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機関誌

2007年度バックナンバー12月

2007年12月1日更新

巻頭言

特集 第5回「技術者倫理と社会的責任」―製品事故と法的責任,企業の社会的責任,技術者教育―
    第五回 学術セミナー内容の紹介発刊に寄せて

 技術者倫理と社会的責任をキーワードに,日本非破壊検査協会が去る平成19年5月21日に第5回学術セミナーを開催した。過去4回のセミナーでは,主とし て非破壊検査の新しい手法,構造物や製品の検査と安全等に関するテーマを取り上げてきたが,今回は社会に対する技術者の役割や企業の社会的責任の在り方の 観点から安心・安全に寄与することを模索するために,非破壊とは全く異なった分野の方々にそれぞれの立場から講演をしていただいた。とても広範囲な講演内 容を要領よくまとめていただき,特集の解説企画として発刊することができた。ここでは取り上げたテーマの背景や文章の裏に潜んでいる当日の興味ある内容を 添えて,本文の解説の一層の理解の助けにしたい。
 始めに,中央大学法科大学院教授・弁護士 升田 純氏には「製品事故に関する法的責任と技術の役割」と題して製品の事故と損害に対する法的な責任に関連 して講演いただいた。科学技術の進歩は日々新しい製品の開発や機能の優れた製品などを生み出している。社会がより豊かに快適になる反面,新たな危険もまた 生じる。こうした製品の事故に対して最終的には法的な責任追及が不可避となるが,法的な責任の追及だけで安全・安心な社会が実現されるわけでもない。製品 の開発から製品事故の救済に至る過程において,製品の安全に関わる技術の占める役割は極めて重要であり,この過程に沿って技術の役割を概観された。技術者 としてとても関心を持ったのは,法的な判断過程における科学・技術の位置づけである。証人や鑑定人としての承諾を得るのが現状では難しいこと。したがって 十分な専門的知識が提供されてきたといえないこと。証言の限界や裁判官がその証言をどの程度的確に理解したかなどの問題もあるという。升田先生は指摘す る。訴訟の場と科学・技術の専門家の活躍する場とでは全く異なる発想,考え方によって科学・技術的な知見が取り扱われているという。もう一つは科学・技術 的な判断と法的な判断とは異なるという点である。訴訟は科学・技術的な知見の場所ではないとする指摘。科学・技術の証明と訴訟の証明とは異なるもので訴訟 の場では後者が優先されるというルールも存在するのが現実と理解した。
 つぎに,独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)矢野友三郎氏は「企業の社会的責任(CSR)」について講演された。初めてCSRについて耳にしたので,その時は十分理解もできなかった。余談ながら本文解説の前に前置きをのべる。
 最近のチョコレートや牛肉ミンチ,地鶏,そして土産の餅など賞味期限の過ぎた食材の使用や出荷の改ざんによる食品表示の偽装に至っては誰もが口にする食 品の一つ一つが大丈夫かと疑ってしまうほどになっている。こうした事件で不正が長期間行われていたことにもさらに驚かされる。背景にはバブル崩壊以降の価 格競争や消費の低迷による過当競争,売上利益の優先などが挙げられるが,原因究明もさることながら法令順守の精神や生産体制の管理など最も基本的な精神, 自浄能力の欠如ではないだろうか。企業は法令の遵守は勿論のこと,品質保障や危機管理体制の強化などの安全対策を経営者から従業員,パート勤務者に至るま で意識改革を行う必要がある。そして生活者の不安や不信感を取り除いて,安心感につなげる活動を企業が積極的に社会に対して行うべきとした(企業が果たす 社会的役割)。これまでの寄付やボランテア活動といった社会奉仕活動にとどまらず環境・労働・人権への配慮なども企業の社会的責任として求める声が高まっ ている。同時に企業がこうした自主的な活動で社会的責任を果たすことによって企業自身の競争力も強化され,企業の価値も高まる。企業リスクの回避にもつな がり,顧客(個々人)の満足にもつながるとするものである。

 

 

解説 第五回学術セミナー 「技術者倫理と社会的責任」

製品事故に関する法的責任と技術の役割  升田  純 中央大学法科大学院教授・弁護士

Liability in Product-Caused Accidents and Role of Technology
Jun MASUDA Professor, Graduate School of Law, Chuo University / Lawyer

