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機関誌

2026年1月号バックナンバー

2026年1月1日更新

巻頭言①

「新年のご挨拶」

落合 誠

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2025 年は大阪・関西万博の開催や日本初の女性首相誕生など歴史的な出来事がある一方,国際社会では地政学リスクや経済摩擦が続き,不確実性を感じる年でした。異常気象や大規模自然災害,インフラ老朽化はすでに特別なことではなくなり,特に1 月の埼玉県八潮市での道路陥没は,尊い人命が失われたことはもちろん,都市部での大事故として衝撃的でした。盤石であったはずの社会インフラの信頼性が揺らぎ,安心・安全を支える技術の重要性が改めて認識された一年ではなかったかと感じます。

そんな中,日本非破壊検査協会(JSNDI)は非破壊検査技術および関連する各制度の高度化と国際協調に取り組みました。まずは諸事業に対する皆様のご理解とご協力に対し,厚く御礼を申し上げます。

昨年事業の一端を振り返りますと,協会活動の重要な柱の一つである学術活動では,学術・技術の基盤である要素技術8 部門は維持しつつ,産業界との連携を強化すべく応用技術4 部門を見直し,かつ,デジタル関連の独立部門を新設しました。一昨年,昨年とAI の可能性と進展が叫ばれてきておりましたが,もはやいかなる産業においてもAI との協働は必然となり,非破壊検査への適用ではガバナンスの確立が急務です。これまでも非破壊検査のデジタル化に関するNDE 4.0 シンポジウムを継続開催してきましたが,今後は新部門を軸に社会実装の議論を深めていきます。国際的には,国際標準ISO/TC135 活動を推進するとともに,各国協会との連携を強化しました。9 月には神戸でAITA 2025(Advanced Infrared Technology and Applications),11 月には名古屋でIIIAE 2025(International Institute of Innovative Acoustic Emission)を開催し,TT(赤外線サーモグラフィ試験)やAE など日本が誇る先進技術の国際議論も促進しました。

なお,このような技術・学術はもちろん,標準化や認証活動を含む統合的な非破壊検査を議論する国際会議を2027 年秋に神戸で開催することも計画いたしました。内容につきましては順次皆様にもお知らせしてまいりますので,ぜひ皆様のご協力をお願いいたします。

一方,JSNDI が保有する設備の更新と試験制度の高度化を進め,持続可能な運営基盤を確立すべく,JIS Z 2305 認証制度などの料金改定も計画しました。2026 ~ 2027 年にかけて,皆様には追加のご負担をお願いする部分もございますが,協会活動の一層の高度化・効率化を進めてまいりますので,ご理解を賜れば幸いです。

さて,JSNDI の2026 年の運営方針は「Smart and Sustainable NDT through strategic Synergy」です。Smart とは社会の期待を超える技術革新を追求することで,AI 活用やDX,国内外の標準化を加速し,設備やプラントシステム,インフラ構造物等のライフサイクルマネジメントに資する検査技術を高度化してまいります。Sustainable とは,検査技術者の育成と認証制度の充実を図り,産業界との対話を通じて信頼関係を強化していくことと考えています。加えて,財務の健全化と業務の効率化を進め,協会活動の持続性を確保します。そしてSynergy とは,学際的活動や産学官連携を強化し,異分野・異業種との協創を新たに,戦略的に構築していくことです。国際非破壊試験委員会(ICNDT)やISO/TC 135 の活動を通じ,ネットワークをさらに広げてまいります。これらの取り組みを通じて,非破壊検査技術が社会の安全・安心に貢献し続ける基盤を築いていく所存です。

最後になりますが,会員・関係者の皆様の本年のますますのご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げ,新年のご挨拶といたします。

 

