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機関誌

2005年度バックナンバー巻頭言3月

2005年3月1日更新

巻頭言

特集「光および画像を用いた応力・ひずみ計測」刊行にあたって 
   応力・ひずみ測定分科会主査 江角 務

 社会発展の中で,極限設計の追求や安全性確保などの技術的要求に対して,応力・ひずみ計測に関する実際的検証が以前に増して重要となっている。最近の機械 構造物や各種装置は,高速,高性能化し大型化が促進され,高低温,高磁界での使用が多くその環境条件は厳しい。多くの製品構造が激変し,低コスト化,軽量 化が増すと同時に廃棄物処理やリサイクル性の観点からの設計が強く求められており,再生材料が多く使用される傾向にある。再生材料には介在物などを含有す る可能性が高く,信頼性に欠ける。実用部材に欠陥が存在することは建前として許されるものではないが,多かれ少なかれ内部欠陥や材料の不均質性を含むこと の可能性が高く,応力・ひずみを測定しその挙動を的確に把握することが重要となる。より速く軽量に,しかも安全にという信頼性と安全性の確保は社会的な至 上命令ともなっている。
 応力・ひずみ計測技術は,部材に各種の外力が負荷された場合,各部に生ずる応力・ひずみの大きさとその挙動や最大応力の発生位置などを把握するもので, 部材の形状,寸法,使用材料の適否判定など安全性評価に大きな役割を果たしている。現在産業界で広く用いられている応力・ひずみ計測技術は,電気抵抗ひず み測定法を利用するひずみゲージであり局所測定である。本特集号で述べる光および画像を用いた応力・ひずみ計測技術は全視野測定法であり,画像相関を用い た場合では高解像度の画像が必要なこともあるが急速に改善され,高精度な測定が可能となっている。高齢化とともに社会のニーズに関連して,人工関節におけ る静的,動的応力・ひずみ解析や生体骨組織内の結晶ひずみ測定などバイオメカニクスにおけるハイレベルな研究発展,応用が強く期待される。
 本特集号刊行における主旨は,今日の工業社会における機械構造物の設計開発段階での材料の強度評価あるいは使用中の安全性を確保するための健全性モニタ リングの手法として,光および画像を用いた非接触の応力・ひずみ計測技術が非破壊検査法として重要な役割を持っている。これらの実験技術は,研究室レベル の研究的方法としては比較的古くから適用されて来ているが,手法が少し難しいなどの理由により実際の現場などではまだあまり実用化されているとは言い難 い。この特集では,これらの方法の基礎技術および応用例を平易にしかも詳細に,現在各分野における第一線で研究されている専門家の方々に概説して戴いた。 内容は,製品の設計段階から実働状態の稼働段階における強度評価に,これら光および画像を用いた応力・ひずみ計測技術の更なる普及を目指して,(1)高精 度位相解析法の光学計測への応用,(2)自動化光弾性,(3)画像相関を用いた全視野変位計測,(4)ESPI(電子スペックル干渉法)を用いた全視野ひ ずみ計測,(5)光学計測とコンピュータ解析を用いたハイブリッド応力解析である。
 本特集号が,光および画像を用いた応力・ひずみ計測の理解と普及につながれば幸いである。

*芝浦工業大学工学部機械系(108-8548 東京都港区芝浦3-9-14)

 

解説 光および画像を用いた応力・ひずみ計測

高精度位相解析法の光学計測への応用で異なる
   森本 吉春/松井  徹/藤垣 元治/山本 裕子/李  志遠  和歌山大学

Applications of Accurate Phase Analysis to Optical Measurement
Yoshiharu MORIMOTO, Toru MATUI, Motoharu FUJIGAKI,
Yuko YAMAMOTO and Shien RI Wakayama University
キーワード 画像処理,モニタリング,形状変形計測,格子投影法,モアレ干渉法,ホログラフィ干渉法,位相解析