キーワード 製品事故,損害賠償責任,民事訴訟,製造物責任法,科学・技術的な知見



1. 法的な責任の構造と判断
1.1 はじめに
 各種の製品事故が報道される等しているが,近年の製品事故は,高度の科学・技術が関係する製品の事故が発生し,その欠陥の判断に当たって,科学・技術的 な知見が重要な役割を果たすことも多くなっている。製品事故が発生し,事後的にその製品の製造業者等の損害賠償責任が問題になる場合,科学・技術がどのよ うに取り扱われるかを検討することは,法律の分野だけでなく,科学・技術の分野でも重要である。
読者諸氏は,科学・技術の分野においては専門家であっても,法律の分野では素人であるので,まず,製品事故が発生した場合における法的な責任の概要を紹介したい。
1.2 損害賠償責任の概要
 法的な責任は,様々な意味をもっているが,代表的な責任として,損害賠償責任がある。製品事故の場合には,その事故による被害者が被った損害を金銭的に 填補することが損害賠償責任であるが,その法的な根拠は,大きく分けて二つある。不法行為責任と債務不履行責任(債務不履行責任は,瑕疵担保責任ととも に,契約責任に分類されることがあるが,製品事故の場合には,債務不履行責任が利用されることが多い)である。
 不法行為責任は,民法709条の定める一般の不法行為責任があるが,これは,過失責任(注意義務違反)である。製造物責任は,製造物責任法によって認め られたものであるが,過失が必要ではなく,製造物の欠陥が認められる場合に認められる不法行為責任である。これ以外の法的な根拠による不法行為責任もある が,製品事故の場合には,代表的なものは以上の二つである。
 他方,債務不履行責任は,被害者と加害者との間に契約関係が存在する場合に認められるものである。
 製造物責任は,技術者の間でも話題になることが多い法的な責任であるが,製造物の欠陥として取り上げられることが多いのは,製造上の欠陥,設計上の欠陥,指示・警告上の欠陥である。
 また,製造業者等が製造物責任対策を検討するに当たって重要なことは,製造物の製造過程ごとに様々な対策を策定することが重要であるが,その過程の概要は次のとおりである。
 ? 企画・開発
 ? 設計
 ? 部品・原材料の選択
 ? 試作品の製造
 ? 設計の見直し
 ? 価格の決定
 ? 部品・原材料の調達
 ? 加工・製造
 ? 検査
 ? 包装
 ? 取扱説明書の作成
 ? 宣伝・広告
 ? 販売
 ? 不具合の報告
 ? 製品の改良
 ? 取扱説明書の改訂
 ? 新製品の企画
 これらの製造物の製造過程の特性に即して,それぞれの対策を策定することが重要であるが,特に製品の設計,製造等は,予測が基本である。

 

 

 

 

CSR(企業の社会的責任)とISO 26000
   矢野友三郎 製品評価技術基盤機構(NITE)

Corporate Social Responsibility and ISO 26000
Tomosaburo YANO National Institute of Technology and Evaluation (NITE)

キーワード CSR,企業の社会的責任,ISO,経営



1. CSRとは何か
 CSR(Corporate Social Responsibility)について,日本では「企業の社会的責任」と訳され,近年,日本企業でのCSRに対する関心の高まりには目を見張るものがあ る。しかしながら,これは日本企業だけでなく世界的な潮流である。
 スイスに本社を置く国際コンサルティング企業のKPMGが,アムステルダム大学と共同で行った「企業責任報告に関する国際調査2005」によれば, フォーチュングローバル企業上位250社のうち,52%の企業がCSR報告書を発行している。また,先進諸国における上位100社のうち41%の企業が CSR報告書を発行し,国別にみた発行数上位2ヵ国は日本(80%)と英国(71%)である。また,2002年の調査時から比べて,CSR報告書の発行企 業数は24%から57%へと2倍以上に増加している。
 業種別では,電子・コンピュータ,公益,自動車,石油・ガスなどの業界のうち80%以上の企業がCSR報告書を発行し,最近では金融業が 2002年時の調査時の24%から2005年の57%へと企業数が倍増と報告している。
 日本でも,今年1月,トヨタ自動車(株)は,従来の環境部門と社会貢献部門を統合して,新たにCSR室を新設した。また,同社は,1988年に「環境報 告書」の発行を開始し,2003年には「環境・社会報告書」と改訂,2007年からは,「サステイナビリティ報告書」と再度改訂し,社会側面の充実・情報 開示に努めている。
 では,環境問題と並んで大企業の関心が高いCSRとは何か。CSRとは,「企業が法律遵守にとどまらず,企業市民として社会に貢献し,経済・社会・環境 (いわゆるトリプルボトムラン)の三側面のバランスをとりながら事業を成功させること」であるが,その概念は抽象的である。
 企業の社会的責任は,20世紀のはじめに作り出された言葉と言われ,当初は宗教,温情主義,慈善的な側面が強かったが,多国籍企業が出てくる1970年 代に入り,CSRという言葉は一般化したと言われる。1976年,OECD(経済協力開発機構)は,多国籍企業に対して法令順守と責任ある企業行動に関す る自主原則,「OECD多国籍企業ガイドライン(最新2000年版)」を制定した。

