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機関誌

2004年度バックナンバー巻頭言3月

2004年3月1日更新

巻頭言

「渦電流探傷試験法の適用と新しい展開 −その1:適用−」特集号の刊行にあたって
   小井戸純司 

 阪神淡路大地震におけるコンクリート構造物の倒壊や,最近日本のあちこちで多発する各種プラント等における爆発・火災事故などを通し,構造物の安全性が 注目されて社会問題化するなかで,非破壊検査の重要性が認識されている。また,最近は経済的な事情を反映し,構造物の延命使用が多く計画されるようにな り,維持規格の策定が注目されている。構造物では,稼働中に劣化が進行する。それを,非破壊検査によって検出し,補修や取り替えを行っても,構造物は完全 に建造時の状態に戻ることはない。すなわち,稼働中の構造物にはきずや腐食などが存在するのが普通で,補修・取り替えによってきずが皆無になることはな い。したがって,少しでもきずがあったら使用してはいけない,というような法律があると,構造物は軒並み使用禁止になってしまう。そこで,きずや腐食など が構造物に対してどの程度危険か,ということを破壊力学に基づいて正確に見積もり,高い信頼度において健全性について判定を下し,きずがあっても安全に構 造物を使用し続けることが必要となってくる。
 2000年5月に(社)日本機械学会より原子力機器の欠陥評価規定として「発電用原子力設備規格・維持規格」が発行され,2003年10月に改訂版が発 行された。これに従って,構造物は検査を行ってその結果を評価し,それに従って補修や取り替えを施しながら使用することができるようになり,延命して長期 に使用するという,現代にマッチした維持・管理ができるようになった。
 これを支えるためには,非破壊試験にはますます定量性が求められる。渦電流試験法は,対象物に対する適用が簡便であり,表面きずや割れの検出に適してい るため,今後,構造物のき裂検出等に用いられるようになることが予想される。しかし,試験コイルをきずの上に配置したときには振幅と位相という一組の数値 が得られるのみであるため,きずの種類や断面形状などを知ることは苦手であるということになっているが,最近はコイルをマルチ化し,それをスキャンするこ とによって二次元的なデータを得ることなどが可能となって,改善されつつある。一方,構造物には鉄鋼が用いられることが多いが,鉄鋼はその磁気特性の局部 的な変化が渦電流試験に対して大きな信号変化を誘導するので,それが雑音となって探傷を不可能とする。一部,鋼管の製造時における探傷などでは磁気飽和コ イルを併用する方法などが成功裏に用いられているが,それ以外ではまだまだ未解決な問題が多い。渦流探傷研究委員会では,鋼に対する渦流探傷法と新しいプ ローブ設計などをテーマに据え,研究活動を続けているところである。
 渦電流試験は歴史的に古いが,未解決の問題の多さについてはまだまだ新しい技術であり,研究報告も多い。本特集は,このような渦流試験法の現状と将来的 な方向を,各分野の代表的な研究者に解説してもらった。企画に当たり,テーマを並べたら8件程度になったので,半分は本年の秋頃にパート2として採録する 予定である。これらを渦流試験以外の分野の方々にお読みいただき,渦電流試験の再発見をしていただければ誠に幸甚である。

*日本大学生産工学部 (275-8575習志野市泉町1-2-1)電気電子工学科助教授,博士(工学)。
 1975年日本大学大学院修士課程修了。同年日本大学生産工学部助手。1987年日本大学生産工学部専任講師。
 電磁気学,ディジタル信号処理,情報通信ネットワーク,回路とシステム特講などの授業を担当。現在は主に鋼の渦電流試験に関する研究に従事。
(趣味)音楽,ジョギング,テニス,スキー

 

解説 渦電流探傷試験法の適用と新しい展開─その1:適用─

最近における渦流探傷プローブの動向
   星川  洋 日本大学生産工学部

Recent Probes in Eddy Current Testing
Hiroshi HOSHIKAWA College of Industrial Technology, Nihon University
キーワード 渦流探傷,渦電流,プローブ,リフトオフ雑音,画像表示