1. はじめに
 トワイマングリーン干渉法,モアレ干渉法,格子投影法などの光学的計測法では,形状や変形を表す格子模様や干渉縞模様が得られる。これらの模様をカメラ で撮影し,得られた画像をコンピュータで解析して形状や変形を求める方法が広く行われており,対象物の全視野を高速に解析できる1)−7)。また格子や干 渉縞の輝度を余弦波とみなし,その位相を解析することにより,高精度に解析することが行われている。これらの方法については,すでに本誌で何度か報告して いる4)−7)。本解説では,これらの方法をより発展させた高精度な解析方法や新しく開発した方法を紹介する。まず,フーリエ変換を用いて,得られた位相 値がどの程度正しいかを評価する位相信頼性評価値を定義し,それを金属物体など反射光の影響が大きい物体の形状計測に適用し,その有効性を示す。つぎに2 次元の各変位を表す2種類の干渉縞を同時に解析するため,フーリエ変換を用いた高精度な解析方法と,さらにそれを高速化するためにエイリアシングを用いた 方法を紹介する。最後に,最近盛んに研究されているデジタルホログラフィ干渉法を紹介する。この方法は従来のホログラフィのように写真乾板を現像する必要 がなく,レンズを用いないCCDでホログラムを撮影し,再生はコンピュータで計算するだけで,自然物体(鏡面でない散乱物体)の形状や変形を高速高精度に 計測できる。我々はこの方法をスペックルの影響をなくして高精度に解析する新手法を開発したので,その有効性についても示す。

 

 

 

自動化光弾性法
   木原 利喜  近畿大学

Automated Photoelasticity
Toshiki KIHARA Kinki University
キーワード 光弾性法,デジタル光弾性法,位相シフト法,円偏光入射光,直線偏光入射光



1. はじめに
 機械,構造物,生体等の応力分布を調べることは設計,構造の研究で重要であり,これらの応力分布は理論解析,数値計算,実験的手法で行われる。特に,初 めて出会う複雑な形状の構造物では,実験的応力解析法が現在でも広く利用されており,三次元応力解析では,有限要素法等の数値解析と光弾性実験法によりお こなわれる1)。
 通常の光弾性実験法による応力解析は,写真撮影,応力解析等を手作業で行うため慎重さと共に多大な時間を必要とする。この光弾性法にコンピュータを取り 入れることにより,これらの煩わしさから解放され,データの測定から応力解析までを自動的に迅速で高精度の結果を得る自動化光弾性法が研究されている。二 次元の自動化光弾性法は,三次元にも当てはまるので,ここでは二次元光弾性法の自動化について考える。そして,通常の光弾性実験法2)から始め自動化光弾 性法とその発展の歴史3)および現在最もよく利用されている位相シフト法について述べる。他の測定法としてはフーリエ変換法4)がある。さらに動的な自動 化を目指す研究もあるがそれらについては他の文献5)を参照していただきたい。

 

 

デジタル画像相関法による全視野微小変位分布計測
    西川  出 大阪工業大学


Digital Correlation Method for Full Field Displacement Measurement
Izuru NISHIKAWA Osaka Institute of Technology
キーワード き裂開口変位,画像処理,計算機利用,ひずみ測定試験,破壊力学,疲労破壊



1. はじめに
 ひずみや変位計測技術は接触式・非接触式の種別を問わなければその手法は極めて多種多様である。しかし,計測対象物が特殊な素材である場合や計測環境が 特別な場合には,適用可能な手法はその数が限られてくる。例えばセラミックスのようなポーラスな材料においては,センサーの貼付が困難となることも多く, また使用環境も高温であることからセンサーの耐熱温度の問題など計測に際しても困難な点が多くなってくる。このような計測に対しては非接触計測が有用であ り,これまでに光や画像計測を応用した計測法の適用が試みられてきた。光計測の中でも有力な方法の一つにレーザ光を用いる手法がある。レーザは直進性や干 渉性が極めて高いために,この性質をうまく利用することにより,ひずみや微小変位の検出に利用しようとするものである。例えばレーザ干渉やレーザスペック ルを用いた計測手法が提案・応用され,これまでに多くの成果が上げられてきた1),2)。しかしレーザ光はその干渉性の高さゆえに,高温環境において不可 避である大気揺らぎの影響を強く受ける上に,ガラス越しや水中における計測の場合には多重干渉を引き起こし,ノイズ発生を伴うようになるなど問題点も多い のが現状である。またモアレ法など一部の方法を除けば,レーザ法はレーザ照射点の一点のみの計測に限定されることも計測の弱点となっている。
 これらの問題を解決する手法の一つとして画像処理による全視野計測手法が注目を集めている。その中でもデジタル画像相関法は対象物の自然模様を手がかりに,変位や変形を高精度に測定する方法として有力である。この方法は米国のM. A. Suttonらが行った開発が有名である3),4)。ここではSuttonらの開発した手法を中心に,その基本原理をできるだけ平易に概説するとともに,この手法を使った計測応用例についても紹介することにする。

