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機関誌

2018年08月号バックナンバー

2018年8月1日更新

目次

巻頭言

「本協会ビジョンの実現に向けて」緒方 隆昌

 本協会は,“JSNDI ミッションステートメント「社会に価値ある安全・安心を提供するJSNDI」”,“JSNDIバリュー”及び“JSNDI アクションプラン”を指針としての活動を開始しました。具体的には,社会,会員,産業界,学術・教育界及び行政機関への貢献を意識して,①業界バリューチェーンの構築(関連業界間の連携強化),②学術・産業分野の拡大と融合,③学会機能と業界団体機能のシナジー強化,④有効なグローバル展開の強化及び⑤会員活動の活性化を図っています。
 昨年度の主な活動について報告します。
 学術活動では,部門合同でシナジーを狙う試みを行った他,シンポジウム/講演大会では,経済産業省による高圧ガス保安のスマート化についての特別講演,米国非破壊試験協会ASNT のSmith 議長による航空機産業についての招待講演などを行いました。また,経済産業省から「平成29 年度石油精製等に係る保安対策調査等事業(高圧ガス容器の再検査に関する調査研究)」を,石油エネルギー技術センターから「鋼製蓄圧器の超音波探傷検査方法に関する規格原案作成」を受託しました。
 教育活動では,技術講習会,実技講習会及び再認証(実技)講習会などを開催し,約7000 名に受講頂きました。本年3 月には,国際原子力機関IAEA の「アジア・太平洋州地域における自然災害発生時の土木インフラへの備えと復興を支援する技術協力プログラム」に関連したワークショップを本協会主催で開催しました。また,産業分野の拡大を意識し,経済産業省と航空産業における非破壊検査員の育成及び認証に関わる検討を行い,米国のNAS410 に準拠する国内初の訓練機関として兵庫県立工業技術センターに設置された「航空産業非破壊検査トレーニングセンター」の立ち上げに協力し,兵庫県からの委託でPT 及びMT のコースを開催しました。
 認証活動では,昨年春より本格始動したJIS Z 2305 に基づく再認証の実技試験の堅実な運営に努めましたが,一方で,ISO 9712:2012 の改正作業がISO/TC 135/SC 7 で開始されました。昨年12 月末現在における,JIS Z 2305 に基づく非破壊試験技術者の登録数は90270 件,NDIS 0604 及び0605 に基づく非破壊試験技術者の登録数は720 件となっています。ISO 18436-7 に基づくサーモグラフィによる「機械の状態監視及び診断技術者」については,カテゴリⅡの資格試験を開始しました。
 国際関連では,ASNT との協力関係を強化し,昨年10 月に,ASNT が実施するACCP 資格とJIS Z 2305 資格の二国間相互承認協定を締結しました。これは,永年の課題であった両国が完全平等となる協定の締結であり,特筆すべきものです。ASNT の資格者や活動は世界中に広がっており,今回の協定は,米国産業との交流のみならず,世界の多くの国々との交流を促進させることが期待されます。世界トップレベルの技術力と産業規模を有する両国が,様々な連携をすることは,世界の非破壊試験技術や関連産業の発展に極めて重要だと考えています。また,日本が,会長及び事務局を務めるアジア・太平洋非破壊試験連盟APFNDT,議長及び国際幹事を務めるISO/TC 135 非破壊試験技術委員会等の対応を行うとともに,各国協会との相互交流を促進し,グローバルネットワークの強化に努めています。昨年5 月に,韓国と日本の講演大会で交互に企画するインターナショナルセッションを韓国大邱で開催し,両国の交流を図りました。
 理事会では,「産業界課題マップ」の作成に着手しました。これは,各産業界の将来動向や課題を分析して,非破壊試験分野で今後何を行うべきかを議論し,本協会あるいは関係者の向かうべき方向性を考えるためのものです。今後,各方面の方々のご意見も伺いながら本協会の特徴であります学会機能と工業会機能のシナジーを十分に活用することで,産業界課題マップを整備し,本協会のビジョンを実現していきたいと考えております。

 

報告・展望(2017)

放射線による非破壊試験の活動報告と今後の展望
2017 年度放射線部門主査,浜松ホトニクス(株) 森  邦芳

Review on Radiographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2017
Hamamatsu Photonics K.K. Kuniyoshi MORI

