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機関誌

2025年8月号バックナンバー

2025年11月19日更新

巻頭言

「2025 年度会長就任にあたって」
−Smart and Sustainable NDT through strategic Synergy−

落合  誠

この度,2025 年度の(一社)日本非破壊検査協会の会長を拝命いたしました。

身に余る重責ではございますが,会員をはじめとするステークホルダの皆様の期待に応え,組織を健全に発展させていくべく,全力を尽くしてまいります。皆様のこれまでのご支援に心より感謝申し上げますとともに,引き続き変わらぬご協力をよろしくお願いいたします。

さて,私と当協会との関係は30 年近く前に始まります。当時,協会内に設置されていた最新技術の研究会に参加させていただいたのがきっかけで会員となりました。以降,世界も,社会も,組織も,人も,変化をしてまいりました。ただ,変わらぬものもあるように思います。それは,非破壊検査は技術に立脚していること。我々は,技術に対して興味と好奇心を持ち,その有用な社会実装を目指していること。そして,それによって高い品質を保証し,安心と安全を確保することで,持続可能な世界の実現に貢献していきたいという気持ちを持ち続けていること,ではないでしょうか。

一方,社会は複雑化し,一つの技術が一つの社会課題を解決するということが難しくなっています。デジタル化によって物理的な距離の制約は多く解消されたものの,激動する世界の動きはおろか「隣人が何をしているのかすら知らない」という状況にもなっています。このような時代に,我々が変わらぬ価値を追求していくためには,やはり,多様性を重んじ,異分野,異業種,異国間の連携と協創を活性化することが必須であると感じます。

このような背景から,この新たな責務を担うにあたり,私は
Smart and Sustainable NDT through strategic Synergy(三つのS)
を基本方針として,当協会の発展と,技術/事業両面での非破壊検査のさらなる成長を目指したいと思っています。

Smart とは,社会から非破壊検査に寄せられる期待を超えていく,ということです。先端技術に飽くなき探求心を持ち続け,新しい技術の社会実装を実現し,それによって,持続可能な社会の構築に寄与していきます。協会の活動においても,学術組織を見直し,最新技術の導入やAI・デジタルを活用した検査プロセスの高度化を促進します。国内外の技術の標準化を推進するなど,技術立国・日本として誇れる検査技術を実現し,世界に発信してまいりたいと思います。

Sustainable とは,社会から非破壊検査に寄せられる信頼に応えていく,ということです。我々はすでに,社会・産業の一翼を担う重要な技術活動を展開しています。その事実に誇りを持つとともに,非破壊検査が果たす役割をより明確にし,社会とのつながりを強化していきます。また,それを担う検査技術者の教育プログラムの拡充,認証制度の高度化を実現していくとともに,支部活動を一層充実させていくことで,きめ細やかにニーズに対応していきたいと考えています。

さらに,充実した協会活動を継続していくためには,財務をはじめとする運営の健全化が不可欠です。業務のデジタル化・省人化など,皆様の利便性向上と協会運営の効率化を図りつつ,各価格の見直し等も適切に行って,長期的に安定した財務状況を実現していきます。

そしてこれらは,協会内部の活動だけで達成できるものではありません。関連組織の皆様や産学官の連携はもちろん,国内外の他学協会や団体との目的志向,成果志向の戦略的な連携,すなわちstrategic Synergyを通じて,これらを実現してまいりたいと思います。

本年度,日本非破壊検査協会はさらなる飛躍を目指します。会員や関係者の皆様が,より高い価値を実感できるよう積極的な取り組みを推進し,業界の発展に寄与してまいります。皆様とともに,非破壊検査技術と事業のさらなる発展を目指して歩んでいけましたら幸いに思います。

以上,就任のご挨拶と活動方針のご紹介とさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

「会長退任に寄せて」−3年間の振り返りと今後への期待−

井原 郁夫

会長を退任するにあたりご挨拶を申し上げます。私が会長を拝命したのは,国内での新型コロナウイルス感染がようやく収束に向かい始めた頃で,ポストコロナ社会を見据えた各事業の正常化と各行事の活性化を念頭に,協会運営に取り組んでまいりました。活動に際してはその目的,内容及び社会的要請度を勘案し,感染対策を講じた上で原則対面実施とする一方で,オンライン開催のメリットも考慮し,ハイブリッドの効果的な活用も推進しました。今にして思えば,コロナ禍ではいろいろと不自由を強いられましたが,そのような様々な制約によって,我々は事業活動の意義と価値を再認識し,その在り方を再検討する契機を与えられたように思います。互いに直接顔を合わせることの重要性や偶発的な議論の価値を改めて実感できたコロナ禍の数年間でもありました。

