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機関誌

2006年度バックナンバー巻頭言3月

2006年3月1日更新

巻頭言

「非破壊検査技術の保守検査への適用例V」特集号刊行にあたって 

 現在の装置産業において,安全の確保が必須となっている。いったんトラブルが発生すると,装置の停止のみだけでなく,製品の生産ができなくなり,我々の日 常生活まで大きな影響を及ぼしてくる。 特に,石油精製,石油化学プラント,原子力および電力等では,社会的に大きな影響が出てくる。 しかし,最近の石油コンビナ−トにおける事故件数の推移を見てみると,平成14年から急に事故件数が増大したまま推移している(東工大の大島名誉教授の講 演資料より)。平成13年は,4件と少なかったが,平成14年(14件),平成15年(16件),平成16年(14件)と多くなっている。
 東工大の大島名誉教授によると,設備が故障する原因は,大きく分けて?設計不備,?施工不良,?運転状態の逸脱,?経年劣化の4つが挙げられると言われている。 
 ?設計不備は,設計者の勘違い,計算間違い,不適切な設計式の採用,未経験による不備が考えられる。?施工不良は,設計通りの施工が行われていないこと である。例えば溶接欠陥や材料の取り違いといったミスや不適当な補修作業などである。?運転状態の逸脱は,設備の誤動作,運転員の誤操作あるいは環境など の外的条件の変化などが原因で誘発される。最後に?経年劣化である。設計不備や施工不良は原因を取り除けば,その問題は解決するが,経年劣化は避けて通る ことができない。
 最近の事故件数の増大についてはいくつか考えられるが,先ず,設備の老朽化が顕在化していると考えられる。また,老朽化設備に対して,十分な技術的対応 ができていないのも事実である。現在,設備の検査・補修等の保全作業の大部分が経年劣化の対応である。今後,経年劣化対策の体系化が望まれる。
 また,福井工大の柴田教授によると,事故内容を見ると繰り返し類似の現象が生じていて,過去の教訓が生かされていないケ−スが多いと言われている。例え ば,配管の腐食で,高温高圧水中の炭素鋼の腐食については,ボイラ−腐食以来の長い経験の蓄積があって,腐食機構についてもかなりのことが分かっている。
 配管の損傷事例の一例として,エロ−ジョン・コロ−ジョンがある。
 エロ−ジョン・コロ−ジョンは,エルボ,T字管及びオリフィス計の下流部で急速に減肉が進行する現象である。
 炭素鋼表面に接する高温水が流動する場合には腐食速度は加速され,さらに表面保護皮膜が機械的に損傷されるとエロ−ジョン・コロ−ジョンが生じる。
 エロ−ジョン・コロ−ジョンの場合,定期的な点検による寿命管理が必須である。
 次に,ある原子力発電所の高温水配管の腐食についても多くの経験と技術的蓄積があり,それらは管理基準に反映されていたが,損傷箇所が点検リストから漏 れていたことによって事故が発生している。このような現状において,ますます非破壊検査(モニタリングを含む)が重要となってくる。つまり,「保守検査」 は,装置産業において,設備の信頼性の確保に不可欠な技術となっている。
 本特集は,第1弾(第49巻3月号),第2弾(第50巻6月号),第3弾(第51巻10月号)および第4弾(第52巻11月号)にて,過去に企画した 「非破壊検査技術の保守検査への適用例」シリ−ズの第5弾にあたる。今回は,配管および加熱炉管に焦点を当てて,配管フランジ設計の現状と問題点,配管検 査の現状と適用例,保温材上や防食材上からの肉厚測定(INCOTEST)および加熱炉管の浸炭に対する超音波探傷検査について企画したものである。解説 記事の4件とも,読者に分かり易く解説されている。本特集号が,読者のご参考となれば幸いである。

*特集号編集委員 四辻美年

 

