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機関誌

2014年度バックナンバー6月

2014年6月1日更新

このページの目次

巻頭言

「赤外線サーモグラフィ試験 -建築・土木構造物への適用-」特集号刊行にあたって  兵藤 行志

 赤外線サーモグラフィ試験は,広範な領域を非接触に評価できる特徴を有し,装置の急速な高性能化 や低廉化とも相まって,より広い産業分野での活用が進んでいます。さらに,多岐にわたる製品や設備 そして社会インフラといった測定対象物の構造や熱物性,環境条件等を総合的に鑑みての「より正確で より有効な試験・評価方法」の開発と確立,実施が求められています。一方,昨今我が国では,鉄筋コ ンクリート構造物をはじめ,橋梁や道路等の社会インフラの構築はもとより,その最適な維持や管理,そ して寿命延伸が極めて重要な課題となっています。
 赤外線サーモグラフィ部門は,鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(主査:(独)土木研究所 森濱和正氏)と合同で,赤外線サーモグラフィ試験が,建築・土木構造物の試験・評価に広く活用され て社会的課題の解決に貢献することを目指して,合同ミニシンポジウムを2011 年12 月そして2014 年1 月に開催する等活動を行ってきました。当該「赤外線サーモグラフィ試験-建築・土木構造物への適用」 特集号では,シンポジウムでの演題に基づき,赤外線サーモグラフィカメラの技術開発動向,建築物の 維持・保全に関する基準等の現状と動向,コンクリート構造物,建築・土木構造物の試験,盛土施工の 品質管理に関する研究,そして関西地区高速道路の点検の現状と今後に関して,最前線でご活躍されて いる皆様に解説いただいております。極めて広範な建築・土木構造物への赤外線サーモグラフィ試験適 用事例の一部ではありますが,動向を概観していただけましたら幸いです。
 さて,日本非破壊検査協会では,“赤外線サーモグラフィ部門”が,“赤外線サーモグラフィによる非 破壊評価特別研究委員会(1996 年設置)”を引き継いで2010 年度に活動を開始いたしました。現在までに, 学術的には春季及び秋季の講演大会はもとより,新素材に関する非破壊試験部門,保守検査部門,及び 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門それぞれとの合同ミニシンポジウムを通して,試験方法の開 発や適用に関する活発な検討を進めています。その学術的成果の蓄積を活かし,標準化では,NDIS や JIS をベースとしたISO 規格原案の作成に大きく貢献しています。また,教育・出版活動では,赤外線サー モグラフィ試験技術者レベルⅠ及びレベルⅡの教育テキスト及び問題集の発刊や,教育講習会の開催を 支援・協力しています。それらの学術,標準化,及び教育・出版活動の成果を背景として,JIS Z 2305 に 準拠したNDIS 0604 による赤外線サーモグラフィ試験技術者認証(レベルⅠ)が2012 年春から開始され るに至り,加えてレベルⅡ認証が2013 年春から行われています。現在までに,既に180 名を超える有資 格者が誕生しています。建築・土木構造物の試験をはじめ,より広い産業分野において有資格者の皆様が, 「より正確でより有効な試験・評価」の実施に大いにご活躍,貢献されることが期待されます。
 安心・安全な社会の実現はもとより,持続可能な社会を支えるための「赤外線サーモグラフィ試験」 技術の進展を目指す当部門の活動は,部門会員の皆様をはじめ,広く他部門や関連組織の皆様,そして 関連学協会等の多くの皆々様に支えられています。厚く御礼申し上げますと共に,ひき続きのご支援, ご協力を心よりお願い申し上げます。

 

 

解説 赤外線サーモグラフィ試験 -建築・土木構造物への適用-

最新の赤外線サーモグラフィカメラの技術動向
 木村 彰一   日本アビオニクス(株)

Technical Trend of the Infrared Thermography Camera
Nippon Avionics Co., Ltd. Shoichi KIMURA