 

ものづくりと技術教育
    坂本  勇 大阪産業大学名誉教授

Creative Design and Engineering Education
Isamu SAKAMOTO Professor Emeritus, Osaka Sangyo University

キーワード 設計,わざ,勘,教育,哲学,歴史,文化



1. 現代の問い
 現代社会の顕著な特色は,科学技術が文化的および社会的行為に深くかかわり,新しい倫理的な空白を作り出していることである。ものづくりは,工場に限定 されないで,つくられたものは,完成と共に万人のものになり広い世界と複雑につらなって,いわゆる独自の生態系を獲得する。設計は,法則に基づくバランス のとれた形式であるが,同時に無限に異なる解釈に対しても開かれた存在である。従って設計者には思いもかけない予想を越える可能性を開示することがある。 かつて,日本の航空機事故として史上二番目の惨事という中華航空機事故は「人間と機械の調和」の難しさを浮き彫りにした。メーカーの技術の最高責任者は 「人間は想像もつかない機械の使い方をすることがある」として完璧な設計などはないとコメントしている1)。 モンテーニュはそのエッセーにおいて『有能 な読者はしばしば他人の書物の中に,作者がそこに描いたと自認する完璧さとは違ったものを発見し,それに一段と豊富な意味と相貌とをつけ加える』と指摘し ているように,それは,眼光紙背に徹して設計者の意図と,それ以上のことについても分かるという意味であろうか2)。ここに技術の難しさがある。
 また,20世紀の初めの未だコンピュータもない時代に,マックス・ウェーバーは,この世紀末が『精神のない専門人,心情のない享楽人が自惚する時代になる』と現代社会をまさに指摘している3)。
 1947年 カール・ポランニーは「経済の文明史」において『われわれは,精巧で強力な機械を存分に使用するために,人間の経済を自己調整的な市場システムに変形し, その思想や価値をも,この新しく特異なシステムに適合するように鋳直した』と,現代社会との関連についてその要因を分析している4)。日本でもすでに 1942年,三木 清が「技術哲学」において『技術時代の悲劇は,技術は単に自然科学技術のみではなく社会技術というものの存在すること,両者の間には因 果的に密接な関係があること,したがって諸技術の間に正しい目的・手段の自律的・依存的関係が樹立されることを理解しないところにある』という技術の考え を展開している5)。
 これらの指摘は,効率優先,経験も勘も追放されて,大量消費に支えられた大量生産の構造に対するものであった。豊かさとはものが溢れていることではな い。工業国を目指した末のそれは長い年月をかけた実験でもあった。このような状況にあって,いわば「一つの促し」とでもいえる『もう一つの科学』を探る動 きがみられる。それは,西欧に近代をもたらした精神を学ばず,結果のみを追いかけて,そのために捨象していたといえる。ここでは日本の文化,伝統的思考や 行動様式などをものづくりや技術教育に反映させる試みとして,伝承と教育の側面より考察する。

 

 

 

論文

幾何光学近似とRayleigh積分による斜角探触子の音場計算モデル −Ermolovモデルと見掛けの振動子モデルとの関連性
    木村 友則/三須幸一郎/和高 修三/小池 光裕

Calculation Model of Ultrasonic Field of Angle Probe Using Geometrical
Optics Approximation and Rayleigh Integral
−Relation to Ermolov and Virtual Transducer Models

Tomonori KIMURA*, Koichiro MISU*, Shusou WADAKA* and Mitsuhiro KOIKE**

Abstract
A calculation model of the ultrasonic field of an angle probe using geometrical optics approximation and Rayleigh integral (GORI) is shown, and the relation of this model to Ermolov one and virtual transducer one is discussed. The GORI model is equivalent to the Ermolov one under certain conditions, and these conditions are made clear. Although several similarities exist between the GORI model and the virtual transducer one, cause of error exists in calculation of directivity using the virtual latter. A simple calculation model of directivity is derived in a far field based on the GORI two-dimensional model.

