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機関誌

2016年8月号バックナンバー

2016年8月1日更新

目次

巻頭言

「平成28 年度会長就任」にあたって 緒方 隆昌

平成28 年度の会長就任にあたり,ご挨拶申し上げます。
最初に,平成28 年熊本地震で被災された方々へ心よりお見舞い申し上げ,一日も早い復興をお祈り致します。
 本協会は,1952 年「非破壊検査法研究会」として創立され,1955 年に「社団法人日本非破壊検査協会」として発足し,現在に至っています 。この間,我が国産業は目覚ましい発展を遂げ,特に非破壊検査技術及びその関連産業は,世の中の安全・安心に極めて重要な役割を果たしてきました。本協会においても,学術はもとより,教育・講習会,資格試験・認証,標準化,試験片・出版等とその活動を拡大してきました。なかでも講習会及び資格試験・認証においては,毎年,数千人の受講者及び約3 万人の受験者を受け入れ,現時点の認証登録数は9 万件を超えるまでになりました。これもひとえに諸先輩方の努力と功績によるものと深く敬意を表します。
 一方,世界経済に目を向けますと,かつて世界第二位のGDP を誇っていた我が国経済は,2009 年以降,名目GDP で世界第三位に落ち,一人あたりの名目GDP では1996 年まで世界第三位であったものが,今や世界第26 位にまで落ち込んでいます。我が国経済は,度重なる経済危機や新興国の台頭など,国際情勢や企業のグローバル化の影響を大きく受け,思っている以上に低迷しています。技術立国日本としては,学術界及び産業界が連携し,グローバル市場でも通用する技術的競争力を強化することが不可欠です。非破壊検査は,製品の品質や信頼性を確保して世の中の安全・安心を支えるとともに,製品の評価や各種のセンシングに用いられるなど,様々な技術的競争力の強化に活用でき,本協会の使命は極めて重要と認識しています。
 将来構想委員会では,2025 年頃の達成を見据えた次の将来構想を提案しました。
 “ステークホルダーとの連携強化及びサービス強化”を目指し,各ステークホルダーへ提供したい価値について,“産業界”で実力のある協会,“学術・教育界”に存在価値のある協会,“行政機関”に影響力のある協会,“社会”から尊敬される協会及び“会員”に魅力のある協会としました。これらを達成するための施策案を,一部ご紹介しますが,理事会でさらに議論した上で,正式に発信し,順次,実行していく所存です。
①業界バリューチェーンの構築(関連業界間の連携強化)
 電力/ガス,プラントメーカー,検査会社及び検査機器会社の連携のような複数業界のつながりを意識した技術交流,共同研究など,ネットワークを構築できる取り組みを企画し,積極的な参加を促す。
②学術・産業分野の拡大と融合
 他の学会・協会との共同シンポジウム,交流会,研究会など,他の技術分野や産業分野と広く連携する場を設定し,非破壊検査技術の活用分野の拡大及び他分野との融合による活性化及び発展を図る。
③学会機能と業界団体機能のシナジー強化
 学会機能/業界団体機能によって,シーズ/ニーズの両面を有する本協会の特徴を生かし,各業界からの要望などを集約して,産学官の連携及びネットワーク構築を行う。
④有効なグローバル展開の強化
 日本の技術及び技術者の国際的位置づけの確保など,ICNDT,APFNDT / APCNDT,ISO 会議等への有効な対応を見極め実施するとともに,各国協会との相互交流や認証の相互承認を促進する。
⑤会員活動の活性化
 若手研究者・技術者の育成及びOB 人材の活用の他,同業種/異業種,川上・川下,産学官など様々な交流を推進する。地域活性化のため,支部活動についても積極的な支援及び連携を行う。
 以上のように,本協会が向かうべき方向性を明確に定め,ビジョンとして共有することで,ベクトルを合わせた大きな力にしていきたいと考えていますので,会員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

 

報告・展望(2015)

放射線による非破壊試験の活動報告と今後の展望
2015 年度放射線部門主査,(株)日立製作所 上村  博

Review on Radiographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2015
Hitachi, Ltd. Hiroshi KAMIMURA

