井原 郁夫
令和4 年度の会長就任にあたり,ご挨拶を申し上げます。
当協会は1952 年10 月25 日に「非破壊検査法研究会」として創立され,その3 年後に「社団法人日本非破壊検査協会」として発足し,今年で創立70 周年を迎えます。そのような節目の年に会長を仰せつかることとなり,重責に身の引き締まる思いです。会員の皆様のご支援,ご協力のもと,責務を果たすべく,全力を尽くしてまいりますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて,私たちの社会は2 年以上にもわたる新型コロナウイルス感染拡大のため,大きな変化を余儀なくされました。当協会におきましても学術,教育,認証,標準化,国際対応など,ほぼすべての活動が感染拡大の影響を大きく受けました。しかし,会員ならびに関係者の皆様のご理解とご協力により,昨年度はその影響は軽減され,財務状況にも回復の兆しが見えており,コロナ禍の最大の危機は乗り越えることができたように思われます。ただし,今年度に入っても感染の終息は見通せない状況であり,今しばらくは感染対策を講じながらコロナと共存しなければなりません。このような環境下,私たちは今,コロナ禍を経たポストコロナ社会への過渡期に直面しており,ニューノーマルを見据えた協会活動を実践していくことになります。そのようなタイミングでの協会運営に際して,「スピード」,「エビデンスベース」,「効果と弊害の検証」を意識して臨みたいと考えております。この2 年間,多くの会議や講演会はオンラインで開催されました。移動時間の節約というオンラインのメリットを享受できた反面,人の繋がりや親睦が希薄になるというデメリットも実感し,対面開催の重要性を改めて認識できたように思います。今年度の行事開催に際しては,感染状況はもとより行事の性格・規模・場所などを勘案し,オンライン,対面またはハイブリッド形式のいずれかを適宜ご検討いただければと思います。
当協会は学会機能と業界団体機能を兼ね備えており,社会の安全・安心に直結する非破壊試験技術の向上,ならびに非破壊試験技術者の学術的啓発,教育,育成,資格認証という重要な使命を担っています。当協会ではその特徴と強みを生かし,社会に貢献すべく,JSNDI アクションプランを掲げ活動を展開してきました。今年度もこの基本路線を踏襲します。具体的には,
①業界バリューチェーンの構築に関しては,関連する業界間の繋がりを意識した技術交流や共同研究など,業界間ネットワークを構築するための取り組みを企画,推進します。また,ポストコロナ社会を見据えたJSNDI 産業界課題マップの改定についても検討します。
②学術・産業分野の拡大と融合に関しては,他学協会と連携した共同シンポジウムや交流会など,異分野,異業種が連携できる場を設定することで,非破壊検査技術の応用分野の拡大ならびに他分野との融合による非破壊検査の新展開を図ります。また,個々の会員が部門横断的に活動できる仕組みを構築し,喫緊の社会課題に柔軟かつ効果的に対応できるようにしたいと考えています。
阪上 隆英
会長を退任させていただくにあたり,ご挨拶を申し上げます。社員の皆様,会員の皆様,関連諸団体の関係各位には,日頃から当協会へのご支援・ご協力を賜り誠にありがとうございます。
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に関しましては,コロナ禍の終息というにはまだまだ時期尚早ですが,経済や社会生活など世の中全体が元の状態を取り戻そうとしている時期に入ったと思われます。しかしながら,最近のオミクロン亜種による感染再拡大の兆しなど,まだまだ常に感染拡大防止に留意が必要であることに変わりはありません。このような状況により,対面による開催は実現できませんでしたが過日社員総会を開催し,井原新会長に襷を繋ぐことができました。「襷を繋ぐ」という言葉には,物事を次の人へ受け渡し,この先に託すという意味があるものと思っております。会長任期中の3 年間は,会の運営持続に終始し,思うところの事業展開を完遂することができず,多くの未完成事業を新会長に引き継ぐことは非常に残念ですが,この襷が未来に繋がるように望んでおります。
思い起こせば,2020 年の初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大は世界的に大きな打撃を与えました。まん延防止等重点措置,さらには緊急事態宣言も発出され,諸外国のようなロックダウンまでには至らなかったものの,関係機関の自主的な判断によって多くの社会活動が停滞する事態となりました。当協会の活動もその例外ではなく,学術,教育,認証,国際関係など,ほとんどの分野で活動の中止,延期,見直しを余儀なくされ,コロナ禍の中で当協会の活動をいかに継続していくかについて議論を重ねる時期が続きました。このような状況が何年続くのかと不安がありましたが,社会が感染拡大に留意しながら日常を取り戻す「ウィズコロナ」の取り組みが始まり,関係各位のご協力のお陰をもちまして,当協会の各種事業を徐々に再開・復旧へ向かうことができました。
コロナ禍の中にあっても,当協会の“JSNDI ビジョン”ならびに“JSNDI ミッションステートメント「社会に価値ある安全・安心を提供するJSNDI」”を継続・発展させていく諸活動を続けるため,まず協会の活動方針を明確にし,これを関係者に迅速に伝えることを最重要視し,感染拡大状況の変化に即応するかたちで,当協会の運営方針を12 回にわたり発表してきました。各部門の活動のうち,認証・教育等の事業継続に対する社会的要求が大きい事業は,感染対策を万全にして実施しました。その結果,JIS Z 2305:2013 ならびにISO 18436-7:2014 等に基づく認証事業を早期に平常化できたことは,社会の安全・安心に直結する技術者を確保するという社会的意義を満たすことはもとより,協会の財務状況の改善にも大きく影響しました。教育に関しては,講習会受講人数の制限により完全な平常化には至らなかったものの,各種講習会を開催することができました。関係各位ならびに事務局職員の努力による事業のオンライン化への迅速な対応は,コロナ禍の中での各種事業の継続に大きく役立ちました。