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機関誌

2025年1月号バックナンバー

2025年11月5日更新

巻頭言①

「新年のご挨拶」

井原 郁夫

2025年の年頭にあたり,謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

昨年,能登半島地方では地震と豪雨による大きな災害に見舞われました。被災地の方々に心よりお見舞いを申し上げますとともに,一日も早い復興と,皆様の平穏な生活が戻ることをお祈りいたします。

昨年は国内外で様々な重大な出来事がありました。先の見えない地域紛争や地球規模の気候変動は常態化しており,世界情勢は混迷を深めています。加えて,少子高齢化問題の顕在化や自然災害の激甚化などの影響により,我国の社会情勢も不安定さを増しているように感じられます。その一方で,スポーツ界では大谷翔平選手の大活躍という明るいニュースに沸き立ち,同選手の数々の偉業達成を目の当たりにし,深い感動と喜びを共有できた年でもありました。本年が,我国のみならず世界中の人々にとって希望に満ちた,より良い年となりますよう切に願うばかりです。

昨年の当協会の活動を振り返り,その一端を紹介しつつ,年頭の所感を述べさせて頂きます。

当協会では,JSNDI ビジョンを見据え,自己発展と社会貢献に向けた活動を展開しました。これまで同様に「JSNDI アクション」に関連した活動を実践することで当協会の活性化とプレゼンス向上に努め,ステークホルダーに向けた従来の五つのバリューに加え,“グローバル”に活躍する協会を目指して協会を運営いたしました。各所掌理事との連携のもと財務状況に注視しながら各事業を大過なく継続的に実施できたことは,ひとえに皆様のご支援,ご協力の賜物であり,改めて深く感謝を申し上げる次第です。

当協会活動の柱の一つである認証事業に関しては,JIS Z 2305 改正への対応のほか,クレジットシステムやCBT(Computer Based Testing)導入への対応など,ステークホルダーの利便性向上をはかるための各種デジタル化を現在も推進しています。また,米国非破壊試験協会(ASNT)との相互承認に関してレベル3 を含む相互承認プログラムを取り纏め,昨年11 月1 日に運用を開始しました。ご関係の皆様には,このASNT9712 資格とJIS Z 2305 資格の相互認証を積極的にご活用いただければと思います。教育事業でも,JIS Z 2305 改正への対応に基づきシバラス対応WG を再開し検討,準備を開始いたしました。

学術関連では,近年多発する激甚災害への対応として,防災・減災へのNDT/NDE の適用に関する検討を開始しました。これまで産業界への貢献が主体であった非破壊検査を,地域社会の防災・減災のために適用することは,技術的にも容易ではありません。しかし,そのような喫緊の社会ニーズへの対応に着手することで,非破壊検査の新たなシーズの創成に繋がるという波及効果が期待されます。また,フレキシブルで機能的な学術活動を推進するために,学術組織の再編についても検討を開始しました。これにより,時代のニーズに即した新たなNDT/NDE シーズを生み出すとともに,非破壊検査の新たな価値の創成が期待されます。さらに,研究人材育成の一環として,日本非破壊検査協会川嶋賞を創設しました。これは,非破壊検査・材料評価分野において独創的な学術研究を自発的にスタートさせ,自立的に遂行している研究者を表彰するものです。自薦,他薦は問いませんので,ぜひ,積極的にご応募いただければと思います。

国際活動に関しては,昨年度も米国非破壊試験協会(ASNT)をはじめとする各国のNDT 関連団体との交流を深め,世界非破壊試験委員会(ICNDT)やアジア・太平洋非破壊試験連盟(APFNDT)での活動を継続するとともに,ISO/TC 135(非破壊試験)およびSC 6(漏れ試験)の幹事国としての責務を果たしました。他機関との連携活動に関しては,国際原子力機関(IAEA)との実務協定(Practical Agreements)に基づいて双方の連携を深化させるべく諸活動に取り組んでいます。また,昨年5 月末に韓国のインチョンで開催された第20 回非破壊試験に関する国際会議(WCNDT2024)では,当協会は主催者(韓国非破壊試験協会)のサポート役として大きな役割を果たしました。これにより両者の友好関係をより強固なものにすることができたように思います。なお,当協会は,本年9 月に神戸で開催される先端赤外線技術と応用に関する国際ワークショップ(AITA 2025)および11 月に名古屋で開催される国際先端AE 学会(IIIAE)に主催者として参画しています。ご関係の皆様にはこれらのイベントへのご参加をご検討いただければと思います。

