阪上 隆英
2021 年度の会長を引き続き務めさせていただくにあたり,ご挨拶を申し上げます。皆様には日頃から当協会の諸活動へのご支援・ご協力を賜り,誠にありがとうございます。昨年度は,当協会の様々な活動が新型コロナウイルスの影響を受けましたが,関係各位のご理解とご協力により最も困難な状況を切り抜け,年度半ばから「ウィズコロナ」の取り組みの下で,各種事業を徐々に再開させ,復旧に向けて動き出すことができました。ここに御礼申し上げます。
学術活動では,秋季講演大会をオンライン開催としましたが,多数の参加者のご好評を得て成功裏に終了しました。部門および委員会活動でも,オンラインによる講演会,シンポジウム等が活発に開催され,学術活動のアクティビティの維持向上に努めました。また,新しい取り組みとして,JSNDI 産業界課題マップに対する学術シーズの検討を行い,シーズ集発刊に向けた準備を行いました。また,国土交通省から請け負った「台車枠の探傷検査に関する調査検討」では,UT,ET の実地調査およびTT の実証試験を行い報告しました。教育活動では,技術講習会,実技講習会および再認証(実技)講習会などを,公的機関のガイドラインに従った感染防止対策を講じた上で定員を減らして開催し,約3400 名に受講頂きました。また,経済産業省が進める航空産業関連での非破壊検査員育成に関する教育活動として,NAS 410 に準拠した訓練機関である「航空産業非破壊検査トレーニングセンター」の運営に協力いたしました。認証活動では,新型コロナウイルスの影響を受けた,JIS Z 2305 に基づく非破壊試験技術者およびISO 18436-7 に基づく機械状態監視診断技術者の試験と認証登録等の認証事業の普及を進めました。昨年12 月末現在における,JIS Z 2305 に基づく非破壊試験技術者の登録数は84171 件,ISO 18436-7 に基づく機械状態監視診断技術者の登録数は180 件となっています。航空産業関連では,日本航空宇宙非破壊試験委員会(NANDTB-Japan)により令和元年に承認されたNAS 410 資格試験機関として,3 回の試験を実施しました。国際活動では,新型コロナウイルスの感染拡大により,対面による会議は中止,延期となりましたが,日本が会長国及び事務局国を務めるアジア・太平洋非破壊試験連盟(APFNDT),議長国及び幹事国を務めるISO/TC 135(非破壊試験)および各SC 等へのオンライン会議による対応,世界非破壊試験委員会(ICNDT)の総会や,米国非破壊試験協会(ASNT)のシンポジウムへのオンライン参加などを通じて,各国の非破壊試験関連団体との相互交流の維持を積極的に進めました。さらに,最近注目が集まっているNDE 4.0 については,NDE 4.0 に対応するWG を立ち上げて活動を開始するとともに,オンラインで開催された国際会議に積極的に参加し,諸外国との間で議論を深めました。
新型コロナウイルス感染症については,ワクチン接種が幅広い年齢層に拡大されるなど明るいニュースが報じられる一方で,変異株による感染再拡大が懸念されており,今後も直ちに終息に向かうことは期待できません。しかしながら,社会の安全・安心に直結する非破壊試験技術のさらなる向上,ならびに非破壊試験技術者の教育・認証という,当協会が社会に果たす大きな役割は変わりません。当協会では,「JSNDI ビジョン」を掲げ,“JSNDI ミッションステートメント「社会に価値ある安全・安心を提供するJSNDI」”,“JSNDI バリュー”および“JSNDI アクション”を指針とした活動を行ってきました。2021 年度においても,コロナ禍の中「ウィズコロナ」として,取り得る万全の感染症対策の実施,各種事業のオンライン化,ハイブリッド化等による活動形態の変容の積極的導入により,学術,教育,認証,出版といった当協会の基盤となる活動を正常化させ,会員ならびに資格保有者に対するサービス向上に努めてまいりたいと存じます。「ポストコロナ」を見据えては,協会全般にわたり諸活動を活発化させてまいりたいと思います。コロナ禍によって停滞していた,各種関連団体・業界との共催行事,技術交流,共同研究等を再び活発化させることで,産業界,学術界,行政をつなぐネットワーク,業界のバリューチェーンを意識したネットワークの形成に努めていきたいと思います。また,当協会の諸事業は,国際社会とも密接につながっております。諸外国においては,すでにポストコロナの社会活動に移行し始めている国や地域もあります。ISO/TC 135 や国際相互承認,国際学術,さらには前述のNDE 4.0 など,様々な国際対応において諸外国に遅れをとらぬように,国益を損なうことがないように,またこれまでに築いてきた成果が損なわれないように対応したいと思っております。
新型コロナウイルス感染症禍が続く中においても,「JSNDI ビジョン」,「JSNDI アクション」をこれまでどおり継続・発展させ,会員サービスの向上,魅力ある学会運営に努め,「非破壊検査」ならびに「非破壊試験技術者」のプレゼンスの向上を図っていきたいと思っております。引き続き,皆様のご協力を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。
2020 年度放射線部門主査,ポニー工業(株) 釜田 敏光
Review on Radiographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2020
Pony Industry Co., Ltd. Toshimitsu KAMADA
