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機関誌

2018年10月号バックナンバー

2018年10月1日更新

巻頭言

「保守検査の最前線-現場に適用される新検査技術Ⅱ-」特集号刊行にあたって 鈴木 裕晶

 我が国の科学技術政策の指針となる「第5 期科学技術基本計画」(2016 年~2020 年)の中で用いられているSociety 5.0 という言葉を耳にする機会が増えた。この言葉は,第四次産業革命と呼ばれるAI(Artificial Intelligence),IoT(Internet of Things),ロボットなどの最新技術を駆使して,サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)とが高度に融合した「超スマート社会」を目指す日本政府が作った言葉である。次世代の社会を目指した諸外国の動向に,Industrie 4.0(第4 次産業革命:独国),High Value Manufacturing(高価値製造:英国),Advanced Manufacturing(先進製造パートナーシップ:米国),Made In China 2025(中国製造2025:中国)等があるが,これらはものづくり分野が中心の考え方である。一方,我が国のSociety 5.0 はものづくり分野だけでなく,様々な分野のつながりによって新たな付加価値の創出や社会課題の解決をもたらすConnected Industries というコンセプトを提唱している。そして,Connected Industries の取り組みの方向性として,市場成長性,産業が有する強み,社会的意義の大きさ等から,5 つの重点取組分野を定め,取り組みの加速化と政策資源の集中投入を図り,加えて,横断的課題に対する支援措置・法制度等の整備に取り組むことが発表されている。この重点取組分野の一つとして「プラント・インフラ保安」が指定され,最新技術を活用した自主保安技術の向上,企業間のデータ協調に向けたガイドライン等の整備,さらなる規制制度改革の推進等の取り組みが進められている。
 プラント保安分野では,技術進歩等により事故に伴う死傷者数は減少しているものの,重大事故は引き続き発生しており,プラントの老朽化,保安人材の不足等を背景に,今後,事故リスク,設備保全コストは増加すると予想される。一方,インフラ保安分野では,設備の高齢化が進む中で2012 年の笹子トンネル事故のような重大な事故リスクの顕在化や,維持修繕費の急激な高まりが懸念されている。このような厳しい環境の中,事故を未然に防ぎ,予防保全による設備のライフサイクルコストの最小化を実現するためには,Connected Industries でもさかんに開発が進められているAI,IoT,ロボットを活用した保守検査技術が求められている。
 保守検査部門ではプラント設備,社会インフラなどの構造信頼性を維持・向上させるため,既存の非破壊検査技術の現場適用事例の紹介の他,新しい技術を活用した非破壊検査技術を紹介する場を設けている。このような場を通してプラント設備,社会インフラを運営,または管理する方々と信頼性と経済性を両立した効率的な保守検査を検討し,その実施を促すことを部門活動の目的とする。今回の特集は,主に2017 年度の保守検査ミニシンポジウムにおいて発表された中から,最新技術を適用した保守検査技術に関する6 つのテーマについて解説して頂いた。インフラ構造物へのサンプリングモアレ技術や打音検査へのAI やドローンの実証

 

解説

保守検査の最前線-現場に適用される新検査技術Ⅱ-

産総研のインフラ維持技術開発
(国研)産業技術総合研究所 樋口 哲也

Infrastructure Maintenance Technology Developed by AIST
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Tetsuya HIGUCHI

キーワード:健全性評価,モアレ法,人工知能,音響測定,コンクリート構造

はじめに
(国研)産業技術総合研究所(以下,産総研)は,土木技術やインフラの研究とは元々関係が薄かったが,2012 年の笹子トンネル事故以降,産総研内の要素技術を分野横断的に結集して,老朽化インフラの維持技術の開発に取り組んできた。対象は,道路,橋,鉄道等の社会インフラに加え,風力発電等のエネルギーインフラ,上下水道やプラント施設等の産業インフラの3 領域の多岐にわたって現在も研究開発を進めている。それらの中から本稿では,研究フェーズが終了してすでに産総研発ベンチャーを通じて事業化が始まっているモアレ計測技術,そして近い将来の実用化が検討されているコンクリート構造物を対象としたAI 打音解析システムの二つを紹介する。