キーワード:放射線透過試験,放射線画像,デジタルラジオグラフィ,X線 CT,中性子ラジオグラフィ

はじめに
 放射線部門は,放射線を利用した非破壊検査を広く対象としている。放射線を用いた透過撮影やCT(コンピュータトモグラフィ)による撮影が主な試験技術となっている。代表的なものとして,社会インフラ・産業インフラの高経年化の問題から,これらの健全性の評価に関する研究が従来から進められている。また工業用の非破壊検査分野ではLi イオン電池・携帯電話・車載用電子部品など多くの市場要求が高まり,X 線源や検出器などの基礎技術の発展が検査技術の高性能化を推進している。計測技術では試験データの保存や取り扱いの容易なデジタルラジオグラフィ(D-RT)が広まり,特にCT 技術の研究開発では国際標準規格の整備とともに急速に普及するものと予想されている。放射線を用いた透過撮影では,光源として主にマイクロフォーカスX線源をはじめとしてX線が多く使用されており,被検査物を透過したX線の減弱度合いを画像化し観察しているのが一般的である。平成29 年度の機関誌では,X線のもつ波動性や粒子性を利用し,新しい手法で画像の鮮鋭化,物質の識別や計測,補正などの研究開発に注目し,今後の新しい検査手法として実用化されることを期待し特集とした。
 以下に,平成29 年度の部門活動を報告するとともに,部門講演会,シンポジウム,秋季講演大会での発表,並びに機関誌の掲載記事を参考に技術動向と展望を述べる。

 

超音波探傷試験の活動報告と今後の展望
2017 年度超音波部門主査,(一財)発電設備技術検査協会 古川  敬

Review on Ultrasonic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2017
Japan Power Engineering and Inspection Corporation Takashi FURUKAWA

キーワード:超音波探傷,シミュレーション,ガイド波,フェーズドアレイ,信号処理,イメージング,非線形超音波,非接触超音波,レーザ超音波,空気超音波,電磁超音波,計測,材料評価,探傷装置,センサ,試験片

はじめに
 超音波部門では,超音波による非破壊試験に関する多くの研究講演活動が行われている。それらは現場の超音波探傷試験における様々な工夫をこらした新たな取り組みに関するものから,世界的にも最新と思われる知見を含む超音波計測の内容まで多岐にわたっており,毎年有用の知見が多く見られる。ここでは,2017 年度の超音波部門の活動実績を報告するとともに,機関誌や部門の活動で報告された論文や講演資料を中心に振り返り,2017 年度の動向をまとめる。

 

磁粉・浸透・目視試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望
2017 年度磁粉・浸透・目視部門主査,東北大学 橋本 光男

Review on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing in 2017
Tohoku University Mitsuo HASHIMOTO

キーワード:磁粉探傷,浸透探傷,目視検査,非破壊検査

はじめに
 磁粉・浸透・目視部門は表面探傷に関わる試験として広く活用されている。発電所,化学プラント,交通設備などをはじめ,最近ではインフラストラクチャのメンテナンスに磁粉・浸透・目視試験に関わる検査技術は重要な位置づけになっている。
 学術部門が従来の表面探傷分科会から,磁粉・浸透・目視部門,電磁気応用部門,漏れ試験部門の3 つの部門の新しい体制に変わったが,講演会及びシンポジウムは従来の表面探傷分科会を引き継ぎ,電磁気応用部門,磁粉・浸透・目視部門,漏れ試験部門の3つの部門は合同で行っている。これら3 つの部門は表面きずの検出という共通テーマを有しており,今後も共同で活動することが,お互いの部門の活性化にもつながっていくと考えている。
 ここでは,2017 年度の表面3 部門合同で行った講演会及びシンポジウムの概要を述べると共に磁粉・浸透・目視部門の活動報告及び今後の展望について述べる。

 

電磁気応用による非破壊試験の活動報告と今後の展望
2017 年度電磁気応用部門主査,岡山大学 塚田 啓二

Review on Electromagnetic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Electromagnetic Testing in 2017
Okayama University Keiji TSUKADA