キーワード:非破壊試験,非破壊検査,デジタルラジオグラフィ,X線 CT,放射性同位元素
はじめに
放射線部門は,放射線を利用した非破壊試験を広く対象としている。放射線が物質を透過して写真感光する物理的な現象は,ヴェルヘルム・レントゲンが1895 年10 月にX 線を発見したことに始まり,1896 年1 月23 日にアルベルト・フォン・ケリカーの手のX 線写真が最初の透過写真とされている。一方,1896 年にアンリ・ベクレルが,赤ウラン塩から放射するX 線と似た透過力を持つ光線つまり放射線を発見し,マリ・キューリは,1897 年に放射能と名付け,その現象を持つ元素を放射性元素(放射性同位元素)とした。これらの発見により,X 線や放射性同位元素より放出される放射線を利用して,安全に物質の内部構造の非破壊試験を実施するために多くの人々により,様々な技術開発が実施されてきた。放射線による非破壊試験・検査がどのように始まり,どのような社会情勢があり,どのような必要性と手法があり,それらを多くの先人達の研究・開発の賜によって現在に至っている。
また,X 線や放射性同位元素の使用については,法律で多くの規制が課されている。その中で安全に使用することにより,多くの社会資本に延命化,より高度な製品の製造が可能となってきた。このような放射線による非破壊試験の歴史を再認識しアーカイブすることの重要性を認識し,その一端にフォーカスした活動を実施した。
2020 年度の活動として,機関誌69 巻5 号に,「放射線による非破壊検査の歩み,その将来」と題した特集号を刊行した。
また,最新の放射線についての情報を機関誌,部門講演会及びシンポジウムを通じて会員相互に情報収集及び情報発信を行うことを主なに活動としている。これらの企画を行うために幹事会を定期的に開催して情報の収集及び企画を実施している。
2020 年度の部門活動の報告をシンポジウム,秋季講演大会及び部門講演会での発表,並びに機関誌の掲載記事
2020 年度超音波部門主査,大阪大学 林 高弘
Review on Ultrasonic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2020
Osaka University Takahiro HAYASHI
キーワード:超音波探傷,波動伝搬,シミュレーション,ガイド波,フェーズドアレイ,レーザ超音波,非線形超音波,材料評価,センサ,AI,ICT
はじめに
超音波部門では例年,超音波による非破壊試験に関する多くの研究・講演活動が実施されている。2020 年度は開始当初から新型コロナウイルス蔓延拡大の影響を受け,活動の休止に追い込まれるイベントがありながらも,可能な範囲を探りながら次第に当初の活気を取り戻した特別な年であった。ここでは、2020 年度の超音波部門の活動実績を報告するとともに,機関誌ならびに各種活動で公表された論文や講演資料を中心に振り返り,2020 年度の動向をまとめ,今後の展望を述べる。
2020 年度磁粉・浸透・目視部門主査,日本電磁測器(株) 堀 充孝
Review on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing in 2020
Nihon Denji Sokki Co., Ltd. Michitaka HORI
キーワード:磁粉探傷試験,浸透探傷試験,目視試験
はじめに
磁粉・浸透・目視試験は表面探傷に関わる試験として広く活用されている。化学,発電などのプラント設備,鉄鋼・自動車・航空・鉄道などの産業分野などをはじめ,最近ではインフラストラクチャのメンテナンス等に磁粉・浸透・目視試験に関わる検査技術は重要な位置づけになっている。学術部門では,「磁粉・浸透・目視部門」,「電磁気応用部門」,「漏れ試験部門」の3 部門合同で幹事会をはじめ,研究集会,シンポジウム等の活動を行っている。これら3 部門は,表面に発生するきずを検出するという共通テーマを有しており,表面3 部門として共同で活動することが,お互いの部門の活性化にもつながっていると考えている。2020 年度(2020 年4 月1 日~ 2021 年3 月31 日)の表面3 部門が合同で行った研究集会,シンポジウム,秋季講演大会の概要を述べると共に,磁粉・浸透・目視部門の活動報告及び今後の展望について述べる。
2020 年度電磁気応用部門主査,EMF 応用計測 藤原 弘次
Review on Electromagnetic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Electromagnetic Testing in 2020
EMF Laboratory Hirotsugu FUJIWARA
キーワード:渦電流,漏洩磁束,表面きず,電磁気,材質計測
はじめに
電磁気応用部門は,磁粉· 浸透· 目視部門,漏れ試験部門と3部門合同で活動を行っている。この3 部門を表面3 部門と呼んでおり,共通点は主に表面きずを対象としているということである。そのため,この3 部門での合同活動による情報共有は互いの部門への活性化に極めて有効である。電磁気応用部門では電磁現象を応用した検査法の研究開発や実用化などを主体に議論している。
電磁気を用いた検査は非接触で,かつ人体への影響も小さく取り扱いも比較的容易である。交流磁界や交流電流は減衰するものの金属内部へも浸透するため,鋼材の内部あるいは裏面のきずの検出が可能な優れた特性を持っている。また,鋼材の機械的特性と電磁気的特性が密に関係していることから,高感度な材質計測への適用も可能な点も大きな特徴であろう。社会インフラに多用される厚手の鋼材の検査についても,技術の進展により,その適用範囲が広がりつつある。さらに対象も金属材料だけでなく,CFRP などの非金属材料にも広がりを見せている。設備の低コストな検査や,製品の品質管理・保証の面からも,電磁気を応用した検査技術の高度化が求められている。