キーワード 非破壊検査,コンクリート診断,赤外線,サーモグラフィ,非冷却,冷却型,複数枚超解像,アクティブサーモグラフィ,位相解析,三次元画像



1. はじめに
 赤外線サーモグラフィカメラ(以下,サーモカメラ)は, その急速な高性能化と低価格化により様々な分野で利用が拡大し,市場の裾野の広がりとともにニーズも多様化してきて いる。従来,国内市場では主に研究・開発分野での温度計測分野を中心に普及してきたサーモカメラであるが,最近では 工場のプラント設備や建築物,道路などの維持管理など,特に社会の安心・安全を守るための非破壊検査装置として大き な注目を浴びている。このような背景から,海外からも優れた製品が多く国内で販売されるようになり,以前と比べて高 性能なモデルが低価格で導入できるようになってきた。
 最新のサーモカメラは,市販のビデオカメラやデジタルカメラ並みに小型・軽量化されており,効率的で迅速な調査が 可能となる。また,カメラで撮影する作業スタイルにより,足場や高所作業車等を用いて測定箇所に接近する必要がなく, 一度に広範囲を映せるため,大規模な対象物でも比較的短時間かつ安全に測定できるという特長を有する。さらに,その 結果は客観的な画像データとして記録することが可能である。このようなサーモカメラの機動性や特長を生かし,土木・建 築物の診断への適用が進んでいる。
 土木・建築物の診断への適用にあたっては,検出精度や作業効率を維持するために温度分解能や画素数において,十分 なスペックを有するカメラの選定が重要となる。高所の測定においては望遠レンズとの組合せを含めてクラックの検出に 必要な空間分解能を持つことが必須であり,また,床版などの日照が得られない場所では高い温度分解能を有するモデル でなければ変状箇所を特定できない。しかし,サーモカメラの低価格化は急速に進んできているものの,性能と価格はト レードオフの関係にあり,高画素・高感度なモデルになるほど高額になるため,導入時の障壁となっている。そのため, 新規参入の診断業者が正しい診断ノウハウを有しないまま安易に安価なモデルを購入し,誤診を繰り返す,といった問題 も浮上している。従って,構造物診断に適したスペックを有する高性能なサーモカメラをいかに安価に提供できるかが, 今後の技術革新の焦点となっている。
 もちろん,このような問題は装置のスペックによるものだけではなく,サーモカメラによる診断の難しさやノウハウの普及不足 にも要因がある。太陽光などの自然加熱を利用した検査方式では,①トンネル内や橋梁の床版など日照が得られない場所では 変状部の検出に十分な温度差が得られない,また,②日照が得られる場合でも検出精度が気象条件の影響を強く受ける,など の課題があり,より安定的な検査手法の確立が望まれている。

 

 

建築物の維持・保全に関する基準等の現状と動向
   濱崎  仁   芝浦工業大学

Present Situation and Trends of Standards concerning Maintenance
and Modernization of Buildings
Shibaura Institute of Technology Hitoshi HAMASAKI

キーワード 建築物,維持保全,外壁落下,定期調査,赤外線法



1. はじめに
 「スクラップアンドビルドからストックの時代へ」というキャッチフレーズは,建築物や土木構造物などの社会インフ ラだけでなくあらゆる産業において最近の命題となっていることである。特に,建築物は供用期間が長く,高度経済成長 期に建設されたストックが大量に残されていることから,より顕著な問題として認識されている。
 一例として,図1 に公営住宅の新設と建替えの戸数の推移を示す(国土交通省調べ)。公営住宅のストック数は,近年 210 ~ 220 万戸ほどで推移している。建設のピークは1960年代の高度経済成長期にあり,年間10 万戸程度が供給されてい たが,その後新設は減少し,既存住棟の建替え・更新が増加し,近年建替えのペースは年間2 万戸弱で推移している。こ の結果,既存のストック数を維持しようとすれば,当初想定されていた50 ~ 60 年程度の供用期間を超えて100 年間程度 は使い続けなければならないことになる。しかも,建設のピークから50 ~ 60 年を迎える時期は間近に迫っており,経年劣 化を抱えた建築ストックをいかに健全な状態に保つべく維持保全を行っていくかという問題が喫緊の課題となっている。

 

コンクリート構造物における赤外線調査の事例紹介
    天野  勲    (一社)日本赤外線劣化診断技術普及協会

Examples of Infrared Thermography Inspection for Concrete Structures
Japan Infrared Ray Research Association Isao AMANO

キーワード 赤外線サーモグラフィ,コンクリート構造物,浮き,はく離,モニタリング



1. はじめに
 コンクリート構造物に発生する「浮き・はく離」の変状は,これまで近接による打音調査が行われている。橋梁をはじめ とする構造物の近接打音調査には,足場が必要となり,経済性,効率性,調査員の安全性の面で不利な点がある。また,打撃 時の反発音を調査員の聴覚により判定する官能検査であるため,個人差が調査結果に影響を及ぼすこともある。
 赤外線法は,対象物の表面温度を熱画像として撮影し変状部を判断するため,足場不要で安全な場所から,非破壊・非 接触での調査が可能である。また調査員の個人差の結果への影響も小さい。しかしながら,パッシブ赤外線法では,気象 条件による温度環境が精度に大きく影響を及ぼすことから,十分に成熟した技術ではない側面も見られる。本稿は,パッ シブ赤外線法の技術普及に少しでも参考になるようにコンクリート構造物の「浮き・はく離」の変状調査事例を紹介する。