キーワード:渦電流探傷,漏洩磁束探傷,電磁界解析,表面探傷,磁気センサ

はじめに
 電磁気応用部門は,磁粉・浸透・目視部門,漏れ試験部門と3部門合同で活動を行っている。プラントの配管や,製造装置,製品などの産業関連だけでなく,橋梁などの鉄鋼構造物などの社会インフラまで幅広く検査対象を扱っている。検査手法として電磁現象をもとに導電性や磁気特性のある様々な検査対象における欠陥による異常信号の検出法および解析法を扱っている。測定対象物の素材としても,鉄鋼材などの磁性体や,良導電体のアルミニウムや,さらには低導電率の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの非磁性体,あるいはその両方の磁性が混在しているステンレスなど幅広い材料でできた構造物や部品の欠陥の非破壊検査を扱っている。構造物内部の欠陥検査は,電磁現象における表皮効果のため深部に印加磁場が届かない問題があり,表面き裂が主な測定対象であった。このため,深部の欠陥の検査では今までは超音波や放射線検査などが適用対象とされていたが,磁気センサの高感度化とともに表面のみならず表面近傍の内部の欠陥検査まで広がりつつある。また,錆や塗装などに関係なく非接触でも測定できるので表面処理が必要なく迅速に測定できる特徴から,用途としても広がってきている。電磁気現象に基づいた検査方法では,基本的に対象物に磁場を印加して渦電流発生や漏洩磁束などを発生させ,コイルや磁気センサなどで電磁変化を捉えることにより検査を行っている。このため,構造物の形状や組成および測定対象の欠陥形状や状態変化に応じて,どのように磁場を印加すればよいのか,その印加装置の形状および印加磁場のシーケンスなどの最適化や,欠陥信号をどのように検出するのかを最適化していく必要がある。このため,多くの印加コイル形状や検出方法が考案され,その性能評価が行われている。例えば渦電流探傷法では,円環状の印加コイルにより均等な表面に平行な渦電流を発生させる従来の方法の他に,き裂に対して垂直あるいは斜めから直線状に渦電流を導入するコイルなどがあり,また漏洩磁束法では直流の強磁場で飽和状態近くにして印加磁場を漏洩する従来の方法の他,直流の強磁場に弱い交流磁場を重畳させて漏洩した交流磁場を測定する方法や,高感度な磁気センサを用いることにより,磁気飽和状態でなく弱い交流磁場だけで測定する方法など様々な方法が報告されてきている。また,欠陥の大きさや深さなどの形状をだれにでも判定しやすくするための欠陥の可視化があるが,2次元スキャニングやマルチセンサアレイなどのスキャニングなどをどのように配置し切り替えていくかなど工夫をされている。
 これら検査技術は,3 部門では共通の対象あるいは基礎技術が多いことから,お互いに情報共有して活動している。本報告では,従来から続けている3 部門の連携体制をもとに,平成29 年度において活動してきた内容を中心に報告するとともに,電磁気応用部門が取り扱っている検査の動向と展望について述べる。

 

漏れ試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望
2017 年度漏れ試験部門主査,(株)タセト 津村 俊二

Review on Leak Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Leak Testing in 2017
TASETO Co., Ltd. Shunji TSUMURA

キーワード:漏れ試験,LT 資格認証,表面 3 部門合同研究集会

はじめに
 漏れとは,ある限られた空間に保持されている流体(気体や液体)が,その空間の外へ流出する又は逆に空間の外から別の流体が流入してくる現象である。その漏れは,大切な物質の流失,環境汚染,火災・爆発等の事故,製品の品質低下を引き起こす。漏れ試験は,それらの漏れを,製造段階,稼働中の保守検査等で,微小な段階で検出するもので,品質低下や重大な事故を未然に防止するために不可欠な技術である。
 漏れ試験の使用される分野は,ガスや石油等の備蓄タンク,各種化学プラントやその配管,船舶,自動車から航空,宇宙分野,高度真空分野,食品や医療機器,電子部品等,非常に広範囲となっており,我が国の工業の品質,安全,環境等を背後で支えている重要な技術の一つとなっている。
 漏れ試験には対象とする物質の種類,検出感度レベル等により,表1 に示すような原理の異なる多くの試験方法がある。

 

応力・ひずみ解析の活動報告と今後の展望
2017 年度応力・ひずみ測定部門主査,青山学院大学 米山  聡

Review on Stress / Strain Measurement
Chairman of Research & Technical Committee on Stress / Strain Measurement in 2017
Aoyama Gakuin University Satoru YONEYAMA