本報告では,従来から続けている3 部門の連携体制をもとに,2020 年度において活動してきた内容を中心に報告するとともに,電磁気応用部門が取り扱っている検査技術の動向と展望について述べる。
2020 年度漏れ試験部門主査,(国研)産業技術総合研究所 計量標準総合センター 新井 健太
Review on Leak Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Leak Testing in 2020
National Metrology Institute of Japan (NMIJ)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Kenta ARAI
キーワード:漏れ試験,規格,保守,リーク試験法
はじめに
漏れ試験は安全・安心を担保する重要な非破壊試験の一つであり,半導体・有機EL 製造装置などの真空装置から,医薬品,食品,医療機器,冷凍空調機器,船舶,自動車,航空・宇宙分野,ガスや石油等の備蓄タンク,各種化学プラントやその配管等,非常に広範囲な産業で日常的に実施されている。「漏れ」は,JIS Z2300:2020「非破壊試験用語」において,「壁の両側の圧力差又は濃度差によって液体又は気体が通過する現象。孔,多孔質などの透過性要素が原因となる」と定義されている1)。その漏れは,物質の意図しない流失あるいは流入の原因となり,品質の低下だけではなく,環境汚染,火災・爆発等の事故の原因となりうる。漏れ試験は,生産製造から供用中まで様々な段階で検出して,品質低下や重大な事故を未然に防止するために不可欠な技術であり,我が国の工業の品質,安全,環境等を背後で支えている重要な技術の一つとなっている。
漏れ試験には,対象となる試験体,何を使って漏れを検出するか,その可検リーク量範囲により,様々な方法が開発されている2)。そのうち,主要な漏れ試験方法を,検出対象で分類し表1 にまとめた。
漏れ試験を実施するにあたり,発泡漏れ試験は目視検査であるが,そのほかの多くの漏れ試験方法は体感できない。そのため,漏れ試験に特化した計器であるリークディテクター(リークテスター,漏れ検知器などとも呼ばれる)を用いる。しかし,ただ単にリークディテクターがあれば漏れを正確に測定できるかと思えばそうではない。リークディテクターが正しい漏れ量を示しこと(校正),リークディテクターの正しい方法で使用すること(試験方法),リークディテクターを扱う試験者の高い技量を持つこと (技量認定)が必要となる。さらに,これら三要素を下から支える教育,研究活動がある。本稿では,2020 年度中の活動と今後の展望について報告する。
2020 年度応力・ひずみ測定部門主査,豊橋技術科学大学 足立 忠晴
Review on Stress / Strain Measurement
Chairman of Research & Technical Committee on Stress / Strain Measurement in 2020
Toyohashi University of Technology Tadaharu ADACHI
キーワード:応力・ひずみ測定,ひずみゲージ試験,材料評価,強度評価,実験力学
はじめに
応力・ひずみ測定部門は,1954 年にその前身が設立されて以来,主催する応力・ひずみ測定と強度評価シンポジウムは2018 年度で50 回を迎え,2019 年度から新たな50 年に向けて活動をしている。応力・ひずみ測定は材料力学,固体力学,構造力学に基づいて,材料・構造設計,材料・構造物評価などを行う際の基本である。有限要素解析が出現して以来,シミュレーションにより材料・構造物の評価が行われるようになり,試験・測定を行わないままに機器の設計・開発が行われることもある。シミュレーションでは,ある仮定,理論により行われることから,それらが実際の材料,構造に適用できるかを検証する必要があり,解析だけでは結果の信頼性を確保することができないことは言うまでもない。最近では材料・構造にさらに高度な信頼性が求められるようになってきており,ますます応力・ひずみ測定,試験による解析結果の検証の重要性が高まっている。新材料が開発されると改めて解析に必要となる材料特性を得なければならず,また温度,圧力などの使用環境,短時間あるいは長時間の特性変化などの各種の材料特性の依存性を考慮することも必要となっている。また,従来はサンプルを作製するために,応力・ひずみ測定,試験はシミュレーションに比較して多くの経費を要するためにシミュレーションが有効であるとされてきた。3D プリンタの出現により試験体の作製が容易になり,むしろ測定,試験を実施した方が経費もそれほどかからず短時間でも結果を得ることが可能となるような場合もある。このようなことから,応力・ひずみに関するシミュレーションと測定・試験とは,その時々の技術の進歩とともに変化し,相補的な関係であり,それぞれが重要である。