1. はじめに
 渦流探傷は,金属材料の表面を非接触で高速度に探傷できる特徴があり,自動化した製造ラインに組み込んで用いられることが多い。鉄鋼の製造工程において は貫通コイルによる棒,線,管の検査に適用されると共に,発電所や化学工業における熱交換器については内挿コイルによる配管の保守検査に適用されてきた。 近年においては製品の品質向上の要求に相俟って,ボビンコイルによる貫通コイルや内挿コイルを用いた渦流探傷から,より小さなきずを検出できる小さな上置 コイルを用いた渦流探傷へと変わりつつある。
 欧米の,例えば航空機では保守検査として機体の腐食やボルトホールにおける割れなどの検出に渦流探傷が適用されており,上置コイルを手にもって手動で渦 流探傷することが多い。一方,我が国では,手動の渦流探傷はきずの評価精度が低いとの認識が定着しており,用いられることが少ないのが現状である1)。筆 者はこれには以下のような理由があると考える。一つはプローブのきず検出特性を意識せずに感度が低い状態で渦流探傷を実施してしまうことにあり,もう一つ は試験の妨げとなるリフトオフ雑音が発生することにある。また,一次元の走査探傷で得られた信号に基づいて三次元形状のきずの評価を行うことには限界があ る。そのような観点から,本稿ではそれらの問題を解決する方法の一つである渦流探傷プローブの設計に関する筆者の考え方を紹介する。

 

 

鉄鋼生産における渦電流探傷試験法
  木村新一郎 (株)日鐵テクノリサーチ 検査計測事業部

Eddy Current Testing in Steel Production
Shinichirou KIMURA Nippon Steel Technoresarch Co.
キーワード 非破壊試験,渦電流探傷,表面きず,品質保証



1. はじめに
 鉄鋼製品の製造工程においては各種の非破壊試験方法を用いて,内部きず,表面きずの品質評価が行われている。鉄鋼製造工程中の非破壊試験の特徴を挙げると次のようなものである。
・比較的単純形状の対象物が多い。
・同一形状・寸法の大量生産品の検査が多い。
・高速又は高能率検査を必要とする。
・例えば月単位の繰り返し検査を行うことが多い。
 このような特徴を有することから 試験方法が標準化されており,自動化装置(専用機器)による検査が多い。非破壊試験は鉄鋼生産の中で,ユーザーへの品質保証として行う試験と製造者が製造技術の改善や歩留まり向上など品質管理活動として行う試験がある。
 渦電流探傷試験方法は品質保証,品質管理活動の手段として必要不可欠な基準となっているが渦電流探傷試験方法にはいろいろと課題も多く,ここでは鉄鋼業における渦電流探傷試験方法の現状と今後の課題・展望について述べる。

 

 

熱交換器伝熱管の保守検査における渦電流探傷技術の変遷
   神村 武男 (株)関西技研

hanges in Eddy Current Testing Techniques for Inspection of Heat Exchanger Tubes
Takeo KAMIMURA Kansai Giken Co., Ltd.
キーワード 渦電流探傷試験,保守検査,伝熱管,プローブ,試験要領,信号評価



1. はじめに
 火力・原子力発電プラントやガス・石油化学プラント等をはじめとする各種プラントでは稼動中におけるその信頼性確保の為,稼動中あるいはプラントを停止 し,定期的な検査を行っている。検査対象や適用検査手法はこれらプラントの種類により様々であるが,表面及び表面近傍のきず検出手法として渦電流探傷法は 欠くことのできない手法であり,特にプラントの重要な構成要素である熱交換器伝熱管の検査手法として重用されている。
 渦電流法による熱交換器伝熱管の検査は1950年代頃から実用されているが,電子装置やソフトウェア技術の発展に伴い,センサ・探傷装置・信号処理技術 等が高度化された結果,検査によって得られる情報が大幅に増加し,検査の信頼性が高められている。幸いにも筆者はこの間を通じ主要技術の開発・実用化に従 事することが出来た。ここでは伝熱管の渦流探傷試験に関する主要な要素技術についてこれまでの変遷を中心に紹介する1)。

