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機関誌

2017年7月号バックナンバー

2017年7月1日更新

巻頭言

「繊維強化プラスチックの非破壊検査」特集号刊行にあたって  水谷 義弘

 繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)は航空宇宙関係の機械・構造物を中心に適用されてきたが,近年では自動車/ロボット産業を含めて航空宇宙以外の分野へ適用範囲が広がってきている。航空宇宙機では繊維強化プラスチックは積層板として使用されることが多く,ひょうや小石の衝突によって積層板の層間ではく離が発生し,強度低下することから,これが主な検査対象となり,層間はく離を検出対象とした非破壊検査技術が主に開発されてきた。一方で,繊維強化プラスチックの適用範囲の拡大に伴い,検出対象となる損傷の種類が増加している。製造時に発生する繊維うねり,衝突以外の原因(例えば雷撃)などにより発生するはく離以外の損傷,薬品による母材の劣化など,これまで対象としてこなかった損傷モードに対しての非破壊検査法も確立する必要がでてきた。FRPの検査法として様々な検査方法が提案されているが,本特集企画では各種検査法についてFRP で発生し得るどのような損傷モードがどの程度検出可能なのかについて解説していただいた。「繊維強化プラスチックの非破壊試験」は筆者が担当したが,検出対象となる欠陥の種類を製造時と供用中に分けて解説した。また,繊維強化プラスチックで発生し得る欠陥に対して代表的な非破壊試験方法の例を紹介している。「CFRP の雷撃損傷とその非破壊検査」では宇宙航空研究開発機構(JAXA)の平野義鎭氏に,CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)の雷撃損傷に超音波探傷試験とマイクロフォーカスX 線CT(Computed Tomography)を適用した事例を紹介していただいた。「先進複合材料の研究開発におけるX 線CT の適用とその可能性」ではJAXA の吉村彰記氏に,X 線CT の基礎と様々な大きさの複合材料製アプリケーションにX 線CT を適用した事例を紹介していただいた。「CFRP の繊維うねりに対する渦電流試験法」では愛媛大学の水上孝一氏に,CFRP 中の炭素繊維のうねりを炭素繊維が導電性材料であることを利用して検出する渦電流試験法を紹介していただいた。「複合材料の非破壊試験への赤外線サーモグラフィの適用」では神戸大学の阪上隆英氏に,サーモグラフィ試験の基礎を解説していただくとともに, CFRP 内部に存在する層間はく離の検出例を紹介していただいた。「繊維強化プラスチックのアコースティック・エミッション試験」は筆者が担当したが,FRP に対するアコースティック・エミッション(Acoustic Emission:AE)試験の基礎的事項を説明させていただいた。また,FRP に対するAE 試験の海外規格も紹介させていただいた。
 FRP の非破壊検査は従来の金属材料に対する非破壊検査と同等なものがある一方で,FRP がもつ力学的異方性および電気的異方性のためにまったく異なる検査法も存在する。自動車をはじめ,今後ますますFRP の機械・構造物に対する適用は拡大すると考えられるため,本特集号を通して,FRP に対する非破壊試験に興味を持っていただける読者が一人でも増えれば幸いである。
 なお,本特集は本協会の新素材に関する非破壊試験部門が担当した。本部門ではFRP の非破壊検査に興味を持っている協会メンバーが集まって活動しており,年に2 回のシンポジウムを開催して活発な議論をしている。この特集号を通してFRP の非破壊検査に新たにご興味を持った方はこの部門に登録をしていただきたい。

 

解説

繊維強化プラスチックの非破壊試験
 東京工業大学 工学院 機械系 水谷 義弘

Non-Destructive Testing of Fiber Reinforced Plastics
School of Engineering, Department of Mechanical Engineering,
Tokyo Institute of Technology Yoshihiro MIZUTANI