さて,コロナ禍が収まった現在,世界の複数地域で紛争の激化や地球沸騰化による急激な気候変動のため,世界情勢は不安定さを増しており,我国もその影響を大きく受けています。その一方で,技術革新の進展は目覚ましく,それと相まって,様々な分野にDX(デジタルトランスフォーメーション),GX(グリーントランスフォーメーション),SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)などの社会変革の潮流が広がっています。生成AI の進展とその活用についても目が離せない状況です。非破壊検査においても社会の要請に応えるべく,従来技術を変革し,新たな価値を生み出すことが求められています。そのような時代にあっても,当協会のミッションは非破壊検査を通して社会に価値ある安全・安心を提供することであり,それを実現すべく,技術者の啓発,教育,育成,資格認証という重要な社会的責務を果たすことが,我々の使命であることに変わりはありません。当協会では,NDT 分野を先導する取り組みに着手しつつ,産学官のステークホルダーに有益なサービスを提供し続けるため,JSNDI アクションに基づいた活動を着実に推進してまいりました。また,ステークホルダーに対して掲げている五つのバリューに加え,“グローバル”に活躍する協会を目指した活動を国内外で展開しました。コロナ禍以降懸案となっている財政健全化については,各所掌理事との連携のもと財務状況に注視しながら各事業を継続的に実施するとともに,中長期的視点での収支バランスの改善と財政強化に向けた検討を行っています。皆様のご支援,ご協力のもとこの3 年間においてもアクティブで実り多い事業活動を展開することができました。

この3 年間を振り返ると,最大のイベントとして協会創立70 周年記念事業が挙げられます。1 年間をかけてマラソン方式にていくつかの記念事業を実施し,その締め括りとして,2023 年6 月6 日に記念式典を学士会館にて挙行しました。関係各所からの来賓ならびに国内外の関連団体の代表者の方々にも参列頂き,盛会のうちに終えることができ,当協会のプレゼンスを高めることができました。この記念事業を通じて当協会の70 年の伝統と歴史の重みを再確認するとともに,関係者との友好を深め,今後に向けた国内外の新たなネットワークを構築できたことは大きな成果であったように思います。

各年度の事業活動実績の詳細につきましては該当年度の機関誌特集「報告・展望」に掲載されていますので,ここでは昨年度の活動の一端を報告します。まず,学術関連では,より柔軟で社会ニーズに即した学術活動を推進するために学術組織の改革に取り組み,改編案を取りまとめ,2026 年6 月より新たな枠組みで活動を開始する予定です。NDE 4.0 に関しては,その主要な国際イベントに継続的に参画するとともに,国内では第2 回NDE 4.0 シンポジウムを主催し,NDT/NDE の新分野開拓と価値向上に取り組みました。また,近年の激甚災害への対応として,防災・減災へのNDT/NDE の新たな適用に関する検討を開始しました。認証関連では,JIS Z 2305:2024「非破壊試験技術者の資格及び認証」が9 月に公示されたことを受けて,その対応を検討しています。米国非破壊試験協会(ASNT)との相互承認に関してはレベル3 を含む相互承認制度を取り纏め,昨年11 月1 日より運用を開始しました。教育関連では,技術講習会,実技講習会,再認証講習会などを実施するとともに,デジタル対応としてRT-D 導入対応WG を設け,その実施に向けた検討を進めています。標準化活動では,関係学協会と緊密に連携しながらJIS 及びNDIS の見直しの確認,原案の作成及び審議を行うとともに,ISO/TC 135(非破壊試験)の国内審議団体としての経常的取り組みに加え,幹事国業務を推進しています。出版活動では,出版物の制作審議,管理及び頒布などの経常業務に加え,JIS Z 2305 対応書籍の改訂作業を継続し,さらに,オンライン書籍受注を実施し,会員サービス向上に務めています。国内外の他機関との連携に関しては,国際原子力機関(IAEA)とJSNDI とのPA(Practical Arrangement)に基づいて双方の連携を深化することで社会貢献を果たすべく諸活動に取り組んでいます。ドイツ非破壊試験協会(DGZfP)との連携強化のため,教育及び認証分野における協力拡大に関する基本合意書(MOU)の追加締結案を取りまとめています。また,日本機械学会との連携協定を昨年10 月8 日に締結しました。これにより両組織の強みを活かしたシナジー効果による当協会の活性化と価値向上が期待されます。会員サービスと広報活動の一環として,ホームページ改善に着手するとともに,LINE スタンプを制作しその頒布を開始しました。若手会員及び女性会員増強に向けた広報活動についても継続的に検討しています。また,若手研究者を奨励するために,非破壊検査・材料評価分野において独創的な研究に取り組んでいる将来有望な研究者を対象とした「川嶋賞」を新たに制定しました。国際連携活動では,上記の海外機関との連携に加えて,ICNDT やAPFNDT での活動を精力的に展開するとともに,ISO/TC 135 の幹事国としての責務を果たしました。2025 年には当協会主催の二つの国際会議(先進赤外線計測技術と応用に関する国際シンポジウム(AITA2025)9 月開催,国際AE シンポジウム(IIIAE2025)11 月開催)が予定されています。

会長任期中,コロナ禍を経て,創立70 周年の節目を迎え,多くの取り組みに関わり,国内外の様々な人々との交流を深めることができました。その中で,当協会が果たすべき役割と責任の重さを再認識した次第です。社会変革の波が加速度的に進む中,当協会においても,計測・検査・試験技術の高度化と標準化,さらには国内外の他機関との連携の強化がこれまで以上に求められています。非破壊検査を通じた安全・安心な社会の実現という当協会の使命は,国内外を問わずその重要性を増しており,今後ますますグローバルな視点での活動が期待されています。今後とも,当協会が時代の要請に応えつつ,社会に価値ある安全・安心を提供する存在であり続けることを願ってやみません。会員一人ひとりの知見と熱意が,その様な社会貢献の原動力となりますので,今後ともご協力のほど,どうぞよろしくお願いいたします。新たな運営体制のもと,当協会がさらなる発展を遂げることを心より祈念いたしております。