 

AE 法によるバケットエレベータ軸受損傷検知の高精度化
(国研)水産研究・教育機構 水産大学校 海洋機械工学科 太田 博光
(株)トクヤマ 設備管理部グループ 設備診断チーム 松田 弦也

Novel Monitoring and Diagnosis Method for Low-speed Rolling Bearings Using
Acoustic Emission for Bucket Elevators

National Fisheries University Hiromitsu OHTA
Tokuyama Corporation Genya MATSUDA

キーワード:モニタリング,信号処理,アコースティック・エミッション,周波数特性,回転機

はじめに
 化学プラントでは製品となる原材料を垂直搬送するためにチェーン−スプロケット系の構造を持つバケットエレベータが一般的に使用されている。これらチェーン−スプロケット系から運搬物である各種原材料への潤滑油の混入は製品の品質管理上,制限されている。そのため無潤滑で運転されており高ノイズ環境下にある。チェーン−スプロケット系を支持する転がり軸受の損傷によりバケットエレベータが停止すると全製造ラインに影響が及ぶため生産効率が極端に低下し,莫大な損失が発生する。またメンテナンスコストの増加にもつながる。これらを未然に防止するためにバケットエレベータの転がり軸受の状態や損傷を高精度に監視・診断する手法が求められている。しかしながら,高ノイズ環境下であることや低速回転機械であることから転がり軸受の損傷を早期に検出することは大変困難である。今回,センサとしてAE(Acoustic Emission)センサを使用している。周囲のノイズを高効率に取り除き,損傷信号のみを強調する手法として自己回帰モデル(Auto regressivemodel)を応用し,周波数領域に用いる手法を提案している。自己回帰モデルは周期性のある時系列信号のモデリングに適用されるが,本研究では動機器が損傷時に発生する周期性のある離散周波数構造を強調,抽出するフィルタとして用いる。自己回帰モデルを周波数領域に適用する1)ことにより時系列データで必要な同期信号は不要となり簡便な計測が可能,またモデリングデータを平均化する際に必要な精密な位相合わせが不要であるため簡便なモデリングが可能,さらに周波数領域では着目するパス周波数およびその高調波成分の間隔が把握しやすいためデータの平滑化点数の把握が容易という利点がある。また本手法はAE センサの感度の優れた高周波帯域だけでなく,感度の劣る低周波帯域においても加速度ピックアップを使用せずに,大きなきずであればパス周波数成分を強調し抽出できることを示している。本提案手法を用いることでAE センサ単独で簡便に精密診断を実施することができる。

 

飛行ロボットによる点検システムの研究開発
新日本非破壊検査(株) 和田 秀樹  浅野 裕一  山口 裕樹

R & D of an Inspection Robot System using a Drone
Shin Nippon Nondestructive Inspection Co., Ltd. Hideki WADA,
Yuichi ASANO and Hiroki YAMAGUCHI

キーワード:マルチコプター,インフラ,橋梁点検,近接目視,打音検査,ひび割れ,うき,はく離

はじめに
 国内インフラの多くは高齢化しており,老朽化による重大事故のリスクは急激に高まってきている。これに伴い2014 年の道路法施行規則の一部改正により,橋梁などの定期点検は5 年に1 度の実施が義務付けられ,それらを管理する自治体などでは点検費や技術者不足などの課題が浮き彫りとなってきた。
 これらの課題を受け,非破壊検査技術を用いたインフラ点検においても効率化,低コスト化などが求められるようになってきた。しかし,橋梁などのインフラ構造物は,その構造や立地条件等から人が容易に接近して点検できないものも多い。従って,これらの点検には特殊作業車や足場が使用されることも多く,点検コストの低減の大きな課題となっている。このような課題を解決するには,新技術の活用は必須であり,ロボット技術は不可欠と考えられる。一方,現在,様々な分野で活用が期待されているドローン技術1)は,橋梁など大型構造物点検の分野においても活用できると考えられており,既に,ドローンを用いた近接目視点検の技術開発も行われている。そこで,新日本非破壊検査(株)でもドローン技術を活用し,道路橋などのコンクリート構造物を対象にした点検ロボットの開発を行うこととなった。今回,開発を行っている点検ロボット2)は飛行と走行を融合し,接触状態で点検を行うものであり,人が容易に接近できない箇所の点検を遠隔操作で実施することにより,点検作業の効率化や,低コスト化の実現を目指すものである。
 本稿では,現在,開発中の点検ロボットの特徴である打音検査を主体に点検ロボットの概要や実証実験の様子など,開発状況を紹介する。