キーワード: 放射線透過試験,放射線画像,デジタルラジオグラフィ,X線 CT,中性子ラジオグラフィ

1. はじめに
 放射線部門は,放射線を利用した非破壊検査技術を広く対象としている。放射線を用いた透過撮影やコンピュータトモグラフィ(以下CT)による撮影が主な試験技術となっており,これらの技術は産業界ですでに広く普及したものとなっている。透過撮影においてはX線フィルムからデジタルラジオグラフィ(以下DR)への移行はなかなか進んでいないが,JIS 規格の整備と共に急速に普及するものと予想される。研究開発においてはインフラの老朽化から,その診断を目的とする装置の開発が進んでおり,平成27 年度はそれを機関誌の放射線部門の特集とした。
 以下に,平成27 年度の部門活動を報告すると共に,部門講演会,シンポジウム,秋季講演大会での発表,並びに機関誌の掲載記事を参考に技術動向と展望を述べる。

 

超音波探傷試験の活動報告と今後の展望
2015 年度超音波部門主査,福岡工業大学 村山 理一

Review on Ultrasonic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2015
Faculty of Engineering, Fukuoka Institute of Technology Riichi MURAYAMA

キーワード: 超音波探傷,シミュレーション,ガイド波,フェーズドアレイ,信号処理,イメージング,非線形超音波,非接触超音波,レーザ超音波,空気超音波,電磁超音波,計測,材料評価,探傷装置,センサ,試験片

1. はじめに
 超音波部門では,超音波探傷試験に関する多くの研究講演活動が行われている。それらは,現場における様々な工夫をこらした新たな取り組みに関するものから,世界的にも最新と思われる知見を含む内容まで多肢にわたっており,毎年有用の知見が多く見られる。超音波探傷試験に限らず工学に関する研究開発は,現場のニーズの存在やニーズの創造が必須であり,加えてそれを解決することに存在意義が有る。広く有用な知見の集まる超音波部門の活動は,技術者と研究者の双方に有用であるべきであり,ここに技術項目別に年度分をまとめておく。今後の超音波探傷技術の発展に寄与することを期待したい。

 

磁粉・浸透・目視試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望
2015 年度磁粉・浸透・目視部門主査,職業能力開発総合大学校 橋本 光男

Review on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing in 2015
Polytechnic University Mitsuo HASHIMOTO

キーワード: 磁粉探傷,浸透探傷,目視検査,非破壊検査

1. はじめに
 磁粉・浸透・目視部門は表面探傷に関わる試験として広く活用されている。発電所,化学プラント,交通設備などをはじめ,最近ではインフラストラクチャのメンテナスに磁粉・浸透・目視試験に関わる検査技術は重要な位置づけになっている。
 学術部門が従来の表面探傷分科会から,磁粉・浸透・目視部門,電磁気応用部門,漏れ試験部門の3 つの部門の新しい体制に変わったが,講演会及びシンポジウムは従来の表面探傷分科会を引き継ぎ,電磁気応用部門,磁粉・浸透・目視部門,漏れ試験部門の3つの部門は合同で行っている。これら3 つの部門は表面きずの検出という共通テーマを有しており,今後も共同で活動することが,お互いの部門の活性化にも繋がっていくと考えている。
 ここでは,平成27 年度の表面3 部門合同で行った講演会及びシンポジウムの概要を述べると共に磁粉・浸透・目視部門の活動報告及び今後の展望について述べる。

 

電磁気応用による非破壊試験の活動報告と今後の展望
2015 年度電磁気応用部門主査,岡山大学 塚田 啓二

Review on Electromagnetic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Electromagnetic Testing in 2015
Okayama University Keiji TSUKADA

