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機関誌

2018年01月号バックナンバー

2018年1月1日更新

目次

巻頭言

「新年のご挨拶」  緒方 隆昌

 2018 年の年頭にあたり,謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 我が国経済は,約5 年の景気回復が続いていると見る一方で,世界経済の成長に比して低迷したまま戻らないもどかしさがあります。経済には多くの要因が複合的に作用しますが,グローバル経済においては,①産業・製品・サービス,②販売・提供・生産の地域,③高付加価値化・差別化の3 つの要素を時間軸上で最適化することが成長の鍵となります。どんな産業・製品販売・サービス提供を,どこの国で,どのような特徴を持って,どの期間展開すればよいかということです。これらの予測には,どの地域で何が求められているのか,どのようなニーズが掘り起こせるのかを知ることが原点となります。また,ビジネスの潮流(成長と衰退),いわゆる旬の時期の予測も重要です。成長のピークを過ぎても,海外展開で地域を変えたり,技術開発などで付加価値をつけたりと,ビジネスの展開を図るわけですが,次に打つ手がなくなると,最後は差別化要素を失いコモディティー化して,安値競争に陥ることになります。非破壊試験技術という切り口で各産業の横串機能を有する当協会においては,学会機能と業界団体機能を活用して,経済成長及びそれに資する学術の発展に向け効果的な活動を展開していくことが極めて重要になります。
 昨年,さらなる発展に向けた当協会のビジョンを制定しました。“JSNDI ミッションステートメント”,“JSNDIバリュー”,さらに,これらを実現する具体的な“JSNDI アクション”です。このビジョンの根底には,協会のステークホルダー(関係者)との連携を深め,シナジー(相乗効果)のある体質を作り上げて,活動及びサービスを強化する狙いがあります。
 具体的な展開として,まず,各産業界における非破壊試験に関する課題一覧(産業界課題マップ)を整備して,今後の協会活動に役立てる方針です。例えば,航空機産業では非破壊試験技術者の育成が喫緊の課題で,経済産業省などが支援を検討していますが,当協会はこれに協力し,昨年6 月に設立された日本航空宇宙非破壊試験委員会(NANDTB-Japan)の事務局を務めることとしました。11 月には航空産業非破壊検査トレーニングセンターも設立され,当協会は兵庫県から運営を受託しています。また,石油精製業関連においては,技術の進歩や国際的潮流の変化など産業保安を取り巻く状況の変化に対応する「高圧ガス保安のスマート化」への対応が求められています。当協会は,経済産業省から,平成29 年度石油精製業保安対策事業(高圧ガス容器の再検査に関する調査研究)を受託し,「NDIS 2430:2017 半導体製造用高圧ガス容器の超音波探傷検査による再検査方法」を制定しました。さらに,将来の水素社会を見据えた水素容器の検査についての検討も行っています。
 一方,グローバル市場を意識した活動としては,昨年10 月に福岡で開催した秋季講演大会で,米国非破壊試験協会(ASNT)のACCP(ASNT Central Certification Program)資格とJIS Z 2305( 非破壊試験技術者の資格及び認証)資格の二国間相互承認の基本協定を締結しました。本協定では,工業分野を「供用前・供用期間中試験(製造を含む)」に合わせることに合意し,お互いの非破壊試験技術者資格を相互に認め合うこととしました。今後は,本協定の運用に向けて,ASNT との詳細な調整や準備を行ってまいります。
 また,4 年に一度開催されるAPCNDT(アジア・太平洋非破壊試験会議)が11 月にシンガポールで開催され,学術交流を深めるとともに,同時開催されたAPFNDT(アジア・太平洋非破壊試験連盟),ICNDT(世界非破壊試験委員会),ISO/TC 135(ISO 非破壊試験技術委員会)等の会合に日本代表団を派遣して日本の意見を反映させています。APFNDT では,これまでの当協会の貢献に対して,第1回APFNDT 賞が贈られたことは,これまでの関係各位の努力が評価されたものと嬉しく思います。
 当協会のビジョンについては,協会内の全委員会において周知を進めていますので,順次,このビジョンに基づいた施策が,それぞれの分野で実行される予定です。  最後に,本年の皆様方のご多幸とご発展を心より祈念いたします。