 

海外の先端非破壊検査/ロボット技術
Advantec-IS(株) 小林 哲治

Overseas Advanced Non-Destructive Testing & Robotics Technology
Advantec-IS Co., Ltd. Tetsuji KOBAYASHI

キーワード:配管サポート部腐食,ガイド波,NDT,SH 波,肉厚測定,検査ロボット,PETROBOT Project,圧力容器,遠隔検査

はじめに
 近年,ハードウェア並びにソフトウェアの技術的進歩が向上し,様々な技術が開発されて非破壊検査に応用されている。特に海外ではガイド波技術,ロボット技術がプラント設備の非破壊検査業務に積極的に使用されている。海外でこのような新しい技術が積極的に使用されるのは技術の利便性も当然であるが,日本と同様に作業員の不足,労働災害の観点からでもある。今回,ガイド波技術を使用した配管サポート部腐食の検査技術,ロボットを使用したプラント設備検査のプロジェクトについて紹介する。

 

低周波電磁誘導法による外面減肉検査
(有)テステックス・ジャパン 松永 次郎  原  健太  清水  歩

Inspection for Outside Corrosion using Low Frequency Electromagnetic Testing
Testex-Japan Jiro MATSUNAGA, Kenta HARA and Ayumi SHIMIZU

キーワード:低周波電磁誘導法,外面減肉,外面腐食,スクリーニング検査,錆コブ上,防食テープ上

はじめに
 海岸線に面したコンビナートでは,飛来塩分や排気物質の影響で,タンクや配管等の設備機器に錆コブを伴う外面減肉が発生する。鋼主体で建設された工場は,大気に曝されたすべての鋼表面が腐食性環境となるので,工場全体の広大な範囲が外面減肉の対象となる。さらに,季節によって変化する降雨・風向・日照条件や,鳥類の糞の影響などの様々な外的要因が絡むので,腐食箇所を特定して検出することは容易でない。また,外面減肉は錆コブを生成しながら進行し続ける。箇所ごとに腐食の進行速度が異なるので,外観からは外面減肉の腐食深さおよび鋼の残肉厚を評価することができない。以上のことから,外面減肉の検出および腐食部の残肉厚の判定は,手間のかかる難易度の高い作業と理解できる。実際に工場の設備機器の劣化によるトラブルの大半が外面腐食によるものである。外面腐食は設備機器の肉厚を減少させ,タンクや配管では内部流体の漏洩,支柱等の重量を支える部位であれば座屈につながる。外面腐食の検出と残肉厚の判定は,工場の安全操業にとって非常に重要なキーポイントである。
 現在の外面減肉の検査は,検査員による目視確認が主流である。検査対象物の全表面を検査員の目および触手で検出し,デプスゲージと肉厚計で残肉厚を測定していく。狭隘部の配管下部等は鏡やライトで細部まで確認する。検査はシンプルで著しい腐食ほど目立つので検出しやすいという長所がある。しかし,目視検査では検査員の技量や単調な作業の連続により,重大減肉の見落としや残肉厚評価のばらつき,誤判断が生じることがある。また,外観が悪いと先入観にとらわれ,評価に影響を与える場合も考えられる(図1 表面状態は悪いがすべて健全肉厚が確保されていた)。このような見落としや誤判断は,腐食の知識や検査技術を熟知したベテラン検査員でも起こりうる。さらに,外面減肉は錆コブを伴うもの,防食テープ下のもの,塗装状態が荒れているものがあり,目視検査では検出が困難で,また残肉厚評価が不能な環境が多い。