キーワード: 渦電流探傷,漏洩磁束探傷,電磁界解析,表面探傷,磁気センサ

1. はじめに
 電磁気応用部門は,磁粉・浸透・目視部門,漏れ試験部門と3部門合同で活動を行っている。検査対象として,鋼材などの磁性体や,アルミや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの非磁性体,あるいはその両方の磁性が混在しているステンレスでできたなど導電性のある材料による構造物及び部品の欠陥などが挙げられる。電磁気応用部門は,これら検査対象において,電磁気現象を応用した検査法と解析法を対象としている。特に表面のきずの検査が中心であるが,内部の欠陥検査あるいは材料の組成・構造変化なども扱っている。電磁気現象に基づいた検査方法では,基本的に対象物に磁場を印加して渦電流発生や漏洩磁束などを発生させ,コイルや磁気センサなどで電磁変化を捉えることにより検査を行っている。このように対象との電磁的な相互作用を用いた検査といえる。一方,磁粉の場合は,磁場を印加して発生した電磁変化を可視化するため,磁気センサではなく磁粉を媒体として検査している。また,漏れ試験では,き裂などが発生したことに起因する容器内部のガスなどの漏れ量の形として検査しているものである。これら検査技術は,対象の形状や状態等によってよりよい検査手段の選択が行われる。このため,3 部門では共通の対象あるいは基礎技術が多いことから,お互いに情報共有して活動している。平成27 年度はこのように3 部門の連携により,活動してきた内容を中心に報告するとともに,電磁気応用部門が取り扱っている検査の動向と展望について述べる。

 

漏れ試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望
2015 年度漏れ試験部門主査,(株)タセト 津村 俊二

Review on Leak Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Leak Testing in 2015
TASETO Co., Ltd. Shunji TSUMURA

キーワード 漏れ試験,LT 資格認証,表面 3 部門合同研究集会

1. はじめに
 漏れとは,ある限られた空間に保持されている流体(気体や液体)が,その空間の外へ流出する又は逆に空間の外から別の流体が流入してくる現象である。その漏れは,大切な物質の流失,環境汚染,火災・爆発等の事故,製品の品質低下等を引き起こす。事前にこれらの漏れを検出し,損失を未然に防ぐのが漏れ試験である。古くは,水や油の漏れから始まり,造船の浸水,各種化学プラントからのガスや有害物質の漏れの検出から,高真空域の維持まで,時代の要求に合わせ,漏れ試験の技術も進化してきた。漏れ試験は,我が国の工業の品質,安全,環境等を背後で支えている重要な技術の一つである。
 なお,漏れ試験には対象とする物質,検出レベル等により,原理の異なる多くの試験方法や技法がある。

 

応力・ひずみ解析の活動報告と今後の展望
2015 年度応力・ひずみ測定部門主査,大阪大学 望月 正人

Review on Stress / Strain Measurement
Chairman of Research & Technical Committee on Stress /
Strain Measurement in 2015 Osaka University Masahito MOCHIZUKI

キーワード: 応力・ひずみ測定,材料評価,強度評価,実験力学,光学的計測,画像処理,信号処理,可視化,バイオメカニクス

1. はじめに
 応力・ひずみ測定部門は,基本となる応力・ひずみの測定手法および解析手法の開発・改良から,応力・ひずみ解析に関する応用開発,応力・ひずみ測定に基づく材料評価および強度評価などに至る幅広い分野を対象とし,それらの学術研究成果の公知化および実用化,研究動向の分析,登録会員間の情報交換と相互研鑽などを主目的として活動している。近年では,応力・ひずみ解析の対象が,金属材料ばかりでなく,高分子材料,生体材料,生体組織などに広がってきている。さらには,複合材料やインフラ構造物の健全性評価に関する研究も増えてきている。また,用いられる計測手法も多岐にわたるが,ここ数年では,光学的手法やX線を用いた手法,デジタル画像を用いた手法などが数多く報告されている。以下では,平成27 年度における活動と今後の展望を要約する。

 

保守検査の活動報告と今後の展望
2015 年度保守検査部門主査,関東学院大学 関野 晃一

Review on Maintenance Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on Maintenance Inspection in 2015
Kanto Gakuin University Kouichi SEKINO

