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機関誌

2014年度バックナンバー1月

2014年1月1日更新

巻頭言

「新年のご挨拶」  廣瀬 壮一

  新年おめでとうございます。本年が皆様にとって良い年となりますことを心より祈念申し上げます。昨年 6 月に会長に就任し半年が経ちましたが,あっという間に時間が流れたというのが率直な感想です。
 昨年を振り返りますと,アベノミクスなる経済政策が政府によって提唱され,積極的な公共投資が進めら れてきました。海外に対しても首相自らのトップセールスによって日本の技術,製品・システムのアピール がなされています。さらに2020 年東京五輪の開催が決定し,今後首都圏を中心としたインフラ整備に期待 が集まっています。このように日本経済に明るい兆しの見える一方で,本年4 月には消費税の税率アップが 予定されていて,国民一人ひとりが経済効果を実感するにはもう少し時間がかかるようです。
 非破壊検査に目を向けると,昨年6 月に発表された日本再興戦略の戦略市場創造プランや科学技術イノベー ションの推進プランにおいて次世代インフラの構築や整備が掲げられ,その中で非破壊検査は重要な技術と して取り上げられました。また,原子力発電については重要なベース電源と位置づけ,再稼働を進めると前 政権が掲げた原発ゼロ政策の見直しがなされようとしています。このように非破壊検査の重要性について再 認識され,需要喚起の準備は整いつつありますが,検査業界が活況を呈するまでには至っていないようです。
 このような状況の中で,会長就任以降の半年間でいくつか重要事項を決定しました。一つは,JIS Z 2305 の改正に伴う新しい認証試験の開始時期を決定したことです。昨年秋には2014 年秋以降に実施するとの予 告をしていましたが,試験会場や講習会の準備のための時間を考慮して新認証試験の開始を2015 年秋とし ました。新認証試験では受験者の方々のご負担が増すため様々なご批判があることは承知していますが,今 後の日本の長期的あるいは国際的な視点に立った時,新認証制度への移行は避けて通れないものであると考 えておりますので,何卒ご理解とご協力をお願い申し上げます。なお,新認証試験の開始時期の決定に先立っ て,新試験センターや協会の財務状況などを慎重に検討してまいりました。その結果,東京地区の試験セン ターについては現在の木場センターを閉鎖して亀戸に新たな試験センターを開設し,同時に協会事務局も同 じビル内に移転することとしました。
 もう一つの重要事項は,11 月にインドのムンバイで開催された第14 回APCNDT 会議において,アジア・ 太平洋非破壊試験連盟(APFNDT) なる組織が発足し,その会長職と事務局をJSNDI が受け持つことになっ たことです。これまでJSNDI は発展途上国を対象としたRT 及びUT のトレーニングを実施するなどアジア 地域におけるリーダーシップを取って参りました。APFNDT はこのような活動を組織立って実施するための 母体であり,今後の国際舞台における当協会あるいは日本の貢献度は大きくなると同時に,相応の責任も担 うことになります。
 このような重要事項の決定を受けて,今年,当協会は新認証制度の具体的な構築準備やAPFNDT の事務局 整備と実効ある運営に取り組んでいく所存です。そして新認証制度構築に併せてテキストの改訂や講習会の 実施体制の見直しも行わなければなりません。教育と認証のあり方についても議論したいと考えます。また, このような短期的な活動を推進すると同時に,中長期的な課題にも取り組みます。例えば,昨年6 月に発表 された日本再興戦略において非破壊検査が重要な技術として取り上げられたことは申し上げましたが,次世 代インフラに期待されているのはこれまでにない非破壊検査技術であることに留意すべきだと思います。社 会のニーズに的確に応える技術を提供するためには常に学術活動の活性化を図り,新しい技術を生み出す努 力をしなければなりません。そもそも協会は類が友を呼ぶ団体ですが,少なくとも学術活動に関してはオー プンマインドな立場を取ることが大切です。その意味で今年は他学協会及び諸外国との交流・情報交換も促 進する所存です。重ねて皆様のご協力を宜しくお願いいたします。

 

 