学術や一部の教育,国際活動等オンラインでの事業継続が可能な部門では,オンラインによる事業活動の活発化を推進することで事業の平常化を図ることができました。春季の非破壊検査総合シンポジウム,秋季の講演大会はオンラインの開催となりましたが,多数の講演者・聴講者の参加を得て成功裏に終了しております。部門および委員会活動においても,オンラインによる講演会,シンポジウム,研究会等が活発に開催され,学術活動のアクティビティの維持向上が実現されました。国際活動はオンラインに制限されましたが,日本が会長国及び事務局国を務めるアジア・太平洋非破壊試験連盟(APFNDT),議長国及び幹事国を務めるISO/TC 135(非破壊試験)各技術委員会等への対応,世界非破壊試験委員会(ICNDT)の総会,米国非破壊試験協会(ASNT)のシンポジウムへの参加等を通じて,国際関係の継続,各国協会との相互交流の維持を図りました。最近注目が集まっているNDE4.0 についても,対応する委員会を立ち上げ活動を継続し,オンラインでの国際会議に参加して諸外国との間で議論を深めています。
新型コロナウイルス感染症については,完全な終息は期待できないものの,日常生活,社会活動,国際関係において,徐々にコロナ禍以前の姿を取り戻そうとする動きが始まっています。今後のワクチン追加接種や治療薬の開発によっては,インフルエンザ並みの対応が始まる日も遠くはないと思われます。当協会もいよいよアフターコロナ時代の活発な事業活動が始められるものと期待しています。長らく対面での活動が制限されてきた,学術活動や国際活動も平常化に向けて動き出しています。その皮切りとして,第7 回日米非破壊試験シンポジウムが8 月にハワイ島で対面により開催されることが決定されております。私が会長に就任した2019 年以降,諸外国とは長らく対面での親交を深めることができていませんでしたが,新会長のもとで様々な形での国際交流を推進いただくことを期待しております。また,国内のシンポジウム,講演会等も対面による開催が予定されており,非破壊検査に関する活発な情報交換の場が復活することが期待できます。コロナ禍の影響もあって伸び悩み傾向となっている会員数を増加に転じることができるように,様々な面から有益な学術・技術情報を提供するとともに,会員相互の交流を促進することで,新たな非破壊検査イノベーションを創出できるような場を提供できる,魅力ある協会づくりを続けることが重要であると思っております。今後も微力ながらお手伝いできればと思っております。 最後に,コロナ禍の中での各種事業の継続と財務状況の改善にご尽力いただいた皆様,コロナ禍においても常に一生懸命職責を果たしていただいた事務局職員の皆様,会長としての3 年間のあいだ皆様から頂戴いたしました格別なご厚情に対しお礼を申し上げ,会長退任のご挨拶といたします。
2021 年度放射線部門主査,ポニー工業(株) 釜田 敏光
Review on Radiographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2021
Pony Industry Co., Ltd. Toshimitsu KAMADA
キーワード:非破壊試験,自然放射線,デジタルラジオグラフィ,X線 CT,中性子イメージング
はじめに
放射線部門は,放射線を利用した非破壊試験を広く対象とし,最新技術の紹介,規格の制定,改正の動向,その内容の紹介など多くの情報を機関誌の特集及び講演会を通じて情報提供を実施している。2021 年度は,コロナ禍のため,講演会は対面では開催できずオンラインによる講演会による開催となった。
2021 年度の活動として,機関誌70 巻5 号に,「デジタルRT の規格の現状と展望」と題した特集号を刊行した。
また,最新の放射線についての情報を機関誌,部門講演会及びシンポジウムを通じて会員相互に情報収集及び情報発信を行うことを主な活動としている。これらの企画を行うために幹事会を定期的に開催して情報の収集及び企画を実施している。
2021 年度の部門活動は,機関誌の特集記事の掲載,非破壊検査総合シンポジウムでの講演は,秋季講演大会での講演,部門講演会として実施し,第13 回放射線による非破壊評価シンポジウムを開催した。これらの活動内容,技術動向の展望などを述べる。
2021 年度超音波部門主査,大阪大学 林 高弘
Review on Ultrasonic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2021
Osaka University Takahiro HAYASHI
キーワード:超音波探傷,波動伝搬,シミュレーション,ガイド波,フェーズドアレイ,レーザ超音波,非線形超音波,材料評価,センサ,AI,ICT
はじめに
超音波部門は,超音波を用いた非破壊検査・評価に関する学術的・実用的な情報交換や検査規格の整備などを担って活動している部門である。超音波を用いた非破壊検査に関する学術的な興味や計測上の難しさは多岐にわたるため,非破壊検査協会特別研究会「先進超音波計測に関する萌芽技術研究会」や音響学会「アコースティックイメージング研究会」などとも連携を取りながら活動を進めている。ここでは,2021 年度の超音波部門の活動実績を報告するとともに,機関誌ならびに各種活動で公表された論文や講演資料を中心に振り返り,2021 年度の動向をまとめ,今後の展望を述べる。
2021 年度磁粉・浸透・目視部門主査,日本電磁測器(株) 堀 充孝
Review on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing in 2021
Nihon Denji Sokki Co., Ltd. Michitaka HORI
キーワード:磁粉探傷試験,浸透探傷試験,目視試験
はじめに