 

 

ESPIを用いた全視野ひずみ計測法
   梅崎 栄作 日本工業大学


Full-Field Measurement of Strain Distributions Using ESPI
Eisaku UMEZAKI Nippon Institute of Technology
キーワード 光学的方法,ひずみ計測,ESPI,スペックル,画像処理



1. はじめに
 最近,各種製品の最適設計において,コンピュータによる設計支援(CAE)が多く利用されるようになってきており,その方法は,製品の省資源化や製品開 発における経費の節減や時間の短縮に役立っている。しかしながら,コンピュータを利用して設計した製品が,本当に安全であるかどうかや,その製品が稼動中 において後どれぐらいの寿命があるかを知るためには,実験により評価する必要がある。その評価手段の一つとして,製品やそれらを構成する部材(部品)の強 度評価がある。
 これまでに,製品や部材の強度評価に必要な応力やひずみ(変形)を測定するために,数多くの方法が考案されている。それらを測定領域の大きさから分類す ると,測定対象物の全域における応力・ひずみ値が得られる「全域測定法」と特定点における応力・ひずみ値が得られる「局所測定法」に分けることができる。 全域測定法には,光弾性法,モアレ法,ホログラフィ法,スペックル干渉法,格子法,応力塗料膜法などがあり,局所測定法には,電気抵抗ひずみ測定法,磁気 ひずみ型ひずみ測定法,X線応力測定法,コースティックス法などがある1)。
 製品や部材の応力・ひずみ測定は,測定対象全域を非接触かつ実時間で実施することが望ましい。しかしながら,現在,産業界で主として用いられている応 力・ひずみ計測技術は,局所測定である,原理が簡単であり取り扱いやすい,電気抵抗ひずみ測定法を利用するひずみゲージである。応力・ひずみの全域測定法 として,光学的全視野計測法が有力であるが,実際の現場ではあまり使われていない。その理由は,現場の技術者がそれらの方法の原理を理解するのにかなりの 努力が必要であることや,干渉を利用した測定装置は振動に影響されやすいため,現場では使いづらいなど,使いやすい装置が市販されていないことなどによ る。
 最近,材料や製品の表面に白色塗料を塗布する程度で,それらの変位やひずみが自動計測できるESPI(Electronic Speckle Pattern Interferometry)を利用した装置が開発され市販されている。ESPIは通常,「電子(式)スペックル干渉法」と呼ばれているが,単に「ス ペックル干渉法」とも呼ばれる場合もある。このESPI装置は,物体に照射したレーザによって生じるスペックルの干渉を利用して変位・ひずみを求めるた め,測定対象物とESPIセンサー部をできるだけ振動させないか,振動がある場合には,両者が同期振動するようにするなどの工夫が必要であるが,取り扱い やすく構成されている。
 本稿では,ESPIの原理を説明し,著者が市販のESPI装置を利用して変形(ひずみ)を測定した例を紹介する。 

 

 

光学計測とコンピュータ解析を用いたハイブリッド応力解析
   町田 賢司 東京理科大学


Hybrid Stress Analysis by Optical Measurement and Computer Analysis
Kenji MACHIDA Tokyo University of Science
キーワード 応力解析,スペックル写真法,デジタル画像相関法,インテリジェントハイブリッド法,3次元局所ハイブリッド法