最後に,協会運営に多大なご尽力を賜りましたすべての会員の皆様ならびに事務局の方々に心から御礼を申し上げ,退任のご挨拶とさせていただきます。

 

報告・展望(2024)

放射線による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2024 年度放射線部門主査,東芝ユニファイドテクノロジーズ(株) 富澤 雅美

Review on Radiographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2024
Toshiba Unified Technologies Corporation Masami TOMIZAWA

キーワード: 放射線,X 線,中性子,イメージング,デジタルラジオグラフィ,X線 CT,深層学習

 

はじめに
 放射線部門は,放射線を利用する非破壊検査を広く対象とし,放射線とその非破壊検査への利用に関する物理,検査の手法,放射線の線源と検出器などに関して,基礎的な事項の解説,最新技術の紹介,規格の制定・改正の状況と内容など多くの情報を機関誌の特集及び講演会などを通じて提供している。

2024 年度の活動として,機関誌73 巻5 号に「新しいX 線画像化検出器とその応用」と題した特集を掲載し,そのうちの5 件に別の2 件を加えて計7 件を2024 年度非破壊検査総合シンポジウムにて講演していただいた。そして,第2 回放射線部門講演会,秋季講演大会での講演を実施した。いずれも対面形式での開催であった。

また,3 回の幹事会(’24 年7 月にオンライン,11 月に対面,’25 年3 月にオンラインにて)を開催し,情報の収集と共有,要審議事項の審議,部門活動に関する企画の立案・進捗報告と共に検討などを行った。

以下に,2024 年度の放射線部門の活動を報告するとともに,機関誌の特集(解説),並びに上記3 件のシンポジウム,講演会,講演大会での講演内容も参考に技術動向と展望を述べる。なお,この報告・展望内の略語*については,このページの下欄に示す。

 

超音波による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2024 年度超音波部門主査,愛媛大学 中畑 和之

Review on Ultrasonic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2024
Ehime University Kazuyuki NAKAHATA

キーワード: 理論・解析・設計,機械学習・AI,センシング技術・波形処理,DX・デジタルツイン,ケーススタディ,シミュレーション,フェーズドアレイ法,ガイド波,非接触超音波法,接着・薄膜測定,イメージング・画像解析

 

はじめに
 超音波試験(UT)の応用範囲は,金属や複合材料の製造加工分野,鉄道や航空機等の輸送システム分野,原子力・火力設備等の発電プラント分野,土木・建築分野,さらに医療分野等,極めて多岐にわたるのが特徴である。その技術の基盤には,音響物理学,材料力学,機械工学,電子工学,計測工学,数値解析,さらには近年の人工知能(AI)技術やデジタルツイン技術まで,多様な学問領域が関与しており,学際的な性格を有している。とりわけ近年では,フェーズドアレイ技術を用いた高分解欠陥イメージング,非接触計測技術,デジタル信号・画像処理技術,機械学習による自動判定などが多く発表され,技術的深化や発展が著しい分野でもある。

このような時代の中,超音波部門が担う役割は,一層重要性を増している。超音波非破壊検査法に関する研究を推進し,最新の関連技術を取り入れるには,他部門や他学会との連携が必要であると考える。特に,日本非破壊検査協会が毎年実施する「NDE 4.0シンポジウム」において,本部門が積極的にコミットしており,NDE 4.0 に関連する技術を通じて他部門や他学会との技術的交流を模索している。

本稿では2024 年度の超音波部門における活動を報告するとと もに,各種活動で発表された論文や資料から2024 年度の研究や技術開発の内容を整理する。また,今後の展望について述べる。

 

磁粉・浸透・目視試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2024 年度磁粉・浸透・目視部門主査,横浜国立大学 笠井 尚哉

Review on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing in 2024
Yokohama National University Naoya KASAI

キーワード:磁粉探傷試験,浸透探傷試験,目視試験

 

はじめに
 磁粉探傷試験,浸透探傷試験及び目視試験は表面欠陥の探傷に関わる試験として,化学,発電などのプラント設備,鉄鋼,自動車,航空,鉄道などの産業分野をはじめ,社会インフラのメンテナンスにおいても広く用いられている。

当部門は,電磁気応用部門,漏れ試験部門と表面に発生する欠陥を検出・評価するという共通テーマを有しており,表面3 部門として幹事会をはじめ,研究集会,シンポジウム等の学術活動を合同で行っている。

本報告では,2024 年度(2024 年4 月1 日~ 2025 年3 月31 日)の表面3 部門が合同で行ったシンポジウム,研究集会,春季・秋季講演大会などの概要とその中から磁粉・浸透・目視部門に関する研究活動及び今後の展望について述べる。

 

電磁気応用による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2024 年度電磁気応用部門主査,大分大学 後藤 雄治

Review on Electromagnetic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Electromagnetic Testing in 2024
Oita University Yuji GOTOH

キーワード:渦電流,漏洩磁束,表面探傷,材料評価,電磁界解析,逆問題解析

 

はじめに
 磁粉・浸透・目視部門や漏れ試験部門と共に電磁気応用部門は合同で活動を行っており,「表面3 部門」との名称で,研究集会やシンポジウムを実施している。この3 部門は材料の表面きず探傷を主な目的としており,それぞれの試験法における最新の研究内容や情報の交流を行っている。