人や組織が連携し,互いに学び,共に前進することでNDT/NDE の新たな価値が創り出され,ひいては非破壊検査業界の発展に繋がると考えています。これを踏まえ,昨年4 月にはSPRINT Roboticsとの共催でSPRINT Robotics Asset Integrity Management Seminar を開催し,「ロボティクス」×「非破壊検査」という新たな切り口での討論と情報交換がなされました。また,昨年10 月には,日本機械学会との協力連携協定を締結しました。これは,機械・インフラの保守・保全をはじめとする学術と技術の向上を相互連携により目指すもので,これにより双方の人材と技術の交流によるシナジー効果が大いに期待されます。当協会の強みを活かすべく,日本機械学会との積極的な連携活動を企画,推進していただければ大変有難いと考えています。このように,他学会や他機関との連携を推進し,異分野の人材が交わることで,非破壊検査の新たな価値が生み出され,より大きな社会貢献を果たすことができると確信しております。本年もこれまで同様,皆様のご理解とご協力を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。

最後になりましたが,本年の皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。

 

巻頭言②

「日本非破壊検査協会 支部紹介」特集号刊行にあたって

西野 秀郎

明けましておめでとうございます。2025 年お正月の特集は支部紹介です。現在日本非破壊検査協会には5 つの支部がございます。地理的な位置は名称を見れば一目瞭然と思われます。設立年と共に設立順に記載しますと,関西支部(1956 年),中部支部(1964 年),東北非破壊検査研究会(1985 年)−東北支部(2005 年),九州地方非破壊検査研究会(1973 年)− 九州支部(2005 年),四国地方非破壊検査研究会(1960 年)− 四国支部(2021 年)となります。規模の大きな関西支部や中部支部は,日本非破壊検査協会の設立年の1952 年に比して早々に支部組織を立ち上げるなど技術者の熱意と我が国に必要とされる非破壊検査技術の熱き黎明期を感じさせます。一方で,東北支部,九州支部と四国支部は,有志と思われる草の根の研究会組織を前身としており,熱心な会員に支えられ発展してきたであろうことが容易に想像されます。いずれの場合も,技術者の切磋琢磨や我が国に必要とされる非破壊検査技術に熱心に携わる各会員の黎明期の姿が目に浮かぶようです。設立期より2012 年までの各支部の活動内容は,機関誌62 巻1 号(2013)創立60 周年記念号II に詳しく記載されており,詳細を確認いただければと思います(四国地区がそこにないのは一点残念ではあります)。

さて本号では,上記を受けて2013 年以降の支部(前身を含む)とその活動を記載いただいたものです。それぞれの支部が種々工夫を凝らしてさまざまな活動を行っており,それらが誌面にたくさん踊っております。これらの内容が会員の皆様の日々の業務に有益な情報として資することができれば幸いに思います。またそれだけにとどまらず,各支部間の相互に有益な情報交換を礎とした日本非破壊検査協会全体の発展に資することを強く期待したいと思います。

各支部はそれぞれに個性を持ち,一概には言えないものの,(1)会員間の親睦,(2)会員の非破壊検査技術の向上,(3)学術活動,(4)講習会,(5)その他いろいろ,の一部あるいは全部を実施しているものと思います。これらは是非とも各支部の中で地域性も活かしながら発展させていただくことが重要であろうと思います。地域に根差し会員が支部を身近に感じながらの活動は,安心感や信頼感を伴い熟成が高速,かつ質の高い発展に直結するものと確信します。一方で,距離の離れた各支部間の意思疎通には文明の利器たる遠隔会議が威力を発揮します。これらを適切に用いることで,地域と全国の双方向での日本非破壊検査協会の活動が最適化されることを望みたく思います。