キーワード: 保守検査,損傷評価,健全性評価,経年変化,ビッグデータ

1. はじめに
 保守検査部門では,プラント設備や社会インフラなどの安全性および信頼性を維持・向上させるために,重点的に検査が必要な溶接部,応力集中部,腐食により劣化が発生しやすい箇所,高温・高圧環境下で利用される設備について,劣化度評価,信頼性評価および予寿命評価などから安全性と経済性を総合評価して延命策を検討・実施する活動を行っている。
 本部門で取り扱う技術は,プラント設備・社会インフラが使用され始めてから廃棄されるまでの長期にわたる健全性を確保するために,種々の非破壊検査技術だけでなく,プラント設備・社会インフラの管理など関連技術を含む幅広いものである。従って,関連分野の産学官の専門家とプラント設備・社会インフラを運用・管理する各社の技術者および研究者との間で議論することで,保守検査に関する分野の知識を深め,その知識を各社で活用することが重要であると考え,関連分野および新しい技術の専門家を招いて年2 回程度のミニシンポジウムを実施してきた。
 平成27 年度は2 回のミニシンポジウムを開催し,最新の技術や保守検査に関する課題および取り組みなどを講演いただき,活発な議論を行った。さらに,機関誌「非破壊検査」の特集号として,「産業プラントと社会インフラにおける高経年化マネジメントⅢ」を発行した。

 

製造工程検査の活動報告と今後の展望
2015 年度製造工程検査部門主査,香川大学工学部 林 純一郎

Review on In-Process Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on In-Process Inspection in 2015
Kagawa University Jun-ichiro HAYASHI

キーワード 画像処理技術の実利用化,目視検査の自動化,製造工程検査,画像センシング,センサネットワーク

1. はじめに
 スマートフォンなどの普及に代表されるように,IT 機器の高性能化や低価格化,小型化に伴い,画像や動画像などの大量の情報を高速に処理する必要がある画像処理技術の実用化が進んできた。国が自動運転車の実現を目指してきたように,自動車へのカメラ装置搭載は一般的になりつつあり,ありとあらゆる環境にカメラ装置と画像処理技術が適用されつつある。また,ある検査対象に複数の画像処理手法を段階的に適用するなどの単純な検査であれば,人間より遥かに高速かつ精密な検査も可能となり,製造工程検査などにおいて,人の目に代わる技術として欠かせない存在となりつつある。近年はDeep Learning など機械学習手法の発達により,複雑な画像処理技術を適用する例もみられる。また,カメラや3 次元計測装置等のセンサの低価格化に伴い,比較的生産規模の小さい現場においても,画像処理による検査システムが導入できる状況となった。このように,検査への画像処理技術の導入は,あって然るべき時代を迎えて久しい。しかしながら,各種生産現場における製品や,道路・トンネル・橋梁等のインフラやその他構造物など,検査対象は様々であり,かつそれらに発生するきずや欠陥の大きさや種類なども多種多様であり,更には検査の環境も様々であるため,外観画像や透過画像,3 次元画像を利用した検査の自動化は必ずしも容易ではない。また,ハードウェア・ソフトウェアの基本スペックが向上し,コストも低下したとなれば,これまでは自動化が見送られていた検査事例についても,それが望まれるようになるのは自然の流れである。製造工程検査における要素技術は多岐にわたるが,以上の画像処理技術を取り巻く状況の中,当部門では現在までのところ,特に,いわゆるデジタル画像処理による検査の定量化・自動化技術を中心に学術活動を展開している。
 近年,画像処理技術は検査,ロボット,ITS,医療,メディア処理,セキュリティ,インターフェイスなど,その応用範囲の拡大は留まるところを知らず,ますます拡大している。つまり,その技術革新は著しく,最新の画像処理技術を当協会の皆様にリアルタイムに紹介することが,製造工程検査部門の存在意義であると考え活動してきた。当部門は各種学会・研究委員会の枠を越えて連携・協力し,広く画像処理・センシングに関するシンポジウムやワークショップを年に3 回程度共同企画し,協賛している。これによって,非破壊検査・外観検査・目視検査に関わる画像処理技術に常に新たな風を吹き込み続けている。

 

アコースティック・エミッションによる非破壊試験の活動報告と今後の展望
2015 年度アコースティック・エミッション部門主査,京都大学 塩谷 智基

Review on Acoustic Emission
Chairman of Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2015
Kyoto University Tomoki SHIOTANI

キーワード: AE,モニタリング,非破壊検査,IoT,Industry 4.0

1. はじめに
 アコースティック・エミッション(AE)部門は,アコースティック・エミッション特別研究委員会を母体として組織され,平成22 年度より活動を開始した。AE 部門ではAE 特別研究委員会と同様に,AE 法を基盤とした非破壊検査・非破壊評価技術および,その応用分野の発展・普及を目的とした活動を行っている。以下に平成27 年度の活動をまとめる。

