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機関誌

2017年8月号バックナンバー

2017年8月1日更新

目次

巻頭言

「会長再任によせて」― ビジョンの展開―  緒方 隆昌

 平成29 年度の会長再任にあたり,ご挨拶申し上げます。
 我が国産業は,技術立国として世界の中でも最も高い品質を示す「メイド・イン・ジャパン」の信頼あるブランドを築き上げてきました。非破壊検査技術及びその関連産業の発展は,安全・安心の確保や産業のさらなる発展に極めて重要であり,当協会はこれらの発展をけん引する使命があると考えています。そのためには,当協会が進むべき将来に向けた構想を議論し,明確にしていく必要がありますが,これまで,内外に向けた正式なビジョンという形では未だ示しておりませんでした。そこで,昨年度,当協会の今後のさらなる発展に向けたビジョンとして,“JSNDI ミッションステートメント”及び“JSNDI バリュー”を定め,これらを実現する具体的な施策として“JSNDI アクション”を定めました。
 “JSNDI ミッションステートメント”は,「社会に価値ある安全・安心を提供するJSNDI」ですが,この中の「価値(バリュー)ある」の意味が特に重要で,この価値について“JSNDI バリュー”として定め,ステークホルダーとの連携強化及びサービス向上を目指す意思決定をしました。この度,ビジョンを明確にしたことで,今後は,さらにベクトルを合わせた様々な施策を展開できることを期待しています。
 “JSNDI アクション”として挙げた「業界バリューチェーンの構築(関連業界間の連携強化)」については,本年度は先ず,電力・ガス,ゼネコン,プラントメーカなどの関連業界団体との交流から開始して,各業界の課題をお伺いする予定です。
 「学術・産業分野の拡大と融合」については,他学会との相互乗り入れ,共同シンポジウムなどを検討したいと考えています。また,航空宇宙分野について,経済産業省,兵庫県,日本航空宇宙工業会などと連携して,国内初となる航空関連産業非破壊検査トレーニングセンターの立ち上げ等を推進する計画です。さらに,今後の成長分野・先端分野を意識して,ヘルスモニタリング・コンディションモニタリング分野などの強化を検討しています。
 「学会機能と工業会機能のシナジー強化」については,各業界の課題について調査し,学術・教育界へのニーズ提供の素材となる“産業界課題マップ”を作成し,学会機能と工業会機能のシナジーを強化する方針です。また,行政機関関連では,圧力容器(ボンベ)の非破壊試験手法・非破壊試験技術者に関する検討,水素ガス容器をはじめとする水素社会における非破壊試験の新たな適用に向けた調査研究・課題の解決などを推進します。
 「有効なグローバル展開の強化」については,日本が,会長職,議長職等を務めるAPFNDT(アジア・太平洋非破壊試験連盟),ISO TC135(非破壊試験技術委員会)等への適切な対応を行うとともに,各国協会との相互交流を促進してグローバルネットワークの強化を図り,グローバル社会におけるJSNDI のポテンシャル向上を図ります。要員認証では,ASNT(米国非破壊試験協会) ACCP 資格とJIS Z 2305 資格の対等な二国間相互承認協定を締結する予定です。一方,これらのグローバル展開の必要性については,関係者以外への情報が不足して分かりにくい部分もありますので,様々な機会に丁寧に説明して,情報発信する努力が必要と認識しています。
 「会員活動の活性化」については,従来にも増して,会員向けの積極的な広報や,協会の常置委員会へのオープン参加などを検討したいと考えています。また,大学生・高専生向け研修会,企業若手技術者向け研修会,小・中・高校への出張授業などの実施についても議論する予定です。
 以上のように,昨年度策定しましたビジョンを本協会全体の羅針盤として,様々な事業,活動などに積極的に取り組んでまいりますので,会員の皆様のご支援,ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 

報告・展望(2016)

放射線による非破壊試験の活動報告と今後の展望
 2016年度放射線部門主査,浜松ホトニクス(株) 森 邦芳

Review on Radiographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2016
Hamamatsu Photonics K.K. Kuniyoshi MORI