 このような現状の中,低周波電磁誘導法の装置を使用した外面減肉の検査がスタートした。人(検査員)による検査ではなく,装置が検査するところが目視検査との大きな違いである。装置で外面減肉を検出し,検出データから残肉厚を定量的に評価する。この低周波電磁誘導法の装置は内面減肉の検出・残肉厚の評価を目的として開発されたものであるが,原理上,内外面の減肉を検出する特性があるため,外面減肉の検査としても注目されてきた。検査方法は簡易で,検査対象の鋼の表面をスキャナ走査することで,その走査面(探傷面)の減肉が検出でき,データをパソコン上で結合させることで,設備機器の全面探傷が可能となる。電磁誘導法の区分なのでスクリーニング検査に位置付けられるが,検出能力とデータの精度は高い。
 本稿では,「低周波電磁誘導法による外面減肉検査」として紹介する。低周波電磁誘導法の原理,特性,特長を説明し,3事例の現場探傷を紹介する。3 事例であるが,「検出」と「肉厚評価」の2 つに分けて説明する。「検出」が「スクリーニング検査」で,「肉厚評価」が「詳細検査」となる。スクリーニング検査に重点を置いた検査が2 件,詳細検査に重点を置いた検査を1 件とした。スクリーニング検査のポイントは広い範囲を高速探傷して減肉を検出すること,詳細検査のポイントは減肉部を高い精度で肉厚評価することである。検査は,減肉の「検出」と減肉部の「肉厚評価」に分けて究明することが重要である。この解説原稿で低周波電磁誘導法の検査技術を幅広く理解していただければと期待している。

 

テラヘルツ電磁波イメージングによる粉体中異物ならびにタイルはく離の検査
(有)スペクトルデザイン 高橋 功将

Detection of Foreign Object in Powder and
Delaminated Tile using Terahertz Electromagnetic Wave Imaging

Spectra Design Ltd. Norimasa TAKAHASHI

キーワード:テラヘルツ波,テラヘルツイメージング,パルスエコー法,可視化

はじめに
 電磁波を照射し,物質内部の構造や特性を非破壊・非接触で検査することが産業分野で急激に広がっている。検査対象物が我々の目に不透明に見える物質であると,光学的手法による検査が困難であるため様々な電磁波が非破壊検査に利用されている。
 近年,テラヘルツ波と呼ばれる電磁波の非破壊検査への応用が注目されている。このテラヘルツ波は,厳密な定義はないがおよそ0.1 ~ 10.0 THz(1.0 THz = 1012 Hz,波長にして0.03 ~ 3.0 mm)の周波数の電磁波とすることが多く,電波と光の電磁波領域と重なっている。この電磁波領域の技術開発は,電波と光の研究分野の境界にあることから立ち遅れており,未開拓の電磁波領域と呼ばれていた。しかし,近年になってこの領域の電磁波の技術開発が急速に進展し,簡便に扱える発生源・検出器などが増えたことで,応用研究もさかんに行われるようになっている1)。
 テラヘルツ波の主な特長には,①非金属をよく透過する,②エックス線と比較すると人体に影響が少ないため安全に使用できる,③水分に敏感で大きく吸収される,④物質固有のスペクトルが得られる,といったことがある。こうした特長は非破壊検査や化学分析の分野での応用に特に有効であると考えられ,それらの分野での利用が大いに期待されている。
 本稿では,近年急激に発展しているパルス状のテラヘルツ波(以下,テラヘルツパルス波と呼ぶ)を利用した計測技術について説明する。また,本計測技術のイメージングへの応用,計測システムの実際,さらに産業応用の観点から非破壊検査への応用事例として粉体中の異物ならびに建造物外壁タイルのはく離検査事例を紹介する。