電磁気応用部門では,主に渦電流探傷試験や漏洩磁束探傷試験,磁粉探傷試験など,電磁気現象を利用した試験法や材料評価等の研究を行っている。電磁気を使用した非破壊試験法は,高速かつ非接触で試験が実施できるメリットがあり,鉄鋼・石油化学プラントや発電プラント等の保守検査に広く使用されている。これらの電磁非破壊試験は,各種センサを試験対象物に接近させ,その表面近傍のきず試験等に多く利用されている。しかし近年,電磁界解析技術や逆問題解析,信号処理技術の高度化に伴い,表面近傍だけでなく内部や裏面きず,または比較的離れた場所からの試験が行えることが明らかとなりつつあり,その適用範囲が広げられる可能性が出てきている。

ここでは,2024 年度に発表された電磁気を使用した非破壊試験法に関する報告や展望について述べる。

 

漏れ試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2024 年度漏れ試験部門主査,東芝エネルギーシステムズ(株) 渡邊 郁雄

Review on Leak Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Leak Testing in 2024
Toshiba Energy Systems & Solutions Corporation Ikuo WATANABE

キーワード:漏れ試験,規格,保守,リーク試験法

 

はじめに
 漏れ試験は,様々な産業分野において,平板や配管,タンクなど高圧部と低圧部を隔てる境界における,気体や液体が通過する現象を検知するために活用されている。

産業の発展とともに漏れ試験のニーズは拡大し,様々な試験方法が開発された。試験環境は10−10 Pa の超高真空から大気圧以上まで広範囲に及び,検出対象となる漏れ量も10−3 Pa・m3/s から10−12 Pa・m3/s まで非常に幅が広い。

ISO 9712:2005 の改正に伴い,非破壊試験の認証範囲に漏れ試験が追加されたが,当時このISO 改正に伴う対応するJIS Z 2305の改正は見送られた。その一方で,漏れについてはNDIS 0605 が制定され,その規格に基づいて2012 年に漏れ試験の技量認定試験が開始された。実技試験では圧力法として発泡漏れ法と圧力変化法,トレーサガス(サーチガス)法としてヘリウムによる漏れ試験,合計3 種類の漏れ試験が行われている1)。今や,様々な分野において漏れ試験は製品の品質や安全を担保するために必要不可欠となっている。

本稿では2024 年度の漏れ試験部門における活動実績と今後の展望について報告する。

 

応力・ひずみ解析の活動報告と今後の展望

2024 年度応力・ひずみ測定部門主査,明治大学 有川 秀一

Review on Stress / Strain Measurement
Chairman of Research & Technical Committee on Stress / Strain Measurement in 2024
Meiji University Shuichi ARIKAWA

キーワード:応力・ひずみ測定,ひずみゲージ試験,光学的試験法,強度評価,実験力学

 

はじめに
 社会を支える機械・構造物の安全性を確保するためにはその設計段階で機械・構造物に生じる応力やひずみを把握することが重要であることは言うまでもないが,実働下での健全性を確保するためにも応力やひずみを測定することが重要である。設計段階であれば有限要素解析等によるシミュレーションが多く利用される。またその計算に用いられる材料特性値が現実と一致している必要がある。したがって基本的な材料特性を測定するための材料試験においても応力・ひずみ測定は極めて重要である。評価する材料パラメータはヤング率やポアソン比,降伏応力だけでなく,疲労特性,破壊力学パラメータや粘弾性特性等多岐にわたる。そのため種々の材料パラメータを評価する方法が必要となる。また設計された物が実働荷重下において想定通りの状態にあるのかまた経年劣化等による健全性への影響はないか等を評価する必要がある。これらの状況から応力・ひずみの評価技術とその発展は機械・構造物の安全性の向上のために,今後も重要であることが分かる。

測定手法としては近年光計測法が多く研究され,デジタル画像相関法やサンプリングモアレ法等の画像処理を応用した計測手法が発展してきている。また一部ではレーザ干渉法の一つであるスペックル干渉法の研究も継続されている。デジタル画像相関法は使用方法が比較的容易でソフトウェアも市販されていることから,この手法を応用した材料評価に関する研究が増えつつある。サンプリングモアレ法は計測が安定している特徴からドローン搭載カメラからの実構造物の変位を測定する研究も進められている。スペックル干渉法の測定感度は非常に高いものの使用方法が煩雑かつ使用可能な環境の制限が多いことから近年はほとんど利用されなくなっている。そのため使用方法が容易な画像計測手法の利用拡大が期待される。

画像計測等により得られる変位場やひずみ場を利用した逆問題解析による材料パラメータ評価手法の研究やその他の理論と併用した評価手法の研究も進められており,通常の材料試験では評価が困難な材料パラメータが評価可能になりつつある。また有限要素を利用したデジタル画像相関法の研究も発展しており,従来の課題であった材料端部や界面においても精度低下のない結果が得られるようになっている。なお比較的新しい計測技術である画像計測法の場合は測定精度があいまいであるか不安定である場合もあるため,今後は測定精度の評価や精度を保証することに関して検討が進められている。このように応力・ひずみ測定および材料評価に関する研究は今日も継続的に進められている。