キーワード:繊維強化プラスチック,非破壊試験,超音波探傷試験,渦電流探傷試験,放射線透過試験,
赤外線サーモグラフィ試験,アコースティック・エミッション試験

はじめに
 機械/構造物の材料として繊維強化プラスチック(FiberReinforced Plastics:FRP)の適用が高まってきている。非破壊試験を行う目的は金属材料製のものと変わらないが,検出対象が異なるため,試験方法は繊維強化プラスチックに特化したものが存在する。金属製の機械/構造物の損傷メカニズムは腐食,疲労,クリープ,壊食,脆化など多種多様であるが,非破壊試験にとって重要な損傷モードは,「減肉」,「割れ」,「材質変化」の3 つで限られており,それによって適切な非破壊試験を選択している。一方,繊維強化プラスチックについては,強化繊維のうねりなど,上記の3 カテゴリーに当てはまらないものもあり,特別な考慮が必要となる。

 

CFRP の雷撃損傷とその非破壊検査
 (国研)宇宙航空研究開発機構 平野 義鎭

Lightning Damage on CFRP and Non-Destructive Evaluation Technique
Japan Aerospace Exploration Agency Yoshiyasu HIRANO

キーワード: CFRP,雷損傷,航空機,超音波探傷,X線 CT

はじめに
 近年,機体重量の軽量化による燃費向上やメンテナンスコストの低減などを目的として,航空旅客機機体構造への炭素繊維強化複合材料(以下CFRP:Carbon Fiber ReinforcedPlastic)の適用が大幅に拡大している。CFRP は超ジュラルミン,超々ジュラルミンといった従来の金属材料と比較して,高い比強度・比剛性(同じ重さあたりの強度,剛性)を持つことに加え,その優れた疲労特性や耐腐食性が航空機への適用に適している。最新の旅客機であるBoeing 社のB787 やAirbus 社のA350 XWB といった機体では,その重量あたりの複合材料適用割合は50%以上に上る。旅客機のみならず,近年では大型化が進む風力発電のブレードや,自動車の車体等にもCFRPの適用が進みつつある。
 CFRP は優れた機械的特性を有する反面,電気的・熱的特性に関しては金属材料に劣る。また,CFRP が一方向に引き揃えられて強化された材料であることに起因し,繊維方向とそれ以外の方向で,電気的・熱的に大きな異方性を有する。表1 に,航空機グレードのCFRP の電気的・熱的特性を金属材料のものと比較して示した。表から,特に電気抵抗率において繊維直交方向に107 オーダ,板厚方向に1010 オーダという極めて高い電気抵抗率を示す事が分かる。
 この非常に高い電気抵抗率と,非常に強い電気的異方性により,CFRP は雷などの大電流が印加された際に,大きく複雑な損傷を発生する事となる。航空機は平均して3000 飛行時間あたりに1 度被雷するという統計データがあり,運行中に被雷する事を前提とした設計が成されている。
 CFRP の雷電流による損傷は,主に炭素繊維に雷電流が流れる事によって発生するジュール発熱による,炭素繊維の昇華と樹脂の急激な蒸発である1),2)が,その他にも熱による材料物性の変化,強力な電磁波による電磁力,雷電流に伴って発生する衝撃波,熱ひずみによる機械的な損傷など,多くの物理現象が重畳した非常に複雑な問題であり,その詳細な損傷メカニズムはまだ十分には解明されていない。そこで,著者らは雷損傷の低減や,耐雷性に優れた材料の開発などに資するべく,これまでCFRP の雷に関する実験的,数値解析的,および耐雷材料開発などの基礎研究を行ってきた1)−3)。
 雷による損傷を防ぎ,また雷電流の導電路を確保する目的で,航空機のCFRP 構造はその表面を非常に薄い金属のメッシュや箔(LSP:Lightning Strike Protection)で覆う対策を取っている(図1)。このような対策を施しても,被雷によるCFRP の損傷を完全に防ぐことは難しく,航空機が被雷した際は入念な非破壊検査と,煩雑な修理作業が必須である。
 本稿では,航空機用CFRP を用いて作成した小型供試体に,インパルス電流発生器を用いて行った雷電流試験の試験方法およびその試験後の非破壊検査結果を示すとともに,雷損傷を受けたCFRP の非破壊検査における課題について紹介する。

 

先進複合材料の研究開発におけるX 線CT の適用とその可能性
 (国研)宇宙航空研究開発機構 航空技術部門 吉村 彰記

Case Examples and Future Prospects of the X-ray CT Technology used for
the R&D of Advanced Composite Structure