Key Words Angle probe, Ultrasonic field, Geometrical optics approximation, Rayleigh integral, Ermolov model, Virtual transducer




 1. 緒言
 斜角探触子の音場に関する検討は以前から行われており,例えば見掛けの振動子を用いたモデルが報告されている1)− 3)。このモデルは,簡易的であるので使い易く,またこのモデルを用いた計算では,斜角探触子の距離振幅特性は実験結果とほぼ一致するので4),この点に おいて有効なモデルである。しかし指向性の計算には適用限界があり5),またくさびから試験体への透過率の角度依存性を考慮していないなど,指向性を求め るモデルとしては不明な点がある。
 一方,音場を計算するモデルとして,幾何光学近似とRayleigh積分とを組み合わせたモデル6)− 8)も報告されている。このモデルでは距離振幅特性だけでなく指向性も計算できる。しかし,音線ごとにスネルの法則を考慮して振動子の開口面における積分 を行う必要があるので,簡易的とは言い難い。
 本論文は,幾何光学近似とRayleigh積分とを組み合わせたモデルによる計算式を種々の近似を用いて展開し,斜角探触子の指向性を求める簡易モデル について述べたものである。本論文ではまず,幾何光学近似とRayleigh積分によるモデルと,距離振幅特性を計算するモデルとして見掛けの振動子に関 する文献で引用されているErmolovのモデル9)との関係について明らかにする。

 

 

 

水平管内におけるプラグ自然形成に関するキャパシタンスCT計測
   武居 昌宏/都  徳熙/越智 光昭

Capacitance CT Measurement of Natural Formation of
Plug in a Horizontal Pipe
Masahiro TAKEI*, Deog-Hee DOH** and Mitsuaki OCHI*

Abstract
Particle concentration distribution images of a dense solid-air two-phase flow have been obtained at 10 milli-second in a horizontal pipeline by means of a capacitance computed tomography. The volume fractions based on the CT measurements were measured as parameters of air flow velocity and particle height of an initial accumulation layer. As a result, a plug is naturally formed at a specific velocity and height condition. Moreover, the factor of the plug natural formation is theoretically discussed with a two-flow model. The parameters, which are the initial height accumulation layer and the air flow velocity, do not make a big difference of the solid-phase volume fraction in the dispersion layer; however, make a difference of the accumulation layer height. Therefore, it seems that accumulation layer height contributes to the plug nature formation rather than a solid-phase volume fraction in a dispersion layer.

Key Words Plug formation, Capacitance CT, Solid-air two phase flow, Two-fluid model



1. 緒言
 固体粒子の高濃度空気輸送は,管摩耗や粒子破損が少ない点で優れており,パイプラインを用いた多くの産業分野で利用されている。この高濃度空気輸送の研 究では,産業的なニーズにより,粒子流量と空気流量とをパラメータとした圧力損失式の構築に関する研究が,現在まで多くなされている1),2)。しかしな がら,特定の粒子流量と空気流量の場合,圧力損失不安定領域が存在することが指摘されており3),広範囲な条件を網羅する圧力損失式が構築されているとは 言い難い。そして,その不安定性の原因を解明するために,粒子挙動を直接的に可視化できる手法の開発が望まれている。近年,その粒子挙動を三次元的に可視 化する手法として,コンピューティッド・トモグラフィー(CT)法が,広く用いられるようになってきた。例えば,中性子ラジオグラフィを用いた粉粒体の可 視化計測4),MRIを用いた回転ドラム内の粒子運動の計測5)などが報告されている。しかしながら,このような中性子ラジオグラフィやMRIは,空間解 像度は非常に高いが,非常に高価であるため容易には利用しづらいのが現状である。これに対して,比較的安価で固気二相流の管内粒子挙動の断面分布を可視化 する手法として,キャパシタンスCTが開発され6),流動層内の濃度分布の可視化7),空気輸送における粒子挙動の可視化8),その可視化CT画像の状態 遷移行列による評価9)やウェーブレット画像処理10),および,高精度なCT画像再構成手法の開発11),12)へと発展している。このような状況のも と,Jaworskiらは,圧力損失不安定領域において,とある粒子流量と空気流量のもとで,粒子濃度分布をキャパシタンスCTにより可視化計測した 13)。その研究成果により,プラグ現象(粒子が非定常的に管路全体を塞ぐ現象)が,圧力損失不安定領域において生じていることが予測され,プラグ自然形 成が圧力損失不安定性の原因であると思われる。しかしながら,現在まで,そのプラグ自然形成において,粒子流量および気体流量をパラメータとした粒子体積 率の変化についての詳細な検討はなされておらず,圧力損失式の構築に対してその検討は必要不可欠である。そこで本研究は,水平管内におけるプラグ自然形成 の基礎的研究として,粒子流量を模擬した初期粒子堆積層高さと気体流量とをパラメータとし,キャパシタンスCTを用いて,粒子断面挙動の可視化,ならび に,粒子体積率の計測を行ない,プラグ自然形成の条件を明らかにすることを目的とする。さらに,プラグ自然形成の主要因について,二流体モデルを用いて定 性的に考察する。