 

新素材の非破壊評価の活動報告と今後の展望
2015 年度新素材に関する非破壊試験部門主査,東北大学 内一 哲哉

Review on Non-Destructive Evaluation of New Materials
Chairman of Research & Technical Committee on
Non-Destructive Evaluation of New Materials in 2015
Tohoku University Tetsuya UCHIMOTO

キーワード 先進材料,非破壊計測,高温環境センサ

1. はじめに
 新素材に関する非破壊試験部門では,新素材の非破壊評価に関する研究,調査および普及を目的とした活動を行っている。特に,様々な非破壊検査技術および非破壊評価技術の応用を横断的に調査していることに本部門の特徴がある。例えば,複合材料の計測技術,材料の劣化評価に関連した計測技術や,高温環境における計測技術などを切り口として,他の団体や研究会との連携を積極的に行いながら調査を行っている。本年度は,ミニシンポジウムを1 回,シンポジウムを1 回開催した。以下にその活動の概要をまとめる。

 

鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験の 活動報告と今後の展望 2015 年度鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門主査,(国研)土木研究所 森濱 和正

Review on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete
Chairman of Research & Technical Committee on
Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete in 2015
Public Works Research Institute Kazumasa MORIHAMA

キーワード: 活動報告,鉄筋コンクリート構造物,非破壊・微破壊試験,研究委員会,標準化,講習会

1. はじめに
 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(以下,RC 部門)では, 2015 年度は4 回の学術行事を活発に行った。RC 部門では3 年ごとに比較的規模の大きい定期シンポジウムを開催しており,2015 年は第5 回の定期シンポジウムを2015 年8 月6 日(木),7 日(金)に開催した。そのほか,学術委員会,標準化委員会,教育委員会,編集委員会と関連した活動などについてもその概要を報告する。
 さらに第5 回定期シンポジウムでの発表など研究の概要および今後の展望について述べる。

 

赤外線サーモグラフィによる非破壊試験の活動報告と今後の展望
2015 年度赤外線サーモグラフィ部門主査,防衛大学校 小笠原永久

Review on Infrared Thermographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Infrared Thermographic Testing in 2015
National Defense Academy Nagahisa OGASAWARA

キーワード: 赤外線サーモグラフィ試験,非破壊検査,モニタリング

1. はじめに
 赤外線サーモグラフィ(TT)部門では,ミニシンポジウム開催などの学術活動のほか,実技を含む講習会の開催,ISO・JIS・NDIS規格の制定・整備,技術者認証制度の構築などを行い,試験技術の開発・確立・普及を目的とした活動を継続して推進している。

 

報告(2015)

学術委員会活動報告
2015 年度学術委員会委員長,東北大学 三原  毅

Report of Academic Affairs Committee
Chairman of Academic Affairs Committee in 2015
Tohoku University Tsuyoshi MIHARA

キーワード:学術行事見直し,表彰実績,研究助成事業・研究奨励金制度

1. はじめに
 工業製品や構造物の安全確保のために今日利用されている非破壊検査技術が学術研究に端を発したことを考えると,(一社)日本非破壊検査協会(以下,当協会)においても学術活動はその基礎をなすものである。学術委員会は,協会の学術活動全般を総括する位置づけであり,関連する2 名の理事と12 部門および2 研究会の主査から構成されている。平成27 年度の学術委員会の委員構成は以下の通りであった。

  三原 毅:委員長(学術担当副会長)
  望月正人:学術担当理事
  上村 博:放射線(RT)部門主査
  村山理一:超音波(UT)部門主査
  橋本光男:磁粉・浸透・目視(MT/PT/VT)部門主査
  塚田啓二:電磁気応用(ET/MFLT)部門主査
  津村俊二:漏れ試験(LT)部門主査
  望月正人:応力・ひずみ測定(SSM)部門主査
  塩谷智基:アコースティック・エミッション(AE)部門主査
  小笠原永久:赤外線サーモグラフィ(TT)部門主査
  林純一郎:製造工程検査(IPI)部門主査
  関野晃一:保守検査(MI)部門主査
  森濱和正:鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験(RC)部門主査
  内一哲哉:新素材に関する非破壊試験(NMT)部門主査
  林 高弘:材料の非線形現象を利用した非破壊評価研究会主査
  松田洋一:超音波による非接触非破壊計測・先進評価技術研究会

