現在の装置産業において,安全の確保が必須となっている。 いったんトラブルが発生すると,装置の停止のみだけでなく,製品の生産ができなくなり,我々の日常生活まで大きな影響を及ぼしてくる。特に,石油精製,石油化学プラント,原子力および電力等では,社会的に大きな影響が出てくる。 昨年夏,ある原子力発電所において,トラブルまでに至っていないが,定期点検で検出されたきずを原子力安全保安院に無届で,補修したことが社会的に大きな問題となった。きずの原因が,原子力発電所の機器および配管等の経年変化に関連している場合が多いことは,明らかである。 今後,原子力発電所に対する信頼を回復するためには,機器・配管等の健全性を確認し,国民に安心感を与えることが重要である。そのためには,機器・配管等の検査結果を世間に公開し,透明性を上げていくしかない。検査結果をホームページ等で,公開すればより透明性が上がることは明白である。 このように,「保守検査」は,装置産業において,設備の信頼性の確保に不可欠な技術となってくる。 「保守検査」は,単に機器・配管等の欠陥を検出するだけでなく,その欠陥がトラブルに繋がるかどうかを判断しなければならない。従って,欠陥の程度を把握すると同時に,欠陥の進展性も評価する必要があるため,欠陥を高精度で,かつ定量的に検出しなければならない。 しかしながら,現在の「保守検査」では,すべての欠陥について定量的に把握できていない。 また,我が国では,今まで,明確な規格がなかったため,検出されたきずの寸法測定(サイジング)は必須でなく,そのため,たとえば超音波探傷試験の寸法測定の技術開発は,欧米に比較してやや遅れている。 最近,超音波探傷試験(TOFD法等)によるサイジングの精度が研究されているが,欠陥を高精度で,かつ定量的に評価できる非破壊検査技術の開発が不可欠となってくる。 ようやく,我が国でも原子力発電設備に対して,きずに関する維持基準が,平成15年度中に省令で規定されることになった。すなわち,きずが存在しても,破壊力学に基づく解析により,次期定期点検まで運転してもきずの成長が許容限度内であることが確認されれば,そのまま運転できるようになった。 具体的には,日本機械学会「発電用原子力設備規格 維持規格(JSME S NA1 2002)を利用することになる。たとえば,原子力発電所一次冷却系のステンレス配管の表面き裂で,深さが1.5mm以下であれば,評価不要(そのまま使用可)と規定されている。 維持規格の採用により,従来と比較して,高分解能のき裂深さ測定が要求されることになった。 このような現状において,装置産業の「保守検査」は,ますます重要となってくる。 本特集は,第1弾(第49巻3月号),第2弾(第50巻6月号)および第3弾(51巻10月号)にて,過去に企画した「非破壊検査技術の保守検査への適用例」シリーズ第4弾にあたる。 今回は,最近,話題となっている「き裂状欠陥」に関して,き裂の評価と許容,き裂に対する規格の動向およびき裂のモニタリング手法の現状と課題について企画したものである。 解説記事の5件とも,読者に分かり易く解説されている。 本特集号が,読者のご参考となれば幸いである。
*特集号編集委員 四辻美年
Evaluation of Crack-like Flaw in Japanese Fitness-for-Service Code
for Nuclear Power Plant Components
Koichi KASHIMA Central Research Institute of Electric Power Industry
キーワード 維持規格,ASME基準,欠陥評価,破壊力学,原子力発電
1. はじめに 原子力機器に検出された欠陥の評価に関連して,国内における維持規格の策定が多くの関心を集めている。維持規格とは,供用運転中の機器の性能を,一定の安全水準に保つための管理規定であり,設計規格と対をなすべき規格である。米国では,ASME(米国機械学会)が,1971年にボイラー・圧力容器基準(ASME Boiler and Pressure Vessel Code) Section XI(以下,ASME – XI)を制定し,破壊力学の成果等を取り入れた供用期間中検査基準の体系を確立している。一方,わが国ではこうした維持規格はこれまで整備されていなかったが,2000年5月に,(社)日本機械学会より原子力機器の欠陥評価規定として国内初の民間維持規格「発電用原子力設備規格・維持規格」(以下,JSME維持規格)が発行され,さらに2002年10月には検査規定を追加した改訂版が発行された。このような状況を踏まえ,国はこうした民間規格を活用し,我が国維持基準の策定に向けた検討を進めつつある。以下では,JSME維持規格を例に取り,同規格におけるき裂状欠陥評価の内容について,その現状と課題を紹介する。
Application of Fitness-For-Service Evaluation Procedures for Pressure Equipment (Assessment of Crack-Like Flaws)
Tsutomu KIKUCHI Idemitsu Kosan Co., LTD. Engineering & Maintenance Dept.