磁粉・浸透・目視試験は表面探傷に関わる試験として広く活用されている。化学,発電などのプラント設備,鉄鋼・自動車・航空・鉄道などの産業分野などをはじめ,最近ではインフラストラクチャのメンテナンス等に磁粉・浸透・目視試験に関わる検査技術は重要な位置づけになっている。学術部門では,「磁粉・浸透・目視部門」,「電磁気応用部門」,「漏れ試験部門」の3 部門合同で幹事会をはじめ,研究集会,シンポジウム等の活動を行っている。これら3 部門は,表面に発生するきずを検出するという共通テーマを有しており,表面3 部門として共同で活動することが,お互いの部門の活性化にもつながっていると考えている。2021 年度(2021 年4 月1 日~ 2022 年3 月31 日)の表面3 部門が合同で行ったシンポジウム,秋季講演大会の概要を述べると共に,磁粉・浸透・目視部門の活動報告及び今後の展望について述べる。
2021 年度電磁気応用部門主査,EMF 応用計測 藤原 弘次
Review on Electromagnetic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Electromagnetic Testing in 2021
EMF Laboratory Hirotsugu FUJIWARA
キーワード:渦電流,漏洩磁束,表面きず,電磁気,材質計測
はじめに
電磁気応用部門は,磁粉・浸透・目視部門,漏れ試験部門と3部門合同で活動を行っている。この3 部門を表面3 部門と呼んでおり,共通点は主に表面きずを対象としているということである。そのため,この3 部門での合同活動による情報共有は互いの部門への活性化に極めて有効である。
この部門では電磁現象を応用した検査法の研究開発や実用化などを主体に議論している。電磁場は材料内部を減衰しながらでも浸透することから,試験体の表面だけでなく表層下や裏面側の検査へも適用が可能である。また試験体の導電率や透磁率といった電磁気特性変化に敏感に反応し,特に鋼材においては透磁率が試験体の機械的特性に大きく影響をうけることから,これを利用することで材質評価も可能である。また検査方法も非接触で,かつ人体への影響も小さく取り扱いも比較的容易である。これらの多くの特長を生かすべく,この分野では多くの研究・開発が行われている。
本報告では,従来から続けている3 部門の連携体制をもとに,2021 年度において活動してきた内容を中心に報告するとともに,電磁気応用部門が取り扱っている計測・検査技術の動向と展望について述べる。
2021 年度漏れ試験部門主査,(国研)産業技術総合研究所 計量標準総合センター 新井 健太
Review on Leak Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Leak Testing in 2021
National Metrology Institute of Japan (NMIJ)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Kenta ARAI
キーワード:漏れ試験,規格,保守,リーク試験法
はじめに
漏れ試験は,安全・安心を担保する重要な非破壊試験の一つであり,半導体・有機EL 製造装置など真空であることを活用する産業では必要不可欠な試験である。また,真空以外にも原子力産業など放射性物質を外部に漏らさない,あるいは医薬品など外部から不純物などを混入させないためにも必須の試験である。このため,漏れ試験は,真空装置から,医薬品,食品,医療機器,冷凍空調機器,船舶,自動車,航空・宇宙分野,ガスや石油等の備蓄タンク,各種化学プラントやその配管等,非常に広範囲な産業で日常的に実施されている。「漏れ」は,JIS Z 2300:2020「非破壊試験用語」において,「壁の両側の圧力差又は濃度差によって液体又は気体が通過する現象。孔,多孔質などの透過性要素が原因となる」と定義されている1)。その漏れは,物質の意図しない流失あるいは流入の原因となり,品質の低下だけではなく,環境汚染,火災・爆発等の事故の原因となりうる。漏れ試験は,生産製造から供用中まで様々な段階で漏れを検出して,品質低下や重大な事故を未然に防止するために不可欠な技術であり,我が国の工業の品質,安全,環境等を支えている重要な技術の一つである。
漏れ試験には,対象となる試験体,何を使って漏れを検出するか,その可検リーク量範囲により,様々な方法が開発されている2)。そのうち,主要な漏れ試験方法を,検出対象で分類し表1 にまとめた。
一般的に漏れの大きさはとても小さい。そのため,漏れ試験では何らかの方法で漏れを周囲から際立たせて検出する。例えば,発泡漏れ試験では漏れた気体を泡として,蛍光染料と現像剤を用いる方法では周囲からの色変化で検出する。これらの方法はおおむね10−4 Pa m3/s 以上の漏れの検出に適する。10−4 Pa m3/s よりも小さい漏れの場合,人間の五感で検出することは難しいため,漏れ試験に特化した計器であるリークディテクター(リークテスター,漏れ検知器などとも呼ばれる)を用いる。しかし,ただ単にリークディテクターがあれば漏れを正確に測定できるかと思えばそうではない。リークディテクターが正しい漏れ量を示したこと(校正),リークディテクターの正しい方法で使用すること(試験方法),リークディテクターを扱う試験者が適切な技量を持つこと(技量認定)が必要となる。さらに,これら三要素を下から支える教育,研究活動がある。本稿では,2021 年度の漏れ試験部門の活動と今後の展望について報告する。
2021 年度応力・ひずみ測定部門主査,鳥取大学 小野 勇一
Review on Stress / Strain Measurement
Chairman of Research & Technical Committee on Stress / Strain Measurement in 2021
Tottori University Yuichi ONO
キーワード:応力・ひずみ測定,ひずみゲージ試験,材料評価,強度評価,実験力学
はじめに