キーワード:応力・ひずみ測定,ひずみゲージ試験,材料評価,強度評価,実験力学,光学的計測,画像処理,信号処理,可視化,バイオメカニクス

はじめに
 コンピュータによるモデリングとシミュレーションの発展により,試験・測定が行われないまま機器の開発・設計がなされることが多くなり,また,実験を行う研究者の数も少なくなってきた。しかしながら,ここ数年は試験・測定による評価を行うことやひずみ測定による検査を実施することの重要性が再認識されつつあるようである。その理由の1 つとして,構造物・機器の複雑化・微細化が進んだことが挙げられるであろう。このような構造物・機器の信頼性を確保するためにはシミュレーションが重要な役割を果たすのは言うまでもない。しかしながら,構造が複雑になると境界条件を正確に設定することが困難であり,シミュレーション結果の信頼性を実験により検証する必要がある。また,材料寸法の微細化により,材料特性が結晶組成分布の影響,さらには表面や界面の影響を受けてバルク的な特性と異なったものとなる。このような場合においても,実験による評価が不可欠である。同様に,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に代表される高分子基複合材料はその応用範囲・用途が広がり続けているが,その特性や破壊挙動は従来から多く用いられている金属材料とは全く異なり複雑なことから,試験・測定による評価が不可欠である。そして,これらの試験において測定対象となる最も基本的な量は応力やひずみである。
 応力・ひずみ測定部門は,そのような基本な物理量である応力やひずみの測定手法および解析・評価手法の開発・改良,応力・ひずみ測定に基づく材料特性評価や強度評価,さらには応力・ひずみ測定手法の様々な分野への応用など,幅広い分野を対象とし,それらの学術研究成果の公知化および実用化,研究動向の分析,登録会員間の情報交換と相互研鑽などを主目的として活動している。応力・ひずみ測定の対象となる材料は機械・構造物を主に構成する金属材料やコンクリートばかりでなく,高分子材料,セラミックス,生体材料・組織,種々の複合材料など多岐にわたっている。これら様々な材料を対象として,例えば超高温・低温下での挙動や衝撃負荷下での挙動など,シミュレーションでは信頼性の得られない特殊環境下でのひずみ測定の研究が目立っている。また,近年のインフラ構造物の老朽化問題を反映して,その健全性評価に対してひずみ測定を用いる研究も行われている。一方,用いられる計測手法も多岐にわたるが,ここ数年では,光学的手法やX 線を用いた手法,デジタル画像を用いた手法などが多く報告されている。以下では,2017 年度における活動と今後の展望を要約する。

 

保守検査の活動報告と今後の展望
2017 年度保守検査部門主査,(国研)産業技術総合研究所 津田  浩

Review on Maintenance Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on Maintenance Inspection in 2017
National Institute of Advanced Industrial Science & Technology Hiroshi TSUDA

キーワード:経年変化,健全性評価,残留応力,損傷評価,形状測定

はじめに
 保守検査部門はプラント設備,社会インフラなどの構造信頼性を維持・向上させるため,既存検査技術の現場適用事例紹介の他,近年,盛んに開発が進められているロボット,IoT,および人工知能を活用した新しい検査技術を紹介する場を設けている。このような場を通してプラント設備,社会インフラを運営,または管理する方々と信頼性と経済性を両立した効率的な保守検査を検討し,その実施を促すことを部門活動の目的としている。また現場指向X 線残留応力測定法研究委員会を4 年前から設立し,我が国が開発を主導するcos α 法に基づく残留応力測定技術の普及促進に努めている。

 

製造工程検査の活動報告と今後の展望
2017 年度製造工程検査部門主査,香川大学工学部 林 純一郎

Review on In-Process Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on In-Process Inspection in 2017
Kagawa University Jun-ichiro HAYASHI

キーワード:画像処理技術の実利用化,目視検査の自動化,製造工程検査,画像センシング,AI

はじめに
 近年,深層学習や機械学習など人工知能(AI)技術の発展はめまぐるしく,自動運転車や製造工程検査へ用いる実用化が盛んに行われている。特に製造工程検査においては,近年の人口減少に伴い,人の目に代わる技術として欠かせない存在となりつつある。カメラや三次元計測装置等のセンサの低価格化はもちろんのこと,AI 技術を利用する場合に膨大な計算量を処理するGPU の低価格化に伴い,比較的生産規模の小さな現場においても,画像処理による検査システムが導入できる状況であり,地方の中小企業からも共同研究の相談が多く寄せられる。このように,検査への画像処理技術の導入は,熟成期を迎えつつあるが,検査対象は様々であり,検査対象のきずや欠陥,その大きさや種類なども多種多様である。また工場等の限定された条件下における検査のみではなく,屋外や昼夜といった非整備環境での検査の自動化は容易ではない。製造工程検査における要素技術は多岐にわたるが,以上のような画像処理技術を取り巻く状況の中,当部門では現在までのところ,デジタル画像処理による検査の定量化・自動化技術を中心に学術活動を展開している。
 画像処理技術は検査,ロボット,ITS,医療,メディア処理,セキュリティ,インターフェイスなど,その応用範囲の拡大は留まるところを知らず,ますます拡大している。つまり,その技術革新は著しく,最新の画像処理技術を当非破壊検査協会の皆様にリアルタイムに紹介することが,製造工程検査部門の存在意義であると考え活動してきた。本部門は各種学会・研究委員会の枠を越えて連携・協力し,広く画像処理・センシングに関するシンポジウムやワークショップを年に3 回程度共同企画し,協賛している。これによって,非破壊検査・外観検査・目視検査に関わる画像処理技術に常に新たな風を吹き込み続けている。