キーワード き裂状欠陥,FFS,API,供用適性評価基準,破壊力学,欠陥評価,維持規格
1. はじめに 供用期間中における検査で圧力容器,配管,貯槽等にき裂や減肉などのきずが検出された場合,日本では規格・基準に示す判定基準を超えるきず部分の補修取替えが求められている。これは機器の設計・製造を目的に作成された規格・基準を供用時にも適用するように法で規制されているためである。しかし,きずの程度によっては,設備を安全に継続使用できるはずである。自主保安の精神が浸透している米国では石油プラントを対象に,設備の信頼性向上と保全費低減を目的に,設備等の継続使用が可能かどうかをきずの程度から判定する維持規格を米国石油学会(API)がRP579(Fitness – For – Service)として2000年1月に発行した1)。このRP579では,全面減肉,局部減肉,脆性破壊,き裂状欠陥,火災損傷評価等各種の損傷形態毎に欠陥評価方法を規定しているが,本稿ではこの中のき裂状欠陥評価について解説する。 なお,日本でもようやく「長期運転すれば経年損傷や材料特性の変化は必ず発生するものであり,製作時の性能を永遠に維持しなくてはならないと言う規格は不合理である」という観点から,石油精製及び石油化学業界が中心となり供用適性評価研究会を発足させて設備の維持規格*)制定に向けての活動が進められ,RP579をベースした「供用適性評価ハンドブック」が発行されている2)。
Quantitative Nondestructive Evaluation of Cracks−Focusing on Closed Cracks−
Masumi SAKA Department of Mechanical Engineering, Tohoku University
キーワード 超音波,き裂,き裂閉口,電位差法,表面改質
1. はじめに き裂が開いているか,閉じているかはわからない。 機器のき裂は,運転に伴う負荷により開口し,進展する。したがって逆に機器の運転を停止した状態で行われる検査時には,無負荷のために,き裂は閉じている場合がある。疲労き裂についてき裂閉口はよく知られている。応力腐食割れにおいても,き裂面間の酸化物はき裂閉口の要因となり得る。また早期発見の観点から重要な微小き裂は,大きなき裂よりも強く閉じている可能性がある。見つけたい,さらには形状・寸法を評価したいき裂が,開いているか,閉じているか,また閉じている場合に,強く閉じているのか,弱く閉じているのか,その程度は予測できない。したがってどのような閉じ具合のき裂をも対象にし得る検査手法の整備が必要ということになる。本稿では,閉じたき裂の探傷に伴う問題点,長期的対策,短期的対策等について,主に超音波探傷を取り上げ解説する。
Monitoring of Crack Growth by TOFDHideaki TANAKA
Muroran Plant, The Japan Steel Works, LTD. and
Takayuki SUGIMOTO Nikko Inspection Service Co. LTD.
キーワード 超音波探傷,TOFD,き裂,モニタリング,圧力容器,水素助長割れ
1. はじめに 高温高圧水素環境下で供用されている厚肉の圧力容器の溶接部では,内在している微小なきずを起点として,マクロき裂進展に至ることが少なくない。これは,材料内に拡散侵入した水素による材料の靭性低下,侵入した水素原子の分子化(ガス化)に伴う内圧上昇,また機器残留応力の影響によりき裂進展が促進されるためと考えられている。このようなき裂は急激な脆性破壊を引き起こす可能性があるため,機器の安全管理上,き裂の進展性,または進展速度を高い精度で測定することが必要となる。 水素助長割れのようなステップワイズなき裂の先端位置を超音波により測定する場合,ピークエコー法を用いた手探傷による測定では,欠陥形状による反射特性の違いなどから誤差が生じやすい。それに対しTOFD法は,その特性上,探触子スパンの変化や探傷面の変化に大きな影響を受けがたく,き裂先端までの距離を精度よく捉えることが可能と言われている。 ここでは,き裂先端位置を高い精度で測定するための方法を検討すべく,TOFD法にて水素曝露した円柱試験片を用いて母材内在き裂の進展状況,及び,オーバレイ境界面付近におけるき裂の進展モニタリングを行った結果を紹介する。
1. はじめに 鋼構造物に対する高張力鋼の適用には,板厚の減少を可能として鋼材重量を軽減し得ること,あるいはより高い設計応力をとり得ることの利点があり,高張力鋼の用途は著しく拡大されてきた。国内においては,1950年代半ばに490MPa級高張力鋼が水力発電所水圧鉄管及び橋梁に,引き続き 570〜780MPa級高張力鋼が多くの分野で相次いで実用化された。1990年代後半には本四連絡橋明石大橋に780MPa級高張力鋼が大量に採用され,また,21世紀初年度には重構造物である東京電力神流川水力発電所水圧鉄管に950MPa級高張力鋼が初めて採用されたことは記憶に新しい。上述のように高張力鋼が普及する一方で,1960年代から1970年代にかけて溶接割れ,主に低温割れの問題がクローズアップされた。溶接割れの問題とその防止技術の検討は,高張力鋼普及拡大の歴史そのものと言っても過言ではない。(社)日本溶接協会は溶接割れ感受性の改善を考慮してWES3001−19831)に各種高張力鋼のPCM上限値を設定し,(社)日本鋼構造協会からは実継手における低温割れ防止条件の選択基準2)が推奨された。鋼材については優れた溶接性とHAZ靭性を有する低PCM型高張力鋼が開発され,一方,溶接材料については溶接割れの防止のために超低水素化に関する検討が積極的にすすめられた。このようにして溶接割れは大きく改善されてきたが,現在でも決して皆無ではなく,鋼材,溶接材料あるいは溶接施工条件の選定を誤ると大きな問題が生じる。本報では,特に高張力鋼の溶接において,最も重大な欠陥とされる溶接割れについて,その種類,発生原因及び防止対策を概説する。