キーワード:放射線透過試験,放射線画像,デジタルラジオグラフィ,X線 CT,中性子ラジオグラフィ

はじめに
 放射線部門は,放射線を利用した非破壊検査を広く対象としている。放射線を用いた透過撮影やCT(コンピュータトモグラフィ)による撮影が主な試験技術となっている。代表的なものとして,社会インフラ・産業インフラの高経年化の問題から,これらの健全性の評価に関する研究が従来から進められている。また工業用の非破壊検査分野ではLi イオン電池・携帯電話・車載用電子部品など多くの市場要求が高まり,X 線源や検出器などの基礎技術の発展が検査技術の高性能化を推進している。特に最近CT 技術の研究開発は計測技術として注目をされてきており,国際標準規格の整備とともに急速に普及するものと予想されている。一方,2011 年3 月11 日の東北地方太平洋沖大震災では,福島第一原子力発電所の炉心溶融という大事故があり,復興に向けた放射性物質の汚染状況の把握のための技術など,放射線部門の広い分野で捉え,平成28 年度の機関誌の特集とした。
 以下に,平成28 年度の部門活動を報告するとともに,部門講演会,シンポジウム,秋季講演大会での発表,並びに機関誌の掲載記事を参考に技術動向と展望を述べる。

 

超音波探傷試験の活動報告と今後の展望
 2016年度超音波部門主査,(一財)発電設備技術検査協会 古川 敬

Review on Ultrasonic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2016
Japan Power Engineering and Inspection Corporation Takashi FURUKAWA

キーワード: 超音波探傷,シミュレーション,ガイド波,フェーズドアレイ,信号処理,
イメージング,非線形超音波,非接触超音波,レーザ超音波,空気超音波,
電磁超音波,計測,材料評価,探傷装置,センサ,試験片

はじめに
超音波部門では,超音波による非破壊試験に関する多くの研究講演活動が行われている。それらは現場の超音波探傷試験における様々な工夫をこらした新たな取り組みに関するものから,世界的にも最新と思われる知見を含む超音波計測の内容まで多岐にわたっており,毎年有用の知見が多く見られる。ここでは,2016年度の超音波部門の活動実績を報告するとともに,機関誌や部門の活動で報告された論文や講演資料を中心に振り返り,2016 年度の動向をまとめる。

 

磁粉・浸透・目視試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望
 2016年度磁粉・浸透・目視部門主査,職業能力開発総合大学校 橋本 光男

Review on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing in 2016
Polytechnic University Mitsuo HASHIMOTO

キーワード: 磁粉探傷,浸透探傷,目視検査,非破壊検査

はじめに
 磁粉・浸透・目視部門は表面探傷に関わる試験として広く活用されている。発電所,化学プラント,交通設備などをはじめ,最近ではインフラストラクチャのメンテナスに磁粉・浸透・目視試験に関わる検査技術は重要な位置づけになっている。
 今年度は磁粉・浸透・目視部門に関連して,規格の改定が続いた。いずれも2017 年3 月に,JIS Z 2320-1 ~ 3:磁粉探傷試験1)−3),JIS Z 2343-1 ~ 3:浸透探傷試験4)−6),JIS Z 2323:浸透探傷試験及び磁粉探傷試験-観察条件7)がISO の改定及び近年の状況に合わせて改定された。
 学術部門が従来の表面探傷分科会から,磁粉・浸透・目視部門,電磁気応用部門,漏れ試験部門の3 つの部門の新しい体制に変わったが,講演会及びシンポジウムは従来の表面探傷分科会を引き継ぎ,電磁気応用部門,磁粉・浸透・目視部門,漏れ試験部門の3つの部門は合同で行っている。これら3 つの部門は表面きずの検出という共通テーマを有しており,今後も共同で活動することが,お互いの部門の活性化にも繋がっていくと考えている。
 ここでは,2016 年度の表面3 部門合同で行った講演会及びシンポジウムの概要を述べると共に磁粉・浸透・目視部門の活動報告及び今後の展望について述べる。

 

電磁気応用による非破壊試験の活動報告と今後の展望
 2016年度電磁気応用部門主査,岡山大学 塚田 啓二

Review on Electromagnetic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Electromagnetic Testing in 2016
Okayama University Keiji TSUKADA