解説 非破壊検査技術の保守検査への適用例V

配管フランジ設計の現状と問題点  菊池  務 出光興産(株)

Current State and Problem of Piping Flange Design Tsutomu KIKUCHI Idemitsu Kosan Co.,Ltd.
キーワード 配管,フランジ,国際規格,PVRC,EN1591,漏洩,ガスケット,保守

1. はじめに
 現在の配管フランジ設計は強度評価設計であり密封性能評価設計までは含まれていない(図1)。これに対して欧米では環境保護意識の高まりを反映しガス ケットからの漏洩防止まで含めた設計方法の研究が早くから行われ,継手の密封性能を規定する方法が提案されている。
 ちなみに欧州では,この様な考え方を既に導入し密封能を考慮した欧州規格EN1591を発効(2001)させている。基本的考え方はガスケットからの微 量の漏洩を認め,許容漏洩量を満足させるためのボルト締付け荷重を設定している点にあり,従来の考え方と大きく異なっている。
 今後環境規制の問題は避けて通れないので,この新しい設計方法は世界標準になる可能性が極めて高いと推察される。
 本稿ではこのような最近の世界におけるシーリングテクノロジーの動向について解説する。

 

 

配管検査の現状と適用例
   永井 辰之 非破壊検査(株)   四辻 美年 出光エンジニアリング(株)

Piping Inspection : Current State and Example of Application
Tatsuyuki NAGAI Non-Destructive Inspection Co.,Ltd.and
Mitoshi YOTSUTSUJI Idemitsu Engineering Co.,Ltd. キーワード 腐食,ガイド波,表面波,パルスET,SLOFEC

1. はじめに
 石油・石化プラント,発電所等の大型プラントを構成する各種機器,配管の保全を考えていく上で,腐食は避けて通れない課題である。従来から保守検査とし て目視検査,超音波肉厚測定等が行われてきた。しかしながら,その対象となる機器・配管は膨大な範囲・量を有しており,直接アクセス困難な場所も多い。 従って多くの検査員が必要,検査期間が長くなる,保温等の付属設備の撤去・復旧といった付帯工事が必要となるなど問題点が多い。近年,こうした問題点を低 減するために,配管やタンク底板に対する,ガイド波を利用した広域探傷技術および高速探傷が可能な磁気飽和渦流探傷(SLOFEC),保温材の上からのパ ルスET等,新しい腐食に対する非破壊検査技術が多く開発され,実用化されてきた。当社が取り組んできた新しい腐食の非破壊検査技術について,いくつか適 用事例を交えながら紹介する1)。

 

保温材上や防食材上からの肉厚測定−INCOTEST−
    古海  寛 東亜非破壊検査(株)

Thickness Measurement Through Insulation and Bitumen Lapping
Hiroshi FURUMI TOA Nondestructive Inspection Co., Ltd
キーワード パルス渦流法

1. はじめに
 配管の減肉調査の手法として,目視検査や超音波探傷による肉厚測定が一般的におこなわれている。検査技術の向上に伴い,近年では超音波による連続板厚測 定,ガイド波による長距離診断,渦流を原理とした高速診断等多種多様な装置が開発され,現場適用されている。これらの装置の殆どは裸配管を対象としてお り,保温材や防食材で覆われた配管への適用は困難である。外装を撤去することでこれらの手法は適用可能であるが,外装の解体,復旧に費やす費用は多大なも のとなる。保温材上からの検査手法として放射線を使用した装置も開発されているが,管理区域等法的な規制を受けることがある。
 そこで本編では,多々ある検査手法の中からパルス渦流法を原理とした装置“INCOTEST”を紹介する。INCOTESTは保温材や防食材に限らず, 非金属のものならばあらゆるものを介して肉厚測定が可能であることから,外装の解体,復旧等の付帯工事に掛かるコストを削減できる装置である。

 

加熱炉管の浸炭に対する超音波検査
    中山 吉晴/三谷 欣也  (株) ニチゾウテック   四辻 美年 出光エンジニアリング(株)