 

アコースティック・エミッションによる非破壊試験の活動報告と今後の展望

2024 年度アコースティック・エミッション部門主査,東北大学 森谷 祐一

Review on Acoustic Emission
Chairman of Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2024
Tohoku University Hirokazu MORIYA

キーワード:アコースティック・エミッション,講演会,国際シンポジウム,標準化

 

はじめに
 アコースティック・エミッション(AE)部門は,アコースティック・エミッション特別研究委員会を基盤として設立され,活動を開始した。AE 部門は,AE 法の発展と普及を目指し,日本におけるAE 法の学術研究,技術開発,標準化,技術者育成を推進している。AE 法は計測対象に制約がなく,様々な環境下で高周波の微弱な信号を扱うため,機械系,材料系,土木系,資源系,電気系など,多様な分野の会員が集まり活動している。本稿では,2024 年度のAE 部門の活動をまとめる。

 

赤外線サーモグラフィによる非破壊試験の活動報告と今後の展望

2024 年度赤外線サーモグラフィ部門主査,新居浜工業高等専門学校 遠藤 英樹

Review on Infrared Thermographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Infrared Thermographic Testing in 2024
National Institute of Technology, Niihama College Hideki ENDO

キーワード:赤外線サーモグラフィ,ドローン,テラヘルツ波,教育,認証

 

はじめに
 赤外線サーモグラフィ部門は,赤外線サーモグラフィ試験の普及に貢献することを目的として,学術研究,技術開発,標準化,JIS Z 2305 およびISO 18436-7 の資格試験に関する活動を行っている。赤外線サーモグラフィ試験は,非接触かつ高速に面情報を取得可能な特徴を有していることから,当部門では様々な分野・専門性を有する会員が活動している。本稿では2024 年度の主な活動を紹介する。

 

製造工程検査の活動報告と今後の展望

2024 年度製造工程検査部門主査,徳島大学 浮田 浩行

Review on In-Process Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on In-Process Inspection in 2024
Tokushima University Hiroyuki UKIDA

キーワード:画像処理技術,製造工程検査,ViEW2024,DIA2025,画像データセット,機械学習

 

はじめに
 製造工程検査部門は,製造現場での画像処理技術を用いた検査手法の実用化を目指し,活動を行っている。当部門では,広範囲に渡る最新の画像処理技術を当協会会員へ,リアルタイムかつ分かりやすく提供することを大きな役割の一つと位置付けており,そのための活動として,各種学会・研究委員会の枠を越えた連携・協力を行い,画像センシング・画像認識に関するシンポジウムやワークショップを年2 回共同企画として協賛している。この活動によって,製造工程における非破壊検査,外観検査および目視検査に関わるセンシングと画像処理・画像認識技術の情報提供を行い,研究者間の交流の場を設け,提供し続けている。

本稿では,部門活動の報告として,2024 年度に協賛・共同企画した2 件のワークショップおよび,製造工程検査部門主催として開催したミニシンポジウムについて紹介する。そして,本部門で進めている「非破壊検査・外観検査画像データセットCOE プロジェクト」の進展や,画像技術に関する動向や今後の展望について述べる。

 

保守検査の活動報告と今後の展望

2024 年度保守検査部門主査,明治大学 松尾 卓摩

Review on Maintenance Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on Maintenance Inspection in 2024
Meiji University Takuma MATSUO

キーワード: 非破壊検査,ドローン,デジタルトランスフォーメーション,AI,プラント設備,インフラ設備

 

はじめに
 保守検査部門は,産業プラントや社会インフラの構造信頼性を維持し向上させる技術を部門メンバー間で共有することを通じて,信頼性と経済性を両立した保守検査技術の探求と普及を活動目標としている。既存の検査技術の現場適用だけでなく,近年盛んに研究されているロボット,IoT,AI,ビッグデータ,DX 等を活用した新しい検査技術の情報も共有するために,7 月と12 月には保守検査ミニシンポジウムを開催した。また,機関誌10 月号では,保守検査に関する解説記事を集めた特集号を毎年企画しており,今年度は社会インフラの保守検査技術や保守検査技術に関する最新の基礎研究についての5 件の解説記事を寄稿していただき,特集号を出版した。

 

鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験の活動報告と今後の展望

2024 年度鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門主査,ものつくり大学 澤本 武博

Review on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete Structures
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete in 2024
Institute of Technologists Takehiro SAWAMOTO

キーワード:活動報告,鉄筋コンクリート構造物,非破壊・微破壊試験,研究委員会,標準化,講習会

 

はじめに
 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(以下,RC 部門)では,オンライン併用等により学術委員会,標準化委員会,教育委員会,編集委員会と関連し,各種研究委員会,各種NDIS 制定・改定・準備WG が活動を行っている。最近は感染拡大防止というよりは,オンラインの長所を生かした,オンラインを併用したハイブリッド型による方式を積極的に用いている。

 

新素材の非破壊評価の活動報告と今後の展望

2024 年度新素材に関する非破壊試験部門主査,(国研)産業技術総合研究所 遠山 暢之

Review on Non-Destructive Evaluation of New Materials
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Evaluation of New Materials in 2024
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Nobuyuki TOYAMA

キーワード:先進材料,非破壊計測

 