応力・ひずみ測定部門は,材料および構造物の基本的な物理量である応力,ひずみの測定手法およびデータ処理を含む解析・評価手法の開発・改良,応力・ひずみの測定手法に基づく材料特性評価・強度評価,さらに応力・ひずみ測定手法の様々な分野への応用などで幅広い分野対象としており,それらの学術的成果を公表するとともに実用化,国内外の研究動向を調査,分析し,所属会員間の情報交換と相互研鑽などを主な目的として活動している。さらに,得られた学術的成果に基づいて規格の立案を検討している。応力・ひずみ測定部門で取り扱う対象材料は,機械構造物を主に構成する鉄鋼材料をはじめとする金属材料,セメントだけでなく,高分子材料,セラミックスのみならず,それらの複合材料へと広がり,さらに近年では生体材料,生体組織をも対象としている。これらの材料を対象として,超高温・極低温あるいは高圧環境下,衝撃時の短時間あるいはクリープなどの長時間の特性変化などの影響を考慮した材料,構造物の応力・ひずみ測定に関する研究が行われている。最近では社会的に大きな問題となっている建築・土木構造物の老朽化に関連した構造物の健全性評価としての変形,ひずみ測定に関する研究が行われている。さらに単に測定方法だけでなく,測定された結果のデータ処理,また画像処理による手法についても活発に研究されている。
2020 年度保守検査部門主査,(国研)産業技術総合研究所 津田 浩
Review on Maintenance Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on Maintenance Inspection in 2020
National Institute of Advanced Industrial Science & Technology Hiroshi TSUDA
キーワード:非破壊検査,ロボット,健全性評価,電位法,AE 法
はじめに
保守検査部門は産業プラント,社会インフラの構造信頼性を維持・向上させるための技術を関係者間で共有することで,信頼性と経済性を両立させた効率的な保守検査を探索し,その実施を促すことを活動の目的としている。そのため既存検査技術の現場適用事例紹介の他,近年,さかんに研究されるようになったロボット,IoT,および人工知能を活用した新しい検査技術を紹介する場として保守検査ミニシンポジウムを開催している。これまで年2回の頻度で開催してきたが,今年度はコロナ禍の影響を受けてオンライン形式で1 回の開催に留まった。また前年度のミニシンポジウムにおいて注目された講演の解説記事を集めた特集号を例年,機関誌10 月号に企画している。今年度も2019 年度のミニシンポジウム講演から6 件の解説記事を寄稿頂き,特集号を出版した。
表面形状を高精度に計測する技術として注目を集めている画像計測の非破壊検査への適用を促進させるため,「光3 次元形状計測技術による非接触非破壊検査の標準化に関する研究委員会」を保守検査部門傘下の研究委員会として2018 年に設立した。同委員会はこれまで人体や部品の立体形状を測定するための手段として発展してきた光3 次元形状計測技術を,保守検査分野へ適用させるために必要な標準化を整備することを活動の目的としている。設立から3 年目の今年は,最新の光3 次元形状計測技術開発に関する講演,ならびに標準化整備に関する議論を行い,標準化文書作成を進めた。
2020 年度製造工程検査部門主査,愛知工業大学 塚田 敏彦
Review on In-Process Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on In-Process Inspection in 2020
Aichi Institute of Technology Toshihiko TSUKADA
キーワード:画像処理,検査,製造工程,AI,ViEW2020,DIA2021
はじめに
2020 年度は,コロナ禍によるこれまでに経験したことのない1年を過ごすこととなった。大学では入構制限により遠隔での授業が行われ,不要不急の出張は禁止,研究成果を発表して新しい情報を入手するための学会は中止もしくは遠隔での開催がほとんどであった。本稿を執筆中の現在も,第4 波の影響により我慢の下での研究教育活動が継続されている。このような状況下における2020 年度の活動報告と,今後の展望について記す。
製造工程検査部門は,1986 年に日本非破壊検査協会(JSNDI)の応用技術部門の一つ「005 画像処理特別研究委員会」として発足した。産業界における画像センシングや画像処理技術の発展とその実用化を目指して活動を行っている。非破壊検査協会の中で製造工程検査部門は,最新の広範囲にわたる画像応用認識技術を当協会会員へリアルタイムに分かりやすく提供することを一つの大きな役割と位置付けて,活動を行っている。そのための活動として,各種学会・研究委員会の枠を超えた連携・協力を行い,広く画像センシング・認識に関するシンポジウムやワークショップを年に数回共同企画し協賛している。この活動によって非破壊検査・外観検査・目視検査に関わる画像認識技術の新たな情報提供を行い,研究者間交流の場を設け続けている。
本稿では,活動報告として2020 年度に協賛・共同企画した2 件のワークショップと,協会会員への画像応用技術の紹介を目的として企画した2020 年度非破壊検査総合シンポジウムと秋季講演大会でのオーガナイズドセッションを中心に紹介する。そして画像技術に関する動向を概観した後に今後の展望について言及する。
2020 年度アコースティック・エミッション部門主査,電気通信大学 結城 宏信
Review on Acoustic Emission
Chairman of Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2020
The University of Electro-Communications Hironobu YUKI
