び,必ずしも最適化が成功しないことなどが,オンライン・リア ルタイムの実用化を妨げているといえる。
 一方,走査型の渦電流探傷システムを2次元線形システムと見なし,その点広がり関数PSF(Point Spread Function)を見出して逆フィルタを作成してきず信号に作用させることにより,きず形状を再構成することが可能であり,筆者らもこの手法を内挿コイ ルについて適用した例を報告している11)。この方法は,処理時間が短くて済むため,リアルタイムのきず形状再構成システムを構築することも可能である。 しかし,雑音を含む入力を持つ逆フィルタには本質的に雑音を発生する特性があるため,再構成した信号のSN比が高くなかった。このような場合,雑音の性質 に対応してフィルタの伝達特性を修正してフィルタ特性を向上させる適応フィルタ(Adaptive filter)12)があり,その一種に,雑音を含んだ信号と真の信号の二乗誤差を最小にする方法で特性を向上させる,ウィナーフィルタがある。そこで, 幅が一定で軸方向に長いスリット状のきずに対して内挿マルチコイルを用いて得た探傷信号に,ウィナーフィルタを適用してきず画像を再構成することを試みた ところ,単純な逆フィルタに比較してSN比が飛躍的に向上することを確認した。また,ウィナーフィルタに修正係数を導入することにより,ウィナーフィルタ によって再構成したきず形状に現れるぼけを軽減すると同時に,指示の大きさときず深さの関係を向上することが可能であることも確認した。

原稿受付:平成16年5月18日
 日本大学生産工学部(習志野市泉町1-2-1)Nihon University
 日本大学生産工学部研究生(現在:ユニバース情報システム(株))Universe Information Systems Co., Ltd.

 

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