はじめに
 新素材に関する非破壊試験部門では,新素材の非破壊検査に関する研究・調査・普及を目的とした様々な活動を行っている。特に,「検査方法が確立していない新素材」に対する多種多様な非破壊検査技術及び非破壊評価技術の産業応用に着目し,技術横断的な調査・議論を進めている。例えば,複合材料や積層造形に関連する非破壊計測技術を切り口に,他の団体や研究会との連携も積極的に推進している。2024 年度は,6 月に非破壊検査総合シンポジウムで「積層/撚り構造の健全性評価」のセッションを,3 月には「安全・安心な社会を築く先進材料・非破壊計測技術シンポジウム」を開催した。以下にこれらの活動の概要をまとめる。

 

報告

学術委員会活動報告

2024 年度学術委員会委員長 塚田 和彦

Report of Academic Affairs Committee
Chairman of Academic Affairs Committee in 2024
Kazuhiko TSUKADA

キーワード:学術活動,非破壊検査,表彰制度,研究助成,研究奨励金,学術組織改編

 

はじめに
 学術委員会は,協会の学術活動全般を統括する組織として,関連する3 名の理事と技術開発センター長,12 の部門及び1 つの研究会の主査から構成されている。2024 年度の学術委員会の構成は,表1 のとおりであった。

2024 年度は,学術委員会を7 月,12 月,3 月の計3 回開催した。以下に2024 年度の学術活動の全般について報告するが,各部門における学術活動の詳細については,それぞれの部門の報告・展望を,また国際学術活動については,国際学術委員会の活動報告をご覧いただきたい。

 

標準化委員会活動報告

2024 年度標準化委員会委員長,東京科学大学 水谷 義弘

Report of Standardization Committee
Chairman of Standardization Committee in 2024
Institute of Science Tokyo Yoshihiro MIZUTANI

キーワード: NDIS,JIS,ISO

 

はじめに
 標準化委員会では,以下に示す11 の専門別委員会を設置し,当協会のISO 委員会(委員長:大岡紀一)と連携しながら,①日本非破壊検査協会規格(NDIS)の審議,承認および維持管理,②日本産業標準調査会が行う日本産業規格(JIS)の審議および承認への協力,③関連する規格の調査,収集および会員への情報伝達を主に行っている。副委員長は前委員長の釜田委員にお願いしている。,2024 年度の本委員会の担当理事は釜田理事と堀理事である。
(1)放射線専門別委員会(釜田敏光)
(2)超音波専門別委員会(古川 敬)
(3)磁粉専門別委員会(堀 充孝)
(4)浸透専門別委員会(田中 亮)
(5)渦電流・漏洩磁束専門別委員会(遊佐訓孝)
(6)目視専門別委員会(小林幸一)
(7)漏れ専門別委員会(中島豊昭)
(8)赤外線サーモグラフィ専門別委員会(塩澤大輝)
(9)ひずみ試験専門別委員会(坂井建宣)
(10)アコースティック・エミッション専門別委員会(水谷義弘)
(11)鉄筋コンクリート構造物専門別委員会(渡辺 健)
*( )内の氏名は2024 年度の各専門別委員会の委員長

2024 年度は,委員会として『NDIS の制定/改正と標準化の展望』(機関誌第74 巻6 号)の特集号を企画し,最近のNDIS の制定・改正の紹介と,規格の制定・改正・廃止の背景や展望について幅広く紹介した。また,NDIS 原案作成提案書作成の手引きなどの整備を進めた。

 

ISO 委員会活動報告

2024 年度ISO 委員会委員長,(一社)日本非破壊検査協会 顧問 大岡 紀一

Report of ISO Committee
Chairman of ISO Committee in 2024
The Japanese Society for Non-Destructive Inspection Norikazu OOKA

キーワード:ISO/TC 135,CEN/TC 138,ISO/TC 135/SC 7,ISO 9712,ISO 規格,資格及び認証

 

概要
 (一社)日本非破壊検査協会(以下JSNDI という)のISO 委員会は,ISO/TC 135(非破壊試験)に関する国内審議団体として,国際標準化機構(ISO)規格に関する開発,定期見直しなどの事項を検討,審議及び投票のための集約,さらには,ISO/TC 44(溶接),ISO/TC 17(鋼)などの国内審議団体との連携を図り,前年度に引き続き,関連するISO 規格の対応における情報交換などを中心に活動を実施した。

ISO/TC 135 総会及び各SC 会議は,昨年欧州のポルトガルのリスボンで開催されたECNDT(欧州非破壊試験コンファレンス)に併設してISO/TC 135 及び関連SC 会議をハイブリッド(対面会議を主体にWeb 参加も可とする)形式で行われたが,2024 年度は韓国開催のWCNDT(世界非破壊試験コンファレンス)に併設して2024 年6 月1 日~ 6 月3 日までの3 日間韓国のインチョンで開催された。それには,ISO/TC 135 幹事国として,緒方隆昌ISO/TC 135 Committee Chair(以下国際議長という),大岡昌平ISO/TC 135 Committee Manager(以下国際幹事という)がISO 中央事務局のテクニカルプロジェクトマネージャ(TPM)と連絡を取り,ISO 中央事務局のISO 活動に対する意向も踏まえ,各国との時差に関する調整の上,ISO/TC 135 総会及び関連SCを実施した。なお,日本と韓国との時差はなく,日本からJISC(日本産業調査会)としていつもより多くのSC 関係者が現地で参加した。