 

アコースティック・エミッションによる非破壊試験の活動報告と今後の展望
2017 年度アコースティック・エミッション部門主査,京都大学 塩谷 智基

Review on Acoustic Emission
Chairman of Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2017
Kyoto University Tomoki SHIOTANI

キーワード:AE,AE コンファレンス,AE アカデミー,複合材料,光ファイバ

はじめに
 アコースティック・エミッション(AE)部門は,アコースティック・エミッション特別研究委員会を母体として組織され,平成22年度より活動を開始した。AE 部門ではAE 特別研究委員会と同様に,AE 法を基盤とした非破壊検査・非破壊評価技術および,その応用分野の発展・普及を目的とした活動を行っている。以下に平成29 年度の活動をまとめる。

 

新素材の非破壊評価の活動報告と今後の展望
2017 年度新素材に関する非破壊試験部門主査,東京工業大学 水谷 義弘

Review on Non-Destructive Evaluation of New Materials
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Evaluation of New Materials in 2017
Tokyo Institute of Technology Yoshihiro MIZUTANI

キーワード:先進材料,非破壊計測

はじめに
 新素材に関する非破壊試験部門では,新素材の非破壊評価に関する研究,調査及び普及を目的とした活動を行っている。特に,様々な非破壊試験技術及び非破壊評価技術の応用を横断的に調査していることに本部門の特徴がある。例えば,複合材料の試験技術,材料の劣化評価に関連した計測技術や,高温環境における計測技術などを切り口として,他の団体や研究会との連携を積極的に行いながら調査を行っている。2017 年度は,合同シンポジウムを1 回,シンポジウムを1 回開催した。また,機関誌「非破壊検査」の特集号を1 回担当した。以下にその活動の概要をまとめる。

 

鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験の活動報告と今後の展望
2017 年度鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門主査,日本大学 湯浅  昇

Review on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete Structure
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete in 2017
Nihon University Noboru YUASA

キーワード:活動報告,鉄筋コンクリート構造物,非破壊・微破壊試験,研究委員会,標準化,講習会

はじめに
 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(以下,RC 部門)では, 2017 年度は3 回の行事が活発に行われた。
 そのほか,学術委員会,標準化委員会,教育委員会,編集委員会と関連した活動などについてもその概要を報告する。

 

赤外線サーモグラフィによる非破壊試験の活動報告と今後の展望
2017 年度赤外線サーモグラフィ部門主査,防衛大学校 小笠原永久

Review on Infrared Thermographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Infrared Thermographic Testing in 2017
National Defense Academy Nagahisa OGASAWARA

キーワード:赤外線サーモグラフィ試験,非破壊検査,状態監視

はじめに
 赤外線サーモグラフィ(TT)部門では,ミニシンポジウム開催などの学術活動のほか,実技を含む講習会の開催,ISO・JIS・NDIS 規格の制定・整備,技術者認証制度の構築などを行い,試験技術の開発・確立・普及を目的とした活動を継続して行っている。

 

報告(2017)

学術委員会活動報告
2017 年度学術委員会委員長,東北大学 三原  毅

Report of Academic Affairs Committee
Chairman of Academic Affairs Committee in 2017
Tohoku University Tsuyoshi MIHARA

キーワード:学術行事見直し,表彰実績,研究助成事業・研究奨励金制度

はじめに
 工業製品や構造物の安全確保のために今日利用されている非破壊検査技術が学術研究に端を発したことを考えると,本協会においても学術活動はその基礎をなすものである。学術委員会は,協会の学術活動全般を総括する位置づけであり,関連する2 名の理事と12 部門及び3 研究会の主査から構成されている。2017 年度の学術委員会の委員構成は以下の通りであった。
 三原 毅:委員長(学術担当副会長)
 西野秀郎:学術担当理事
 望月正人:技術開発センター長
 森 邦芳:放射線(RT)部門主査
 古川 敬:超音波(UT)部門主査
 橋本光男:磁粉・浸透・目視(MT/PT/VT)部門主査
 塚田啓二:電磁気応用(ET/MFLT)部門主査
 津村俊二:漏れ試験(LT)部門主査
 米山 聡:応力・ひずみ測定(SSM)部門主査
 塩谷智基:アコースティック・エミッション(AE)部門主査
 小笠原永久:赤外線サーモグラフィ(TT)部門主査
 林純一郎:製造工程検査(IPI)部門主査
 津田 浩:保守検査(MI)部門主査
 湯浅 昇:鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験(RC)部門主査
 水谷義弘:新素材に関する非破壊試験(NMT)部門主査
 小原良和:非線形現象を利用した非破壊計測技術に関する研究会主査
 林 高弘:超音波による非接触材料評価研究会主査
 笠井尚哉:光3 次元計測技術による非接触非破壊検査の評価と標準化に関する研究会主査
 2017 年度は,7 月,11 月,2 月の計3 回,学術委員会を開催した。以下に2017 年度の学術活動について報告するが,各部門における実質的な学術活動の詳細についてはそれぞれの報告・展望を,また国際学術活動については国際学術委員会活動報告をご覧いただきたい。