キーワード: 渦電流探傷,漏洩磁束探傷,電磁界解析,表面探傷,磁気センサ

はじめに
 電磁気応用部門は,磁粉・浸透・目視部門,漏れ試験部門と3部門合同で活動を行っている。電磁現象をもとに導電性や磁気特性のある様々な検査対象を扱っており,社会インフラやプラントなどの鉄鋼材や,良導電体のアルミニウムや,さらには低導電率の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの非磁性体,あるいはその両方の磁性が混在しているステンレスなど幅広い材料でできた構造物や部品の欠陥の非破壊検査を扱っている。構造物内部の欠陥検査は超音波や放射線検査などが得意としているため,電磁気応用分野の検査対象はこれら検査が不得意とする表面のきずの検査が中心となっている。しかし,最近では深部の欠陥までは困難なものの,材料の組成,構造変化から発生する電磁的特性変化や表面状態に制限されない検査の簡便性から,表面のみならずより内部の検査への展開がされつつある。また電磁パルスと超音波との組み合わせのように複合化技術の展開もある。電磁気現象に基づいた検査方法では,基本的に対象物に磁場を印加して渦電流発生や漏洩磁束などを発生させ,コイルや磁気センサなどで電磁変化を捉えることにより検査を行っている。このため,欠陥形状や対象材質に応じて,どのように磁場を印加するのか,どのように検出するのかを最適化する必要があり,多くの対応策がとられて常に新たな試みが報告されてきている。一方,表面欠陥検査として幅広く用いられている磁粉の場合は,より鮮明にきずを可視化できるように,磁粉の磁気特性を生かした磁場の印加方式が研究報告されている。これら可視化の技術は渦電流などの検査でも同様に2 次元スキャニングやマルチセンサアレイなどのスキャニングなどによりだれでもが分かる検査結果の提供を目指している。これら検査技術は,3 部門では共通の対象あるいは基礎技術が多いことから,お互いに情報共有して活動している。本報告では,従来から続けている3 部門の連携体制をもとに,平成28 年度において活動してきた内容を中心に報告するとともに,電磁気応用部門が取り扱っている検査の動向と展望について述べる。

 

漏れ試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望
 2016年度漏れ試験部門主査,(株)タセト 津村 俊二

Review on Leak Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Leak Testing in 2016
TASETO Co., Ltd. Shunji TSUMURA

キーワード: 漏れ試験,LT 資格認証,表面 3 部門合同研究集会

はじめに
 漏れとは,ある限られた空間に保持されている流体(気体や液体)が,その空間の外へ流出する又は逆に空間の外から別の流体が流入してくる現象である。その漏れは,大切な物質の流失,環境汚染,火災・爆発等の事故,製品の品質低下を引き起こす。漏れ試験は,それらの漏れを,製造段階,稼働中の保守検査等で,微小な段階で検出するもので,品質低下や重大な事故を未然に防止するために不可欠な技術である。
 漏れ試験の使用される分野は,ガスや石油等の備蓄タンク,各種化学プラントやその配管,船舶,自動車から航空,宇宙分野,高度真空分野,食品や医療機器,電子部品等,非常に広範囲となっており,我が国の工業の品質,安全,環境等を背後で支えている重要な技術の一つとなっている。
 漏れ試験には対象とする物質の種類,検出感度レベル等により,表1 に示すような原理の異なる多くの試験方法がある。

 

応力・ひずみ解析の活動報告と今後の展望
 2016 年度応力・ひずみ測定部門主査,大阪大学 望月 正人

Review on Stress / Strain Measurement
Chairman of Research & Technical Committee on Stress / Strain Measurement in 2016
Osaka University Masahito MOCHIZUKI

キーワード:応力・ひずみ測定,材料評価,強度評価,実験力学,光学的計測,
画像処理,信号処理,可視化,バイオメカニクス

はじめに
 応力・ひずみ測定部門は,基本情報となる応力・ひずみの測定手法および解析手法の開発・改良から,応力・ひずみ解析に関する応用開発,応力・ひずみ測定に基づく材料評価および強度評価などに至る幅広い分野を対象とし,それらの学術研究成果の公知化および実用化,研究動向の分析,登録会員間の情報交換と相互研鑽などを主目的として活動している。近年では,応力・ひずみ解析の対象が,金属材料ばかりでなく,高分子材料,生体材料,生体組織などに広がってきている。さらには,複合材料やインフラ構造物の健全性評価に関する研究も増えてきている。また,用いられる計測手法も多岐にわたるが,ここ数年では,光学的手法やX 線を用いた手法,デジタル画像を用いた手法などが数多く報告されている。以下では,2016 年度における活動と今後の展望を要約する。

 

保守検査の活動報告と今後の展望
 2016年度保守検査部門主査,
 関東学院大学(現(地独)神奈川県立産業技術総合研究所)関野 晃一

Review on Maintenance Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on Maintenance Inspection in 2016
Kanto Gakuin University
(Present Address: Kanagawa Institute of Industrial Science and Technology)
Kouichi SEKINO