ISO/TC 135 総会には,ISO/TC 135 幹事国として緒方国際議長,大岡(昌)国際幹事(SC 6 の国際幹事も兼任)及びSC 6 の横野泰和国際議長が出席した。大岡紀一JSNDI ISO 委員会委員長が日本代表として,また,SC として,SC 2(MT)担当堀委員,SC 2(PT)担当八木委員,SC 3 担当横野委員,SC 4 担当鈴間委員,SC 5 担当釜田委員,SC 7 担当井上委員,SC 6 担当新井委員,SC 8担当阪上委員,SC 9 担当中村委員そしてISO 担当久保事務局が出席した。

韓国での世界非破壊試験コンファレンス(WCNDT)は2024 年5 月27 日から29 日に開催され,これに併設してISO/TC 135 会議が行われた。

国内におけるISO 委員会については,第1 回本委員会を2025年3 月27 日(木)に開催し,非破壊試験・検査における種々の関連情報を共有する目的で,各種団体会員の出席を頂き,情報交換をも実施した。

分科会については,韓国インチョンでの会議のまとめの報告会として,第1 回分科会を2025 年3 月13 日(火)に開催した。

なお,ISO/TC 135 総会及び各SC 会議の韓国インチョン開催に先立ち,各SC における審議案件の確認と必要に応じた検討のため,JISC より新規提案予定の表面試験に関わるSC 2 及びSC 4,さらに漏れ試験に関わるSC 6 の事前打合せをそれぞれ2024 年4月15 日と4 月18 日に実施した。全体としての最終打合せは2024年5 月8 日(水)に行った。

 

国際学術委員会活動報告

2024 年度国際学術委員会委員長,長岡技術科学大学 井原 郁夫

Report of International Committee
Chairman of International Committee in 2024
Nagaoka University of Technology Ikuo IHARA

キーワード: 非破壊検査,ICNDT,WCNDT,APCNDT,ASNT,BINDT,KSNT,TWI,RCNDE, 日米非破壊試験シンポジウム,NDE 4.0,国際会議

 

はじめに
 コロナ禍が収まった現在,世界の複数地域で紛争の激化や地球沸騰化による急激な気候変動のため,世界情勢は不安定さを増している。そのような折,当協会では必要に応じてオンラインを活用しつつ,対面での国際活動を活発に推進している。本年度,当初2020 年に開催を予定されていた第20 回世界非破壊試験会議(20th WCNDT)が韓国にて3000 名規模で盛大に開催されたことは特筆すべき事項であり,20th WCNDT を端緒として国際活動がより一層活発化した1 年であった。

当協会では昨年度に国際原子力機関(IAEA)とのPractical Arrangements(PA)調印が実現し,今年度,IAEA 総会及びNDTサービスセンターの開所式に出席したことは,当協会の国際的な認知度の向上に向けた第一歩となった。また,本年は,米国非破壊試験協会(ASNT)との相互承認における業務協力に関する合意書が調印されたことで,日本の非破壊試験資格保有者の地位向上に向けた本格稼働が開始された年として位置づけられる。来年度には,当協会主催の国際会議であるAITA 2025 及びIIIAE2025 の開催が予定されており,今後の新たな国際学術活動の展開が期待される。

国際非破壊試験委員会(International Committee for Non-Destructive Testing;ICNDT)及びアジア・太平洋非破壊試験連盟(Asia-Pacific Federation for Non-Destructive Testing;APFNDT)の活動をはじめとする国際的活動は,学術のみに留まらず,認証,教育,標準化などが相互に密接に関連していることから,運営委員会の下に国際対応WG を設け総合的な判断を行っている。本稿では,本号における掲載区分の関係上,国際学術委員会活動以外も含む国際活動全般を対象として記載した。

 

教育委員会活動報告

2024 年度教育委員会委員長,非破壊検査(株) 篠田 邦彦

Report of Education Committee
Chairman of Education Committee in 2024
Non-Destructive Inspection Co., Ltd. Kunihiko SHINODA

キーワード:訓練,講習会,JIS Z 2305

 

はじめに
 教育委員会(以下,「当委員会」という)は,非破壊検査に従事する技術者の技量向上を目的として,各種教育・訓練の計画と実施,関係書籍の編集などを行っている。また,JIS Z 2305「非破壊試験技術者の資格および認証」の改正に伴う訓練カリキュラムの見直しなどの対応をこれまでに推進してきた。

本稿では,2024 年度における当委員会の主な活動実績について述べる。

 

認証運営委員会活動報告

2024 年度認証運営委員会委員長,東京科学大学 井上 裕嗣

Report of Certification Steering Committee
Chairman of Certification Steering Committee in 2024
Institute of Science Tokyo Hirotsugu INOUE

キーワード:非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,NDIS 0602,NDIS 0603,ISO 18436-7,NAS 410

 