Aeronautical Technology Directorate,
Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA) Akinori YOSHIMURA

キーワード: コンピュータ断層撮影(CT),マイクロフォーカス,複合材料,航空機

はじめに
 X 線コンピュータ断層撮影法(X-ray Computed Tomography;X 線CT)は,異なる角度からの多数のX 線透視画像を撮影し,それを計算機によって再構成することによって,断層のX 線吸収量分布画像を得る技術である。医学用途では患者の体内の断層画像撮影等に広く利用されている他,生物学用途ではラットの体内,骨構造の観察などに利用されている。対象物がX 線に敏感でなければ,X 線CT は対象物にほとんど影響を与えることなく内部の3 次元画像を得ることができるため,工業分野においても非常に有用である。医学用途では被験者をベッド上に固定し,線源とディテクタを回転させることによって多数の角度からのX 線透視画像を得るが,工業分野においては,線源とディテクタを空間に固定し,対象物を一回転させることによって多数の断層画像を得ることが多い(図1)。また,最近では,X 線源のスポット径をできるだけ小さくし,円錐状のX 線を照射することによって対象物を拡大撮影する,マイクロフォーカスX 線CT技術も,微小部分の撮影によく用いられるようになった(図2)
 筆者は(国研)宇宙航空研究開発機構 航空技術部門 構造・複合材技術研究ユニットにて,先進複合材技術の研究に従事している。X 線CT 技術は先進複合材技術の研究開発においても大変有用であり,製造不良の検出,クラックの観察,材料不整の観察など,多くの研究で使用されている。本稿では,先進複合材料の研究開発に対する,X 線CT 技術の活用の事例と,筆者が考える,当該技術の将来展望を紹介する。

 

CFRP の繊維うねりに対する渦電流試験法
 愛媛大学大学院 水上 孝一

Eddy Current Testing for Fiber Waviness in CFRP
Ehime University Koichi MIZUKAMI

キーワード: 複合材料,渦電流探傷試験,渦電流,品質保証,可視化

はじめに
 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は軽量かつ高強度な構造材料として,航空機,自動車などに適用が広がっている。CFRPには,成形時に繊維うねりと呼ばれる不良が発生し得る。図1に繊維うねりのX 線CT 画像を示す。繊維うねりとは,CFRP内で本来直線となっているべき炭素繊維が湾曲してしまっている状態である。繊維うねりが発生する要因は様々にあるが,主に成形パラメータによるものと,材料デザインによるものの2種類に分類できる。成形パラメータに起因するうねりとは,成形における冷却速度,モールドの物性に起因するうねりである。CFRP のプリプレグがアルミニウムなどの金属製のモールドに積層された場合,アルミニウムの線膨張係数の方が大きいことから,冷却時にCFRP は繊維方向に圧縮荷重を受ける1)。これにより,繊維うねりが発生することが知られている。さらに,この場合の繊維うねりの発生のしやすさは,プリプレグ内の繊維の初期不整に依存することが知られている。材料デザインにより発生するうねりとは,成形する部材の曲率や積層構成に起因して発生するうねりを指す。曲面形状を成形する際,場所によって繊維パスの長さが異なることや,積層構成によってモールド形状への追従性が異なることで繊維うねりが発生する2)。また,成形法によっても,繊維うねりの発生要因は様々である。例えば,繊維を円筒に巻き付けて成形するフィラメントワインディング成形では,成形中の張力が不十分なことによって繊維うねりが発生する。繊維材に樹脂を含浸させて成形するRTM 成形では,樹脂の流れによって繊維が動かされ,部材に繊維うねりが発生し得る。以上のように,繊維うねりは様々な要因によって発生する。繊維うねりは,うねりがある繊維の方向の強度と剛性の低下を引き起こす。特に,圧縮強度は繊維うねりによって著しく低下することが報告されている3),4)。強度と剛性がどれくらい低下するかは,繊維うねりの寸法に依存する。既存の研究では,特に繊維うねりの角度が圧縮強度の低下と相関があることが知られている4)。このため,繊維うねりを検出し,その寸法を推定する非破壊検査法の開発が望まれている。
 繊維うねり寸法を測定するための非破壊検査法として,従来用いられているのは,X 線CT 試験である。X 線CT 試験は,高い精度と空間分解能で繊維方向を検出可能である5)。しかし,実際の航空機,自動車の部材のような大型構造の検査が困難であるという問題がある。また,炭素繊維と樹脂が近いX 線吸収特性を有することから6),図1 のように,コントラストは必ずしも明瞭ではない。そこで,近年,超音波を用いた繊維うねり可視化法が研究されている。超音波探傷試験により,CFRP 板の面外方向の繊維うねりが明瞭に可視化できたケースは報告されている7)。しかし,超音波探傷試験では,面内の繊維うねりを可視化することは,面外うねりの可視化と比較するとより困難である。CFRP は薄板として使用されることが多く,薄板では面外方向の繊維の湾曲は面内方向よりも抑制される。そのため,面内繊維うねりを可視化できる非破壊検査法を確立することが重要である。そこで,著者は面内繊維うねりの検出と寸法測定を行うための渦電流試験法の開発を行っている。渦電流試験は,非接触かつ短時間での検査が可能であり,試験体の片面から検査できるという利点を有しているため,X 線CT 試験の課題の克服に資すると考えられる。また,渦電流試験により面内繊維うねりを可視化することができれば,超音波探傷試験とは相補的な検査法となると考えている。