Deterioration and Assessment of Crack-like Flaws
Shinji KONOSU Ibaraki University
キーワード 経年劣化,欠陥評価,維持規格,検査
1. はじめに 国内で稼働中の化学プラントなどの多くは20年から25年前に建設されていることから,長期間使用された,いわゆる経年化した設備の比率が我が国ではきわめて高い1)。厳しい環境下で使用される設備では,多くの場合,装置材料はその使用の初期段階からすでに損傷が徐々に進むことは避けられず,しかも,長期間の稼働によって,これまで見過ごされてきた種々の経年損傷が第一原因となって事故に結びつく可能性が大きい。このように運転後に種々の損傷要因や経年劣化によって欠陥が検出される例も多く報告されているため,検出した欠陥を評価して,除去や補修をすべきであるか,あるいはそのまま欠陥を放置して継続して使用して良いかといった判断を可能とする維持規格が必要とされてきている。このような判断を行える規格としては,海外には原子力関連設備に対しての ASME B&PV Code Sec.XI2)やR63)といったものがあり,一般産業設備に対してはAPI – RP5794)やBS 79105)がある。日本では,原子力設備に対してJSME SNA16)が制定されており,一般産業設備に対しては,WES 28057)やHPIS Z1018)が制定されている。本稿においては,種々の経年損傷について触れ,さらに化学プラントなどの圧力設備におけるき裂状欠陥評価法について制定された“圧力機器の亀裂状欠陥評価方法(HPIS Z101 – 2001)8)”を中心に紹介する。
Quantitative Evaluation of Fretting Fatigue Cracks by Grazing SH-wave Using a Waveform Shaping Method
Yorinobu MURATA*, Akihisa TANIMOTO* and Hiroki TODA*
Abstract
retting fatigue cracks occur on the wheel seat of a railway vehicle axle and are the cause of damage to the axle. In wheel axle testing, a grazing SH-wave ultrasonic testing using a waveform shaping method was proposed to evaluate the progress of the cracks by non-disassembly. The effectiveness of the waveform shaping method was evaluated by testing artificial cracks of a specimen cut from the axle of a conventional train. This method greatly suppressed the ringing of echoes and showed higher distance resolution in ultrasonic testing. The waveform shaping method made it possible to detect both the upside tip echo and the downside tip echo from an artificial crack separately. The height of the artificial crack was estimated by the time difference between the tip echoes. Furthermore, not only the height but also the cracking angle of the artificial crack was evaluated simultaneously by shifting the transducer along the axial direction of the axle. We applied the grazing SH-wave ultrasonic testing with the waveform shaping method to an integrity evaluation for the wheel seat of a wheel set. Although by a conventional pulse driving method unnecessary contact echoes overlapped and appeared as large phantom echoes, by the waveform shaping method such phantom echoes were not detected on account of its effect. The height of a fretting fatigue crack occurring on the wheel seat was quantitatively estimated using the time difference of crack tip echoes, and it was demonstrated that the proposed method would be very useful for testing of the axle.