はじめに
 日本非破壊検査協会の認証事業は,JIS Z 2305 に基づく非破壊試験技術者の認証を中心に実施されており,2003 年にこの認証制度を立ち上げて以来20 年以上が経過している。この間,特に2013 年のJIS Z 2305 改正に伴っていくつかの大きな点で制度を変更するとともに,2019 年春期からは別途NDIS 0604(赤外線サーモグラフィ試験)とNDIS 0605(漏れ試験)に基づいて実施していた認証をJIS Z2305 に統合してきた。2025 年度の時点では,放射線透過試験(RT),超音波探傷試験(UT),磁気探傷試験(MT),浸透探傷試験(PT),渦電流探傷試験(ET),ひずみゲージ試験(ST),赤外線サーモグラフィ試験(TT),漏れ試験(LT)の八つのNDT 方法の認証を実施している。当協会では,このJIS Z 2305 に基づく認証を含めて,次のそれぞれの規格に基づく技術者認証を実施している。

  JIS Z 2305 「非破壊試験技術者の資格及び認証」
  NDIS 0602 「非破壊検査総合管理技術者の認証」
  NDIS 0603 「超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証」
  ISO 18436-7 「 Condition monitoring and diagnostics of machines
          – Requirements for qualification and assessment of personnel – Part 7: Thermography」

また,NAS 410「NAS Certification and qualification of nondestructive test personnel」に基づく認証制度における資格試験機関として,資格試験を実施して適格性証明書を発行している。

JIS Z 2305 に基づく認証は「認証運営委員会」で運営している。また,NDIS 0602 に基づく認証は「非破壊検査総合管理技術者認証委員会」,NDIS 0603 に基づく認証は「PD 認証運営委員会」,ISO 18436-7 に基づく認証は「CM 技術者認証運営委員会」でそれぞれ運営している。さらに,「国際認証委員会」の協力の下で,諸外国との認証資格の相互承認を実施している。

本稿では,JIS Z 2305 に基づく認証を中心に,関連する認証及びその他の認証関連事項を報告する。

 

出版委員会活動報告

2024 年度出版委員会委員長,(一財)発電設備技術検査協会 古川  敬

Report of Publication Committee
Chairman of Publication Committee in 2024
Japan Power Engineering and Inspection Corporation Takashi FURUKAWA

キーワード:出版,テキスト,問題集,参考書,規格,ゲージ

 

はじめに
 出版委員会は,非破壊検査技術の教育・普及に関する出版物の企画,編集,制作及び頒布を行うことによって,非破壊検査技術水準の向上を図ることを目的として設置された委員会であり,その活動は教育委員会の活動と密接に関係している。そのため,その構成員は,各部門の関係者とともに教育委員会からの派遣委員,理事等で構成されている。図1 に,出版活動の典型的な例を示す。

 

試験片委員会活動報告

2024 年度試験片委員会委員長,TD&UD 事務所 高田  一

Report of Reference Block Committee
Chairman of Reference Block Committee in 2024
TD&UD Office Hajime TAKADA

キーワード:標準試験片,対比試験片,分類用ゲージ,トレーサビリティ,品質証明

 

はじめに
 当協会では非破壊検査技術の普及及び技術水準の向上に努める活動の一環として,非破壊試験の実施に必要な標準試験片,対比試験片及びゲージを販売している。非破壊試験において,標準試験片,対比試験片及びゲージは,試験装置の調整及び性能確認,試験結果の定量化,試験方法の標準化及び試験結果への影響因子の評価などの重要な業務に用いられる。以下,標準試験片及び対比試験片をまとめて頒布試験片または試験片類と称する。

試験片類及びゲージの販売先は主に国内であり,2024 年度の販売数は,放射線透過試験用ゲージ(以下,放射線ゲージ)が956 枚,超音波関連試験片(以下,超音波試験片)440 体,磁粉探傷試験用標準試験片(以下,磁粉試験片)1952 枚などとなっており,販売総額は約6.5 千万円であった。販売数では,昨年度と比較して,放射線ゲージは22%の減少,磁粉試験片は13%の増加となり,超音波試験片は横ばいであった。販売総額は2%の減少となり,2024年度は2023 年度とほぼ同等の事業結果であった。

試験片類及びゲージの年間販売数は,10 年以上前は,放射線ゲージが1700 枚前後,超音波試験片が600 体前後,磁粉試験片が3000 枚前後の数量で推移してきた。どの製品についても,販売数量は大きく落ち込んできているため,原因の究明が必要になっている。

ただし,減少傾向であるとはいえ,これだけの数のゲージ及び試験片類を頒布しているのは,国内の非破壊試験業務に当協会の頒布ゲージ・試験片が必要であり,かつ,定着していることの現れであろう。

当委員会の活動の流れや経緯については,過去の報告17)− 27)も参照いただくとして,今回はこの一年の活動の進展状況についてご紹介する。

 

広報活動委員会活動報告

2024 年度広報活動委員会 委員長代理,新居浜工業高等専門学校 遠藤 英樹

Report of Public Relations Committee
Acting Chairman of Public Relations Committee in 2024
National Institute of Technology, Niihama College Hideki ENDO

キーワード:広報,ホームページ,セミナー,展示会

 

はじめに
 広報活動委員会では,関連委員会と連携し,当協会や非破壊検査の知名度向上を目的とした各種広報活動や会員に向けた情報発信サービスを行っている。当委員会の2024 年度の主な取り組み事項を以下に示す。

 ・展示会への参加と出展内容の検討
 ・取材協力等の各種メディア対応
 ・会員サービス向上のためのホームページ改善
 ・一般の人々(特に若年者層)に向けた広報活動

以下に,2024 年度の主な活動実績について報告する。

 

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