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機関誌

2026年3月号バックナンバー

2026年3月1日更新

巻頭言

「コンクリートの非破壊試験の展望:材料特性の理解と技術の現在地」特集号刊行にあたって

澤本 武博

平成元年(1989 年)に設置された「鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験(009)特別研究委員会」は,平成22 年(2010 年)の部門再編により「鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(RC 部門)」となり,特別研究委員会時代から現在まで37 年の歴史を持つ。RC 部門は,コンクリート構造物,特に鉄筋コンクリート構造物を中心に,非破壊検査のための試験方法に関する情報交換と調査研究を目的として活動している。令和8 年(2026 年)のさらなる部門再編により,鉄筋コンクリート構造物だけでなく鋼構造物も含めた「建設インフラ部門」として活動することになる。

本特集号では,コンクリートの複雑さゆえの非破壊試験の適用の難しさに立ち向かうため,RC 部門が長年取り組んできた活動について,「コンクリートの非破壊試験の展望:材料特性の理解と技術の現在地」と題して紹介する。第一部では「なぜコンクリートは非破壊試験を難しくするのか?」で材料特性を深く掘り下げ,第二部では「規格から現場まで:コンクリート構造物への非破壊試験の貢献」で具体的な適用方法と貢献事例を解説する。

第一部では,小林幸一氏((一社)セメント協会)より,コンクリートはセメント,水,骨材など密度の異なる材料からなる複合材料であり,使用材料や施工条件によって性質が異なるため,均質な金属材料よりも非破壊試験が難しいことについて執筆していただいた。湯浅 昇先生(日本大学)からは,コンクリート表面からのアプローチで得られる情報の限界と,微破壊を含む非破壊試験の意義について,今本啓一先生(東京理科大学)からは,コンクリート中の水分が非破壊試験結果に与える大きな影響について執筆していただいた。

第二部では,渡辺 健先生(徳島大学)よりコンクリート関係のNDIS 制定状況について,濱崎 仁先生(芝浦工業大学)と森濱和正先生(ものつくり大学)より,建築物および土木構造物の建設・竣工時に活用される非破壊試験について,また,佐藤大輔氏((株)コンステック)と岩野聡史氏(リック(株))より,維持管理で重要となる非破壊試験について執筆していただいた。

そして,令和8 年(2026 年)5 月28 日(木)に,日本非破壊検査協会の亀戸センターで本特集号をベースとした「鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門ミニシンポジウム-コンクリートの非破壊試験の展望〜材料特性の理解と技術の現在地〜」を開催する。このミニシンポジウムでは,特集号の貴重な知見をさらに深掘りするために執筆者の皆さまにご講演いただくとともに,RC 部門のこれまでの活動を振り返ることも目的としている。

また,RC 部門のこれまでの活動の総括および再編後も継続すべき活動について,「建設インフラ部門」として新たに登録された非破壊試験技術者との意見交換も予定している。本特集号およびミニシンポジウムが,コンクリート構造物の維持管理における非破壊試験の発展および新部門としての新たなスタートに役立てればと期待している。

 

解説

<第一部>なぜコンクリートは非破壊試験を難しくするのか?

複合材料であり,使用材料や施工条件によって性質が異なるため

(一社)セメント協会 小林 幸一

Stemming from its Composite Nature, which Leads to Constituent Materials and Construction Practices
Japan Cement Association Koichi KOBAYASHI

キーワード: 非破壊試験,コンクリート,複合材料,品質評価,維持管理

 

はじめに
 近年,社会インフラの老朽化が進行する中で,コンクリート構造物の健全性を的確に把握するためには,非破壊試験技術の活用がますます重要となっている。非破壊試験は,構造物を損傷させることなく内部の状態を評価できる手法であり,効率的かつ経済的な維持管理を実現するための有力な手段であるとともに,竣工時の品質確認においても有効である。

一方で,コンクリートは複合材料であり,使用材料の種類や配合,施工条件,養生環境などの影響を大きく受ける。このため,同一構造物であっても部位によって性質が異なる場合があり,非破壊試験の結果を一律に評価することは容易ではない。非破壊試験技術を適切に活用するには,コンクリートの材料特性および構造的挙動に関する十分な理解が不可欠である。

 

表面アプローチ非破壊試験の限界と非破壊試験(微破壊)の意義

日本大学 湯浅  昇

Limitations of Surface Approach Non-destructive Testing and the Significance of Minor-destructive Testing
Nihon University Noboru YUASA

キーワード: コンクリート,非破壊試験,微破壊,表面,表層,内部

 