Key Words Ultrasonic testing, Grazing SH-wave, Waveform analysis, Signal processing,Fatigue crack, Axle, Railway
1. 緒言 鉄道車輌の輪軸は,車軸に車輪や歯車が圧力ばめして組み立てられている。そのため,車輪と車軸のはめ合い部には,走行中の微小な相対すべりにより,フレッチング摩耗が発生する1)。ときには,このフレッチング摩耗が進展してフレッチング疲労き裂が発生し,これが鉄道の重大事故に繋がる恐れがある。 現在,新幹線車軸におけるフレッチング疲労き裂の探傷には,蛍光磁粉探傷法や超音波垂直探傷法による解体検査が45万km走行ごとに行われている。また,車軸端部から斜めに超音波を入射する斜角探傷法が非解体検査として3万km走行ごとに行われている2)。解体検査は,台車から輪軸を取りはずし,なおかつ車輪をずらして輪座部を露出する必要があるため,検査には多大な労力と時間を要している。超音波斜角探傷法では,台車の上に車輌が載った在姿状態での検査が可能であるが,車軸輪座部までの超音波伝搬距離が長いため,き裂の検出感度が低く,微小なき裂を検出することが困難である。そこで,非解体でかつ高感度な探傷検査法として,表面SH波を使った検査方法が提案されている3),4)。表面SH波は表面を伝搬するレイリー波やクリーピング波と比べて,表面状態やモード変換の影響を受けにくいという利点がある。更に,表面SH波は接触部の奥行き内部まで伝搬し,また探触子を車軸輪座近傍に配置することが可能なため,非解体で高感度な探傷が行える。しかしながら,一般に表面SH波探触子はバッキングによるリンギングの低減が難しいため,探傷したエコー波形には長いリンギングを伴い,これが表面SH波による精密探傷の妨げになっている。微小なき裂を探傷しようとすると,相対的に圧入エコーや圧入端部エコー等の不要なエコー(以下,不要エコーと呼ぶ)が大きくなり,き裂エコーがそれらの不要エコーに埋もれやすい。圧入エコーは,接触面の表面荒さにより,多くの線状や島状の接触点で超音波が散乱して発生する。そのとき,リンギングが長いと,これらの散乱波が干渉して見かけ上大きなエコー波形を形成することがある。 本研究では,デコンボリューションによる波形整形処理を鉄道車軸のSH波探傷法に応用することを提案し,探傷エコーのリンギングの低減化により圧入エコーとき裂エコーの識別を容易にしてフレッチング疲労き裂の探傷性能の向上を図った。さらに,フレッチング疲労き裂の高さと傾き角の定量評価の可能性を検討した。
原稿受付:平成14年9月6日
和歌山大学 システム工学部(和歌山市栄谷930)Faculty of Systems Engineering, Wakayama University
Proposal of Pulsed Electromagnetic Force Acoustic Method for Reinforced
Concrete Diagnoses
Masanori TAKANABE* and Mitsuo HASHIMOTO**
Abstract
We developed a novel non-destructive inspection technique of the pulsed electromagnetic force acoustic method (PEFAM) for diagnosis of the condition of reinforcing bars in reinforced concrete. It is characteristic of this method to use a pulsed electromagnetic force caused by discharge using a condenser bank. The force can generate acoustic waves to a rod in the reinforced concrete. Acoustic sensors on the surface of the reinforced concrete detect the acoustic waves, and these waves include a great deal of information on amplitude, frequencies and time lag. We confirmed that the developed PEFAM was useful in diagnosing the condition of the reinforcing rod in a concrete structure.