キーワード:保守検査,損傷評価,健全性評価,経年変化,ロボティクス,ビッグデータ

はじめに
 保守検査部門では,プラント設備や社会インフラなどの安全性および信頼性を維持・向上させるために,重点的に検査が必要な溶接部,応力集中部,腐食により劣化が発生しやすい箇所,高温・高圧環境下で利用される設備について,劣化度評価,信頼性評価および予寿命評価の検討を行っている。さらに近年においては安全性と経済性を総合評価して延命策を検討・実施する活動を行っている。
 本部門で取り扱う技術は,プラント設備・社会インフラが使用され始めてから廃棄されるまでの長期にわたる健全性を確保するために,種々の非破壊検査技術だけでなく,ビッグデータやIoTを利用した管理技術やロボティクスなど関連技術を含む幅広いものである。従って,関連分野の産学官の技術者および研究者を広く集めて議論することで,保守検査に関する分野の知識を深め,その知識を各社で活用することが重要であると考え,関連分野および新しい技術の専門家を招いて年2 回程度のミニシンポジウムを実施してきた。
 平成28 年度は2 回のミニシンポジウムを開催した。うち1 回は新素材に関する非破壊試験部門との合同ミニシンポジウムを企画し,最新の技術や保守検査に関するご講演をいただき,活発な議論を行った。他部門との合同ミニシンポジウムには多くの技術者の方々に参加していただき盛会に終えることができた。さらに,機関誌「非破壊検査」の特集号として,「保守検査の最前線」を発行した。

 

製造工程検査の活動報告と今後の展望
 2016年度製造工程検査部門主査,香川大学工学部 林 純一郎

Review on In-Process Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on In-Process Inspection in 2016
Kagawa University Jun-ichiro HAYASHI

キーワード:画像処理技術の実利用化,目視検査の自動化,製造工程検査,画像センシング,センサネットワーク

はじめに
 IT 機器の高性能化や低価格化,小型化に伴い,画像や動画像などのBigData と呼ばれる大量の情報を高速に処理する必要がある画像処理技術の実用化が進み,近年では人工知能(AI)技術として機械学習(Deep Learning)を用いた実用化も盛んに行われている。国が自動運転車の実現を目指してきたように,自動車へのカメラ装置搭載はもはや一般的となり,ありとあらゆる環境にカメラ装置と画像処理技術が適用されつつある。また,製造工程検査においても,人の目に代わる技術として欠かせない存在となり,これらの分野においても近年のAI 技術を採り入れる取り組みが行われている。カメラや三次元計測装置等のセンサの低価格化に伴い,比較的生産規模の小さい現場においても,画像処理による検査システムが導入できる状況となり,地方の中小企業でも実用化されつつある。このように,検査への画像処理技術の導入は,あって然るべき時代を迎えているが,各種生産現場における製品や,道路・トンネル・橋梁等のインフラやその他構造物など,検査対象は様々であり,かつそれらに発生するきずや欠陥の大きさや種類なども多種多様であり,更には検査の環境も様々であるため,外観画像や透過画像,3 次元画像を利用した検査の自動化は必ずしも容易ではない。また,ハードウェア・ソフトウェアの基本スペックが向上し,コストも低下したとなれば,これまでは自動化が見送られていた検査事例についても,それが望まれるようになるのは自然の流れである。製造工程検査における要素技術は多岐にわたるが,以上の画像処理技術を取り巻く状況の中,当部門では現在までのところ,特に,いわゆるディジタル画像処理による検査の定量化・自動化技術を中心に学術活動を展開している。
 画像処理技術は検査,ロボット,ITS,医療,メディア処理,セキュリティ,インターフェイスなど,その応用範囲の拡大は留まるところを知らず,

 

アコースティック・エミッションによる非破壊試験の活動報告と今後の展望
 2016 年度アコースティック・エミッション部門主査,京都大学 塩谷 智基

Review on Acoustic Emission
Chairman of Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2016
Kyoto University Tomoki SHIOTANI

キーワード:AE,IoT,ISO/TC 135/SC 9,23 IAES,IIIAE 2016

はじめに
 アコースティック・エミッション(AE)部門は,アコースティック・エミッション特別研究委員会を母体として組織され,2010年度より活動を開始した。AE 部門ではAE 特別研究委員会と同様に,AE 法を基盤とした非破壊検査・非破壊評価技術および,その応用分野の発展・普及を目的とした活動を行っている。特に2016年度は本部門の特筆すべき活動成果(IIIAE 世界会議運営,開催)が得られたので,その成果も含めて以下に活動をまとめる。