主査
 平成27 年度は,7 月と3 月の恒例の学術委員会に加えて,11 月には学術行事の見直しを中心議題とする臨時の学術委員会を開催した。以下に平成27 年度の学術活動について報告するが,各部門における実質的な学術活動の詳細についてはそれぞれの報告・展望を,また国際学術活動については国際学術委員会活動報告をご覧いただきたい。

 

 

2015 年度標準化委員会委員長,ポニー工業(株)
 釜田 敏光

Report of Standardization Committee
Chairman of Standardization Committee in 2015
Pony Industry Co., Ltd. Toshimitsu KAMADA

キーワード: 非破壊検査,規格,NDIS,JIS,ISO/p>

1. 概要
1.1 はじめに
 日本非破壊検査協会(JSNDI)では,標準化委員会とISO 委員会が協力し,また,経済産業省や日本規格協会等の関連学・協会との緊密な連携の下,日本国内外の非破壊試験に関する標準化の一体的な推進を図っている。
 本報告では,標準化委員会の2015 年度の活動として,原案作成や改正に関わる日本工業規格(JIS)及び日本非破壊検査協会規格(NDIS)の動向及び関連の事業について説明する。なお,ISOの動向に関しては,別途ISO 委員会活動報告がなされている。

 

ISO 委員会活動報告
2015 年度ISO 委員会委員長,ものつくり大学特別客員教授 大岡 紀一

Report of ISO Committee
Chairman of ISO Committee in 2015
Institute of Technologists, Guest Professor Norikazu OOKA

キーワード ISO/TC 135,ICNDT,資格及び認証,CEN/TC 138

概要
 前年度に引き続き,ISO(国際標準化機構)規格案件に関する事項を検討,審議及び投票のための集約,さらにTC 44(溶接),TC 17(鋼)等の国内審議団体と連携を取り関連ISO 規格の対応と共に情報交換等を行った。
 ISO/TC 135(専門委員会)のSC 7(資格・認証に関する分科委員会)に設けられているWG 9 が米国ユタ州ソルトレークシティのSalt Palace Convention Center 及びHilton Hotel において2015年10 月26 日から29 日までASNT Annual Conference に併設してISO/TC 135/SC 7/WG 9 が開催され,日本から報告者と大岡昌平事務局が出席した。
 また,ISO/TC 135/SC 9 がブラジル・サンパウロのABENDI において2015 年10 月20 日から21 日(19 日予備日)まで開催され,中村英之((株)IHI 検査計測)SC 9 委員及び塩谷智基(京都大学))WG 委員が出席した。
 一方,国内におけるJSNDI のISO 委員会としては,2015 年6月及び2016 年3 月にISO/TC135 及び関連SC の対応のために分科会を開催した。また,2016 年 3 月本委員会を開催した。これらにおける諸活動について以下に述べる。

 

国際学術委員会活動報告
2015 年度国際学術委員会委員長,東北大学 三原  毅

Report of International Committee
Chairman of International Committee in 2015
Tohoku University Tsuyoshi MIHARA

1. はじめに
 (一社)日本非破壊検査協会(以下,JSNDI)は近年,国際非破壊試験委員会(International Committee for Non-Destructive Testing;ICNDT)及びその傘下にあるアジア・太平洋非破壊試験連盟(Asia-Pacific Federation for Non-Destructive Testing;APFNDT)1) と連携した諸活動を進めると共に,諸外国の非破壊試験協会などとの交流と情報交換など,学術のみに留まらず,認証,教育,標準化に密接に関連した広範な活動を積極的に行ってきたが,ICNDT,APFNDT などの活動が,学術に関することだけでなく,認証,教育などの幅広い分野で活発に活動していることに的確に対応すべく,運営委員会の直下に国際対応WG を設置し,関連する委員会の分担や事務局の組織体制見直しを検討するなど,そこで対応することとなった。これに伴って,国際学術委員会は,学術分野に特化し,国外の非破壊検査法に関する情報の交換・収集及びその国内への普及・広報を通じて関連する研究者などの相互交流を図り,JSNDI の学術活動を推進することを担当している。
 国際学術委員会の委員任期は2 年(留任あり),2015 から2016年度の委員構成(50 音順)は以下の通り。