 

論文

光ファイバAE センサを用いたラミネート型リチウムイオン電池の異常モニタリング手法の開発
松尾 卓摩*,臼井 智紀*,石井 宏明

Development of a Monitoring Technique for Damages in Laminated Lithium-ion Batteries using Optical Fiber AE Sensor
Takuma MATSUO, Tomoki USUI and Hiroaki ISHII

Abstract
Lithium-ion batteries possess high energy density and cause small memory effects. Accordingly, they are widely used in such systems as portable electronic devices and electric vehicles. However, instances of past accidents have raised concerns regarding the safety of handling such batteries. To address these concerns, damage detection at an early stage is important. This study proposes use of optical fiber Acoustic Emission (AE) sensors to monitor damages that occur in laminated-sheet type lithium-ion batteries. Optical fiber sensors are explosion proof and design sensor shape free. Characteristics of AE generation in batteries were first evaluated using piezoelectric sensors. The majority of AE signals were detected at battery potentials exceeding 80% across charge-discharge cycles. However, compared to batteries comprising metallic cells, lithium-ion batteries demonstrated reduced AE signal generation. Moreover,in damaged batteries, AE signal generation at random intervals was observed. Compared to normal cycles of operation, twice as many AE events were observed for damaged batteries, and AE waveforms with low peak frequencies were detected. Sheet-type sensors were constructed using optical fiber, and their sensitivities were compared against those of conventional sensors. The maximum amplitude of artificial AE signals, as detected by the sheet-type sensor, was lower compared to conventional-sensor readings. However, signal monitoring over a wide region could be performed using sheet-type sensors. Finally, proposed sheet-type sensors were employed to monitor damage affecting lithium-ion batteries, and AE signal generation was also detected using similar wide sensors.The proposed method could, therefore, be used as a potential tool for monitoring damages caused in sheet-type lithium-ion batteries.

キーワード:Optical fiber sensor, Acoustic Emission, Lithium-ion battery, Laminated sheet battery, Health monitoring

緒言
 リチウムイオン二次電池は高いエネルギー密度やメモリー効果が少ないなどの利点から,小型電子機器で広く用いられており,電気自動車や航空機用蓄電池,発電設備の蓄電システム等の大型装置への応用も進められている1)−3)。しかし,繰り返し充放電による電極材料の破損を起因としたガス発生や電解液の漏洩が生じて,電池が変形や発火する危険がある4)−6)。そこで,電池の状態をリアルタイムにモニタリングし,電極材料の破損やガス発生などの電池内部の異常を早期に発見する非破壊検査技術が求められている。従来は電気化学的手法や温度測定法を用いた手法が用いられているが,電池の異常をリアルタイムにモニタリングすることは可能であるが,異常が発生する直前,もしくは発生タイミングを検出することは難しい。また,近年では電池の高容量化が進み,ラミネートセルを用いた電池が多く利用されている4)。これらは電池をより高エネルギー密度化できる一方で,Fig.1 に示すように電池内部で異常現象が発生した場合は内部のガス発生等で大きな変形による電池の損傷が生じる。また大容量の電池では,これらのセルを積層して構築するため,異常発生時に従来の温度や電位によるモニタリングでは,どのセルに異常が発生したかを検出することが難しい問題がある。
 一方,著者らのグループでは,既往の研究においてアコースティック・エミッション(AE)法を利用したリチウムイオン電池のモニタリング手法を提案してきた7)−9)。AE 法は,固体材料内部の微小な破壊,あるいはそれと同様なエネルギー解放過程によって発生する弾性波動現象を検知し,リアルタイムにモニタリングを実施する非破壊検査技術であり10),AE法を用いて材料内で発生した電極材料の破損や内部での電気化学的反応によって生じたガス発生によって放出される弾性波を検出できることが報告されている11)− 13)。これらの電池内部で発生した現象を検出することで電池の異常をリアルタイムで検出するのみならず,異常の発生直前もしくは直後に

 

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