キーワード:アコースティック・エミッション,講演会,国際会議,規格
はじめに
アコースティック・エミッション(AE)部門はAE 法の進展と普及に貢献することを目的に,日本におけるAE 法の学術研究,技術開発,標準化,技術者養成をけん引する活動を行っている。AE 法は計測対象に本質的な制限がなく種々の環境下で高周波の微弱な信号を扱うことから,部門には機械系,材料系,土木系,資源系,電気系など様々なバックグラウンドをもつ会員が集まり,2021 年3 月末現在で個人会員68 名,団体会員56 組織の登録がある。本稿では2020 年度(2020 年4 月~ 2021 年3 月)のAE 部門の活動概要を中心にAE 法の現状と今後の展望を述べる。
2020 年度新素材に関する非破壊試験部門主査,東京工業大学 水谷 義弘
Review on Non-Destructive Evaluation of New Materials
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Evaluation of New Materials in 2020
Tokyo Institute of Technology Yoshihiro MIZUTANI
キーワード:新素材,非破壊計測
はじめに
新素材に関する非破壊試験部門では,新素材の非破壊評価に関する研究,調査及び普及を目的とした活動を行っている。様々な非破壊試験技術及び非破壊評価技術の応用を横断的に調査・議論していることに本部門の特徴がある。例えば,複合材料の試験技術,材料の劣化評価に関連した計測技術,高温環境における計測技術,3D プリント材料などを切り口として,他の団体や研究会との連携を積極的に行いながら調査・研究を行っている。2020 年度は,6 月に非破壊検査総合シンポジウムのOS として,保守管理部門,AE 部門と合同で「複合材料構造物の非破壊検査技術」を企画していたが,コロナウイルスの蔓延を防ぐために中止となった。一方,例年3月に実施している安全・安心な社会を築く先進材料・非破壊計測技術シンポジウムについては,学生セッションだけとし,ミニシンポジウムとしてオンラインで開催した。
2020 年度鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門主査,東京理科大学 今本 啓一
Review on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete Structures
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete in 2020
Tokyo University of Science Keiichi IMAMOTO
キーワード:活動報告,鉄筋コンクリート構造物,非破壊・微破壊試験,研究委員会,標準化,講習会
はじめに
鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(以下,RC 部門)では, 新型コロナウイルス感染拡大防止のため,当初ミニシンポジウムなどが延期になったが,2020 年中期頃からオンラインにより学術委員会,標準化委員会,教育委員会,編集委員会と関連し,各種研究委員会,各種NDIS 制定・改定・準備WG が活動を再び開始した。また,2020 年8 月27 日に表層透気試験に関する試験規格(NDIS 3436)を制定した。
2020 年度赤外線サーモグラフィ部門主査,(株)サーモグラファー 山越孝太郎
Review on Infrared Thermographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Infrared Thermographic Testing in 2020
Thermographers Co., Ltd. Kotaro YAMAKOSHI
キーワード:赤外線サーモグラフィ試験,資格制度,状態監視
はじめに
2019 年に発生した新型コロナウイルス感染症は,現在も収束することなく社会不安が続いている。赤外線サーモグラフィ(TT)部門の活動も,新型コロナウイルスの影響を大きく受けた1年間であった。緊急事態宣言が2020 年4 月7 日に発令され,2020 年度は例年とは大きく異なる状況でスタートした。そのような状況下でもZoom を活用したリモート環境が整備され会議開催やリモートと対面を併用した技術講習会の開催が行えるようになり活動を継続することができるようになった。コロナ禍によってシンポジウム開催や講演会発表の新しい形態の可能性を開拓できたことは,不幸中の幸いと言える。今までも,将来における検討課題としてリモート講演や講義について議論されていたことはあったが,コロナ禍により強力に推進された形になった。リモート環境が整った7 月以降は講演会や講習会の中止や延期もなくなり,会議も予定通り開催できるようになった。TT 部門では,リモートによるミニシンポジウム開催,講習会,幹事会の開催を行った。ISO 18436-7 に準拠した機械状態監視診断技術者認証の講習会は感染対策を万全に実施した上で従来通りの対面形式で開催された。ISO,JIS 規格の制定・整備,技術者認証制度の構築,テキストの作成などは今年度も実施し,試験技術の開発・確立・普及を目的
2020 年度学術委員会委員長,長岡技術科学大学 井原 郁夫
Report of Academic Affairs Committee
Chairman of Academic Affairs Committee in 2020