三原 毅 委員長,2015 年度学術担当副会長
大岡紀一 ICNDT 日本代表(2011 年9 月から),
     ICNDT 名誉会員,ICNDT PGP 委員会委員,
     ICNDT WG 1 委員,
     APFNDT 会長(2013 年11 月から),
     ISO 委員会委員長,元会長
落合 誠 2015 年度庶務担当理事
加藤 寛 ICNDT 日本副代表(2011 年9 月から),元会長
廣瀬壮一 2015 年度会長
 なお本稿では,2015 年度における国際学術委員会関連の活動を報告に先立って,国際学術活動に特化した動きをまとめた。

 

教育委員会活動報告
2015 年度教育委員会委員長,非破壊検査サービス(株) 中村 和夫

Report of Education Committee
Chairman of Education Committee in 2015
Non-Destructive Inspection Service Co., Ltd. Kazuo NAKAMURA

キーワード: 教育委員会,教育・訓練,非破壊試験技術講習会,実技講習会,JIS Z 2305,講習会カリキュラム

1. はじめに
 教育委員会(以下,「当委員会」という)は,非破壊検査に従事する技術者の技量向上を目的として各種教育・訓練の計画と実施並びに関係書籍の編集などを行っている。
 2015 年度は,特に,JIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」の改正に伴う新認証制度に対応する資器材,講習会カリキュラム等の運用を開始した。
 ここでは,2015 年度の当委員会の主な活動実績を報告する。

 

認証運営委員会活動報告
2015 年度認証運営委員会委員長,東京工業大学 井上 裕嗣

Report of Certification Steering Committee
Chairman of Certification Steering Committee in 2015
Tokyo Institute of Technology Hirotsugu INOUE

キーワード:非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,NDIS 0602,NDIS 0603,NDIS 0604,NDIS 0605,ISO 18436-7

1. はじめに
 日本非破壊検査協会では,1968 年にNDIS 0601「非破壊検査技術者技量認定規定」が制定され,1969 年に最初の試験が実施されて以来,長年にわたって非破壊試験技術者の認証を実施している。2003 年からはJIS Z 2305:2001「非破壊試験―技術者の資格及び認証」に基づく認証を実施してきたが,2013 年にJIS Z 2305 が改正されたことを受けて,2015 年秋期からJIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」に基づく新規試験を開始した。
 また,当協会では,JIS Z 2305 に基づく認証に加えて,
  NDIS 0602「非破壊検査総合管理技術者の認証」
  NDIS 0603「超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証」
  NDIS 0604「赤外線サーモグラフィ試験―技術者の資格及び認証」
  NDIS 0605「非破壊試験―漏れ試験技術者の資格及び認証」に基づく認証も実施している。これらのうちNDIS 0604 及びNDIS 0605 に基づく認証はJIS Z 2305 に基づく認証と併せて認証運営委員会の下(NDIS 認証委員会)で実施しているが,NDIS0602 及びNDIS 0603 に基づく認証は,認証運営委員会とは独立の「非破壊検査総合管理技術者認証委員会」及び「PD 認証運営委員会」の下でそれぞれ実施している。さらに,国際認証委員会と認証運営委員会の協力の下で,諸外国との相互認証及び資格乗入を実施している。
 なお,2015 年度の認証運営委員会の委員構成(50 音順)は次のとおりであった。   相山英明 倫理苦情処理委員長,認証広報委員長
  井上裕嗣 委員長,認証担当理事
  蔭山健介 問題管理委員長
  加藤 潔 委員(旧 PED WG 主査)
  野村友典 試験基準委員長
  畠山 賢 認証事業部長
  藤岡和俊 PCP WG 主査
  三原 毅 査定委員長
  村田頼信 試験委員長,NDIS 認証委員長,認証担当理事
 本稿では,JIS Z 2305 に基づく認証を中心に,関連する認証及びその他の認証関連事項を報告する。