 

特集

「非破壊試験の規格の最新動向(標準化委員会からの報告)」特集号刊行にあたって
 釜田 敏光、足立 忠晴

 一般社団法人日本非破壊検査協会(JSNDI)の重要な活動のひとつとして,非破壊試験の標準化と普及,すなわち,非破壊試験に関する日本工業規格(JIS)および日本非破壊検査協会規格(NDIS)の審議,承認および維持があり,これを当協会の標準化委員会が担当し,ISO 委員会と連携して進めている。標準化委員会は,放射線,超音波,磁粉,浸透,渦電流・漏洩磁束,目視,漏れ,赤外線サーモグラフィ,ひずみ試験,アコースティック・エミッション,鉄筋コンクリート構造物に関する11 の専門別委員会で構成されており,それぞれの専門別委員会で各分野の規格が検討されている。多岐にわたる製品や社会インフラの品質の確保や維持,安全な操業や稼働寿命の延伸など,安心・安全で環境負荷の小さな社会実現へ貢献するためにも標準化の活動は重要である。さらに技術開発の進歩が加速し,従来からの非破壊検査・試験方法も急速に発展してきており,規格の制定,改正も現場の技術に適合するように迅速に進めていかなければならない。さらに非破壊検査・試験の業務に関して,国内だけでなく,海外での業務も増加している。また国内から海外へ技術移転などもあり,海外での取引を円滑にするためにも,非破壊検査・試験の分野も国際化が進んでいる。これに伴って,JIS,NDIS においてもISO 規格と整合するように制定,改正される傾向にある。
 標準化に関する情報は,制定,改正がなされた規格について個別に機関誌上において報告されているが,非破壊検査・試験に従事する一般の技術者には,規格全体の動向,他の専門分野での規格,ISO 規格との関連,制定・改正に至った経緯などの情報を得ることが困難ではないかと思われる。そこで2012 年秋季講演大会で標準化委員会の企画として各専門別委員会から担当の規格の動向について説明がなされたので,それらをまとめて解説として本機関誌2013 年6 月号に「非破壊検査・試験の規格の動向(標準化委員会からの報告)」特集号として掲載した。
 2013 年の特集号の発刊後も,JSNDI の標準化委員会では多くの規格について継続して審議している。2013 年度から2016 年度の期間内に,JIS に関して6 件の制定,8 件の改正,2 件の廃止,NDIS に関して3件の制定,8 件の改正,3 件の廃止を行っている。そこで,前回の特集号以降に制定,改正された規格,それに関する規格について,各専門別委員会から報告を基に標準化委員会として本特集号を企画した。本特集号では,放射線,超音波,浸透,渦電流・漏洩磁束,ひずみ試験の 5 つの専門別委員会の報告で構成されている。本特集号以外にも標準化に関する報告は他の特集号の中でも解説されているので,それらも参考にしていただきたい。
 標準化委員会の一連の活動は,日本工業標準調査会や日本規格協会をはじめとする関連学・協会の支援,さらに本協会の会員の皆様の,日々のご尽力とご協力のおかげと存じます。心より厚く御礼申し上げます。何かご意見などがございましたら,ご連絡をいただければ幸いです。

 

解説

非破壊試験の規格の最新動向 (標準化委員会からの報告)

放射線透過試験の規格制定,改正などに関する国内外の動向について
 学校法人ものつくり大学 大岡 紀一

International and National Trends Related to Establishment and Amendment
for Standards of Radiographic Testing

Institute of Technologists Norikazu OOKA

キーワード:放射線透過試験,デジタルラジオグラフィ,ISO規格,JIS規格,標準化,ISO/TC 135

はじめに
 非破壊試験に関する各種規格は社会資本のニーズに対応して変化すべきものであり,そのために国際整合化の中での標準化活動が近年極めて重要となってきている。
 ここでは,国内外の規格制定,改正の動向について,まず工業標準化及び国際化の経緯と取り組みについて触れ,次に放射線透過試験に絞って国外規格としてのISO 規格,国内規格としてJIS 及び日本非破壊検査協会規格であるNDIS の動向について述べる。