 

複合材料の非破壊試験への赤外線サーモグラフィの適用
 神戸大学 阪上 隆英

Application of Infrared Thermography to Non-Destructive Testing
of Composite Materials

Kobe University Takahide SAKAGAMI

キーワード: 赤外線サーモグラフィ,アクティブ法,断熱温度場検出,熱弾性応力計測,複合材料

はじめに
 これまでに成功を収めてきた赤外線サーモグラフィの適用事例の一つに,複合材料中の水浸入やはく離損傷を検出するための非破壊試験がある。遠隔から非接触で広範囲を検査でき,対象物表面近傍のはく離等の損傷検出性が高いといった,赤外線サーモグラフィ法の特色を活かして,航空機や宇宙用構造物をはじめとする複合材料構造部材の非破壊試験が行われている。航空機の複合材料構造部材に適用されている種々の非破壊試験技術について記された,U.S. Department of Transportation, Federal Aviation Administration による2016年発行のFinal Report においては,複合材料およびハニカムサンドイッチ構造への赤外線サーモグラフィ法の適用状況について記されている1),2)。本稿では,複合材料の非破壊試験への赤外線サーモグラフィの適用方法ならびに近年に開発検討されてきた赤外線計測データ処理技術について述べる。なお,本解説で示した参考文献は一例であり,他にも多くのオープンアクセス可能な論文が存在する。また,転載許諾の問題により画像の引用は差し控えた。

 

繊維強化プラスチックのアコースティック・エミッション試験
 東京工業大学 工学院 機械系 水谷 義弘

Acoustic Emission Testing of Fiber Reinforced Plastics
School of Engineering, Department of Mechanical Engineering,
Tokyo Institute of Technology Yoshihiro MIZUTANI

キーワード:繊維強化プラスチック,アコースティック・エミッション試験,カイザー効果,フェリシティ効果

はじめに
 繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)は様々な工業分野の機械と構造物に使用されている。本稿ではアコースティック・エミッション試験(Acoustic EmissionTesting:AT)の基本的事項を解説した後,FRP への適用について概説する。また,現行の規格基準についても紹介する。AT のFRP への適用についてより詳しく知りたい読者は参考文献の1)−4)を参照されたい。

 

資料

第23 回国際AE シンポジウムおよびIIIAE2016 世界大会開催報告
 京都大学大学院 塩谷 智基

Report on 23rd IAES & IIIAE 2016 in Kyoto
Kyoto University Tomoki SHIOTANI

キーワード:AE,IAES,IIIAE,EWGAE,AEWG

開催日:平成28 年12 月5 日(月)~ 12 月9 日(金)
会 場:京都テルサ&リーガロイヤルホテル京都
参加者:182 名(国内参加者:97 名,海外参加者:85 名)
1. IIIAE 設立の趣旨と経緯