Nagaoka University of Technology Ikuo IHARA
キーワード:学術活動,非破壊検査,表彰制度,研究助成,研究奨励金
はじめに
工業製品や構造物の安全確保のために今日利用されている非破壊検査技術は,学術研究に端を発したものであり,本協会において現在も学術活動はその基礎である。学術委員会は,協会の学術活動全般を総括する位置づけであり,関連する3 名の理事と12部門及び2 研究会の主査から構成されている。2020 年度の学術委員会の委員構成は以下の通りであった。
井原郁夫:委員長/学術担当副会長
望月正人:技術開発センター長/学術担当理事
水谷義弘:学術担当理事 兼
新素材に関する非破壊試験(NMT)部門主査
釜田敏光:放射線(RT)部門主査
林 高弘:超音波(UT)部門主査
堀 充孝:磁粉・浸透・目視(MT/PT/VT)部門主査
藤原弘次:電磁気応用(ET/MFLT)部門主査
新井健太:漏れ試験(LT)部門主査
足立忠晴:応力・ひずみ測定(SSM)部門主査
結城宏信:アコースティック・エミッション(AE)部門主査
山越孝太郎:赤外線サーモグラフィ(TT)部門主査
塚田敏彦:製造工程検査(IPI)部門主査
津田 浩:保守検査(MI)部門主査
今本啓一:鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験(RC)部門
主査
小原良和:先進超音波計測に関する萌芽技術研究会
佐々木敏彦:cosα 法及び二次元検出器によるX 線応力測定法
研究会
2020 年度は,学術委員会を7 月,12 月,2 月の計3 回開催した。以下に2020 年度の学術活動について報告するが,各部門における実質的な学術活動の詳細についてはそれぞれの部門の報告・展望を,また国際学術活動については国際学術委員会活動報告をご覧いただきたい。
2020 年度標準化委員会委員長,ポニー工業(株) 釜田 敏光
Report of Standardization Committee
Chairman of Standardization Committee in 2020
Pony Industry Co., Ltd. Toshimitsu KAMADA
キーワード:非破壊試験,非破壊検査,規格,NDIS,JIS,ISO
1. 概要
1.1 はじめに
日本非破壊検査協会(JSNDI)では,標準化委員会とISO 委員会が協力し,また,経済産業省や日本規格協会等の関連学・協会との緊密な連携の下,日本国内外の非破壊試験に関する検査技術の標準化を図るとともにその普及を推進している。
本報告では,標準化委員会の2020 年度の活動として,日本産業規格(JIS)及び日本非破壊検査協会規格(NDIS)の原案作成や改正に関わる動向及び関連の事業について説明する。なお,ISO の動向に関しては,別途ISO 委員会活動報告がなされている。
1.2 標準化委員会の活動内容
我が国における非破壊試験の検査技術の標準化と普及に寄与することを目的に,日本非破壊検査協会が行う標準化事業のすべてに関与し,2020 年度は,コロナ禍であり対面での会議の実施ができない状況であったが,オンライン会議により,継続して以下の活動を行った。
(1)日本産業標準調査会が行う非破壊試験に関する日本産業規格(JIS)の審議及び承認への積極的な協力
(2)日本非破壊検査協会規格(NDIS)の審議,承認及び維持管理
(3)関連内外規格の調査,収集,及び会員への情報伝達
(4)日本非破壊検査協会ISO 委員会の活動への協力等
1.3 組織
標準化委員会に,次に示す11 の専門別委員会を継続して設置し,各技術分野における標準化事業の推進及び方針の策定などを担当している(括弧内は2020 年度の専門別委員会委員長名,敬称略)。
(1)放射線専門別委員会(横田和重)
(2)超音波専門別委員会(古川 敬)
(3)磁粉専門別委員会(福岡克弘)
(4)浸透専門別委員会(樋口暢浩)
(5)渦電流・漏洩磁束専門別委員会(小坂大吾)
(6)目視専門別委員会(東海林一)
(7)漏れ専門別委員会(井川秋夫)
(8)赤外線サーモグラフィ専門別委員会(小笠原永久)
(9)ひずみ試験専門別委員会(上田政人)
(10)アコースティック・エミッション専門別委員会(結城宏信)
(11)鉄筋コンクリート構造物専門別委員会(湯浅 昇)
2020 年度の標準化委員会は,委員長(釜田敏光),委員(前述の専門別委員会委員長),ISO 委員会委員長(大岡紀一)及び標準化担当理事(釜田敏光)で構成されており,3 回の委員会を開催した(括弧内は担当者名,敬称略)。
2020 年度ISO 委員会委員長,(一社)日本非破壊検査協会 大岡 紀一
Report of ISO Committee
Chairman of ISO Committee in 2020
The Japanese Society for Non-Destructive Inspection Norikazu OOKA
キーワード:ISO/TC 135,CEN/TC 138,ISO/TC 135/SC 7,ISO 9712,資格及び認証,ISO 規格
概要
ISO(国際標準化機構)規格案件に関する事項を検討,審議及び投票のための集約,さらにTC 44(溶接),TC 17(鋼)等の国内審議団体と連携をとり関連ISO 規格の対応と共に情報交換などを前年度に引き続き実施した。