 

放射線透過試験用透過度計及び像質計に関するJIS 制定及び改正について
 学校法人ものつくり大学 大岡 紀一、(地独)東京都立産業技術研究センター 河原 大吾、
 新日本非破壊検査(株)脇部 康彦

Establishment and Amendment of JIS Related to Penetrameters and Image Quality
Indicator for Radiographic Testing

Institute of Technologists Norikazu OOKA
Tokyo Metropolitan Industrial Technology Reserch Institute Daigo KAWAHARA
Shin-Nippon Nondestructive Inspection Co., Ltd. Yasuhiko WAKIBE

キーワード: 放射線透過試験,規格,透過度計,複線形像質計,IQI 値,像の不鮮鋭度

はじめに
 2015 年及び2017 年に放射線透過試験用透過度計及び像質計に関するJIS Z 2306 の改正及びJIS Z 2307 の制定がそれぞれ行われたため,対応する国際規格と照らし合わせつつ,その内容について紹介する。
 国内における透過度計は,1968 年に制定されたJIS Z 3104「鋼溶接部の放射線透過試験方法及び透過写真の等級分類方法」をはじめとして材料ごとに規定されていたが,これらの透過度計を統一して規定する規格として1991 年にJIS Z 2306「放射線透過試験用透過度計」が制定され,2000 年の改正を経て,撮影方法における像質の判断の基幹として関わってきた。
 放射線透過試験の像質に関わる国際規格として, ISO 19232「Non-destructive testing - Image quality of radiographs」が2004 年に制定され,2013 年に改正された。このISO 規格はPart 1 ~ 5 で構成されており,それぞれ放射線透過試験における透過度計を含めた像質計,像質の決定及び評価についての規格となっている1)−5)。
 JIS Z 2306 の国際整合化について検討が行われた結果,ISO19232-1 及びISO 19232-2 との整合化及び国内の使用状況を考慮した改正が行われた。
 一方,ISO 19232-5 で規定されている複線形像質計(duplexwire-type IQI)は,透過画像における像の不鮮鋭度を決定するために用いられ,識別最小寸法を決定するために用いる透過度計とは適用の目的が異なる。ISO 規格では透過度計と複線形像質計は一つの規格の各パートで規定されているが,国内では複線形像質計の規定をJIS Z 2306 に組み込まないで,JISZ 2307「放射線透過試験用複線形像質計による像の不鮮鋭度の決定」を別規格として制定した。
 以下に国内外それぞれの規格の主な内容について述べる。

 

JIS Z 3060:2015「鋼溶接部の超音波探傷試験方法」の紹介
 東北大学 三原 毅、日本電磁測器(株)名取孝夫
 立川NDTテクノ 立川克美、日本検査(株)守井隆史

Overview of the Method for Ultrasonic Testing for Welds
of Ferritic Steel JIS Z 3060:2015

Tohoku University Tsuyoshi MIHARA
Nihon Denji Sokki Co., Ltd. Takao NATORI
Tachikawa NDT Techno Katsumi TACHIKAWA
Japan Inspection Co., Ltd. Takashi MORII