 

新素材の非破壊評価の活動報告と今後の展望
 2016年度新素材に関する非破壊試験部門主査,東北大学 内一 哲哉

Review on Non-Destructive Evaluation of New Materials
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Evaluation of New Materials in 2016
Tohoku University Tetsuya UCHIMOTO

キーワード:先進材料,非破壊計測

はじめに
 新素材に関する非破壊試験部門では,新素材の非破壊評価に関する研究,調査及び普及を目的とした活動を行っている。特に,様々な非破壊検査技術及び非破壊評価技術の応用を横断的に調査していることに本部門の特徴がある。例えば,複合材料の計測技術,材料の劣化評価に関連した計測技術や,高温環境における計測技術などを切り口として,他の団体や研究会との連携を積極的に行いながら調査を行っている。本年度は,ミニシンポジウムを1 回,シンポジウムを1 回開催した。以下にその活動の概要をまとめる。

 

鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験の活動報告と今後の展望
 2016年度鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門主査,日本大学 湯浅  昇

Review on Non-Destructive Testing of
Reinforced Concrete Structure

Chairman of Research & Technical Committee on
Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete in 2016
Nihon University Noboru YUASA

キーワード:活動報告,鉄筋コンクリート構造物,非破壊・微破壊試験,研究委員会,標準化,講習会

はじめに
 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(以下,RC 部門)では, 2016 年度は4 回の行事が活発に行われた。
 そのほか,学術委員会,標準化委員会,教育委員会,編集委員会と関連した活動などについてもその概要を報告する。
 さらに今後の展望について述べる。

 

赤外線サーモグラフィによる非破壊試験の活動報告と今後の展望
 2016年度赤外線サーモグラフィ部門主査,防衛大学校 小笠原永久

Review on Infrared Thermographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Infrared Thermographic Testing in 2016
National Defense Academy Nagahisa OGASAWARA

キーワード:赤外線サーモグラフィ試験,非破壊検査,モニタリング

はじめに
 赤外線サーモグラフィ(TT)部門では,ミニシンポジウム開催などの学術活動のほか,実技を含む講習会の開催,ISO・JIS・NDIS 規格の制定・整備,技術者認証制度の構築などを行い,試験技術の開発・確立・普及を目的とした活動を継続して行っている。

 

報告(2016)

学術委員会活動報告
 2016年度学術委員会委員長,東北大学 三原 毅

Report of Academic Affairs Committee
Chairman of Academic Affairs Committee in 2016
Tohoku University Tsuyoshi MIHARA

キーワード:学術行事見直し,表彰実績,研究助成事業・研究奨励金制度

はじめに
 工業製品や構造物の安全確保のために今日利用されている非破壊検査技術が学術研究に端を発したことを考えると,本協会においても学術活動はその基礎をなすものである。学術委員会は,協会の学術活動全般を総括する位置づけであり,関連する2 名の理事と12 部門及び3 研究会の主査から構成されている。2016 年度の学術委員会の委員構成は以下の通りであった。
  三原 毅:委員長(学術担当副会長)
  望月正人:学術担当理事
  森 邦芳:放射線(RT)部門主査
  古川 敬:超音波(UT) 部門主査
  橋本光男:磁粉・浸透・目視(MT/PT/VT)部門主査
  塚田啓二:電磁気応用(ET/MFLT)部門主査
  津村俊二:漏れ試験(LT)部門主査
  望月正人:応力・ひずみ測定(SSM)部門主査
  塩谷智基:アコースティック・エミッション(AE)部門主査
  小笠原永久:赤外線サーモグラフィ(TT)部門主査
  林純一郎:製造工程検査(IPI)部門主査
  関野晃一:保守検査(MI)部門主査
  湯浅 昇:鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験(RC)部門主査
  内一哲哉:新素材に関する非破壊試験(NMT)部門主査
  小原良和:非線形現象を利用した非破壊計測技術に関する研究会主査
  林 高弘:超音波による非接触材料評価研究会主査
  笠井尚哉:光3 次元計測技術による非接触非破壊検査の評価と標準化に関する研究会主査
 2016 年度は,8 月,11 月,2 月の計3 回,学術委員会を開催した。以下に2016 年度の学術活動について報告するが,各部門における実質的な学術活動の詳細についてはそれぞれの報告・展望を,また国際学術活動については国際学術委員会活動報告をご覧いただきたい。