国際会議に関しては,ISO 9712 の改正に伴うISO/TC 135/SC 7とその関連TG(Task Group)会議が開催され,すべてがオンライン会議となった。SC 7 については,TG コンビナーによるオンライン会議が2020 年6 月25 日,30 日に行われ,緒方隆昌TG 4コンビナーが出席するとともに,先のTG でロシアのMullin コンビナーの代役を務めた大岡昌平ISO/TC 135 国際幹事が出席した。SC 7 のオンライン会議が9 月22 日~ 24 日に行われ,SC 7 の緒方日本代表,ISO/TC 135 幹事国業務として大岡紀一国際議長及び大岡昌平国際幹事が出席した。なお,国際会議の時差の関連から日本時間の20 時からの開催であった。一方,SC 7 以外の関連するSC 会議は,SC 3(超音波試験)のWG 6 として第1 回WGを2020 年8 月14 日に,その後第2 回WG を同年の10 月16 日に,第3 回WG を同年の12 月5 日に実施し,横野泰和SC 3 委員が出席した。また,SC 9(アコースティック・エミッション)の第1回が2020 年6 月9 日に,第2 回が同年の12 月8 日に開催され,中村英之SC 9 委員が出席した。SC 3 及びSC 9 会議共に新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大の懸念からオンライン会議で開催した。
ISO/TC 135 及びその関連SC 会議が2020 年6 月12 日から15 日までの4 日間にわたり韓国のソウルで開催される予定であったが,COVID-19 が世界的規模で拡大していることに配慮して,KSNT(韓国非破壊試験学会)及びICNDT(国際非破壊試験委員会)で審議され,2022 年2 月28 日~ 3 月4 日に延期された。このため,ISO/TC 135 及び関連SC の開催については,COVID-19 の状況を注視していたが,対面会議は勿論のことオンライン会議も行える状況になく,必要に応じて,各SC において,規格の審議を進めることとし,ISO/TC 135 及びこれに併設しての関連SC 会議は2020 年度には,行わなかった。その間,SC 3,5,8 及び9 についてはオンラインにて開催された。
このようなCOVID-19 の環境下にあって,次期開催について大岡国際議長と大岡昌平国際幹事がISO 中央事務局の高橋真帆プロジェクトマネージャ(TPM)と連絡を取り,ISO/TC 135 総会及び関連SC を2022 年開催予定の韓国でのWCNDT に併設して行う前に,オンラインで開催する方向で計画している。一方,幹事国業務として2021 年3 月まで,各SC 及びWG の活動状況を注視するとともに,適宜,進め方などにおいて,指導,アドバイスなどを実施してきた。
国内におけるISO 委員会については,第1 回本委員会を2021 年3 月10 日に開催し,分科会については第1 回分科会を2020 年7 月7 日に,また本委員会に先立って,第2 回分科会を2021 年3 月7 日に開催した。
一方,国内においては,非破壊試験・検査における種々の関連情報を共有する目的で,各種団体会員出席の第1 回本委員会にて,情報交換を実施した。
2020 年度国際学術委員会委員長,川崎重工業(株) 緒方 隆昌
Report of International Committee
Chairman of International Committee in 2020
Kawasaki Heavy Industries, Ltd. Takamasa OGATA
キーワード:非破壊検査,ICNDT,WCNDT,APFNDT,EFNDT,ECNDT,ASNT,BINDT,KSNT,TWI,RCNDE,SNTCT,日米非破壊試験シンポジウム,国際会議
はじめに
国際情勢において,2020 年の3 月に,世界保健機関(WHO)が,新型コロナウイルス感染症(以下,「新型コロナ」)が世界的に流行しているとの認識を示して1 年以上が経過した。それまで,グローバリゼーションを志向してきた産業界は,新型コロナ禍及びポスト新型コロナ禍での対応が課題となっている。各国の非破壊試験協会においても,国際会議・講演会が軒並み中止,延期され,オンライン形式など,従来とは異なる形での開催を行っている。当協会においても,秋季講演大会,学術シンポジウム,各委員会などをオンライン開催するなど,対応を行ってきた。
当協会は,今後のさらなる発展に向けたビジョンとして,“JSNDIミッションステートメント”及び“JSNDI バリュー”を定め,これらを実現する具体的な施策として“JSNDI アクション”を定めた。この中で,国際学術に深く関わるのは,「学術・産業分野の拡大と融合」及び「有効なグローバル展開の強化」が挙げられる。具体的には,機械の状態監視のような他分野との境界領域へ取り組みを広げることや,非破壊試験における世界の先端的研究機関・協会などとの相互交流や情報交換を促進してグローバルネットワークの強化を図り,グローバル社会における我が国の本分野のポテンシャル向上を目指している。また,2020 年からは,インダストリー4.0 の進展に伴い,非破壊検査のNDE 4.0 におけるオンライン国際会議が開かれるなど,活発な動きを見せ,当協会でもこれへの対応組織を発足させた。
国際学術委員会は,これらJSNDI アクションを実行し,国外の非破壊試験方法に関する,より広範な学術情報の交換,収集及び相互交流を図る活動を行った。また,国際非破壊試験委員会(International Committee for Non-Destructive Testing;ICNDT)及びアジア・太平洋非破壊試験連盟(Asia-Pacific Federation for Non-Destructive Testing;APFNDT)の活動をはじめとする国際的活動は,学術のみに留まらず,認証,教育,標準化などが相互に密接に関連していることから,運営委員会の下に国際対応WGを設け総合的な判断を行っている。本稿では,本号における掲載区分の関係上,国際学術委員会活動以外も含むこれら国際活動全般を対象に記載した。