キーワード:超音波探傷,溶接部,斜角探傷,きずの分類,TOFD 法

はじめに
 JIS Z 3060「鋼溶接部の超音波探傷試験方法」について,前回の改正(2002 年3 月)から13 年が経過しており,今回の改正はこの間の技術的,設備的な進歩に対応している。前回の改正では破壊力学で要求されるきずの指示高さの測定方法について,端部エコー法によるきずの指示高さの測定方法が参考として附属書に取り入れられた。今回の改正では更に新しい技術として,TOFD 法によるきずの指示高さの測定方法が附属書Iに参考として加えられている。なお,これらきず高さの測定方法は,特に要求があったときに適用するものとし,測定方法は受渡し当事者間の協議により選択するものとしている。更にこの間,JIS Z 2351「超音波探傷器の電気的性能測定方法」が2011 年に,JIS Z 2352「超音波探傷装置の性能測定方法」が2010 年に改正されたため,これら改正された規格との整合が図られている。
 なお,JIS Z 3060 と類似した国際規格であるISO 17640:2010Non-destructive testing of welds - Ultrasonic testing -Techniques testing levels and assessment について,国際規格との整合化の観点から詳細な比較検討を行った。ISO 17640:2010には図1 に示すようにJIS Z 3060:2015 にはない品質レベル及び試験レベルの規定が存在し,規格の体系及び適用範囲で運用上,極めて複雑な相違点が存在することから,改正作業は極めて困難な道のりをたどった。JSNDI と経済産業省産業基盤標準化推進室との協議により,JIS Z 3060 に対応する国際規格は存在しないとの結論に達した。
 JIS Z 3060 は溶接部の超音波探傷の基本となる規格である。他のJIS 規格,法令及び多くの業界規格で引用されている現状を考慮すると無理にISO との整合化を図れば,かえって大きな混乱が生じることが懸念された。図1 及び表1 にJIS Z 3060:2015 とISO 17640:2010 との適用範囲の技術的相違について示した。

 

JIS Z 2355-1, 2:2016 非破壊試験-超音波厚さ測定-の制定の要点と解説
 JFE スチール(株)飯塚 幸理

Summary and Explanation of the Enactment of JIS Z 2355-1, 2:2016
Non-destructive Testing −Ultrasonic Thickness Measurement −

JFE Steel Corporation Yukinori IIZUKA

キーワード:超音波試験,厚さ測定,厚さ計,JIS,ISO

はじめに
 超音波厚さ測定に関するJIS 規格はJIS Z 2355として1987年に制定され,1994 年と2005 年の改正を経て長く国内で使われてきた。2012 年に超音波厚さ測定に関するISO 規格が制定されたことを踏まえて,旧規格とISO規格との整合を考慮した形で新たな超音波厚さ測定規格として,「JIS Z 2355-1:2016非破壊試験−超音波厚さ測定−第1部:測定方法」および「JIS Z2355-2:2016 非破壊試験−超音波厚さ測定−第2部:厚さ計の性能測定方法」が2016 年に制定された。本稿では新規格の概要について紹介する。

 

「浸透探傷試験」のJIS Z 2343 規格の現状について
 (一財)電子科学研究所 藤岡 和俊

Trend of Revision Standard JIS Z 2343 “Penetrant Testing”
Electron Science Institute Kazutoshi FUJIOKA

キーワード:ISO 3452-1~ 6,ISO 3059,JIS Z 2343-1~ 6, JIS Z 2323, 浸透探傷試験,
余剰浸透液,有効性,色温度,ワイプオフ法,半値全幅,LED 光源

はじめに
 浸透探傷試験方法は,金属材料の表面開口きずの非破壊的検出方法として広く適用されている。発電プラント,化学プラント,輸送用機器などの製造を含む供用期間中検査には不可欠な存在となっている。浸透探傷試験方法は,1950 年代に米国の技術及び探傷剤が導入され,国内産業界でも広く用いられるようになり,JIS 規格としてはJIS Z 2343 が1955 年に制定された。その後,改訂が進められ1992 年にISO 3452:1984との整合を図った。さらに,1988 年から規格整備が開始されたISO 3452 シリーズを基本として,2001 年からJIS Z 2343 シリーズとして順次制定してきた。これらのJIS 規格は単なる規格のみならず,技術基準としても引用されるなど幅広く活用されている。
 今年度は,JIS Z 2343-1 ~ 3 及びJIS Z 2323 が関連するISOの改正及び近年の状況に合わせて改正された。このことから,PT 関連ISO の整備状況及び改正の経緯,JIS の制定状況及び改正の詳細などについて詳解すると共に,技術情報についても触れる。

 

JIS Z 2316 渦電流試験の制定の要点と解説
 東北大学 流体科学研究所 橋本 光男

Summary and Explanation of the Establishment of JIS Z 2316 − Eddy Current Testing
Tohoku University, Institute of Fluid Science Mitsuo HASHIMOTO

Abstract
Artificial closed cracks were made by the diffusion bonding of one stainless steel block with another block, to make the crack gap of sub-micro meter. The crack surfaces were visualized by an immersion higher harmonic ultrasonic method. As excitation voltage was increased, the crack area visualized by the higher harmonic increased. This could be explained by the closed crack surfaces being opened by a large amplitude incident wave. Furthermore, we confirmed that the closed cracks where the gap was decreased to 0 from the maximum gap of about 6 μm were made, by cutting the specimens after higher harmonic measurement.