解説 「画像処理技術応用による検査の自動化 -画像検査の発展の道程を見据える-」

「画像処理技術応用による検査の自動化 -画像検査の発展の道程を見据える-」特集号刊行にあたって  青木 公也

 計算機・記憶媒体におけるハード・ソフトの発達は目覚しく,それに伴って,大量の情報を高速に 処理する必要がある画像処理技術の実用化が進んでいます。計算機の性能向上とあいまって,ある検 査対象に複数の画像処理手法を段階的に適用するなど,単純な検査であれば,人間より遙かに高速か つ精密な検査も可能となりました。また,カメラ等のセンサの低価格化に伴い,比較的生産規模の小 さい現場においても,画像処理による検査システムが導入できる状況となりました。このように,検 査への画像処理技術の導入はあって然るべき時代となりました。しかしながら,各種生産現場におけ る製品や,道路・トンネル・橋梁等のインフラや,その他構造物など,検査対象は様々であり,かつ それらに発生するきずや欠陥の種類も多種多様であるため,外観画像や透過画像,三次元画像を利用 した検査の自動化は必ずしも容易ではありません。このような状況の中,製造工程検査部門では検査 に対する現場の要望に応えるべく,画像処理技術の実利用化を目的に活動しています。
 近年,画像処理技術は検査,ロボット,ITS,医療,メディア処理,セキュリティ,インターフェイスなど, その応用範囲の拡大は留まるところを知らず,ますます拡大しています。そこで製造工程検査部門は, 各種学会・研究委員会の枠を越えて連携・協力して活動しています。本特集号では,ますます発展す る画像処理技術の検査応用の実例や,画像処理技術の最新動向について取り上げます。今回,製造工 程検査部門が協賛・共同企画している「画像センシングシンポジウム:SSII」,「ビジョン技術の実利用ワー クショップ:ViEW」,「動的画像処理実利用化ワークショップ:DIA」において中心的にご活躍されて いる方々に解説記事をご執筆いただきました。内容は,これらのシンポジウム・ワークショップでの 検査画像処理や,検査への応用も期待される最新の画像処理手法です。また,画像検査の発展の道程 を考える上では,人による外観検査・目視検査も考察する必要があります。他の検査技術と同様に「人」 をその外に置くことはできません。そこで,目視検査についても取り上げました。五つの解説記事か らなる本特集号は,その副題の通り「画像検査の発展の道程」を指し示すものとなったかと考えてい ます。
 さて,上記のSSII とViEW は,共に横浜ベイエリアで開催される恒例の二大画像処理分野研究発表 会として認知されています(SSII は6 月,ViEW は12 月に開催されます)。また,DIA は毎年3 月に日 本各地で開催され,DIA2014 は熊本にて開催予定です。これらの三つのシンポジウム・ワークショッ プでの発表件数は300 件にのぼり,参加者は延べ2000 名に達しようとしている状況です。画像処理を 実利用する上での新手法・新技術の提案や,最新のビジョン関連技術に関する情報交換の場として,産・ 学・官の枠を越えた発表・交流が展開されています。画像を使った検査をご検討されている会員の皆 様には,ぜひ一度,これらのシンポジウム・ワークショップにご参加いただければと存じます。本特 集号の刊行が非破壊検査分野と画像処理分野の架け橋になれれば幸いです。
 末筆ではございますが,大変ご多忙にもかかわらず快くご執筆いただいた皆様,企画から刊行まで お世話いただいた機関誌編集ご担当の皆様に,誌面をお借りしてお礼申し上げます。

 

 

人に学ぶ画像検査機械開発
   青木 公也/輿水 大和   中京大学

Development of Visual Inspection Machine Inspired by Human
Inspection Mechanism
Chukyo University Kimiya AOKI and Hiroyasu KOSHIMIZU

キーワード 画像検査,目視検査,外観検査,傷の気付き



1. はじめに
 多くの製造現場において目視検査は不可欠であるが,利用者に製品を提供する生産の究極の目標は欠陥を発生させない ことである。つまり,検査フリー生産を実現することである。これに対して画像処理技術応用による検査の自動化は,検査 フリー生産に至る具体的対策の一つと位置付けられる1)。
 さて,目視検査の自動化は達成されているのかと問われれば,答えは「Yes」でもあり「No」でもあると考えられる。 機械化・自動化が馴染む検査対象や項目での事例では,計算機の特性,すなわち「定量性」,「再現性」,「高効率」,「高速性」 が発揮された検査システムが実用化されて久しい。一方では,背景パターン上の不定形で淡いシミやムラ,ワーク形状由来 のパターンに混在するきず等,「人は気付く」が「機械化は困難」な事例も多数存在する。例えば,官能検査は後者に属す ると考えられる。また,前者の「Yes」に属する検査システムも,一般的には個別の事例に対して,それぞれ試行錯誤され た一品一様の自動化・機械化である。ここで,今一度検査機械実現に向けた道程の議論が必要であると考える。
 図1 に検査機械開発の道程のイメージを示す。ディジタル画像処理において,きず・欠陥信号が残存するように照明・ 光学系は工夫され,高精細なカメラを用意することは可能となった。それにもかかわらず,目視検査の自動化は未だ一品 一様であり,対象ごとにある種のノウハウを駆使した画像処理アルゴリズムを設計するのが一般的であるし,必ずしも成 功しない。これをさらなる撮像系の高性能化に解決を求めたり,従来通りの個別事例ごとの画像処理アルゴリズムの開発 に求めたりすることは,真の検査機械達成への道程の一つとしては考えられるし,否定されるべきではない。一方,検査 作業の機械化を検査フリー生産へのステップと考えれば,製造プロセスにも検査プロセスにも通底して深く関与している 作業者の注意・集中意識2)や視覚生理機構等の根本的機能を実装する技術開発が必要であると考えられる3),4)。つまり, 開発過程において「人に学ぶ」ことの重要性を再確認することである。
 本稿では以上の視座に立ち,著者らが参画している研究プロジェクトにおける検査の自動化への取り組みについて紹介する。