 

標準化委員会活動報告
 2016年度標準化委員会委員長,ポニー工業(株)釜田 敏光

Report of Standardization Committee
Chairman of Standardization Committee in 2016
Pony Industry Co., Ltd. Toshimitsu KAMADA

キーワード:非破壊試験,非破壊検査,規格,NDIS,JIS,ISO

はじめに
 日本非破壊検査協会(JSNDI)では,標準化委員会とISO 委員会が協力し,また,経済産業省や日本規格協会等の関連学・協会との緊密な連携の下,日本国内外の非破壊試験に関する標準化の一体的な推進を図っている。
 本報告では,標準化委員会の2016 年度の活動として,原案作成や改正に関わる日本工業規格(JIS)及び日本非破壊検査協会規格(NDIS)の動向及び関連の事業について説明する。なお,ISOの動向に関しては,別途ISO 委員会活動報告がなされている。

 

ISO 委員会活動報告
 2016年度ISO 委員会委員長,ものつくり大学特別客員教授 大岡 紀一

Report of ISO Committee
Chairman of ISO Committee in 2016
Institute of Technologists, Guest Professor Norikazu OOKA

キーワード:ISO/TC 135,ICNDT,資格及び認証,CEN/TC 138

概要
 前年度に引き続き,ISO(国際標準化機構)規格案件に関する事項を検討,審議及び投票のための集約,さらにTC 44(溶接),TC 17(鋼)等の国内審議団体と連携をとり関連ISO 規格の対応とともに情報交換等を行った。
 国際会議に関しては,ドイツのミュンヘンにあるConvention Centerにおいて2016 年6 月11 日から17 日まで行われた第19回WCNDT に引き続いて2016 年6 月18 日から20 日までミュンヘン郊外のイスマンニングで開催された第20 回ISO/TC 135(専門委員会)総会及び関連SC( 分科委員会)に出席して各SCの活動状況を把握し国内の規格関連の諸活動に反映するため討議に参画した。
 今回開催された関連SC は,SC 2(Surface methods),SC 3(Ultrasonic testing),SC 4(Eddy current testing),SC 5(Radiographictesting),SC 6(Leak testing),SC 7(Personnel qualification),SC 8(Thermographic testing)及び SC 9(Accoustic emission testing)である。
 会議にはTC 135 に関して大岡紀一TC 135 国際議長,土屋武雄国際幹事,SC 6 に関して土屋武雄国際議長,大岡昌平国際幹事が,また日本代表として緒方隆昌JSNDI 会長(SC 3,SC 7 委員,川崎重工(株)),八木尚人教育担当理事(ISO 委員会幹事),大西利彦事務局次長及び大岡(昌)事務局(兼TC 135/SC 6 国際幹事)が出席した。さらに,兵藤行志(SC 8 委員,産業技術総合研究所),中村英之(SC 9 委員,( 株)IIC)新井健太(SC 6 委員,産業技術総合研究所)が出席した。
 一方,国内におけるJSNDI のISO 委員会(国内審議団体)としては,第20 回ISO/TC 135 総会及び関連SC の対応のために第1 回分科会を2016 年4 月20 日,第2 回分科会を2016 年9 月29日に,また2017 年2 月23 日に第3 回の分科会を開催した。本委員会は2017 年3 月2 日に開催しているが,今年度の報告はドイツでのISO/TC 135 が主であることから,これらに絞っての諸活動について以下に述べる。

 

国際学術委員会活動報告
2016年度国際学術委員会委員長,東北大学 三原 毅

Report of International Committee
Chairman of International Committee in 2016
Tohoku University Tsuyoshi MIHARA