 

出版委員会活動報告
2015 年度出版委員会委員長,(株)検査技術研究所 岡  賢治

Report of Publication Committee
Chairman of Publication Committee in 2015
KGK Co., Ltd. Kenji OKA

キーワード: 出版,テキスト,問題集,規格

1. はじめに
 出版委員会は,非破壊検査技術の教育・普及に関する出版物の企画,編集,制作及び頒布,管理を行うことによって,非破壊検査技術水準の向上を図ることを目的として設置された委員会であり,その活動は教育委員会の活動と密接に関係している。そのため,その構成委員は,各部門の関係者とともに教育委員会からの派遣委員,理事等で構成されている。図1 に,出版活動の典型的な例を示す。

 

試験片委員会活動報告
2015 年度試験片委員会委員長,JFE テクノリサーチ(株) 高田  一

Report of Reference Block Committee
Chairman of Reference Block Committee in 2015
JFE Techno-research Corporation Hajime TAKADA

キーワード: 標準試験片,対比試験片,分類用ゲージ,トレーサビリティ,品質証明

1. はじめに
 (一社)日本非破壊検査協会(以下,当協会)では非破壊検査技術の技術水準の向上および普及に努める一環として,非破壊試験の実施に必要な標準試験片,対比試験片,およびゲージを販売している。以下,標準試験片および対比試験片をまとめて頒布試験片,あるいは試験片類と称する。
 非破壊試験において,試験片類およびゲージは,試験装置の調整および性能確認,試験結果の定量化,試験方法の標準化,および,試験結果への影響因子の評価などの重要な業務に用いられる。
 試験片類およびゲージの販売先は主に国内であり,2015 年度の販売数は,超音波関連試験片約600 体,磁粉探傷試験用標準試験片約3000 枚などとなっており,2015 年度の販売総額は8 千万円弱であった。
 試験片類およびゲージの年間販売数および年間販売額はおよそ上記の数量および金額で推移している。毎年,これだけの数の試験片類およびゲージを頒布しているのは,国内の非破壊試験業務に当協会の頒布試験片およびゲージが定着していることの表れであろう。
 当委員会の具体的な活動方法については,2014 年度の報告1)を参照いただくとして,2015 年度はその後の活動の進展状況について重点的に紹介する。特に,素材の確保をはじめとする製造体質の強化について大きな進展がみられたので,それを中心に紹介する。

 

広報活動委員会活動報告
2015 年度広報活動委員会委員長,菱電湘南エレクトロニクス(株) 和高 修三

Report of Public Relations Committee
Chairman of Public Relations Committee in 2015
Ryoden Shonan Electronics Corporation Shusou WADAKA

キーワード: 非破壊検査,広報活動,セミナー,展示会

1. はじめに
 広報活動委員会では,協会ホームページに最新情報を公開し,協会の行事や事業の案内を行うことにより,会員へのサービス向上や新入会員の増加促進に努めている。また,各種セミナーや展示会への参画などを通して,広く一般の方々に向けても非破壊検査技術の認知度をアップすべく広報活動を行っている。
 ここでは広報活動委員会の平成27 年度の主な取り組み事項について報告する。平成27 年度は活動方針として,前年度にかなりの時間をとって精力的に準備を進めてきたホームページのリニューアルを主体として活動することとした。また,若年層への広報を目的とした「明日を担う次世代のための非破壊検査セミナー」は,引き続き鋭意,活動するとともに,「子供向け非破壊検査の啓蒙のためのイベント」としては,(一社)日本能率協会殿主催で初めての試みである小学生と保護者のためのイベント「夏休み2015宿題・自由研究大作戦!」 に参加した。
 なお,平成27 年度の広報活動委員会は次に示すように計6 回開催した。第1 回目:平成27 年6 月12 日(金),第2 回目:平成27 年8 月24 日(月),第3 回目:平成27 年10 月6 日(火),第4 回目:平成27 年12 月17 日(木),第5 回目:平成28 年3 月1 日(火),第6 回目:平成28 年5 月18 日(水)。
 以下,平成27 年度の主な活動内容について報告する。

 

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