 

赤外線サーモグラフィによる橋梁調査について
    小出  博/中馬 勝己   (株)補修技術設計

The Investigation Method of Bridge Structures by Infrared Thermography
Infrastructure Renewal Engineering Co,. Ltd. Hiroshi KOIDE and Katsumi CHUMAN

キーワード サーモグラフィ,コンクリート構造,橋梁,画像処理



1. はじめに
 道路構造物において橋梁の維持管理は土木技術者にとって重要な課題である。とりわけ道路橋の主要部材として多くを 占めるRC 床版(Reinforced Concrete Slab)は供用後老朽化が進み適切な維持管理が求められている。老朽化の要因とし ては交通量の増大や車両の大型化による輪荷重の繰り返し疲労や寒冷地や山間部のRC 床版は寒暖差による凍害や凍結防 止剤の散布により舗装下の床版上面部の劣化が進み砂利化し脆弱になっている。
 従来よりRC 床版の劣化調査は床版下面に発生するひび割れ等を調べて損傷度合いの判定をしている。しかしRC 床版 上面の場合は舗装で覆われているため,調査するためには,舗装を撤去しコンクリート上面を目視観察や舗装面を打音検 査して異常部を検知する等の方法が用いられている。これらは費用負担が多く簡易に利用することは難しい。
 本技術は赤外線サーモグラフィ装置を車両の天井部に搭載し約20 km/h で走行しながら舗装面を連続撮影し短時間で温 度分布データを取得することが可能である。赤外線サーモグラフィで撮影した舗装面の温度分布により舗装下のRC 床版 の健全部と劣化部を判定する手法を試み本技術が道路橋RC床版の劣化判定に効果的であることを確認した。

 

盛土の締固め管理への適用
 金光 寿一  中央工学校     栁内 睦人  日本大学    阿部 徳男  中日本高速道路(株)

Examination for Embankment Compaction Management Method
Chuo College of Technology Juichi KANAMITSU
Nihon University Mutsuhito YANAI
Central Nippon Expressway Co., Ltd. Tokuo ABE

キーワード 赤外線サーモグラフィ法,盛土の締固め管理,面的評価,含水比,空気間隙率



1. はじめに
 本稿は,盛土の面的な評価を目的に赤外線サーモグラフィ法を適用した締固め管理手法について解説したものである。 現在,道路盛土,河川堤防,宅地造成,埋戻し等の締固め管理では,施工現場の締固め管理状況に合わせて品質規定方式 と工法規定方式が採用されている。品質規定方式は密度,締固め度,空気間隙率,飽和度,締固め強度等の試験が用いら れ,工法規定方式では事前の試験施工によって締固め機械の機種,締固め回数などで評価されている1)。その品質管理の 測定頻度の規準は,盛土量が多くなると品質評価に費やす時間と労力が多大となることから盛土量あるいは盛土面積に応 じて決められている。例えば,道路路体の締固め度(Dc)の測定頻度は,NEXCO 中日本の施工管理要領によれば,砂置 換法では施工箇所一層ごとに1日1回又は1000 m3 につき1回,RI 計法(ラジオアイソトープ)では施工箇所1層ごとに1日 15 点とされている。このように,品質は締固め範囲を点の測定値で評価されており,盛土全面の管理にはなっていないと いう問題点がある。すなわち,品質評価を特定箇所の評価で行う方法では,締固めの不十分である弱部を適確に評価する ことが困難であることが分かる。このような背景から,近年,工法規定方式では自動追尾TS(トータルステーション)およ びGPS を用いて,作業中の締固め機械の位置座標を施工と同時に計測し,この計測データを締固め機械に設置したパソコ ンへ通信・処理(締固め回数のモニタ表示)することによって,盛土全面の品質を締固め回数で面的管理する手法が導入さ れつつある2)。さらに,振動ローラに加速度計を搭載し,その加速度応答の相違から締固め状態の評価などが試みられて いる3)。
 しかし,締固め後の品質評価となる所定の締固め度は,盛土材料の粒度分布,含水比および締固め強度に影響され,こ れらの相互の相違によって面的なバラツキを有しているものと考えられる。路盤の破壊や陥没,変形は締固め不良箇所の 支持力不足が要因の一つと考えられ,振動ローラの浮きや跳ねなど締固め状態にバラツキが生じているものと思われる。 従って,信頼のある盛土施工管理においては,面的分布のバラツキを考慮した施工管理手法が必要である。