安全・安心な社会の実現のためには,機械・構造物が実働荷重下で破壊しないように強度設計することが重要である。強度設計では,機械・構造物の各構成要素に生ずる応力とひずみを正確に把握する必要があるため,計測とシミュレーションの両者が重要な役割を果たす。特に近年では,現実空間における機械の状態を収集し,デジタル空間に再現して,デジタル空間上で機械の安全性を予測するシミュレーション技術であるデジタルツインと呼ばれる技術が注目を集めている。このような技術の確立のためにも,稼働中の各構成要素に発生する応力・ひずみを正確に計測できる実験技術が重要となる。通常,ひずみ計測には,ひずみゲージが広く用いられているが,応力・ひずみ測定部門では,他の様々な計測手法について活発に研究が行われている。例えば,光学的計測方法であるモアレ法やデジタル画像相関法は,ひずみゲージのような点測定ではなく,全視野のひずみ計測が可能である。また,静的荷重よりも動的荷重である繰返し荷重や衝撃荷重のほうが実働荷重として一般的であるが,このような荷重下での材料の強度は静的強度とは異なることが広く知られている。例えば,材料の降伏点以下の比較的小さい応力でもそれが繰返し作用することにより疲労破壊が生じるため,繰返し荷重下では疲労限度が重要な強度の指標となる。したがって,動的荷重下での応力・ひずみ測定技術が必要とされると共に,最終的には計測された応力とひずみを用いて,材料の強度評価を行うことが重要となる。さらに,疲労強度には材料表面の残留応力が大きく関与するため,X線を用いた残留応力計測法は構成要素の疲労強度評価に有力な手法であるといえる。また,溶接や摩擦圧接に代表される接合技術により接合された材料は,接合時の入熱により,接合界面近傍が母材と異なる機械的性質を示す。したがって,引張試験等の強度試験中に接合部に発生する不均質なひずみや応力を計測して,継手の信頼性を保障することも重要となる。さらに,バイオメカニクスの分野では,金属材料や非金属材料をインプラント材料として扱うだけでなく,生体組織を扱う場合もある。生体組織に生じる応力を有限要素法などのシミュレーションにより計算するためには,弾性係数が必要となるが,生体組織の年齢等によって弾性係数が異なるため,機械材料のように単純ではない。したがって,生体組織の弾性係数を正確に求めるためにも,応力・ひずみ測定技術が必要となる。このように,応力・ひずみ計測法は安全・安心な社会の実現に必要な技術であり,2021 年度も新型コロナウイルス感染症が収束しない状況ではあったが,活発な研究活動がこれまで通り行われた。
2021 年度アコースティック・エミッション部門主査,電気通信大学 結城 宏信
Review on Acoustic Emission
Chairman of Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2021
The University of Electro-Communications Hironobu YUKI
キーワード:アコースティック・エミッション,講演会,国内コンファレンス,規格
はじめに
アコースティック・エミッション(AE)部門はAE 法の進展と普及に貢献することを目的に,日本におけるAE 法の学術研究,技術開発,標準化,技術者養成をけん引する活動を行っている。AE 法は計測対象に本質的な制限がなく種々の環境下で高周波の微弱な信号を扱うことから,部門には機械系,材料系,土木系,資源系,電気系など様々なバックグラウンドをもつ会員が集まり,2022 年3 月末現在で個人会員70 名,団体会員57 組織の登録がある。本稿では2021 年度(2021 年4 月~ 2022 年3 月)のAE 部門の活動概要を中心にAE 法の現状と今後の展望を述べる。
2021 年度赤外線サーモグラフィ部門主査,(株)サーモグラファー 山越孝太郎
Review on Infrared Thermographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Infrared Thermographic Testing in 2021
Thermographers Co., Ltd. Kotaro YAMAKOSHI
キーワード:赤外線サーモグラフィ試験,資格制度,状態監視
はじめに
2021 年度も4 月25 日に新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が再度発出され今年度もコロナの影響を受けたスタートとなった。しかしながら発生から1 年以上が経過し,With Coronaの考え方が社会に浸透し,Zoom を活用したリモート講習も普通に行われるようになっており,TT 部門では本年も引き続きリモートと対面を併用した技術講習会を開催できた。昨年度よりリモート環境が整ったため感染症による講演会や講習会の中止や延期もなくなり,会議も予定通り開催できるようになった。9 月30 日には緊急事態宣言も解除され,企業では出張禁止が解除され参加者も徐々に増加傾向にある。TT 部門では,リモートによるミニシンポジウム開催,講習会,幹事会の開催を行った。ISO 18436-7 に準拠した機械状態監視診断技術者認証の講習会は感染対策を万全に実施した上で従来通りの対面形式で開催された。ISO,JIS 規格の制定・整備への参画,技術者認証制度の構築,テキストの作成などは今年度も実施し,試験技術の開発・確立・普及を目的とした活動を継続して行っている。
2021 年度製造工程検査部門主査,愛知工業大学 塚田 敏彦
Review on In-Process Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on In-Process Inspection in 2021
Aichi Institute of Technology Toshihiko TSUKADA
キーワード:画像処理,検査,製造工程,センシング,ViEW2021,DIA2022
はじめに