私はここ数年の四国支部の設立に関わりました。小さな支部かつ新参者の無知のため,他の4支部や本部の皆様の助けなしには進まぬことばかりでありました(今でもそう)。関西支部,中部支部,東北支部,九州支部は,たくましく活動されております(本文から読み取れるかと思われます)。四国支部にとっては追うべき背中です。なんとか小さな支部を軌道に乗せ,一人前になる道筋くらいはつけられるようにしたく思います。自らへの激励ですみません。いやいや,その先には小さな支部だけを見て非破壊検査の業の全体を見逃すことのないようにしたく思います。

皆様には,有効に支部をご活用いただきたく存じます。

 

資料

日本非破壊検査協会 支部紹介

東北支部

東北支部 支部長,仙台検査(株) 伊藤  剛

Introduction of Tohoku Branch
Chairman of Tohoku Branch, SENDAI INSPECTION CO., LTD Tsuyoshi ITO

キーワード: 試験対策講習会,見学会,イブニングサロン,支部会,講演会,自習用超音波探傷機

 

1.  研究会および支部発足の経緯
 東北支部の前身である東北非破壊検査研究会は,非破壊検査技術者の技術の向上と情報交換の場を提供することを目的に,1985 年に発足した。

創始者である島田教授の退官に伴い,大学研究室を引き継いだ小幡教授,伊達教授に研究会も引き継がれ,仙台近辺に在住の協会会員10 名の幹事協力のもと積極的に活動を開始し,1992 年に102 名の参加者と,第1 回研究発表会を開催した。しかしながら小幡教授,伊達教授ともに急逝され,その都度,研究会存続の危機にさらされたが,関係者の熱意をもって,研究室技官の自宅に,一時,事務局機能を移動するなどして乗り切ることができた。

その後,2003 年頃から全国的に起こった支部化の流れに端を発し,2005 年,東北支部設立を迎え,現在に至っている。

 

中部支部

中部支部 支部長,愛知製鋼(株) 澤  清和

Introduction of Chubu Branch
Chairman of Chubu Branch, Aichi Steel Corporation Kiyokazu SAWA

キーワード: 都心部開設,実技訓練場,少人数講習会

 

1.  設立の経緯,背景
 中部地区の特に中小企業における新しい非破壊検査技術の普及と指揮を効果的に行うため,愛知県工業指導所と名古屋市工業研究所の協議によって,1964 年に日本非破壊検査協会の支部を名古屋市工業研究所に置いた。事業目的が示すよう,研究・教育を行い地元の企業の相談窓口として広く活動を続けてきた。活動が活発になったこともあり,手狭になった事務所を,2013 年に現在の地に移転した。これにより利便性が向上し,自前で講習会会場の保有ができるようになった。併せて,支部規則の改正が行われ,会員の地区区分を東海・北陸に限ったものを,新潟県および他地域から希望者の受け入れを行い,さらなる活性化を図ってきた。現在では300 名を超える方が登録を行っており,非破壊検査協会内でも大きな支部としての位置づけを確立してきた。

 

関西支部

関西支部 支部長,ポニー工業(株) 横野 泰和

Introduction of Kansai Branch
Chairman of Kansai Branch, Pony Industry Co.,Ltd Yoshikazu YOKONO

キーワード: 非破壊試験,研究発表会,技術サロン,イブニングサロン,見学会

 

1.  設立の経緯,背景
 現在の(一社)日本非破壊検査協会(JSNDI)は,1952 年10 月に「非破壊検査法研究会」として発足し,1955 年11 月に当時の文部省の認可の(社)日本非破壊検査協会として創設された。これに対して(社)日本非破壊検査協会関西支部は,その翌年の1956 年に設立された。その沿革については,前報1)及び2016 年の支部創立60 周年記念の研究発表会講演概要集に記載されているが,発足当時からの10 年間に関しては資料がほとんど残っていない。

その後1966 年に仙田富男先生(当時,大阪大学工学部教授)が第4 代の支部長に就任されてから,研究発表会に加えて講習会の開催など学術と教育の両面で活動が非常に活発に行われた。この仙田支部長在任中の22 年間に,現在のJSNDI 関西支部の礎が築かれたといっても過言ではない。

なお,本部に当たる(社)日本非破壊検査協会が一般社団法人として登録された2012 年に,それまで本部からは独立した存在であった当時の(社)日本非破壊検査協会関西支部は,(一社)日本非破壊検査協会の下部組織である「関西支部」として組み込まれ現在に至っている。この手続きとして,2012年3 月22 日(木)に「2011 年度臨時総会」を開催して,これまでの支部規則も大幅に変更して生まれ変わった。