 

 

 

 

複数の電流供給端子を用いた直流電位差法による背面き裂の評価に関する有限要素解析
    内田  真/船越  亮/石井 祐介/多田 直哉

Finite Element Analysis of Evaluation of Crack on Back Surface
by Direct-Current Potential Difference Method with Two Pairs
of Current-Supply Probes

Makoto UCHIDA*, Akira FUNAKOSHI*, Yusuke ISHII** and Naoya TADA*

Abstract
In the conventional direct-current potential difference method (DC-PDM), uniform current is supplied by a pair of probes set far from a crack and the change in the potential difference by the crack is measured by another pair of probes near the crack. The identification of the crack is done based on the measurement result. But when the crack exists on the back surface, the change in the potential difference is not large and the identification is usually difficult. In this study, it was assumed that current was supplied by a pair of remote probes and a pair of adjacent probes to a plate with a crack on the back surface. The distribution of electric potential and the potential difference between a pair of potential measurement probes on the surface were analyzed by the finite element method. When the adjacent current-supply probes were set in between the potential measurement probes, larger normalized potential difference was obtained than the case where only the remote current was supplied. Furthermore, it was found that the increase in the potential difference by the adjacent current depends on the distance between adjacent current-supply probes and the crack depth. Based on this characteristic, a method of crack depth evaluation was proposed.

Key Words Potential difference method, Direct-current, Crack, Back surface, Adjacent current, NDT


 1. 緒言
 直流電位差法1), 2)(Direct-Current Potential Difference Method;DC-PDM)は金属材料などの導電性材料に存在するき裂を非破壊的に検出・測定する手法の一つであり,き裂の発生,成長により導体の断面 積が減少し,それに伴って電気抵抗が増加するという物理的性質を利用している。この手法は,他の手法と比較して機器の運転中でもオンラインでモニタリング が可能である,測定装置が安価である,欠陥の大きさや位置と電位差の関係を表す較正方程式の実験的あるいは解析的導出が容易である等の特徴を有している。
 直流電位差法は,測定対象や測定方法によって分類することができる3)。単一の欠陥が存在する測定対象に対しては,遠方から電流を供給し,1対あるいは 多対の測定端子で電位差を測定する方法4), 5),および電流供給端子を欠陥近傍に設置することで,少ない電流でも精度の良い測定を行う方法6)が報告されている。最近では,1対の電流供給端子と2 対の測定端子からなる6探針プローブを用いて焼入れ硬化層深さの評価も行われている7)。また,遠方から電流が供給された場合に対して,材料内部に多数の 欠陥が存在するときの電位場解析も実施されている8),9)。
 単一き裂の検出を直流電位差法を用いて行う場合,き裂が存在する面において電位差測定を実施すると,得られる電位差の変化が大きいため比較的容易にき裂 を検出できる。しかしながら,必ずしも測定可能な面にき裂が存在するとは限らず,配管内面に発生する,いわば板の背面にあるき裂を検出しなければならない ことも多い。これまで背面き裂に関しては,誘導型電位差法10)や,多点測定型直流電位差法11)を用いて評価が行われているが,測定面ではき裂による電 位差変化が少ないためにき裂の推定精度が悪く,特に板厚に対して深さが小さいき裂の場合はその検出さえも難しいと考えられる。そこで本研究では,遠方から 供給する電流に加えて電位差測定端子近傍に電流供給源を追加した場合について,有限要素法を用いて電位場解析を実施し,近傍電流の供給により背面き裂に対 する感度がどの程度高まるかについて検討した。さらに,解析の結果得られた電位差分布の特徴を利用してき裂深さを推定する一つの方法を提案した。

 

 

 

 

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