 

 

航空機における渦流探傷試験法
    岡本 次郎 JALメンテナンスサービス(株)


Eddy Current Testing Method for Aircraft Maintenance
Jiro OKAMOTA JAL Maintenance Service Co
キーワード 保守検査,疲労破壊,渦流探傷試験,航空機


1. はじめに
 航空機の保守検査において,渦流探傷試験法は広く使用されている。これは,渦流探傷試験法が保守検査で対象となる疲労割れの検出能力と検出信頼性に優れ ていることによる。航空機の保守検査に使用される渦流探傷試験法では,上置コイルを内蔵するプローブを手動走査しながら部材表面及びホール内面に生じる疲 労割れの有無を調べる高周波渦流探傷法が最も一般的であるが,航空機特有の薄板組み立て構造の下層部材に生じる疲労割れを低い周波数により検査する低周波 渦流探傷法も広く用いられる。渦流探傷試験法は探傷面の特別な前処理やコイルと探傷面との特別な接触状態を必要としないので,構造部や取付けられた部品の フィールド検査に向いていることも特徴である。渦流探傷試験法の対象は,アルミニウム合金(以下Al合金)製の機体構造や部品から,チタニウム合金(以下 Ti合金)やニッケル,コバルトを主体とする耐熱合金製のエンジン部品まで,材料や構造の異なる構造部や部品に及んでいる。ここでは,航空機の構造部,特 に機体胴体のファスナ締結孔周りに生じる疲労割れを検査する方法を中心に,航空機の保守検査に用いられる渦流探傷試験法について述べる。

 

 

連載講座 非破壊検査技術の動向

非破壊検査の多様化
   荒川 敬弘 石川島検査計測(株)

Trends in Varieties of Nondestructive Testing
Takahiro ARAKAWA Ishikawajima Inspection & Instrumentation Co., Ltd.
キーワード 非破壊検査,動向,設備保全,超音波探傷,グローバル診断



1. はじめに
 連載講座の第2回シリーズとして,非破壊検査技術の新しい流れについて解説することになった。内部きずの新検査技術については第2回で,表面きずの新検 査技術は第3回で,また,材質劣化と非破壊検査については第4回で,それぞれ三原先生,廣島先生,横野先生に解説いただく予定である。従って,ここでは, 各章では現しにくい非破壊検査全体の動向や,新しい非破壊検査技術の動向について触れてみたい。
 国内の構造物は欧米に比べれば平均で10〜20年新しいと言われつつも,21世紀に入り長寿命化の傾向を露にしてきている。合理的にこれら構造物を保全 していくことは今や国家的重要課題にもなってきていると言えよう。この目的で最適の検査手法を活用していくことが重要である。構造物の状態に応じて適切な 検査手法を選択することが求められ,検査の多様化が進んできていると言える。

 

 

論文

漏洩レイリー波の非線形性を用いた閉じたき裂の深さ測定
   奥村  毅/佐藤 雅美/川嶋紘一郎

Sizing of Closed Crack Depth by Nonlinear Leaky Rayleigh Wave
Takeru OKUMURA*, Masami SATO* and Koichiro KAWASHIMA*
Abstract
A new ultrasonic method for measuring closed crack depth is proposed which uses nonlinearity of the leaky Rayleigh wave passing through the crack. For aluminum samples with given fatigue crack depths, only the leaky Rayleigh wave was excited and received by a special surface wave transducer. The second harmonic amplitude caused by clapping and rubbing the crack surfaces was extracted by FFT. The second harmonic amplitude showed good correlation with the crack depth, and therefore the depth of closed cracks can be estimated by the second harmonic amplitude of the leaky Rayleigh wave for simple crack geometry.
Key Words Crack, Sizing, Ultrasonic testing, Nonlinear wave, Harmonic generation, Crack depth