 

標準化委員会活動報告
2017 年度標準化委員会委員長,和歌山大学 村田 頼信

Report of Standardization Committee
Chairman of Standardization Committee in 2017
Wakayama University Yorinobu MURATA

キーワード:非破壊試験,非破壊検査,規格,NDIS,JIS,ISO

はじめに
日本非破壊検査協会(JSNDI)では,標準化委員会とISO 委員会が協力し,また,経済産業省や日本規格協会等の関連学・協会との緊密な連携の下,日本国内外の非破壊試験に関する標準化の一体的な推進を図っている。
 本報告では,標準化委員会の2017 年度の活動として,原案作成や改正に関わる日本工業規格(JIS)及び日本非破壊検査協会規格(NDIS)の動向及び関連の事業について説明する。なお,ISOの動向に関しては,別途ISO 委員会活動報告がなされている。

 

ISO 委員会活動報告
2017 年度ISO 委員会委員長,ものつくり大学特別客員教授 大岡 紀一

Report of ISO Committee
Chairman of ISO Committee in 2017
Institute of Technologists, Guest Professor Norikazu OOKA

キーワード:ISO/TC 135,ICNDT,資格及び認証,CEN/TC 138

概要
 ISO(国際標準化機構)規格案件に関する事項を検討,審議及び投票のための集約,さらにTC 44(溶接),TC 17(鋼)等の国内審議団体と連携をとり関連ISO 規格の対応とともに情報交換等を前年度に引き続き実施した。
 国際会議に関しては,シンガポールのマリーナベイサンズ・ベイフロント4F 展示会場において2017 年11 月13 日から17 日まで行われた第15 回APCNDT に併設して2017 年11 月16 日(木)~ 17 日(金)の2 日間,展示会場4F 4010A 会議室で開催されたISO/TC135/SC 7(資格・認証試験分科委員会)及びWG 9 の合同会議に出席して各SC の活動状況を把握し国内の規格関連の諸活動に反映するため討議に参画した。
 今回開催された関連SC はISO 9712 の改正を目的にSC 7(Qualification and Certification)だけの開催であった。
 会議には大岡紀一(ISO/TC 135 議長,ISO 委員会委員長,JSNDI 顧問),土屋武雄(ISO/TC 135 国際幹事,SC 6 議長),緒方隆昌(ISO 国内審議団体代表,SC 7 委員,JSNDI 会長),八木尚人(ISO/TC 135/SC 7/WG 9 エキスパート,JSNDI 教育担当理事),大岡昌平(ISO/TC 135/SC 6 国際幹事,SC 7 委員)が出席した。
 一方,国内におけるJSNDI のISO 委員会としてはISO/TC 135及び関連SC 対応のために第1 回分科会を2018 年2 月21 日に,本委員会を2018 年3 月6 日に開催している。
 これらの諸活動について以下に述べる。

 

国際学術委員会活動報告
2017 年度国際学術委員会委員長,東北大学 三原  毅

Report of International Committee
Chairman of International Committee in 2017
Tohoku University Tsuyoshi MIHARA