新体制では,これまでの支部の総会は廃止され,本部選出の代議員から選出された幹事による運営で,幹事会が推薦した支部長候補を本部理事会が選任することとなった2)。

 

四国支部

四国支部 支部長,徳島大学 西野 秀郎

Introduction of Shikoku Branch
Chairman of Shikoku Branch, Tokushima University Hideo NISHINO

キーワード: イブニングサロン,実技訓練,若手啓蒙,四国地方非破壊検査研究会

 

1.  設立の経緯,背景
 四国支部は2021 年4 月に設立したでき立ての新しい支部です。一方でその前身である四国地方非破壊検査研究会(以後四国研究会と称す)は1960 年6 月に設立されております。「四国における非破壊検査の技術水準の向上と普及を図るとともに会員相互の親睦と地方産業の発展に寄与することを目的として,徳島大学工学部を中心として設立された。」と,設立時の資料に発足 の経緯として記されております。私は支部設立3 年前の2017 年より,四国支部の立上げを目指して携わるようになりました。

四国支部設立時には,四国四県がそれぞれ独自に非破壊検査に関する活動を行っている状況でした。それら各県の文化はありがたく,大事なものです。それらを活かし統合することが四国支部運営の柱となっています。四国支部のホームページでは各県の非破壊検査に関する活動を紹介することを柱に据えています。各県でのイベントは,それぞれに留まらず四県にも有益です。紹介する意義は大いにあると考えております。今では,東北支部や中部支部のイベントの紹介も相互に行えるように強化しています。

主体的な実施事項としては,遠隔配信を用いた話題提供としてのイブニングサロン(東北支部から友好的に拝借)や,講習会,若手啓発活動などを行っています。

 

九州支部

九州支部 支部長,福岡工業大学 村山 理一

Introduction of Kyusyu Branch
Chairman of Kyusyu Branch, Fukuoka Institute of Technology Riichi MURAYAMA

キーワード: 研究発表会,技術サロン,イブニングサロン,UT スキルアップ講座,北九州市

 

1.  設立の経緯,背景
 九州地方においても,1950 年代中頃から鉄鋼,造船,化学プラント等の重工業が発展し,これらを背景に1973 年,現九州支部の前身である九州地方非破壊検査研究会が設立された。研究会では,研究発表会,講演会,見学会を実施して来ており,九州支部発足後もこれらの活動をさらに充実させ,現在に至っている。支部の活動目的は,「地域における非破壊検査法の調査および非破壊検査に関する研究を行い,技術水準の向上,普及と会員相互の親睦を図り,もって学術文化の発展に寄与する」ことである。これまで地域経済を牽引してきた重工業をベースではあるが,九州に生産シフトした自動車関連会社,環境ビジネス,熊本県を起点に九州全域に広がりつつある半導体産業もあり九州支部への期待はますます高まってきている。JSNDI と緊密な連絡を保ち,NDT 講習会は九州機械工業振興会との連携,さらに日本非破壊検査工業会西日本支部との交流を深めながら,地域産業の発展に貢献していきたいと考えている。

 

連載

非破壊検査学の始まりとその展開(その2)

副会長・学術委員長 塚田 和彦

The Beginning and Development of Academic Research on Non-destructive Testing(Part 2)
Vice President, Chairman of Academic Affairs Committee Kazuhiko TSUKADA

キーワード: 非破壊検査学,大学,研究機関

 

3.敗戦と研究者・技術者
 敗戦によって陸海軍が解体されるとともに,GHQ の指令によって,航空機の運航・製造とそれに関連するいかなる研究も禁止となった。内閣の所管となっていた中央航空研究所も廃庁となり,1946 年1 月には,文部省管下の大学や専門学校の航空学科も全て廃止となった。加えて,軍事に直結するとして,原子力研究やレーダーなどの通信に関する研究も禁止となり,その影響は理化学研究所にも及ぶことになる。

ここでは,軍民転換を迫られた学科や研究機関がどのようにして存続を図ったか,また,失職を余儀なくされた大量の研究者や技術者がどのように転身していったか,非破壊検査に関連する研究機関や産業分野に限って述べることとする。

 

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