2021 年度は,アフターコロナとなることなくウィズコロナの状況で過ごした1 年であった。筆者が勤務する大学の年度初めの重大行事の入学式は,中止されることなく父兄参加の制限など規模を縮小して行われた。前期の授業も従来通りの対面形式で始められ,1 年前のように,大学構内への入構制限によりすべての授業が遠隔で行われることはなかった。しかし,不要不急の出張は相変わらず制限され,研究成果を発表して新しい情報を入手する目的に加え,旧知の研究仲間と親交を深めるための学会は中止されるものは少なくなったが,ほとんどがオンラインによる遠隔での開催であった。オンラインでの会議開催のテクニックも向上し,発表や情報収集は遠隔であっても過去とは大きく変わらない効果が得られるように感じるようになってはきたが,親交の深化や新たな人的ネットワークの構築には物足りなく感じてしまうのは私だけだろうか。本稿を執筆中の現在は,3 年ぶりに対面で現地開催される学会での発表に向けた準備と,宿泊,新幹線の予約に心躍らせている。しかし,新型コロナウイルス感染に関するニュースは相変わらずウクライナの情報とともにトップで報道され,予断を許さない状況である。このような状況下で,2021 年度の活動報告と,今後の展望について記す。
製造工程検査部門は,1986 年に日本非破壊検査協会(JSNDI)の応用技術部門の一つ「005 画像処理特別研究委員会」として発足した。産業界における画像センシングや画像処理技術の発展と,その実用化を目指して活動を行っている。非破壊検査協会の中で製造工程検査部門は,広範囲にわたる最新の画像応用認識技術を当協会会員へリアルタイムにわかりやすく提供することを一つの大きな役割と位置付けて,活動を行っている。そのための活動として,各種学会・研究委員会の枠を超えた連携・協力を行い,広く画像センシング・認識に関するシンポジウムやワークショップを年に2 回共同企画して協賛している。この活動によって製造工程における非破壊検査・外観検査・目視検査に関わるセンシングと画像認識技術の情報提供を行い,研究者間交流の場を設け提供し続けている。
本稿では,部門活動の報告として2021 年度に協賛・共同企画した2 件のワークショップを中心に紹介する。そして画像技術に関する動向を概観した後に今後の展望について言及する。
2021 年度保守検査部門主査,(国研)産業技術総合研究所 津田 浩
Review on Maintenance Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on Maintenance Inspection in 2021
National Institute of Advanced Industrial Science & Technology Hiroshi TSUDA
キーワード:ドローン,X 線検査,検査ロボット,過流探傷,3次元形状計測
はじめに
保守検査部門は産業プラント,社会インフラの構造信頼性を維持・向上させる技術を部門メンバーで共有することで,信頼性と経済性を兼備した保守検査技術を探索し,それらを普及させることを活動の目的としている。技術の情報共有のため既存検査技術の現場適用に加えて,近年,さかんに研究されているロボット,IoT,および人工知能を活用した新しい検査技術を紹介する場として保守検査ミニシンポジウムを開催している。今年度も昨年に引き続きコロナ禍の影響を受けたため,オンライン形式でのミニシンポジウムを11 月に開催した。また保守検査に関する解説記事を集めた特集号を例年,機関誌10 月号に企画している。今年度は社会・輸送インフラの保守検査技術に関する5 件の解説記事を寄稿頂き,特集号を出版した。
表面形状を高精度に計測する技術を非破壊検査へ適用するため,「光3 次元形状計測技術による非接触非破壊検査の標準化に関する研究委員会」を保守検査部門傘下の研究委員会として2018年に設立した。光3 次元形状計測技術はこれまで人体や部品の立体形状を測定する手段として発展してきた。同委員会はこの技術を構造物の保守検査に展開するために必要な技術の標準化を整備することを目的として活動している。設立から4 年目となる今年はこれまでに収集してきた光3 次元形状計測技術を取りまとめ,今後の標準化整備の方向性について議論した。その結果,光3 次元形状計測技術に関するNDIS 制定に向けた活動へと移行すべく,同研究委員会を発展的に解消することで合意し,NDIS 原案作成準備WG を設置して,標準化活動を継続することになった。
2021 年度鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門主査,東京理科大学 今本 啓一
Review on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete Structures
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete in 2021
Tokyo University of Science Keiichi IMAMOTO
キーワード:活動報告,鉄筋コンクリート構造物,非破壊・微破壊試験,研究委員会,標準化,講習会
はじめに
鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(以下,RC 部門)では,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,オンライン併用等により学術委員会,標準化委員会,教育委員会,編集委員会と関連し,各種研究委員会,各種NDIS 制定・改定・準備WG が活動を行った。
2021 年度新素材に関する非破壊試験部門主査,東京工業大学 水谷 義弘
Review on Non-Destructive Evaluation of New Materials
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Evaluation of New Materials in 2021
Tokyo Institute of Technology Yoshihiro MIZUTANI
キーワード:新素材,非破壊計測
はじめに