 

実世界の画像検査・事例
    梅田 和昇   中央大学    野口  稔   (株)日立ハイテクノロジーズ
    肥塚 哲男   (株)富士通研究所

Case Studies of Visual Inspection in the Real World
Chuo University Kazunori UMEDA
Hitachi High-Technologies Corporation Minoru NOGUCHI
FUJITSU LABORATORIES LTD. Tetsuo KOEZUKA

キーワード 画像検査,画像応用技術,半導体産業,電子産業,IAIP,ViEW



1. はじめに
 1.1 画像検査の変わらぬ重要性
 画像処理の研究開発が1960 年代に始まってから,既に50年近くの時が流れた。画像検査は,歴史の初期からその中心 にあった。当初,画像処理のコストは現在とは比較にならない位高かったが,急速に発展しつつあった電子産業,半導体 産業をはじめとする分野で画像検査の必要性が極めて高く,研究開発が強力に進められてきた1)。
 現在,画像処理の応用分野は爆発的に広がっている。そして,画像検査は,やはり今も画像処理研究の根幹にある。
1.2 IAIP
 画像検査をはじめとする画像処理の産業応用に大きく貢献してきた組織にIAIP がある。著者らがIAIP のメンバーであ ることもあり,簡単に紹介させて頂きたい。
 IAIP は,精密工学会の専門委員会の1 つ,画像応用技術専門委員会の略称である。英語名称Technical Committee on Industrial Application of Image Processing を略してIAIP である。1986 年に設立されて以来,一貫して画像技術の産業応用 に関わる活動を行って来た。様々な活動を行っているが,その中心となるのがViEW,DIA という2 つのワークショップ の開催である。ViEW は,1989 年にスタートした外観検査の自動化ワークショップを起源としている。2003 年に対象範囲 を広げるべくビジョン技術の実利用ワークショップ(VisualEngineering Workshop:ViEW)となり,現在に至っている。 毎年12 月にパシフィコ横浜で約500 名の参加者規模で開催している。ViEW は,IAIP 主催のもと,日本非破壊検査協会 製 造工程検査部門をはじめとするいくつかの組織の共同企画で実施されている。貴協会には,この場を借りて御礼申し上げ る。ちなみにViEW では小田原賞という最優秀論文賞を授与しているが,2012 年度の受賞は,製造工程検査部門主査の青 木公也氏らの研究2)であったことを申し添えておく。もう一方のDIA,動的画像処理実利用化ワークショップは,日本各 地で,その地域での工場見学など独自企画を加えつつ,毎年3 月に200 名程度の参加者規模で開催している。その他,IAIP の活動の詳細に関しては,文献3)−5)を参照されたい。
 IAIP に強いつながりがある学会に,画像センシングシンポジウム(SSII)がある。SSII は毎年6 月にViEW と同じくパ シフィコ横浜で開催されており,参加者約1000 名という日本で最大規模の画像処理に関する学会である。IAIP の方向性と 同様に,実用性を重視しているのが特徴である。また,学術色が強く,かつ発表件数が多い学会に画像の認識・理解シン ポジウム(MIRU)がある。 MIRU は,電子情報通信学会のPRMU 研究会と情報処理学会のCVIM 研究会との共催で毎年 夏に開催されている。
 さて,前置きが長くなったが,以下本解説では,ViEW をはじめとする学会での画像検査に関する研究を紹介する。まず2 章 で全体的な研究動向を示した後,具体的な研究事例として,3 章で半導体生産現場での画像処理技術の発展と現状を,4 章で電 子機器の組み立てにおける画像処理技術を紹介する。

 

画像認識技術の最新動向
    青木 義満   慶應義塾大学    藤吉 弘亘   中部大学

Emerging Trend on Image Recognition Technologies
Keio University Yoshimitsu AOKI
Chubu University Hironobu FUJIYOSHI