1. はじめに
 従来は,構造物が老朽化した場合,新たに作りかえる事がほとんどであった。しかし,経済性,資源,環境,エネルギなどの面から,構造物の健全性を評価・ 診断し,部分的に補修することにより,より長く使用するということが世界の産業界の主流となりつつある。構造物の健全性評価(ヘルスモニタリング)のため に種々のセンサーが開発されているが,実際の構造物のある領域内の荷重,応力,ひずみを定量的に評価するには,コスト,時間,労力など多くの克服すべき問 題点がある。
 実際の構造物は3次元的で不透明な場合が多く,内部の3次元変位,応力測定は非常に困難である。そこで,主に表面のひずみ・応力を求める方法が用いられている。主な測定法には次のようなものがある。
(1)ひずみゲージによる測定法
(2)光学的手法(光弾性法,モアレ干渉法,ホログラ
フィ法,スペックル写真法,コースティックス法など)
(3)応力塗料法,メッキ法
(4)X線応力測定法
(5)磁気的方法
(6)赤外線サーモグラフィ法,音弾性法,超音波法
(7)画像処理
 工業的には,ひずみゲージが最も多く使用されているが点測定であるため,ある領域内の全視野計測をするためには多くのゲージ,装置,時間を必要とする。 ここでは,スペックル写真法,デジタル画像相関法,赤外線サーモグラフィ法に限定し,2次元表面の実験的情報より応力・ひずみ解析を可能とするハイブリッ ド応力解析法について解説する。
 実験から得られた変位データは測定誤差を含んでおり,生のデータから応力・ひずみを解析することはほとんど不可能である。そこで,実験の誤差を修正し妥 当な変位場を求め,応力解析を可能とするインテリジェントハイブリッド法1)−3)を適用した。これにより,表面の応力・ひずみ場が高い精度で評価可能と なった。
 物体の表面と内部の応力では,き裂や欠陥などがあると,表面より内部に高い応力場が生じることはよく知られており,表面の応力解析だけでは十分とは言え ない。3次元有限要素法(FEM)により構造物の解析は可能であるが,大型構造物の場合,モデリングや計算に多大の時間,労力,費用がかかる。そこで,測 定の容易な物体表面の変位測定から,物体内部の応力・ひずみを求める方法の開発が必要となる。2次元インテリジェントハイブリッド法によって得られた変位 データから試験片内部の3次元応力場を評価するため,逆解析に基づく3次元局所ハイブリッド法を開発した。これにより3次元フルモデルFEM解析をせず に,構造物内部の応力場を高い精度で評価することが可能となった。

 

 

論文

弾性表面波の分散性を用いた表面層構造の非破壊評価
   林  康久/岸本 和久/中塚 俊介


Non-destructive Estimation of Surface Layer Structure
from Surface Acoustic Wave Dispersion
Yasuhisa HAYASHI*, Kazuhisa KISHIMOTO** and Shunsuke NAKATSUKA***
Abstract
The possibility of non-destructive estimation of a surface layer structure from the surface acoustic wave (SAW) dispersion was investigated. SAW on an aluminum block with a brass surface layer was generated by a pulse generator, and was observed by PZT sensors. The group velocity dispersion was estimated from detected waves by time-frequency analysis applied wavelet transform, and was in good agreement with theoretical group velocity. The inverse problem for estimation of material properties from the SAW group velocity dispersion was carried out. A new search strategy for an optimal solution considering the influence of each parameter on the dispersion curve was proposed. By this method, material properties could be estimated with error of only a few percent.



1. 緒言
 材料に要求される耐食性,耐磨耗性などの諸特性を改善するために,表面層構造を有する材料が広く用いられている。これらの材料の評価手法としてはさまざ まな手法が提案されているが,特に製造プロセスにおける材料特性の制御や実使用環境における経年変化を評価するためには,非破壊での定量評価手法が望まし いが,近年要求性能の高度化から薄膜化に向かう傾向にあり定量評価をより困難なものとしている。
 表面層構造の非破壊評価法の1つとして,弾性表面波(Surface Acoustic Wave, SAW)を応用した手法は比較的古くから提案されている。レーリー波は波長によりそのエネルギーの浸透深さが異なることから,表面層構造上を伝播する時に 材料定数や内部構造に応じた位相速度分散を生ずることが知られており1),材料表面で観測可能な分散曲線より材料内部の様子を探る手がかりとなる。
 SAWを用いた非破壊評価を行うためには大きく分けて2つのステップがある。1つは観測レーリー波から位相速度分散を求める過程である。通常,単一周波 数の入力信号を周波数を変化させながら繰り返し入力し,伝播時間から位相速度を求めるのが一般的であるが,複数回に渡る観測が必要となる。Sachseら 2)はインパルス入力に対する出力の位相変化を2pシフトを考慮しながら復元し位相速度を求める方法を提案し,複合材料の位相速度分散を評価している が,1回の観測で位相速度分散が得られるものの2pシフトが必ずしも正しく復元出来ない場合があるなどの問題点もある。一方,近年急速にその適用範囲を広 げつつあるウェーブレット解析法3)によって波動の群速度を評価可能であることが報告されており4),著者らもLamb波の群速度分散を評価可能であるこ とを確認している5)。位相速度に分散があれば群速度も分散するはずであるので,本問題に対してもウェーブレット解析法は有力な解析手段であると考えられ る。
 2つ目のステップとして,得られた分散曲線から膜厚や材料定数を求める過程がある。この問題は未知数が多くさらに方程式がかなり複雑であり直接解法で解 くことが困難な問題である。そこで,予想されるパラメータを用いた理論値から得られるマスターカーブと観測分散曲線の比較を行う順解析6)や,材料内部の 物性値の変化を簡単な関数で近似する解析手法7),8)が従来から行われてきた。これらの手法は未知パラメータが少数で,分散曲線が連続関数で与えられる ような比較的恵まれた条件では有効であるが,多数のパラメータを同時に推定することは困難である。そこで最近では本問題を逆問題としてとらえ,非線型最適 化問題として解く手法9),10)が検討され始めている。
 そこで本研究では表面層構造の非破壊評価を行うために,ステップ1にウェーブレット解析法を適用し群速度分散が評価可能かどうかを実験的に検証すると同時に,ステップ2を逆問題設定し,材料物性および表面層厚さがどの程度評価可能かについて検討を行う。