1. 緒言
 超音波探傷は,開口き裂・空孔など容積を持つ欠陥の検出・サイジングに対して有効である。しかし,初期段階の疲労き裂,粒界クリープボイドあるいは応力 腐食割れのように,ほとんど閉じた欠陥の検出・サイジングに有効な非破壊評価法はまだ確立されているとはいいがたい。ほとんど閉じたき裂(以下擬閉口き裂 と呼ぶ)では微視的に接触している部分と非接触部分が混在しているため,超音波がき裂部を部分的に透過し,通常のパルスエコー法では明瞭な反射波を得るこ とは困難である。以下では,このようにき裂面を超音波が部分的に透過するき裂を対象とし,擬閉口き裂と呼ぶこととする.このようなき裂を検出・サイジング するための様々の試みが行われている。
 坂らは各種超音波法1)により擬閉口き裂のサイジングが可能であることを,高坪2)らはレーザー超音波法により疲労き裂部周りでの超音波伝搬の遅れを画 像化し,き裂の有無を識別できることを示した。三原3)らはTOFD法により擬閉口き裂を検出するための限界開口について報告している。
 一方,非線形応力ひずみ関係に従う弾性連続体では,大振幅バースト波を入射したとき入射周波数の正数倍の周波数を持つ波(高調波)が励起されることが, 理論的にも実験的4)にも示されている。また,入射波振幅以下の微小開口幅の微細き裂を含む材料に対して,微細き裂面の繰返し接触打撃により連続体と同様 な高調波が励起されることが,疲労き裂5)について,またき裂面を含む弾性体について解析的6)に示された。非線形弾性連続体の音響非線形性と区別するた め,接触型非線形超音波(Contact Acoustic Nonlineaty)という概念7)が提唱された。従来の非線形超音波計測においては,非線形性の少ない一定厚さのニオブ酸リチウム圧電素子を測定面に 貼りつける方式が用いられてきたが, この方式では任意の位置での非線形超音波計測ができない。
 著者らは,市販の圧電探触子により大振幅縦波を発生させ,2次高調波を受信する非線形超音波計測により,鋼板内部に発生させた,長さ数ミクロン,開口幅 サブミクロンの微視き裂集団を通常のデジタル超音波測定装置を用いて検出できる8)ことを明らかにした。またナノメートル程度の開口幅の微視き裂を模擬す る,接触要素を組込んだ有限要素法波動伝搬解析により,実験結果と同様な傾向が得られる9)ことを確かめた。また表面に擬閉口き裂が存在する場合について も,表面波の非線性を用いて模擬き裂や疲労き裂10)の検出が可能であること,さらに数値波動解析により,表面波伝搬方向に対するき裂面の傾きにより高調 波発生状況が異なること11)を明らかにしてきた。
 本報告では,上記の研究を基礎に,漏洩レイリー波の2次高調波振幅測定により表面擬閉口疲労き裂の深さの測定が比較的単純なき裂形状について可能であることを示す。

 

原稿受付:平成15年4月21日
 名古屋工業大学(名古屋市昭和区御器所町) Nagoya Instite of Technology

 

ゾーンディスクリミネーション方式超音波自動探傷のきず評価性能に関する検討
   天野 哲也/萩原  明


Experimental Study of Flaw Evaluation Performance Using
Zonal Discrimination Ultrasonic Testing Technique
Tetsuya AMANO* and Akira HAGIWARA**
Abstract