 

関西地区高速道路の点検の現状と今後
    樅山 好幸/木虎 久人/松井 俊吾   西日本高速道路エンジニアリング関西(株)

Present and Future of Expressway Inspections in Kansai Area
West Nippon Expressway Engineering Kansai Co., Ltd.
Yoshiyuki MOMIYAMA, Hisato KITORA and Shungo MATSUI

キーワード 非破壊検査,判定基準,画像処理,健全性評価,サーモグラフィ,コンクリート,橋梁



1. はじめに
 1963年に日本で初めての高速道路として名神高速道路:尼崎~栗東間71.6km が開通して約50年を経過した。以後,西日 本高速道路(株)関西支社(以下,関西支社)管内でも高速道路の建設は進められてきており,2014 年現在で道路延長は,約 850km,平均供用年数は,27年となっている。図1に2013年4月現在の関西支社管内の道路網を示す。今までに整備された 高速道路の設計荷重は「トラックの輪荷重をモデル化したT荷重」と「交通荷重群をモデル化したL 荷重」に分類され、車 両の大型化に伴い、TL-20, TT-43,TL-25 と変化するとともに,交通量,特に構造物に影響を与える大型車混入率は約30%を 保持(表1 参照)しており,構造物の疲労も生じている。
 また,コンクリート構造物では,路面の凍結を防ぐ凍結防止剤の散布による塩害,アルカリ骨材反応等の損傷が多く発 生している。
 道路管理者には,急速に老朽化・損傷が進む道路資産を戦略的に維持管理・更新することが現在求められている。しか しながら,増え続ける道路資産に対し,公共工事における経費節減や技術者不足といった社会的問題がある。
 このような背景の中,維持管理の効率化・高度化を推進することが非常に重要となっている。NEXCO 西日本グループ では非破壊検査技術の開発に加え,現場への導入による検証等を積極的に行い,維持管理の効率化・高度化による戦略的 な維持管理に取り組んでいる。本稿では,関西地区で実施している下記の非破壊検査技術について紹介する。
 ①橋梁詳細点検への赤外線サーモグラフィ法の適用
 ②デジタルカメラ点検システム(Auto-CIMA)
 ③路面性状測定車
 ④車載式赤外線サーモグラフィ調査

 

資料

第14 回APCNDT(アジア・太平洋非破壊試験会議)及びAPFNDT(アジア・太平洋非破壊試験連盟)の設立報告
    大岡 紀一   前APCNDT 副会長

Report on the 14th APCNDT and Establishment of APFNDT
Former Vice President of APCNDT Norikazu OOKA

キーワード APCNDT,APFNDT,ICNDT,資格の認証,教育・訓練



 アジア・太平洋非破壊試験会議(APCNDT:Asia PacificConference on NDT)が2013 年11 月18 日(月)~ 11 月22 日(金)の5 日間,インドのムンバイ市,ムンバイ・ルネッサンス・コンベンションホテルで開催され,(一社)日本非破 壊検査協会(JSNDI)からは廣瀬壮一会長,緒方隆昌副会長,大西利彦局次長(事務局),大岡昌平主任(事務局)及び大岡 紀一APCNDT 副会長がAPCNDT 2013 及び国際非破壊試験会議(ICNDT:International Committee for NDT)の関連会議へ 出席した。また,この会議に併設して行われたISO/TC 135/SC 8(サーモグラフィ試験)にISO/TC 135 の大岡日本代表 及びSC 8 の兵藤行志委員が出席した。スケジュールを以下に示す。

 

ISO/TC 135 幹事国業務報告 − NDT 技術者の認証規格の国際整合化−
    羽田野 甫   ISO/TC 135 議長(東京理科大学)

Secretariat Report of ISO/TC 135
− Global Harmonization of Certification Standards for NDT Personnel −
ISO/TC 135 Chairman (Tokyo University of Science) Hajime HATANO

キーワード 国際標準化機構,非破壊試験,非破壊試験技術者,認証,国際整合化,ISO/TC 135,CEN/TC 138,ISO 9712,EN 473,JIS Z 2305