巻頭言②

「師弟鼎談で綴る「非破壊検査学」の系譜Ⅱ」特集号刊行にあたって

塚田 和彦

1 年前の機関誌73 巻12 月号で,“師弟鼎談で綴る「非破壊検査学」の系譜”と題した特集を組ませていただきました。当協会における学術活動に参画している研究者や技術者の中には,いわゆる師弟としての有機的なつながりが何組かあって,そのようなつながりが,今日までの我が国の非破壊検査学の発展を支えてきたといえます。前号では,そのような師弟としてのつながりを持つ4 組の研究者の方々にお集まりいただき,それぞれの専門分野ごと,師弟であった時代の思い出から,どのように方向を見定めて研究を進めてこられたか,その将来像も含めて気軽にお話しいただきました。幸いにも,毛色の変わった特集ということもあって好評を得ることができ,今回,二匹目のドジョウを狙って,その第2 弾を企画させていただいた次第です。

当初,この第2 弾の特集では,東京大学や大阪大学など,非破壊検査学が生まれる場となった大学をいくつか取り上げて鼎談を組むことを考えておりました。しかし,それらの大学は,様々な非破壊検査手法の研究を立ち上げ,多くの人材を育成して,他の大学・研究機関や企業に人材を供給してきた歴史を有していますが,その母体となった組織は,時代に応じるべき工学の変容とともに大きく変化し,非破壊検査学の源流を辿るような鼎談として実現することができませんでした。結果として,本特集には3 つの鼎談を収録しましたが,師弟関係を軸としながらも,非破壊検査の分野ごとの歴史を辿るという面が強くなった感があります。

最初の鼎談は,東京工業大学(現・東京科学大学)の機械工学分野です。小林英男先生を中心に4 人の先生方にお集まりいただき,1963 年に石井勇五郎先生が同大学に着任されてから,非破壊検査を強く意識した研究が進められてきたという背景とともに,非破壊検査において材料力学分野が果たしてきた役割とその将来についてお話しいただきました。取りまとめは水谷義弘先生にお願いしました。2 番目の鼎談は,青山学院大学で行われてきた非破壊検査に関係する研究の変遷と広がりを俯瞰するとして,その中心人物たる竹本幹男先生の元に,門下の研究者6 人にお集まりいただき,AE,レーザ超音波,ガイド波など,次々と新しい手法の研究に着手されてきた歴史を振り返っていただきました。取りまとめは西野秀郎先生にお願いしました。3 番目の鼎談は,大学ではなく,協会の表面探傷分科会(旧・第3 分科会)における研究活動の歴史を振り返るとして,加藤光昭先生を中心に,ほぼ15 年の隔たりをもって主査を務めた私を含めた3 人が集まって,特に磁気探傷に関する学術的な研究をテーマとして鼎談を行いました。取りまとめは後藤雄治先生にお願いしました。

なお,前回の特集から,鼎談にお集まりいただいた研究者の方々へとつながる,当協会の立ち上げとその発展に貢献された,いわゆる第1,第2 世代の研究者の方々の事績について振り返るとして,「非破壊検査学の始まりとその展開」と題する拙稿の連載を始めさせていただきました。前回からかなり期間が空いてしまいましたが,再開として本号にはその3 を掲載させていただきます。

協会では,Strategic Synergy という標語のもと,他の学会や団体との連携を,国際的なものも含めて強化していく方針が打ち出されています。それに呼応する形で,学術活動を担う組織も,2026 年度から他の学会や産業界とのつながりを強く意識した構造へと改編することとなっています。新しく戦略的な交流を模索していくにおいては,自分たちのバックボーンをしっかりと意識することも重要ではないかと感じております。本特集が少しでもそのような機会を提供するものとなりましたならば,企画者として望外の喜びであります。

 

対談

師弟鼎談Ⅴ −東京工業大学(現:東京科学大学)の機械分野における非破壊検査研究−

小林 英男  足立 忠晴  井上 裕嗣  水谷 義弘

Non-destructive Inspection Research in the Mechanical Field at Tokyo Institute of Technology(Currently, Institute of Science Tokyo)
Hideo KOBAYASHI, Tadaharu ADACHI, Hirotsugu INOUE and Yoshihiro MIZUTANI