キーワード:JIS Z 2316,渦電流試験,ISO 15548,ISO 15549,渦電流試験器,渦電流プローブ

はじめに
 渦電流試験は,きず検査,材質判定,厚さ測定など様々な目的で利用されている。規格としては,鉄鋼材料のきず検査を主体とした渦電流探傷試験方法としてJIS G 0568(鋼の渦流探傷試験方法)が1974 年に制定された。その後,1978 年にJIS G 0583(鋼管の渦流探傷検査方法)が制定され,さらに非鉄金属では1986 年にJIS H 0502(銅及び銅合金のか(渦)流探傷試験方法)及び1992 年にJIS H 0515(チタン管の渦流探傷検査方法)が制定されてきた。また,これらの試験を行う探傷装置の性能測定方法について,1991 年にJIS Z 2314(渦流探傷器の性能測定方法)及びJIS Z 2315(渦流探傷装置の総合性能の測定方法)が制定された。
 渦電流試験の利用は,発電設備の復水器冷却管のきず検査・減肉検査,上置コイル法による機械設備,部品のきず検査に加え,各方面で材質評価,膜厚測定などに拡大していった。それにつれて,各種の試験方法及び評価法の統一・同一性などのために渦電流試験全般にわたり,規格化の必要性が認識されるようになった。
 一方で,2008 年にISO 15548-1 Non-destructive testing -Equipment for eddy current examination - Part 1: Instrumentcharacteristics and verification,ISO 15548-2 Non-destructivetesting - Equipment for eddy current examination - Part 2:Probe characteristics and verification,ISO 15548-3 Nondestructivetesting - Equipment for eddy current examination -Part 3: System characteristics and verification 及びISO 15549,Non-destructive testing - Eddy current testing - Generalprinciples が制定され,渦電流試験に関する一般通則及び装置に関連するISO 規格が整った。
 一方,我が国の渦電流試験関連規格の体系化が不十分であることから,これらのISO 規格に準拠した国内規格を整備することとし,(一社)日本非破壊検査協会(JSNDI)渦電流・漏洩磁束専門別委員会において,2009 年2 月からISO 15548-1 ~ 3及びISO 15549 のJIS 化に取り組んだ。この間,装置メーカに対するアンケートの実施,意見交換会などを行い,また,専門別委員会と並行してJSNDI 内の渦電流探傷技術研究委員会及び渦電流プローブ・装置特性評価研究委員会によってISO15548-2 に記載されるプローブの機能的特性の測定手順及び測定データが確認された。その後,2012 年の4 月に原案作成委員会を組織し,JIS 原案を作成し,1 つのJIS 番号に4 部で構成されるJIS Z 2316-1(非破壊検査−渦電流試験−第1 部:一般通則),JIS Z 2316-2(非破壊検査−渦電流試験−第2 部:渦電流試験器の特性及び検証),JIS Z 2316-3(非破壊検査−渦電流試験−第3 部:プローブの特性と検証)及び JIS Z 2316-4(非破壊検査−渦電流試験−第4 部:システムの特性と検証)が制定された。これらのJIS 規格とISO 規格の対応表を表1に示す。
 この規格の制定にあたって,最も配慮した点は,現状の渦電流試験に対応できる規格とすることである。つまり,試験器が近年の電子技術の発展に伴い演算素子も含む先端の電子回路で構成されていること,渦電流試験では電磁気的な現象を利用するためプローブ設計の自由度が高く,かつマルチプローブなども使用されていること,さらに高速な計測が可能なためコンピュータも含めたシステム化がなされていることなどである。これらのことも配慮して,ISO 規格の理念に基づき,新たな機器の評価法も加えられた。
 ISO 15549:2008 及びISO 15548-1∼ 3:2008 と整合させた規格を同じ規格群として作成したため,試験の規定と渦電流試験機器の特性評価の規定との解釈をできるだけ統一させる必要が生じた。特に,検証,点検内容などの用語の統一に配慮した。このため一部を修正した(MOD)としたが,JIS Z 2316-1 ∼ 4 は,基本的にはISO 規格に準拠している。
 以下において,JIS Z 2316 の第1 部から第4 部の制定の要点と解説を行う。