Automatic ultrasonic testing (AUT) using the zonal discrimination technique is commonly applied to inspect pipeline girth welds overseas. The technique has been developed for pipeline construction using high-speed automatic welding technology. To make a high-speed inspection, probes are scanned only circumferentially. We studied the inspection performance of the zonal discrimination technique experimentally using specimens with artificial defects. In this paper we describe the results of this experiment and discuss the performance of the technique.
Key Words Nondestructive testing,Ultrasonic testing,Automatic testing,Zonal discrimination technique, Flaw size



1.  はじめに
 現状,パイプライン現地円周溶接部の検査を行うための超音波自動探傷(以下,AUTと称する)システムは,走査方式,ゾーンディスクリミネーション方式 1),2)の二方式が存在している。走査方式は,国内では標準的な方式で,ガスパイプラインへの適用についても規格3)が作成されている。
 一方,ゾーンディスクリミネーション方式は,高速自動溶接技術を用いた施工に対応するために開発された技術4)で,海外の陸上パイプライン,海底パイプラインで多くの実績を有し,欧米では規格も整備されてきている。
 走査方式のAUTは,探触子を走査し,直射法および一回反射法で探傷領域全体の探傷を行う方法がとられているが,ゾーンディスクリミネーション方式では 前後方向の走査を行わず,発生が予想されるきずを検出するのに適した探触子を選定し,探触子位置を固定して探傷を行う方法がとられている。したがって, ゾーンディスクリミネーション方式は,きずの検出性能,指示長さなどの評価性能が走査方式に比べ劣るとする声もあるが,この点について定量的に検討された 文献は見当たらない。
 そこで本報では,ゾーンディスクリミネーション方式の探傷性能を定量的に把握するために,きずのエコー高さ,指示長さの観点から検討を行った結果について述べる。

原稿受付:平成15年6月10日
 JFEエンジニアリング株式会社(三重県津市雲出鋼管町1)JFE Engineering Corporation
 (株)ジャパンテクノメイト(三重県津市雲出伊倉津14-1187)JAPAN TECHNO-MATE CO., LTD

 

光ファイバの軸ずれ損失を用いたAEセンサの開発
   結城 宏信/石川 晴雄/岩本 哲也/飯島嗣久馬

Development of Acoustic Emission Sensor Using Transverse Misalignment of Optical Fibers
Hironobu YUKI*, Haruo ISHIKAWA*, Tetsuya IWAMOTO** and Shiguma IIJIMA***
Abstract
Transverse misalignment of optical fibers was applied to detect an acoustic emission (AE) signal. A pair of single-mode fibers was placed facing each other using elastic blocks which were adhered to a specimen. Since misalignment causes loss of optical transmission between two fibers, the amount of offset from the initial position of the fibers can be determined by measuring the power of light which has been propagated through the fiber splice. It is demonstrated that the blocks with different elastic properties are effective to detect the surface displacement of the specimen which is induced by AE wave. Because inverted-U shaped blocks act as a phase delay line, these blocks are useful in improving the sensitivity as a large amount of offset can be generated. Based on these results, we made a new type of optical fiber AE sensor experimentally. Using pencil lead break as the simulated AE source for calibration, it is found that the developed sensor is capable of detecting AE wave of less than 150 kHz in frequency, and has a resonant characteristic at the frequency of 30 to 40 kHz.
Key Words Optical Fiber, Acoustic Emission, Sensor, Misalignment Loss, Simulated AE Wave