新素材に関する非破壊試験部門では,新素材の非破壊評価に関する研究,調査及び普及を目的とした活動を行っている。様々な非破壊試験技術及び非破壊評価技術の応用を横断的に調査・議論していることに本部門の特徴がある。例えば,複合材料の試験技術,材料の劣化評価に関連した計測技術,高温環境における計測技術,3D プリント材料などを切り口として,他の団体や研究会との連携を積極的に行いながら調査・研究を行っている。2021年度は,6月に非破壊検査総合シンポジウムのOS として,保守管理部門,AE 部門と合同で「複合材料構造物の非破壊検査技術」を企画していたが,新型コロナウイルスの蔓延を防ぐためにオンライン形式での開催となったのをうけ,合同OS は中止とすることにした。合同OS は対面でのシンポジウム開催が可能となった時点で改めて検討をすることにした。一方,例年3 月に実施している安全・安心な社会を築く先進材料・非破壊計測技術シンポジウムについては,2020 年度に引き続き学生セッションのみとし,ミニシンポジウムとしてオンラインで開催した。
2021 年度標準化委員会委員長,ポニー工業(株) 釜田 敏光
Report of Standardization Committee
Chairman of Standardization Committee in 2021
Pony Industry Co., Ltd. Toshimitsu KAMADA
キーワード:非破壊試験,非破壊検査,規格,NDIS,JIS,ISO
はじめに
日本非破壊検査協会(JSNDI)では,標準化委員会とISO 委員会が協力し,また,経済産業省や日本規格協会等の関連学・協会との緊密な連携の下,日本国内外の非破壊試験に関する検査技術の標準化を図るとともにその普及を推進している。
本報告では,標準化委員会の2021 年度の活動として,日本産業規格(JIS)及び日本非破壊検査協会規格(NDIS)の原案作成や改正に関わる動向及び関連の事業について説明する。なお,ISO の動向に関しては,別途ISO 委員会活動報告がなされている。
2021 年度ISO 委員会委員長,(一社)日本非破壊検査協会 大岡 紀一
Report of ISO Committee
Chairman of ISO Committee in 2021
The Japanese Society for Non-Destructive Inspection Norikazu OOKA
キーワード:ISO/TC 135,CEN/TC 138,ISO/TC 135/SC 7,ISO 9712,資格及び認証,ISO 規格
はじめに
ISO 委員会は,ISO/TC 135(非破壊試験)に関する日本の国内審議団体として,国際標準化機構(ISO)規格に関する規格開発,定期見直しなどの事項を検討,審議及び投票のための集約,さらには,ISO/TC 44(溶接),ISO/TC 17(鋼)などの国内審議団体と連携をとり,前年度に引き続き,関連するISO 規格の対応における情報交換などを中心に活動を実施した。
ISO/TC 135 総会及び各SC 会議が世界非破壊試験会議(WCNDT)に併設して,2020 年6 月12 日から15 日までの4 日間,韓国(ソウル)で開催される予定であったが,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)が世界的規模で感染拡大していることに配慮し,韓国非破壊試験学会(KSNT)及び国際非破壊試験委員会(ICNDT)で審議され,2022 年2 月28 日~ 3 月4 日に延期されたことも考慮し,ISO 会議も延期された。
そのため,ISO/TC 135 幹事国では,開催時期について,大岡紀一国際議長と大岡昌平国際幹事がISO 中央事務局のテクニカルプロジェクトマネージャ(TPM)と連絡を取り,ISO 中央事務局のISO 活動に対する意向も踏まえ,2022 年に延期されたWCNDTに併設してISO/TC 135 総会及び各SC 会議の対面開催を中止した。対面開催は中止し,オンライン会議を開催する方向で計画し,2021 年10 月にISO/TC 135 及び各SC 会議をオンライン開催した。各国との時差に関する調整を行い,ISO/TC 135 総会及びSC 7 は,日本時間の21 時から,各SC に関しては,17 時からSC 2,3,5,6,8 及び9,20 時からSC 4 を開催した。ISO/TC 135 総会では,ISO/TC 135 幹事国として大岡紀一国際議長及び大岡昌平国際幹事が出席し,緒方隆昌国内ISO 委員会委員が日本代表として参加した。特に,ISO/TC 135/SC 7 では,TG コンビーナを中心に検討が進められ,会議開催2ヵ月後の2021 年12 月にISO 9712 の改正版が発行された。
一方,幹事国業務として各SC 及びWG の活動状況を注視するとともに,適宜,進め方などにおいて,指導,アドバイスなどを実施してきた。
なお,韓国にて開催の世界非破壊試験会議(WCNDT)は,COVID-19 の状況が終息する気配がないため,さらなる延期で2024 年5 月27 日から29 日に大幅な変更となった。
国内におけるISO 委員会については,第1 回本委員会を2022 年3 月3 日に開催し,分科会については,第1 回分科会を2021 年12 月6 日に開催した。非破壊試験・検査における種々の関連情報を共有する目的で,各団体会員に出席して頂き,第1 回ISO 委員会の本委員会にて,情報交換を実施した。
また,ISO/TC 135 総会及び各SC 会議の開催に先立って,国内審議団体のISO 委員会として,SC 7 及びISO/TC 135 総会に関しては,会議当日の直前に,2 時間程度の討議内容などの確認及び検討を行った。その他の各SC グループについては,ISO/TC 135総会及び各SC における対応の検討を依頼し,次の日程で日本提案の有無,各種規格へのコメント対応など,事前打合せを行った。
・ISO 委員会SC 2 グループ 2021 年10 月5 日10:00 ~ 12:00
・ISO 委員会SC 3 グループ 2021 年9 月28 日14:00 ~ 16:00
・ISO 委員会SC 4 グループ 2021 年9 月30 日09:00 ~ 11:00
・ISO 委員会SC 5 グループ 2021 年9 月21 日16:00 ~ 17:00