 

ひずみ測定器用コネクタ規格NDIS 4109 制定及びNDIS 4102 改定の要点と解説
 日本工業検査(株)高山 博光

A Summary of the Standards for NDIS Connectors
for Strain Measuring Instruments

Japan Industrial Testing Co., Ltd. Hiromitsu TAKAYAMA

キーワード:ひずみ測定器用コネクタ,応力・ひずみ測定,
ひずみゲージ試験,標準化,日本非破壊検査協会規格 NDIS

はじめに
標準化委員会ひずみ試験専門別委員会では,応力・ひずみ測定及びひずみゲージ試験に関わる表1 に示すような日本非破壊検査協会規格(NDIS)及び関連JIS について,標準化(規格化)を行っている。ここでは,その中で最もご活用いただいている規格の一つである,ひずみゲージ,ひずみゲージ式変換器,ひずみ測定器及びその周辺機器に入出力ケーブルを接続するためのコネクタの規格に関して,先ごろ制定されたNDIS4109 ひずみ測定器用小形コネクタと改正されたNDIS 4102 ひずみ測定器用コネクタについて解説する。

 

論文

SHアレイ探触子を用いた鋼板腐食部の残存肉厚測定法
 木村 友則,細谷 朗,高橋 実,小池 光裕,村越 潤

Residual Thickness Measurement Method of Corroded Steel Plates Using
Ultrasonic SH Array Transducers

Tomonori KIMURA, Akira HOSOYA, Minoru TAKAHASHI,
Mitsuhiro KOIKE and Jun MURAKOSHI

Abstract
A residual thickness measurement method for corroded steel plates using ultrasonic waves is presented. A shear horizontal (SH) platewave is transmitted in a steel plate by an SH array transducer, and the echo received due to reflection that occurred because of the cutoffphenomena of the plate wave is used. Furthermore, the configuration of the SH array transducer suitable for the measurementmethod is studied. It is shown that not only the sensitivity itself but also the sensitivity variation among array elements can be improved by ditching grooves on the surface of the protection plate of the transducer, which provides pressure concentration points on the surface. Experiments are performed to verify the method using the SH array transducer with grooves. The residual thickness obtained by the method agrees well with the actual size of the steel plate.

Key Words:Ultrasonic Testing, Corrosion, Key Words Residual thickness measurement, SH plate wave, Array transducer

緒言
近年,各種構造物の損傷が顕在化してきており,これらの維持管理が重要である。鋼構造物では腐食が大きな問題であり,鉄橋の埋設部鋼材が腐食により破断したという事例も報告されている1)。
 鋼板腐食検査において,埋設部のように目視検査が困難な部位に発生した腐食に対しては,超音波探傷による非破壊検査が検討されている。例えば,斜角探傷による方法2),表面SH波による方法3),4),EMAT による方法が報告されている5)。また,腐食が埋設物の地際にあればガイド波で検査可能と考えられる。ガイド波による方法としては,例えば,Lamb 波のA0 モードによる方法6),7),SH 板波を用いた方法8)等が報告されている。また,文献9)にはガイド波の解析法なども記載されている。これらの方法は,エコー高さや受信時間に基づいて腐食量(あるいは残存肉厚)を推定するものである。
 我々は,既往の報告とは異なり,SH アレイ探触子でビームをセクタ走査し,エコー高さが急激に変化する送信角度から残存肉厚を求めるという新たな測定法を考案した。本稿では,まず測定法の原理について示す。次に,2 次元弾性波FDTD法による原理検証シミュレーション結果を示す。腐食形状は,簡単のため三角溝とした。続いて,この測定法を実現するために開発したSH アレイ探触子について示す。最後に,測定法の妥当性検証実験結果について示す。

 

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