1. 緒言
 アコースティック・エミッション(AE)法は機械や構造物に発生した欠陥の大きさや位置をリアルタイムに知ることができ,ヘルスモニタリングの有力な ツールとして期待されている1)。AEの計測には圧電効果を利用したセンサが使われることが多く,検出素子として一般に用いられる圧電セラミックスの共振 現象を利用して感度の向上を図ったものなど種々のセンサが開発されている。しかし,このタイプのセンサは原理的に電磁気的現象に起因するノイズに弱く,微 弱なAE信号がノイズに埋もれてしまうことがないよう効果の高いシールドをセンサに施すことが必須である。
 近年,電磁誘導の影響を受けないセンサとして光ファイバセンサが注目されている。光ファイバは電磁気的なノイズに強いばかりでなく,短絡によって火花を 発生する恐れがない,腐食しない,軽量で可撓性があるなどの特長があり,引火の危険性があったり腐食性の高い環境においても特別な注意を払うことなく使用 できる利点がある。そのため,光ファイバをAEの計測に適用する試みが近年活発に行われ始めている2)−9)。
 光ファイバを用いたAEの計測には,光の回折を利用する方法,干渉を利用する方法,損失を利用する方法などがある。その中で光の損失を利用する方法は, 他の方法に比べて検出感度は劣ることが多いものの基本的に光源と受光器だけで計測システムを構築することができ,特殊な機構を用意することなく従来の圧電 型センサと置き換えることが可能な光ファイバセンサを容易に実現できると考えられる。特に光ファイバの接続損失10)は変位など力学量と直接結びつくもの が簡単に測定でき11),軸ずれによって生じる損失の変化から棒を伝わる一次元の弾性波が検出できることが確認されている12)。
 本研究では固体内を三次元に伝播するAEの計測に光ファイバの軸ずれ損失がどのように利用できるかを,擬似AE源を用いた実験を行うことで検討した。ま た,提案する原理に基づく光ファイバAEセンサを試作し,AEセンサとして使用する場合に最も重要な特性である周波数特性を調べた。

 

原稿受付:平成15年6月24日
 電気通信大学(東京都調布市調布ヶ丘1-5-1)The University of Electro-Communications
 電気通信大学大学院(現:セイコープレシジョン(株))Graduate School, The University of Electro-Communications(Present Address : SEIKO Precision Inc.)
 電気通信大学大学院Graduate School, The University of Electro-Communications

 

資料

ISO / TC 135 幹事国業務報告(2003年秋)
   高木 幹雄 ISO / TC 135 Chairman(芝浦工業大学)
 高木 幹雄 ISO / TC 135 Chairman(芝浦工業大学)

Secretariat Report of ISO / TC 135 (Fall, 2003)
キーワード 非破壊試験,ISO / TC 135,CEN / TC 138,APCNDT,ICNDT,ASME


1. はじめに
 2003年9月〜11月にかけて,国際標準化機構ISO / TC 135 : Non-destructive Testing に関連する下記の会議が開催された。
○9月14日〜15日 CEN / TC 138 第24回会議(フラン
 ス)
○10月28日〜31日 ISO / TC 135 第14回総会及び関連
 のSC会議とWG会議(韓国)
○11月3日〜7日 第11回APCNDTにおけるNDT技術
者の認証制度をテーマとしたオーガナイズドセッション及びICNDT主催のパネル討論会(韓国)
 筆者らは幹事国業務の一環として,ISO / TC 135の一連の会議を主催するとともに,CEN / TC 138 : Non – destructive Testing 会議にISO / TC 135を代表して出席した。さらにAPCNDT(Asia – Pacific Conference on NDT,アジア太平洋非破壊試験会議)における,上記のセッションと討論会で招待講演を行った。これらいずれの会議においても,目下その再改訂作業が進め られている ISO 9712 : Qualification and certification of personnel(技術者の資格及び認証)が中心的な話題になった。なおこの再改訂については以前から,資格取得後10年毎に要求される再認証手続きの 見直しを巡って議論が白熱していた。再認証の際の要件として現行のISO規格及びCEN規格では,レベル1とレベル2について実技試験を課すことになって いる。ところがドイツが雇用主による記録の提出で済むように強く主張し,これに対しイギリスが第三者認証の原則から離れるものだと反発して各国の利害が衝 突するような形になった。そのあおりを受けて,今回のISO / TC 135会議の開催が後述するように危ぶまれる一幕もあった。表1は,2004年1月におけるISO / TC 135とCEN / TC 138の組織の概要である。

 

 

 

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