 我が国が2008 年第19 回国際AE シンポジウム(19th InternationalAcoustic Emission Symposium,IAES19),京都で提言した国際的AE 組織構想(図1)が発端となり2011 年に米国デンバーでのAEWG(Acoustic Emission Working Group)会議で,これまで各地域の機関や個人で実施してきたAE に関わる研究,プロジェクトの成果を世界に発信する場としてAE に関わる学協会を束ねた国際組織の設立と定期的な統一会議の提案がなされた(図2)。これを受けて筆者(当時米国AEWG,会議長)とヨーロッパ EWGAE( European Working Group onAcoustic Emission)の代表H. Vallen 氏そして,当時JSNDI(日本非破壊検査協会, The Japanese Society for Non-DestructiveInspection)AE 部門の若山主査が中心となり数年後の世界会議の準備に取り掛かることとなった。ところがデンバー会議に出席していた中国ChSNDT(中国無損検測学会,The Chinese Society for Non-Destructive Testing) の代表であるShen 氏から,その数ヵ月後中国主催の国際会議直前に,中国を中心とした世界のAE 団体(ISAE)の設立と筆者ら各国代表への副会議長就任の依頼が到来した。この世界的なモラールを逸脱したともいえる行動に,米国代表であった筆者とJSNDI 代表として榎前主査,湯山幹事らで中国に赴き,会議前に団体の設立撤回を強く要求するとともに,その行動に対して国際的に許しがたい行為である旨を伝え,一旦設立撤回(中止)の約束を取り付けた。しかし,同会議のビジネス会議において約束は守られず,その設立および,役員選任議決が行われた。筆者らはAEWG 会議での決定事項を参加者に説明するとともに,各国代表者に向けて米国,ヨーロッパ,そして日本の不同意,不参加の意志を伝えた。しかし,中国側は,多数決での強行採決を行い,その結果,中国が中心となるISAE(International Society on Acoustic Emission) が可決,設立された(図3)。しかし,実質的に日本,ヨーロッパ,米国から支持がない団体での,最新の成果発表や継続的な会議の開催は困難であることは自明であった。そこで,筆者はJSNDI,AE 部門幹事の意志を確認後,米国AEWG 幹部らの協力を得て世界的組織IAAE(International Association on Acoustic Emission, 後にIIIAE に改名)の骨子素案を策定した。そして,その素案に基づきEWGAE 会議長のVallen 氏,副会議長のTscheliesnig 氏と直接ミュンヘンで会談した。その結果,EWGAE からのIIIAE への賛同確約を取り付け,三団体からなる組織の早期実現に向け具体的な戦略と各団体の公式承認に向けての行動目標を策定した(図4)。最初の参画提案は2012 年5 月,筆者が会議長を務めていた米国AEWG の第54 回会議(Princeton,NJ)で提案,審議されたが,米国の強い中国支援者の反対などもあり,次年度まで採決が延期された。このように各団体での承認は容易には得られなかったが,最終的には2012 年9 月スペイン,グラナダでのEWGAE会議(図5),2013 年米国,アナハイムでの第55 回AEWG 会議(図6),そして2015 年初頭のJSNDI 理事会において参画が承認され,IIIAE(国際先端AE 学会(日本語仮称),先進諸国の3 つの学協会・団体からなるInternational Institute of Innovative Acoustic Emission,図7 参照)が設立された。その創設記念となる世界会議は,各団体代表からの支持を得て,我が国,京都で,2016 年12 月,第23 回AE 国際シンポジウムも兼ねて開催することとなった。なお,本会議は,慣例に従い米国で開催されるAE 国際会議の冠,ICAE(International Conference on Acoustic Emission)を踏襲し,第8 回ICAE としても開催することとした。本会議は,AE 科学技術に携わる第一人者を多く招聘し,この分野でのマイルストーンとなる創設記念会議となるよう部門を挙げて準備を進めた。なお,IIIAE の初代会長にはJSNDI の元会長である岸輝雄氏(新構造材料研究組合理事長,東京大学名誉教授),副会長に筆者,事務局に水谷義弘氏(東京工業大学)が就く栄誉に浴した。

 

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