・ISO 委員会SC 6 グループ 2021 年9 月27 日10:00 ~ 12:00
・ISO 委員会SC 8 グループ 2021 年9 月29 日13:30 ~ 15:30
・ISO 委員会SC 9 グループ 2021 年9 月29 日10:00 ~ 12:00
なお,ISO/TC 135 会議への日本からの出席については,原則,各SC からVoting 及びNon-Voting Member の2 名とした。
2021 年度国際学術委員会委員長,川崎重工業(株) 緒方 隆昌
Report of International Committee
Chairman of International Committee in 2021
Kawasaki Heavy Industries, Ltd. Takamasa OGATA
キーワード:非破壊検査,ICNDT,WCNDT,APFNDT,ASNT,BINDT,KSNT,TWI,RCNDE,日米非破壊試験シンポジウム,NDE 4.0,国際会議
はじめに
新型コロナウイルス感染症(以下,「新型コロナ」)が世界的に流行して2 年以上が経過したが,未だに収束する気配はない。世界は,感染対策を行う一方で,新型コロナ禍においても社会活動が阻害されない新型コロナとの共存の方法とポスト新型コロナ禍での新しい展開を模索している。新型コロナは,世の中に多大なる損失を与えた一方で,従来の常識を覆すパラダイムシフトの原動力となった。様々な分野でのグローバライゼーション,サプライチェーンなどの見直しと,働き方,情報交換,交流などインタラクションの見直しが急速に進んでいる。中でも,各国政府は,新型コロナで低迷した経済産業を支えるため,国民合意を得やすいデジタル関連と環境関連に対して巨額の資金を投じたため,これらの分野におけるここ2 年間の発展の加速は極めて顕著である。
各国の非破壊試験協会における国際学術活動においても,昨年は,国際会議・講演会が軒並み中止,延期されていたものが,遠隔地でも多くの人が参加可能なメリットを考慮したオンライン形式やオンラインと対面交流の良さを併用したハイブリッド開催方式に変わるなど,それぞれの方式のメリットも取り入れた形で進化してきている。
当協会は,今後のさらなる発展に向けたビジョンとして,“JSNDIミッションステートメント”及び“JSNDI バリュー”を定め,これらを実現する具体的な施策として“JSNDI アクション”を定めている。この中で,国際学術に深くかかわるのは,「学術・産業分野の拡大と融合」及び「有効なグローバル展開の強化」が挙げられる。具体的には,他分野との境界・融合領域へ取り組みを広げることや,世界の先端的研究機関・協会などとの相互交流,情報交換等を促進して,グローバルネットワークの強化を図り,グローバル社会における我が国の本分野のポテンシャル向上を目指している。他分野との境界・融合領域については,これまでの機械の状態監視分野,土木・建築分野などに加えて,非破壊試験分野におけるインダストリー4.0 を扱うNDE 4.0 への対応が始まっている。
国際学術委員会は,これらJSNDI アクションを実行し,国外の非破壊試験方法に関する,より広範な学術情報の収集,交換及び相互交流を図る活動を行っている。また,国際非破壊試験委員会(International Committee for Non-Destructive Testing;ICNDT)及びアジア・太平洋非破壊試験連盟(Asia-Pacific Federation for Non-Destructive Testing;APFNDT)の活動をはじめとする国際的活動は,学術のみに留まらず,認証,教育,標準化などが相互に密接に関連していることから,運営委員会の下に国際対応WGを設け総合的な判断を行っている。本稿では,本号における掲載区分の関係上,国際学術委員会活動以外も含むこれら国際活動全般を対象に記載した。
2021 年度教育委員会委員長,三菱重工パワー検査(株) 八木 尚人
Report of Education Committee
Chairman of Education Committee in 2021
Mitsubishi Heavy Industries Power Inspection Technologies, Ltd. Naoto YAGI
キーワード:訓練,講習会,JIS Z 2305:2013,ISO 9712:2012
はじめに
教育委員会(以下,「当委員会」という)は,非破壊検査に従事する技術者の技量向上を目的として各種教育・訓練の計画と実施並びに関係書籍の編集などを行っている。
また,JIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」の改正に伴う訓練カリキュラムの見直し等の対応をこれまでに推進してきており,今後,国際相互承認を視野に入れた訓練組織としてのさらなる体制整備を進めていきたいと考えている。ここでは,2021 年度の当委員会の主な活動実績を報告する。
2021 年度認証運営委員会委員長,和歌山大学 村田 頼信
Report of Certification Steering Committee
Chairman of Certification Steering Committee in 2021
Wakayama University Yorinobu MURATA
キーワード:非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,NDIS 0602,NDIS 0603,ISO 18436-7,NAS 410
はじめに