 本鼎談は,東京工業大学(現:東京科学大学)における材料力学と非破壊検査の系譜を軸に,その歴史と今後の展望を論じたものです。東工大に深い関わりを持つ小林英男,足立忠晴,井上裕嗣,水谷義弘の4 名が,2025 年8月12 日に東京科学大学の大岡山キャンパスで鼎談しました。前半は,生産機械工学科への石井勇五郎先生の着任を端緒とする東京工業大学における非破壊検査研究の始まりと,材料力学関連講座(中原一郎先生,中沢 一先生,小泉 堯先生ら)による本協会の活動の広がりを,当時の学科構成の変遷とともにたどりました。後半は,非破壊検査の定量化と実用化の現状を踏まえ,新材料の動向,標準化の課題,人材育成のあり方などを含めて本協会の役割と将来像へ議論を広げました。その中で,「非破壊検査を社会の中でいかに活かすか」という視点を忘れずに非破壊検査の研究を続けることが,今後の発展に欠かせないことを改めて確認しました。

 

師弟鼎談Ⅵ −青山学院大学 “作る” から“測る” まで竹本研の手作り科学−

竹本 幹男  林  康久  鈴木 裕晶  長  秀雄  西野 秀郎  水谷 義弘  松尾 卓摩

From Making to Measuring: Takemoto Lab’s Handmade Science
Mikio TAKEMOTO, Yasuhisa HAYASHI, Hiroaki SUZUKI, Hideo CHO, Hideo NISHINO, Yoshihiro MIZUTANI and Takuma MATSUO

 本鼎談は,青山学院大学の竹本研究室の研究の変遷を示したものです。竹本先生の研究の出発点と現在でも続く本流は金属材料の腐食を取り扱うものです。さらに言えば,世の中に役に立つための腐食研究であり,世の中のニーズを見ながら進めてきていることがこの鼎談から読み解けます。一方で,竹本研究室で行われ現在は長研究室に引き継がれている研究を一見した時には,まったく異なるように見えてきます。現在では当たり前に見える非破壊検査技術の項目(あるいは分類)に,“レーザ超音波”,“光ファイバセンサ”,“ガイド波”があることは論を待ちません。これらすべての黎明期に竹本研究室はことごとく先鞭をつけているのです(ガイド波など用語すらなかった)。竹本研究室では,これらの項目が世のニーズに資するために必要な付帯技術として取り上げられ研究が進められ,本筋の発展に供されたのです。その過程で多くの優秀な研究者を国内外に排出していることも特筆すべきことです。中身は本鼎談の副題にあるように,実は泥臭く自ら“作り”そして“測る”ことにあるように思います。本鼎談が新しくかつ重要な研究テーマの選定のヒントとなれば幸いに思います。

 

師弟鼎談Ⅶ −JSNDI における表面検査部門の学術研究の系譜−

加藤 光昭  塚田 和彦  後藤 雄治

Academic Research History of the Surface Inspection Department at JSNDI
Mitsuaki KATOH, Kazuhiko TSUKADA and Yuji GOTOH

 本鼎談は,表面検査部門において,特に漏洩磁束探傷試験とそれを支援する数値解析分野における学術的な系譜 と歴史を振り返り,その発展と今後の課題を議論したものです。本分野に深い関わりを持つ九州工業大学名誉教授の加藤光昭先生,元京都大学教授の塚田和彦先生及び大分大学教授の後藤雄治の3 名で,表面探傷分科会(旧第三分科会,現在の表面3 部門)の研究を通じた師弟関係や交流の歴史を軸に,学術的・個人的な経験に基づいた検証と将来展望を論じました。

 

連載

非破壊検査学の始まりとその展開(その3)

前 副会長 塚田 和彦

The Beginning and Development of Academic Research on Non-destructive Testing(Part 3)
Previous Vice President Kazuhiko TSUKADA

キーワード: 非破壊検査学,大学,研究機関

 

4.復興から高度成長へと技術ナショナリズム
 戦後,様々な産業分野において非破壊検査の実践が始まっていくわけであるが,そのことについて述べる前に,戦後復興から高度成長へとその急速な発展を可能とした背景と,研究者・技術者たちの時代の共有について述べておきたい。

 

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