はじめに
 非破壊試験・微破壊試験の多くは,コンクリート表面からのアプローチにより実施される。コンクリートが均質であれば,得られる評価はコンクリートの品質を評価したものになり得るが,我々が接している構造物のコンクリートのほとんどは,その品質を決定づける細孔構造,含水率の観点からみれば,表層から内部にわたり不均質である1)。

コンクリートの材料,調合,温度,材齢で決定づけられる品質をポテンシャル品質というならば,コンクリートの表層の強度は,内部に比し,水セメント比換算で20%程度大きく低強度となることが明らかになっている2)。したがって,表面からアプローチする非破壊試験では,得られる指標値が内部の品質まで反映されることには限界がある。

一方,対象とする品質によっては,センサを所定の深さに埋め込んだり,所定の深さのなるべく小さなサンプルを採取する,わずかな破壊を伴う試験によって,深さ方向の情報を得ることも鉄筋コンクリート構造物の分野では非破壊試験(微破壊)と位置づけている。

本稿では,「コンクリートは非破壊試験を難しくするのか?」を「表面アプローチ非破壊試験の限界と非破壊試験(微破壊)の意義」の観点から解説する。

 

コンクリート中の水分の効果と影響

東京理科大学 今本 啓一

Effect of Moisture
Tokyo University of Science Kei-ichi IMAMOTO

キーワード: コンクリート,水,非破壊,微破壊

 

はじめに
 コンクリートに用いられる練混ぜ水はセメントと反応することによりコンクリートとして硬化する。いうまでもなく,水はコンクリートにとって必要不可欠な材料である。本稿では,本協会RC 部門で特に対象とする鉄筋コンクリートの基礎物性や劣化事象に及ぼす水の影響と,この「水」がコンクリートにおける非破壊試験を難しくする事例について述べる。

 

<第二部>規格から現場まで:コンクリート構造物への非破壊試験の貢献

NDIS制定状況と非破壊試験で何を知ることができる?

徳島大学 渡辺  健

NDIS Implementation Status and What Can Be Learned through Non-destructive Testing?
Tokushima University Takeshi WATANABE

キーワード: 標準化,規格,NIDS,非破壊試験

 

はじめに
 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験については,日本非破壊検査協会を中心に規格化が進められている。ここでは,RC専門別委員会で所掌しているNDIS:Standard of the Japanese Society for Non-Destructive Inspection の制定状況や規格について,またそのNDIS で何を知ることができるかについての解説を行う。

 

建設・竣工時の検査で活躍する非破壊試験

ものつくり大学 森濱 和正  芝浦工業大学 濱崎  仁

Non-destructive Testing Excels in Construction and Completion Inspections
Institute of Technologists Kazumasa MORIHAMA
Shibaura Institute of Technology Hitoshi HAMASAKI

キーワード: コンクリート強度,超音波法,音速に対する影響要因,かぶり厚さ,電磁誘導法,電磁波レーダ法

 

はじめに
 コンクリート構造物の品質管理・検査は,施工者自らが建設工事の各段階で行うプロセス管理と,でき上がった構造物を対象に行う出来形検査の両者を組み合わせて行われる。プロセス管理は,目視による確認やサンプル抜き取りなど現物を直接確認できる場合が多いが,出来形の検査は,完成した構造物に損傷を与えることは許容されないため,非破壊検査や品質を代表させた供試体による検査が行われる。

コンクリート構造物の出来形の検査は,コンクリート強度や,鉄筋の位置(かぶり厚さ)などについて行われ,非破壊検査が適用される。本稿では,土木分野における竣工時の検査として超音波法によるコンクリート強度の検査と,建築物に対する竣工時の検査として鉄筋のかぶり厚さの検査を中心に解説する。

 

維持管理で活躍する非破壊試験

(株)コンステック 佐藤 大輔  リック(株) 岩野 聡史

Active in Maintenance and Management
Constec Engi,Co. Daisuke SATO
RIK Co., Ltd. Satoshi IWANO

キーワード: 鉄筋コンクリート,維持管理,歴史的建造物,赤外線サーモグラフィ試験,橋梁,塩害

 

はじめに
 筆者らは,コンクリート構造物の維持管理業務において,非破壊試験を数多く実施している。コンクリート構造物の非破壊試験の現状に対し,「その適用はそれほど進んでいない」という評価も見受けられるが1),筆者らの実務経験からすると,そのような見解は当てはまらない。各試験方法の適用範囲,特徴,測定原理が深く理解された上で,適切に活用されている事例は数多く存在する。本稿では,こうしたコンクリート構造物の維持管理に貢献する非破壊試験の具体的な活用事例を紹介する。

 

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