2020 年度教育委員会委員長,三菱パワー検査(株) 八木 尚人
Report of Education Committee
Chairman of Education Committee in 2020
Mitsubishi Power Inspection Technologies, Ltd. Naoto YAGI
キーワード:訓練,講習会,JIS Z 2305:2013,ISO 9712:2012
はじめに
教育委員会(以下,「当委員会」という)は,非破壊検査に従事する技術者の技量向上を目的として各種教育・訓練の計画と実施並びに関係書籍の編集などを行っている。
また,JIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」の改正に伴う訓練カリキュラムの見直し等の対応をこれまでに推進してきており,今後,国際相互承認を視野に入れた訓練組織としてのさらなる体制整備を進めていきたいと考えている。ここでは,2020 年度の当委員会の主な活動実績を報告する。
2020 年度出版委員会委員長,新日本非破壊検査(株) 脇部 康彦
Report of Publication Committee
Chairman of Publication Committee in 2020
Shin-Nippon Nondestructive Inspection Co., Ltd. Yasuhiko WAKIBE
キーワード:出版,テキスト,問題集,規格
はじめに
出版委員会は,非破壊検査技術の教育・普及に関する出版物の企画,編集,制作及び頒布を行うことによって,非破壊検査技術水準の向上を図ることを目的として設置された委員会であり,その活動は教育委員会の活動と密接に関係している。そのため,その構成員は,各部門の関係者とともに教育委員会からの派遣委員,理事等で構成されている。図1 に,出版活動の典型的な例を示す。
2020 年度試験片委員会委員長,ポニー工業(株) 猿渡 保
Report of Reference Block Committee
Chairman of Reference Block Committee in 2020
Pony Industry Co., Ltd. Tamotsu ENDO
キーワード:標準試験片,対比試験片,分類用ゲージ,品質
はじめに
当協会では,非破壊検査技術の普及と向上の活動の一環として,非破壊試験実施に必要な標準試験片及び対比試験片(以下「試験片類」と言う)に加えゲージを頒布している。
非破壊試験において試験片類は,試験装置の点検・調整,性能確認,試験結果の定量化,試験方法の標準化,試験結果への影響因子の評価など重要な業務に使用されている。
試験片類及びゲージの年間頒布数及び金額は,主要製品である超音波探傷試験用試験片類の頒布数が418 体,磁粉探傷試験用試験片の頒布数が1574 枚であった。総販売額は約64,500 千円と新型コロナウイルスによる影響で需要が低迷したことにより,前年度に比べ主要試験片類数量で約52%,総販売額で約30%の大幅な減少となった。このような環境下ではあったが,頒布は当協会の責務であり,品質管理と安定供給に努めた。
2020 年度広報活動委員会委員長,三菱重工業(株) 鶴田 孝義
Report of Public Relations Committee
Chairman of Public Relations Committee in 2020
Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. Takayoshi TSURUTA
キーワード:非破壊検査,広報活動,セミナー,展示会
はじめに
広報活動委員会では,協会の活動を情報公開し,会員へのサービス向上や新入会員の増加促進に努めている。協会の行事や各種案内を主として協会ホームページで公開するとともに,社会の様々な年齢層を対象とした各種セミナーや展示会への参画などを通じて,広く一般に向けて非破壊検査技術の認知度の向上を目指した広報活動を行っている。ここでは広報活動委員会の2020 年度の主な取り組み事項について報告したい。
2020 年度は,前年に引き続き,ホームページを利用した広報活動の充実に努めた。また工業高校生をはじめとする若手技術者の育成を目的として,2012 年(平成24 年)に開始した「明日を担う次世代のための非破壊検査セミナー」は順調に回を積み重ね既に20 回の開催実績を誇るが,今年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催自粛を余儀なくされた。受入側からは早期再開を望む声が聞こえてくるが,コロナ禍終息まではさらに魅力ある内容に進化させるための充電期間として御容赦頂きたい。また毎年恒例の小学生とその保護者を対象にした「夏休み宿題・自由研究大作戦」は主催者側の都合により一時中断しているが再開された場合には積極的に出展を行っていきたい。
なお,2020 年度の広報活動委員会は,コロナ禍ではあったがWeb 会議活用により計2 回開催できた(第1 回目:2020 年8 月24 日(月),第2 回目:2020 年11 月5 日(木))。以下,2020 年度の主な活動について報告する。