キーワード:非破壊検査,ICNDT,WCNDT,APFNDT, APCNDT,国際会議

はじめに
 国際学術委員会は,国外の非破壊検査法に関する広範な情報の 交換・収集及びその国内への普及・広報を通じて関連技術者・研 究者などの相互交流を図り,日本非破壊検査協会(JSNDI)の国 際学術活動を推進することを目的とする委員会で,本協会の学術 以外を含む国際化対応の活発化に伴い,本委員会の活動もその重 要性を増してきている。  具体的には,国際非破壊試験委員会(International Committee for Non-Destructive Testing;ICNDT)及びその傘下にあるアジア・太平洋非破壊試験連盟(Asia-Pacific Federation for Non-Destructive Testing;APFNDT)1)における諸活動,並びに諸外国の非破壊試験協会などとの交流と学術活動に特化した情報交換は,本委員会の主な所掌範囲になる。ただし,ICNDT 及びAPFNDT の活動をはじめとする国際的活動は,学術のみに留まらず,認証,教育,標準化などが相互に密接に関連しており,JSNDI では,国際活動の全般的な対応として,国際対応WG がそれを担い,幅広い分野で的確に対応を行っている。従って,本委員会では,国際対応WG と連携し,学術分野に特化した国外の非破壊検査法に関する情報の交換及び収集,国内への普及及び広報を通じて関連する研究者などの相互交流を図り,JSNDI の学術活動を推進する分担となる。
 本稿では,2017 年度における国際学術委員会関連の活動を中心に報告し,関連する各種委員会などの国際的活動の一部も併せて報告する。
 国際学術委員会の委員任期は2 年(留任あり)であり,2017 から2018 年度の委員構成(50 音順)を以下に示す。
  三原 毅 委員長,2017 年度学術担当副会長
  井原郁夫 LU2013 論文委員会委員長
  大岡紀一 元会長,JSNDI 顧問,ICNDT 名誉会員,
       ICNDT PGPC 委員,ICNDT WG1 委員,
       APFNDT 会長(2013 年11 月から),
       ISO 委員会委員長
  落合 誠 2017 年度庶務担当理事
  加藤 寛 元会長
  廣瀬壮一 元会長,産学連携担当理事
 なお,本稿では,2017 年度における国際学術委員会関連の活動報告に先立って,国際学術活動に特化した動きを時系列的にまとめた。

 

教育委員会活動報告
2017 年度教育委員会委員長,三菱日立パワーシステムズ検査(株) 八木 尚人

Report of Education Committee
Chairman of Education Committee in 2017
Mitsubishi Hitachi Power Systems Inspection Technologies, Ltd. Naoto YAGI

キーワード:訓練,講習会,JIS Z 2305:2013,ISO 9712:2012

はじめに
 教育委員会(以下,「当委員会」という)は,非破壊検査に従事する技術者の技量向上を目的として各種教育・訓練の計画と実施並びに関係書籍の編集などを行っている。
 また,JIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」への改正に伴う訓練カリキュラムの見直しや再認証実技試験に対応する実技試験の運用等の対応をこれまでに推進してきており,今後,国際相互承認を視野に入れた訓練組織としてのさらなる体制整備を進めていきたいと考えている。ここでは,2017 年度の当委員会の主な活動実績を報告する。

 

認証運営委員会活動報告
2017 年度認証運営委員会委員長,東京工業大学 井上 裕嗣

Report of Certification Steering Committee
Chairman of Certification Steering Committee in 2017
Tokyo Institute of Technology Hirotsugu INOUE

キーワード:非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,NDIS 0602,NDIS 0603,NDIS 0604,NDIS 0605,ISO 18436-7

はじめに
 日本非破壊検査協会の認証事業の中心となっているのは,JISZ 2305 に基づく非破壊試験技術者の認証である。2003 年にJIS Z2305 に基づく認証が開始されてから15 年が経過し,この認証資格が十分に社会に認識されたことに伴って,認証制度の運用責任も年々重みを増している。この間,特に2013 年のJIS Z 2305 改正に伴う旧制度から新制度への移行は大きな課題であったが,2017年春期からは新制度による再認証試験を開始し,ようやく定常的な運用に至っている。
 当協会では,次のそれぞれの規格に基づく技術者認証を実施している。
  JIS Z 2305 「 非破壊試験技術者の資格及び認証」
  NDIS 0602 「非破壊検査総合管理技術者の認証」
  NDIS 0603 「超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証」
  NDIS 0604 「赤外線サーモグラフィ試験―技術者の資格及び認証」
  NDIS 0605 「非破壊試験―漏れ試験技術者の資格及び認証」
  ISO 18436-7 「 Condition monitoring and diagnostics of machines – Requirements for qualification and assessment of personnel – Part 7: Thermography」
これらのうちJIS Z 2305 に基づく認証は「認証運営委員会」,NDIS0604 及びNDIS 0605 に基づく認証は「NDIS 認証委員会」(認証運営委員会と合同)で実施している。また,NDIS 0602 に基づく認証は「非破壊検査総合管理技術者認証委員会」,NDIS 0603 に基づく認証は「PD 認証運営委員会」,ISO 18436-7 に基づく認証は「CM 技術者認証運営委員会」でそれぞれ実施している。さらに,「国際認証委員会」の協力の下で,諸外国との相互認証及び資格乗入を実施している。
 なお,2017 年度の認証運営委員会の委員構成(50 音順)は次のとおりであった。
  井上裕嗣 委員長,認証担当理事
  蔭山健介 問題管理委員長
  谷口良一 認証広報委員長
  野村友典 試験基準委員長
  藤岡和俊 PCP WG 主査
  古川 敬 倫理苦情処理委員長,認証担当理事
  三原 毅 試験委員長
  村田頼信 査定委員長,NDIS 認証委員長,認証担当理事
  吉田和行 認証事業部長
  望月正人 CM 技術者認証運営委員長
 本稿では,JIS Z 2305 に基づく認証を中心に,関連する認証及びその他の認証関連事項を報告する。