Ultrasonic Testing for Cementation of Heating Furnace Tubes
Yoshiharu NAKAYAMA, Kinya MITANI Nichizo Tech Inc.
and Mitoshi YOTSUTSUJI Idemitsu Engineering Co.,Ltd キーワード 浸炭,加熱炉管,横波縦波モード変換パルスV透過法,窒化

1. はじめに
 石油・石油化学プラントで使用されるCCR-PLAT装置等の加熱炉管は,火炎により外面が高温にさらされ,長期間使用されると浸炭を生じることがある。浸炭は使用環境によって,管外面側または管内面側あるいは管内外面両側に生じる。
 当社では,従来から超音波V透過法によりエチレン分解炉管1)やCCR-PLAT装置加熱炉管に対して浸炭検査を実施してきた。しかしながら加熱炉管の 浸炭に関しては,従来の横波による超音波V透過法では探触子の入射点や屈折角による探触子接近限界の影響を受け薄肉管の探傷に制限を受けること,浸炭境界 からの反射が小さいため感度増幅の必要があり,その感度増幅により表面波等の妨害パルスの影響を受けることなどから,探傷に相当の熟練を要した。そのこと から,適用範囲の広い測定方法の確立が望まれた。今回それらを解決すべく,横波縦波モード変換パルスを利用した超音波V透過法を考案し,実機に適用した。

 

論文

デジタル画像相関法を用いた橋梁の非接触デジタル画像相関法を用いた橋梁の非接触たわみ分布測定
    米山  聡/北側 彰一/岩田 節雄/谷  和彦/北村 幸嗣/菊田 久雄

Noncontact Deflection Distribution Measurement of Bridges
Using Digital Image Correlation

Satoru YONEYAMA*, Akikazu KITAGAWA**, Setsuo IWATA**, Kazuhiko TANI**,
Koji KITAMURA** and Hisao KIKUTA**
Abstract
Digital image correlation is utilized for the deflection measurement of a bridge in this study. The deflection distributions are obtained from images that are recorded using a digital camera with a shift lens. First, the deflections of a simple beam model under three-point bending are measured. The experimental results show that the use of a shift lens is effective for situations where direct view of the object is obscured. In addition, it is found that the deflection distribution of relatively large structures can be measured using digital image correlation even if no random pattern is painted on the object surface. Next, the deflection measurement technique is applied to bridge load testing, and it is found that the deflection distributions of bridges can be measured using digital image correlation. Key Words Bridge, deflection, digital image correlation, bridge load testing, image processing

1. 緒言
 橋梁やトンネルなどの社会基盤構造物を維持管理し安全性を確保するため,種々の試験および計測方法,非破壊検査手法などが提案され1)−7),それらの 方法を用いた各種試験が行われている。橋梁の構造健全性評価においては,固有振動数などの動的特性や各部材に生ずる応力・ひずみ分布など知るために種々の 試験が行われる。これらの特性などの時間変動や各所に生ずる損傷などを監視することで,橋梁の安全性を確保することができる。それら種々の測定対象の一つ に主桁のたわみがある。このたわみは汎用の変位計を用いて測定することが可能であるが,それらの多くは橋梁の真下に設置する必要がある。そのため,設置が 困難であるだけでなく,橋梁の下を通る道路の交通を遮断する必要があるなど多くの難点を有している。
 近年,これらの難点を克服するため,写真測量やレーザスキャンなどを用いて非接触で橋梁のわたみを測定する方法が研究されている8)−10)。一方,本 研究では,より簡便にたわみを測定する方法としてデジタル画像相関法11),12)を用いることを提案する。この方法では,複雑な光学系などを必要とせ ず,変形前後の対象物体の画像を撮影するだけで測定が可能であるため,安価で簡便な測定システムの構築が期待できる。

 

 

 

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