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機関誌

2007年度バックナンバー1月医用診断技術の動向その1

2007年1月1日更新

医用診断技術の動向 その1

デジタル位相コントラストX線乳房画像撮影システム   本田  凡  大原  弘 コニカミノルタエムジー(株)開発センター

 

Digital Phase-Contrast Mammography System
Chika HONDA and Hiromu OHARA Konica Minolta Medical & Graphic, Inc.

キーワード 乳房画像,位相コントラスト撮影,デジタルラジオグラフィ,拡大撮影,像質,マイクロフォーカス

1. はじめに
 位相コントラスト撮影あるいは位相イメージングはX線が電磁波として持つ波動性を利用するX線画像撮影法であり,高鮮鋭な画像や従来にはなかった新しい 画像を得る技術として注目を集めている。1895 年にX線が発見されて以来,100 年近くX線の波動性はX線画像撮影には利用されてこなかった。1990 年代に入ってX線の位相コントラスト撮影の研究が盛んに行われ,医用画像撮影の観点ではとくに軟部組織の乳房撮影に有用であると考えられた1)。それらは 放射光X線源から得られる単色X線の平行ビームや,微小焦点(マイクロフォーカス)X線管からの横方向の干渉性が高い多色X線が用いられたので,これらX 線源の特殊性から広く医療施設での実用化にはいたらなかった。しかしX線の干渉性にこだわらずにX線の屈折に着目して位相コントラスト撮影について幾何光 学的に理論展開したところ2),乳房X線撮影用の100 μ m焦点径のモリブデン陽極の実用的なX線管でも,位相コントラスト撮影が可能であることがわかった3)。
 ここで乳癌の画像診断においては図1に示すように1 mmより小さい微小石灰化粒子や乳腺に囲まれる淡い陰影の腫瘤(がん)の描写が必要とされている。それゆえに乳房X線画像は一般のX線撮影画像より高い空 間分解能と鮮鋭性が要求されており、そのために乳房X線撮影に使用される従来の銀塩フィルムのスクリーン/フィルム(SF)システムは,胸部や四肢骨撮影 で用いられる一般撮影用SFシステムと異なり,片面増感紙/片面フィルムの組み合わせで用いられてきた4)。
 一方,昨今,医用X線画像のデジタル化が進み,乳房画像撮影にもCR(Computed Radiography),そしてFPD(Flat Panel Detector)が適用されている。デジタル画像はその強みである画像処理によって,X線画像コントラストの低い腫瘤の描写性の向上が期待できる。しか し微小石灰化粒子をSFシステム同等に描写する高い空間分解能と鮮鋭性は,これまでのデジタル乳房システムでは得ることができなかった5)。そこで我々は 医療用小焦点X線管を用いた位相コントラスト撮影技術をデジタル乳房画像撮影に適用することによって,空間分解能と鮮鋭度を大きく向上させたデジタル位相イメージング乳房撮影用システム,PCM(PhaseContrast Mammography)システムを開発した。
 本稿では位相コントラスト撮影技術のデジタル乳房撮影への適用と,得られる画質(像質)について概要を説明し,さらに非破壊検査における位相コントラスト撮影技術について考察する。

 

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