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機関誌

2007年度バックナンバー連載歴史3月

2007年3月1日更新

機関誌「非破壊検査」 バックナンバー 2007年度

連載 非破壊検査の歴史

我が国における超音波探傷の歴史 [?]
  松山  宏 名誉会員(前湘菱電子(株)・元三菱電機(株))

 

The Histoy of Ultrasonic Testing in Japan [?]
Hiroshi MATSUYAMA Honorary Member
(Formerly Shoryo Electronics Co./Mitsubishi Electric Co.)

Yoshio KASAI Emeritus Professor of Nihon University

キーワード 非破壊検査, 超音波探傷検査,パルス法,反射法,超音波探傷装置,超音波厚さ計



5. 我が国における超音波探傷技術の成熟期 
  その1(1972〜1981年)(続き)
 1978年,探触子を更に高速で回転させるために,水柱を介して探触子と試験体とを音響結合させる方法,すなわち回転探触子・局部水浸方式が開発され た。この探傷装置の機構部を図11)に示す。この開発によって鋼管ばかりではなく棒鋼の探傷にもこの方式の探傷装置が広く採用されるようになった。
 この方式で鋼管を探傷する場合の問題点として,探傷中の鋼管の内側に水が入ると探傷結果に悪い影響を与えることと,探触子とともに高速で回転している水 には遠心力が作用して,この水に含まれる微小浮遊物が探触子前面に付着して探傷感度が下がるなどがあった。前者は,探傷中の鋼管の後端と後続の鋼管の先端 をソフトに接触するように搬送装置を制御する方法で解決された。後者は,供給される水の一部で常に探触子の表面を洗浄する方法で解決さ れた。

 鋼管は,石油や天然ガスの採掘に使用されるほか,これらを輸送する設備にも広く使用されている。
 これらの鋼管の破損は,単に経済的損失をその企業に与えるばかりか周辺地域へ与える環境的被害も莫大となる恐れがあるために,主にアメリカ石油学会(API)規格によって厳密に非破壊検査が適用されている。
 この探傷装置は,製品の生産速度にマッチした探傷速度で,この厳格な公的探傷仕様を満足する装置であった。
 棒鋼は,大量生産される機械部品の原材料として用いられていた。これらの原材料を用いた機械部品の加工には切削加工より効率の良い冷間加工が広く用いら れていた。しかし,この原材料中に微細なきずが存在すると,加工中に加えた大きな応力がこの部分に集中して,加工中の材料が折損するばかりか、加工機械に も損傷を与える恐れがあり,この加工法に耐える品質の原材料を保証する必要があった。このために,棒鋼の全長・全断面に超音波探傷法を主体とした厳密な非 破壊検査が適用されてきた。したがって,棒鋼に対する非破壊検査の仕様は,棒鋼を加工する環境によって異なるため,公的な検査規格は存在していない。

 

 

 

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