 

出版委員会活動報告
2017 年度出版委員会委員長,(株)検査技術研究所 岡  賢治

Report of Publication Committee
Chairman of Publication Committee in 2017
KGK Co., Ltd. Kenji OKA

キーワード:出版,テキスト,問題集,規格

はじめに
 出版委員会は,非破壊検査技術の教育・普及に関する出版物の企画,編集,制作及び頒布,管理を行うことによって,非破壊検査技術水準の向上を図ることを目的として設置された委員会であり,その活動は教育委員会の活動と密接に関係している。そのため,その構成委員は,各部門の関係者とともに教育委員会からの派遣委員,理事等で構成されている。図1 に,出版活動の典型的な例を示す。

 

試験片委員会活動報告
2017 年度試験片委員会委員長,JFE テクノリサーチ(株) 高田  一

Report of Reference Block Committee
Chairman of Reference Block Committee in 2017
JFE Techno-research Corporation Hajime TAKADA

キーワード:標準試験片,対比試験片,分類用ゲージ,トレーサビリティ,品質証明

はじめに
 当協会では非破壊検査技術の普及及び技術水準の向上に努める活動の一環として,非破壊試験の実施に必要な標準試験片,対比試験片,及びゲージを販売している。非破壊試験において,標準試験片,対比試験片,及びゲージは,試験装置の調整及び性能確認,試験結果の定量化,試験方法の標準化,及び試験結果への影響因子の評価などの重要な業務に用いられる。以下,標準試験片及び対比試験片をまとめて頒布試験片または試験片類と称する。
 試験片類及びゲージの販売先は主に国内であり,2017 年度の販売数は,超音波関連試験片約640 体,磁粉探傷試験用標準試験片約3130 枚などとなっている。2017 年度の販売総額はほぼ8.4千万円であった。
 試験片類及びゲージの年間販売数及び年間販売額は,多少の増減があるものの,およそ上記の数量及び金額で推移している。毎年,これだけの数の試験片類を頒布しているのは,国内の非破壊試験業務に当協会の頒布試験片が必要であり,かつ,定着していることの現れであろう。
 当委員会の活動の流れや経緯については,2014 年度から2016年度の報告1),16),17)も参照いただくとして,今回はこの一年の活動の進展状況についてご紹介する。

 

広報活動委員会活動報告
2017 年度広報活動委員会委員長,大阪府立大学 谷口 良一

Report of Public Relations Committee
Chairman of Public Relations Committee in 2017
Osaka Prefecture University Ryoichi TANIGUCHI

キーワード:非破壊検査,広報活動,セミナー,展示会

はじめに
 広報活動委員会では,協会の活動を情報公開し会員へのサービス向上や新入会員の増加促進に努めている。具体的には,協会の行事や各種案内を主として協会ホームページで公開している。また,社会の様々な年齢層を対象とした各種セミナーや展示会への参画などを通じて,広く一般に向けて非破壊検査技術の認知度の向上を目指した広報活動を行っている。ここでは広報活動委員会の平成29 年度の主な取り組み事項について報告したい。
 平成29 年度は,前年に引き続き,ホームページを利用した広報活動の充実に努めた。また工業高校生をはじめとした若手技術者の育成を目的とした「明日を担う次世代のための非破壊検査セミナー」を継続して発展させるとともに,子供向けの非破壊検査技術の啓蒙活動として,(一社)日本能率協会主催の「夏休み2017 宿題・自由研究大作戦!」に参加した。また,協会のシンボルキャラクターともなっているノンディを,さらに利用し発展させるとともに,国際的な活動も展望し,国際会議における出展内容の充実も検討した。
 なお,平成29 年度の広報活動委員会は次に示すように計4回開催した。第1 回目:平成29 年6 月29 日(木),第2 回目:平成29 年8 月25 日(金),第3 回目:平成29 年12 月8 日(金),第4 回目:平成30 年3 月9 日(金)。
 以下,平成29 年度の主な活動について報告する。

 

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