日本非破壊検査協会の認証事業の中心となっているのは,JISZ 2305 に基づく非破壊試験技術者の認証である。2003 年にJIS Z2305 に基づく認証が開始されてから18 年が経過し,この認証資格が十分に社会に認識されたことに伴って,認証制度の運用責任も年々重みを増している。この間,特に2013 年のJIS Z 2305 改正に伴う旧制度から新制度への移行は大きな課題であったが,2017年春期から新制度による再認証試験を開始してからは定常的な運用に至っている。また,2019 年春期からは赤外線サーモグラフィ試験(TT)及び漏れ試験(LT)をNDIS からJIS Z 2305 に移行し,現在では8 つのNDT 方法について認証を実施している。一方,2020 年度当初から新型コロナウイルス感染症が日本全国で蔓延し,緊急事態宣言がたびたび発出される事態に至っている。認証事業部では,2021 年度も新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に配慮しながら,円滑な資格試験を継続的に実施すべく様々な対応を講じた。
当協会では,次のそれぞれの規格に基づく技術者認証を実施している。
JIS Z 2305 「 非破壊試験技術者の資格及び認証」
NDIS 0602 「 非破壊検査総合管理技術者の認証」
NDIS 0603 「 超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証」
ISO 18436-7 「 Condition monitoring and diagnostics of machines – Requirements for qualification and assessment of personnel – Part 7: Thermography」
また,NAS 410 資格試験機関として,NAS 410「Certification and Qualification of Non-Destructive Test Personnel」に基づく試験を実施している。
これらのうちJIS Z 2305 に基づく認証は「認証運営委員会」で実施している。また,NDIS 0602 に基づく認証は「非破壊検査総合管理技術者認証委員会」,NDIS 0603 に基づく認証は「PD 認証運営委員会」,ISO 18436-7 に基づく認証は「CM 技術者認証運営委員会」でそれぞれ実施している。さらに,「国際認証委員会」の協力の下で,諸外国との相互認証を実施している。
なお,2021 年度の認証運営委員会の委員構成(50 音順)は次のとおりである。
村田頼信 委員長,認証担当理事,航空宇宙非破壊試験技術
者認証運営委員長
井上裕嗣 認証担当理事,試験委員長,CM 技術者認証運営委員長
大岡紀一 委員
谷口良一 問題管理委員長
鶴田孝義 倫理苦情処理委員長
藤岡和俊 委員
藤原弘次 認証広報委員長
古川 敬 委員
三原 毅 査定委員長
望月正人 試験基準委員長, PD 認証運営委員長
吉田和行 認証事業部長
本稿では,JIS Z 2305 に基づく認証を中心に,関連する認証及びその他の認証関連事項について報告する。
2021 年度出版委員会委員長,新日本非破壊検査(株) 脇部 康彦
Report of Publication Committee
Chairman of Publication Committee in 2021
Shin-Nippon Nondestructive Inspection Co., Ltd. Yasuhiko WAKIBE
キーワード:出版,テキスト,問題集,参考書,規格
はじめに
出版委員会は,非破壊検査技術の教育・普及に関する出版物の企画,編集,制作及び頒布を行うことによって,非破壊検査技術水準の向上を図ることを目的として設置された委員会であり,その活動は教育委員会の活動と密接に関係している。そのため,その構成員は,各部門の関係者とともに教育委員会からの派遣委員,理事等で構成されている。
2021 年度試験片委員会委員長,ポニー工業(株) 猿渡 保
Report of Reference Block Committee
Chairman of Reference Block Committee in 2021
Pony Industry Co., Ltd. Tamotsu ENDO
キーワード:標準試験片,対比試験片,分類用ゲージ,品質,継続
はじめに
当協会では,非破壊検査技術の普及及び向上の活動の一環として,非破壊試験実施に必要な標準試験片及び対比試験片(以下「試験片類」と言う)に加えゲージを頒布している。非破壊試験において試験片類は,試験装置の点検・調整,性能確認,試験結果の定量化,試験方法の標準化,試験結果への影響因子の評価など重要な業務に使用されている。
2021 年度の試験片類及びゲージの年間頒布数及び金額は,主要製品である超音波探傷試験用試験片類の頒布数が413 体,磁粉探傷試験用試験片の頒布数が1776 枚であった。また,総販売額は約67,461 千円と2020 年度に続き新型コロナウイルスによる影響を受けたが,2020 年度に比べ主要試験片類数量で約9.9%,総販売額で約4.6%と僅かではあるが,増加した。アフターコロナも見えつつある来期は一層の増加を期待するところである。
2021 年度広報活動委員会 委員長代理,非破壊検査(株) 大根田浩之
Report of Public Relations Committee
Acting Chairman of Public Relations Committee in 2021
Non-Destructive Inspection Co., Ltd. Hiroyuki OHNEDA
キーワード:広報,ホームページ,セミナー,展示会,ノンディ
はじめに
広報活動委員会では,関連委員会との連携の元,当協会や非破壊検査の知名度向上を目的とした各種広報活動や会員に向けた情報発信サービスなどを行っている。当委員会の2021 年度の主な取り組み事項を以下に示す。
・展示会への参加と出展内容の検討
・取材協力等の各種メディア対応
・会員サービス向上のためのホームページ改善
・ニュースレターの発信,記者発表の積極実施
・若年層に向けた広報活動
・非破壊検査及び認証資格者の知名度の向上
2021 年度は計3 回の広報活動委員会を開催した。(第1 回目:2021 年9 月6 日(月),第2 回目:2021 年12 月6 日(月),第3 回目:2022 年3 月10 日(木))昨年度と同様,コロナ禍のために委員会はすべてWeb により開催した。以下に,2021 年度の主な活動実績等について報告する。