 

原稿受付:平成16年7月5日
 静岡大学工学部(浜松市城北3-5-1)Faculty of Engineering, Shizoka University
 静岡大学大学院(現在,日本発条(株))Graduate School, Shizuoka University (Present Address: Nihon Hatsujo
 静岡大学大学院(浜松市城北3-5-1)Graduate School, Shizuoka University

 

垂直き裂を有する板が端面に熱負荷を受けるときの熱応力拡大係数
   清水 紘治

Thermal Stress Intensity Factor in a Plate with a Vertical Crack Under Thermal
Loading at the Edge Surface
Koji SHIMIZU
Abstract
Stress intensity factor KI in a rectangular plate with a crack is studied using the method of caustics when it is heated at one edge. It is shown that there arises a negative value of KI in the plate with an artificial notch. In such a case, the method of caustics is very useful, because it is possible to easily know whether the value of KI is positive or negative through the type of optical system of caustics used and the shape of caustic pattern obtained. Theoretical caustic patterns are illustrated for various cases of an optical system, positive and negative values of KI and optical property of the material. It is shown that the value of thermal stress intensity factor varies from a positive one for a natural crack to a negative one for an artificial notch with width of 0.4mm by using epoxy resin plate. These results revealed experimentally are discussed by comparing them with those obtained using FEM analysis, in which a modified technique is employed for a plate with a natural crack. Key Words Thermal Stress, Stress Intensity Factor, Caustic Method, Epoxy Resin, FEM



1. はじめに
 き裂を有する材料あるいは機械構造物が熱負荷を受けるときの破壊の問題は,小さいものではIC半導体パッケージから大きなものでは航空機関係まで,非常 に重要である。このような問題に関する最も基本的なものは,平板中に存在するき裂が熱負荷を受けるときの熱応力拡大係数の問題であるが,このような問題に 関してはこれまでにも多くの研究がなされている。理論的研究には熱衝撃に関するもの1),非定常状態におけるもの2)などがある。一方,実験的にも種々の 研究がなされており,光弾性法を用いたもの3),4),コースティックス法を用いたもの5)−7)などがある。しかし,これらの研究においては,ノッチの 幅の影響については考慮されていない。熱負荷を受ける場合の応力拡大係数を考えるときには,熱が伝わることにより発生する応力が,自然き裂とノッチでは異 なってくるので,ノッチの幅の影響を調べておく必要がある。
 そこで本研究では,エポキシ板に自然き裂および人工ノッチを挿入し,コースティックス法8)を適用して,き裂の幅が熱応力拡大係数に及ぼす影響を調べ た。コースティックス法は応力が正のときと負のときで,得られるコースティック像の形状が異なるので,その形状より応力の正,負を簡単に知ることができ る。従って,この点に関しては光弾性法などに比べ,有利である。最初に光学系,応力拡大係数の符号,材料特性によって得られるコースティック像の理論的形 状を示し,次にき裂幅が熱応力拡大係数に及ぼす影響について述べる。さらに実験により得られた結果を考察するために,有限要素法による解析も行い,比較検 討した。

 

原稿受付:平成16年7月23日
 関東学院大学(横浜市金沢区六浦東1-50-1)Kanto Gakuin University

 

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