キーワード:非破壊検査,ICNDT,WCNDT,APFNDT, APCNDT,国際会議

はじめに
 日本非破壊検査協会(以下,JSNDI)は近年,国際非破壊試験委員会(International Committee for Non-Destructive Testing;ICNDT)及びその傘下にあるアジア・太平洋非破壊試験連盟(Asia-Pacific Federation for Non-Destructive Testing;APFNDT)1) と連携した諸活動を進めるとともに,諸外国の非破壊試験協会などとの交流と情報交換等,学術のみに留まらず,認証,教育,標準化に密接に関連した広範な活動を積極的に行ってきた。ICNDT,APFNDT などの活動が,学術に関することだけでなく,認証,教育などの幅広い分野で活発に活動していることに的確に対応すべく,運営委員会の直下に国際対応WG を設置し,関連する委員会の分担や事務局の組織体制見直しを検討するなど,そこで対応することとなった。これに伴って,国際学術委員会は,国際対応WG と連携し,学術分野に特化した国外の非破壊検査法に関する情報の交換・収集及びその国内への普及・広報を通じて関連する研究者などの相互交流を図り,JSNDI の学術活動を推進することを担当している。
 国際学術委員会の委員任期は2 年(留任あり),2016 から2017年度の委員構成(50 音順)は以下の通り。
  三原 毅 委員長,2016 年度学術担当副会長
  井原郁夫 LU2013 論文委員会委員長
  大岡紀一 ICNDT 日本代表(2011 年9 月から),
       ICNDT 名誉会員,ICNDT PGP 委員会委員,
       ICNDT WG1 委員,
       APFNDT 会長(2013 年11 月から),
       ISO 委員会委員長,元会長
  落合 誠 2016 年度庶務担当理事
  加藤 寛 ICNDT 日本副代表(2011 年9 月から),元会長
  廣瀬壮一 2015 年度会長
 なお,本稿では,2016 年度における国際学術委員会関連の活動報告に先立って,国際学術活動に特化した動きをまとめた。

 

教育委員会活動報告
 2016年度教育委員会委員長,非破壊検査サービス(株)中村 和夫

Report of Education Committee
Chairman of Education Committee in 2016
Non-Destructive Inspection Service Co., Ltd. Kazuo NAKAMURA

キーワード:教育委員会,教育・訓練,非破壊試験技術講習会,実技講習会,JIS Z 2305,講習会カリキュラム

はじめに
 教育委員会(以下,「当委員会」という)は,非破壊検査に従事する技術者の技量向上を目的として各種教育・訓練の計画と実施並びに関係書籍の編集などを行っている。
 2016 年度は,特に,JIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」の改正に伴う再認証試験に対応する実技講習会の運用を開始した。
 ここでは,2016 年度の当委員会の主な活動実績を報告する。

 

認証運営委員会活動報告
 2016年度認証運営委員会委員長,東京工業大学 井上裕嗣

Report of Certification Steering Committee
Chairman of Certification Steering Committee in 2016
Tokyo Institute of Technology Hirotsugu INOUE

キーワード:非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,
NDIS 0602,NDIS 0603,NDIS 0604,NDIS 0605,ISO 18436-7

はじめに
 日本非破壊検査協会では,1968 年に「非破壊検査技術者技量認定規定」を制定し,1969 年に最初の資格試験を実施して以来,長年にわたって非破壊試験技術者の認証を実施してきた。特に2013年にJIS Z 2305 が改正されたことに伴って,認証運営委員会では,当協会内外の関係各位の多大なるご協力を得て,この数年にわたってJIS Z 2305:2001 に基づく制度からの移行に注力してきた。JIS Z 2305:2013 に基づく新規試験を2015 年秋期から,再認証試験を2017 年春期から開始したことによって,ようやく一つの区切りを迎えた。
 現在当協会では,次のそれぞれの規格に基づく技術者認証を実施している。
  JIS Z 2305 「 非破壊試験技術者の資格及び認証」
  NDIS 0602 「非破壊検査総合管理技術者の認証」
  NDIS 0603 「超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証」
  NDIS 0604 「赤外線サーモグラフィ試験―技術者の資格及び認証」
  NDIS 0605 「非破壊試験―漏れ試験技術者の資格及び認証」
  ISO 18436-7 「 Condition monitoring and diagnostics of machines –
Requirements for qualification and assessment of personnel – Part 7: Thermography」
これらのうちJIS Z 2305 に基づく認証は「認証運営委員会」,NDIS0604 及びNDIS 0605 に基づく認証は「NDIS 認証委員会」(認証運営委員会と合同)で実施している。また,NDIS 0602 に基づく認証は「非破壊検査総合管理技術者認証委員会」,NDIS 0603 に基づく認証は「PD 認証運営委員会」,ISO 18436-7 に基づく認証は「CM 技術者認証運営委員会」でそれぞれ実施している。さらに,「国際認証委員会」の協力の下で,諸外国との相互認証及び資格乗入を実施している。
 なお,2016 年度の認証運営委員会の委員構成(50 音順)は次のとおりであった。
  相山英明 認証広報委員長
  井上裕嗣 委員長,認証担当理事
  蔭山健介 問題管理委員長
  野村友典 試験基準委員長
  畠山 賢 認証事業部長
  藤岡和俊 PCP WG 主査
  古川 敬 倫理苦情処理委員長,認証担当理事
  三原 毅 試験委員長
  村田頼信 査定委員長,NDIS 認証委員長
  望月正人 ISO 18436-7 認証準備委員長
       (CM 技術者認証運営委員長)
 本稿では,JIS Z 2305 に基づく認証を中心に,関連する認証及びその他の認証関連事項を報告する。