1. はじめに
 NDT 技術者の第三者認証制度を規定した国際規格として,ISO(国際標準化機構)ではISO 9712 が,またCEN(欧州標準 化委員会)ではEN 473 がそれぞれ定められてきた。わが国のJIS Z 2305「技術者の資格及び認証」はご承知のようにISO 9712 に準拠しているが,第三者認証制度について二つの異なる規格が国際的に並存することによって,多大の不都合が生じていた。 ISO 9712 及びEN 473 の何れにとっても普及の妨げになりかねず,両規格の完全整合化は長年の悲願ともいえる課題であった。
 非破壊試験に関するISO の専門委員会であるTC 135 は1)−7),両規格の完全整合化を目指して,ISO とCEN の垣根を越え て,他にも先例のないCEN と合同のWG(ワーキンググループ)を設置した。2009 年から3 回の合同WG 会議を開催し ながら整合化案をまとめて,2012 年6 月にISO とCEN の共通規格としてISO 9712:2012(CEN 規格はEN ISO 9712:2012) を発行した。紆余曲折はあったもののCEN 側の全面的な譲歩を得て,従来のISO 9712 にほぼ沿った内容で完全整合化 を達成することができた。さらにこの整合化を受けてASME(米国機械学会)は従来のISO に対する姿勢を一転して,ISO 9712:2012 の使用を正式に承認するに至った8)。

 

論文

接触界面における高調波発生現象の可視化
   村瀬 守正/林  高弘/北山 綱次

Visualization of Higher Harmonic Generation at Contacting Surfaces

Morimasa MURASE, Takahiro HAYASHI, Tsunaji KITAYAMA


Abstract


Since material evaluation using nonlinear acoustics is a different technique from conventional linear ultrasonic techniques in principle, its phenomena are difficult to understand using fundamental data such as waveforms and frequency spectra. In this study, therefore, higher harmonic waves generated at a contacting surface of aluminum blocks were experimentally visualized. An ultrasonic wave was emitted from the lateral side of the block and a longitudinal wave propagating on the top side of the block was detected by a laser Doppler vibrometer at many points, then animations of the ultrasonic waves were constructed. From these results, a second harmonic generation at the contacting surface was observed.

Keyword Nonlinear ultrasonic, Visualization, Higher harmonics, Laser Doppler vibrometer



1. 緒言
 材料中を伝搬する超音波は,縦波や横波といった異なる振動形態のモードが存在する上,壁面や境界面における反射や 透過,屈折や回折といった複雑な伝搬挙動を示すため,その現象の把握が非常に難しい場合がある。その中で,材料中や 表面を伝搬する線形超音波を可視化する取り組みが盛んに行われている。たとえば,数値計算に関する研究において,古 くはHarumi 1)が欠陥周りの超音波伝搬や表面波などを可視化しており,現在ではほぼすべての数値計算結果が可視化さ れている2)。また,実験的には透明体内部を伝搬する超音波に対し,光弾性法による超音波伝搬の可視化がZhang ら3)や Li,Negishi 4),三原5)によって行われている。さらに,金属材料表面を伝搬する超音波については,レーザ振動計による 多点受信波形を用いた手法で,高坪ら6),林ら7),8)やNa ら9)の報告がある。いずれも直感的に現象を把握しやすく,文章 や数式では説明が難しい現象や新しい現象を表現するのに適している。
 一方で近年,材料中や界面における非線形性を利用し,これまで不可能であった微細損傷や閉じたき裂を検出できると して期待されている非線形超音波を非破壊評価へ適用する研究が盛んに進められている。しかし,非線形超音波法は,こ れまでの線形超音波探傷の概念とは異なる手法であるため,波形や周波数スペクトルといった基礎データでは,現象を理 解しにくい側面がある。また,き裂や界面での非線形現象を扱うため,数値計算にも工夫が必要となっている。この非線 形現象を理解するためには,実際の界面で発生した高調波を可視化することが有効である。線形超音波に関しては,先に 述べたように多くの可視化が行われているが高調波の伝搬を可視化した事例はない。また,高調波は計測系のあらゆる要 素から発生している可能性があり,非線形超音波法を非破壊評価に適用する上で,対象部位から発生していることを確認 することが重要である。
 そこで本論文では,レーザドップラー振動計を用いた多点受信による波動伝搬の可視化技術を用いて,接触界面を例に, 高調波の発生が界面における非線形現象によるものであることを確認する。

 

 

 

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