Key Words Pulsed electromagnetic force acoustic method, Electromagneticpulse,Acoustic method,Reinforced concrete
1. 緒言 鉄筋コンクリートは強度が高くかつ設計・施工の自由度の高い構造物であり,広く普及していることは言うまでもない。鉄筋コンクリートは引張や曲げ強度が小さいコンクリートの弱点をうまく補って鉄筋が配置され, 構造物としての強度を得ている1)。しかし,コンクリートの中性化及びひび割れによる雨水の浸入などにより鉄筋の劣化が進行すると,鉄筋とコンクリートとの付着力が低下し構造物としての強度が著しく低下する。このような状態で大きな荷重や地震時のような短期の荷重が加わると,設計強度を保つことができずに鉄筋コンクリート構造物の崩落・倒壊などの事故となりかねない。鉄筋コンクリートの現状における診断技術としては,ひび割れや錆汁の発生等を見る目視検査,赤外線サーモグラフィや打音によるひび割れおよび剥離検査,放射線や超音波を使ったひび割れ深さ測定,コア採取によるコンクリート強度および中性化度測定,電磁波や電磁誘導法を利用した鉄筋位置およびかぶり厚さ測定などが多方面で検討・実施されている。また,コンクリート内の鉄筋腐食状態の診断については,自然電位法を用いた手法が報告されている。しかしこの手法は一つの電極を内部の鉄筋に接続する必要がある2),3),4)。本報ではこれまでの手法とは異なる鉄筋とコンクリートの付着状況及び鉄筋位置の推定ができる非破壊検査手法として,パルス電磁力により発生する音響を用いた鉄筋コンクリートの診断法(パルス電磁力音響法)を提案する5),6)。
原稿受付:平成15年2月19日
(株)アミック(横浜市鶴見区中央4-6-10)Amic Co., Ltd.
職業能力開発総合大学校Polytechnic University
Lamb Wave Method for Quantitative Inspection of Impact-Induced Delamination in
CFRP Plates
Nobuyuki TOYAMA* and Junji TAKATSUBO*
Abstract
This paper proposes a new inspection technique using Lamb waves to detect impact-induced delamination in composite laminates. The technique, which consists of two line scans, is as follows. The first scan measures the arrival times of the transmitted S0 mode along the 0°direction to detect delamination and evaluate its size. The second scan measures the maximum amplitude of the earliest wave packet in a line, including the longest delamination, to locate its edge. We performed this technique on impacted CFRP cross-ply laminates. A remarkable decrease in the arrival times due to the delamination was detected, and the delamination length could be calculated based on a simple model for Lamb-wave propagation. Furthermore, the delamination edge was identified by a sudden decrease in the amplitude. The technique enabled detection of the delamination and evaluation of its size and location using only the two scans. A conventional C-scan validated this method, and we confirmed the technique has great potential for quick inspection of impact-induced delamination in composite structures.
Key Words Non-destructive Inspection, Lamb wave,Wave velocity,Attenuation,Fiber reinforced plastics, Delamination
1. 緒言 炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP)は軽量でかつ高強度,高剛性を有することから,航空機および宇宙輸送機の一次構造部材として,既に一部適用されており,今後も益々適用範囲が拡大するものと考えられている。通常CFRPは一方向プリプレグを任意の角度に積層させた積層板として用いられるが,層間強度が低いために,例えば工具の落下等の面外衝撃負荷により容易に層間剥離が生じることが問題視されている。層間剥離は構造体の圧縮強度および剛性の著しい低下を引き起こすことから,構造体の安全性を確保するために,頻繁な定期検査が不可欠となっている。しかし,内部損傷であるため目視による検査が困難であり,また現在検査に用いられているX線や超音波Cスキャンは装置が高価であり,検査に非常に時間がかかるといった問題がある。そのため,迅速でかつ高い信頼性を有する新しい非破壊検査手法の開発が強く望まれている。ここで,薄板を伝わるラム波は伝播時の拡散損失が少なく,検査可能距離が1m以上にも及ぶため,迅速な非破壊検査が可能な手法として有望視されている。ラム波を用いたCFRP板における層間剥離の検出法としては,反射波により検出する方法1)−3)及び透過波の減衰によりに検出する方法4)−6)などが報告されている。しかし,ラム波は伝播速度が周波数に依存する,いわゆる分散性を有するために,伝播距離が長くなるにしたがって波形が複雑になり,反射波の検出は容易ではない。さらに透過波の減衰測定は非常に容易でかつ信頼性のある損傷検出法ではあるものの,損傷の識別さらには損傷の大きさを定量評価することは非常に困難である。著者らは前報で7),ラム波の伝播速度が積層板の面内剛性係数に依存することを利用し,伝播速度の変化からFRP直交積層板に生じるトランスバースクラックの検出及びその密度を定量評価する手法を報告した。本研究ではラム波の到達時間及び減衰を測定する二回の線走査によって,面外衝撃荷重によりCFRP板に生じる層間剥離の検出,その大きさおよび位置を迅速に評価できる新たな非破壊検査手法を提案する。
原稿受付:平成15年2月28日
産業技術総合研究所 スマートストラクチャー研究センター(茨城県つくば市梅園1-1-1)
Smart Structure Research Center, National Institute of Advanced IndustrialScience and Technology