 

出版委員会活動報告
 2016 年度出版委員会委員長,(株)検査技術研究所 岡 賢治

Report of Publication Committee
Chairman of Publication Committee in 2016
KGK Co., Ltd. Kenji OKA

キーワード:出版,テキスト,問題集,規格

はじめに
 出版委員会は,非破壊検査技術の教育・普及に関する出版物の企画,編集,制作及び頒布,管理を行うことによって,非破壊検査技術水準の向上を図ることを目的として設置された委員会であり,その活動は教育委員会の活動と密接に関係している。そのため,その構成委員は,各部門の関係者とともに教育委員会からの派遣委員,理事等で構成されている。図1 に,出版活動の典型的な例を示す。

 

試験片委員会活動報告
 2016年度試験片委員会委員長,JFE テクノリサーチ(株)高田 一

Report of Reference Block Committee Chairman of Reference Block Committee in 2016
JFE Techno-research Corporation Hajime TAKADA

キーワード:標準試験片,対比試験片,分類用ゲージ,トレーサビリティ,品質証明

はじめに
 当協会では非破壊検査技術の普及および技術水準の向上に努める活動の一環として,非破壊試験の実施に必要な標準試験片,対比試験片,およびゲージを販売している。非破壊試験において,標準試験片,対比試験片,およびゲージは,試験装置の調整および性能確認,試験結果の定量化,試験方法の標準化,および,試験結果への影響因子の評価などの重要な業務に用いられる。以下,標準試験片および対比試験片をまとめて頒布試験片,あるいは試験片類と称する。
 試験片類およびゲージの販売先は主に国内であり,2016 年度の販売数は,超音波関連試験片約650 体,磁粉探傷試験用標準試験片約3550 枚などとなっている。2016 年度の販売総額はほぼ9千万円であった。
 試験片類およびゲージの年間販売数および年間販売額は,多少の増減があるものの,およそ上記の数量および金額で推移している。毎年,これだけの数の試験片類を頒布しているのは,国内の非破壊試験業務に当協会の頒布試験片が定着していることの現れであろう。
 当委員会の活動の流れについては,2014 年度の報告1)および2015 年度の報告15)を参照いただくとして,2016 年度は活動の進展状況についてご紹介する。

 

広報活動委員会活動報告
 2016年度広報活動委員会委員長,大阪府立大学 谷口 良一

Report of Public Relations Committee
Chairman of Public Relations Committee in 2016
Osaka Prefecture University Ryoichi TANIGUCHI

キーワード:非破壊検査,広報活動,セミナー,展示会

はじめに
 広報活動委員会では,協会の活動を情報公開し協会の行事や各種案内を主として協会ホームページで公開し会員へのサービス向上や新入会員の増加促進に努めている。また,社会の様々な年齢層を対象とした各種セミナーや展示会への参画などを通じて,広く一般に向けて非破壊検査技術の認知度の向上を目指した広報活動を行っている。ここでは広報活動委員会の平成28 年度の主な取り組み事項について報告したい。
 平成28 年度は,前年に引き続き,ホームページを利用した広報活動の充実に努めた。また工業高校生をはじめとした若手技術者の育成を目的とした「明日を担う次世代のための非破壊検査セミナー」を継続して発展させるとともに,子供向けの非破壊検査技術の啓蒙活動として,(一社)日本能率協会主催の「夏休み2016宿題・自由研究大作戦」に参加した。また,協会のシンボルともなっているノンディを,さらに利用し発展させるとともに,国際的な活動も展望し,国際会議における出展内容の充実も検討した。
 なお,平成28 年度の広報活動委員会は次に示すように計4 回開催した。第1 回目:平成28 年6 月24 日(金),第2 回目:平成28 年9 月2 日(金),第3 回目:平成28 年11 月25 日(金),第4 回目:平成29 年1 月24 日(火)。
 以下,平成28 年度の主な活動について報告する。

 

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