キーワード 画像認識,特徴点検出・記述,特徴量,識別器



1. はじめに
 毎年6 月にパシフィコ横浜で開催されている画像センシングシンポジウムSSII は,1995 年に第1 回が開催され,2014 年度を以て第20 回目を迎える。SSII では,実用化を明確に意識した画像技術研究の発表の場と位置づけし,学術性の高さ だけでなく,実世界と実利用に密着して社会に役立つ研究を重視している。2013 年に開催されたSSII2013 では参加者が約 1000 名,発表件数100 件となり,画像技術関連の国内会議としては国内最大規模であり,研究者・技術者が最新技術の動 向を知る場として利用されている。
 ここで,SSII2013 のインタラクティブセッションで発表された100 件の研究分野を,センシング,認識,画像計測,ア プリケーションの4 種類に分類した際の割合を図1 に示す。SSII はセンシング技術を対象としているが,円グラフからは センシングそのものの研究だけではなく,センシングの後処理となる認識に関する研究発表が約半数を占めていることが わかる。これは,センシング技術と認識技術は一体であることを示していると共に,本分野における認識技術の大きな進 展が期待されていることを示している。
 表1 に,各分野の研究発表のキーワードの一覧を示す。認識分野におけるキーワードは多様であり,中でも物体検出, 物体追跡,画像検索,行動理解,特徴点検出等に関するキーワードが多いことがわかる。これは,認識技術がアプリケーショ ンの多様性を表しており,産業界におけるニーズの高まりを反映しているといえるだろう。
 また,SSII 同様,画像技術の産業応用を強く意識した学術集会として,毎年12 月上旬にパシフィコ横浜で開催さ れている,ビジョン技術の実利用ワークショップ(VisualEngineering Workshop,ViEW)がある。精密工学会画像応用 技術専門委員会を母体とするこのワークショップは,外観検査の自動化に特化したワークショップとして1989 年から始ま り,2003 年以降は,元々の特徴であった外観検査のみならず,画像計測,物体検出・認識,人物画像処理,映像メディア処理, 医療・福祉,感性情報処理といったビジョン技術全般へと対象を広げ,学術・産業界からの注目を集めている。ViEW で の研究発表の推移を眺めても,ますます拡がりつつある画像の産業応用を支えている基盤的かつ普遍的なトピックとして, 物体検出・認識技術に関する議論が盛んになっている。
 そこで,本解説では物体認識に関する技術にフォーカスし,2 章では物体認識に関する技術動向について紹介し,3章で はSSII,ViEW において近年,発表された関連事例を取り上げながら,物体認識技術の進化について述べる。

 

目視検査を成功させる
    石井  明   香川大学工学部

Successful Visual Inspection
Faculty of Engineering, Kagawa University Akira ISHII

キーワード 目視検査,外観検査,中心視,周辺視



1. はじめに
 “ぱっと感じて ぱっと察する …とは”。人の視覚を使っての作業・動作をつぶさに観察すると,驚かされることが多い。 図1 は直径1 cm 程度のワッシャ状の小さなプレス部品(図右下参照)を外観検査している様子である。検査項目は部品の 表裏のキズと刻印文字の不良の検出であるが,この検査員は,実に30 万個~ 50 万個/日の検査を行っている。素人目には, しっかり見ていないのではないか,あるいは,見落としがあるのではないかと思われるほどの目にも止まらぬ速さである。 もし,この検査作業において,不良の見逃しがなく且つ終日,検査速度・検査品質が変わらないのであれば,この検査員は どのような方法を使っているのだろうか。検査員は目で“見て”その製品・部品が良品であるか不良品であるかを判断し, 不良品を排除することが主な業務である。しかし,もう少し,検査員寄りの見方で検査の様子を眺めてみると,“良品とは異 なるものが現れたときに,変だと感じ”,その個所が許容範囲を越えているかを確認し,許容範囲を越えていると判断した 場合に不良品として排除している。この“良品とは異なるものが現れたときに,変だと感じる技術”は,熟練した検査員 が知らず知らずの内に身につける技術であり,暗黙知でもある。この技術は最近,佐々木により周辺視目視検査法として 確立され1)−3),その理論的背景と訓練方法がセミナー等を通じて紹介され,少しずつ認知されるようになってきた。
 本解説では,工業製品の製造工程で行われる目視検査を想定して,周辺視目視検査法を紹介するとともに,目視検査は 当該工程の最後の砦の意識のもとに不良の見逃しゼロの目視検査体制をいかに構築していくかについて紹介する。

 

次代の画像技術を展望して −特集の総括として−
    輿水 大和   中京大学

Prospecting Near Future of Image Technology
− Summary of Special Issue −
Chukyo University Hiroyasu KOSHIMIZU

キーワード 画像技術,デカルト,物質科学,ココロ科学,SSII,IAIP



1. はじめに
 画像技術は産業の隅々まで波及して1),波及した先の現場に浸って本物の先端的課題(Cutting edge)に駆動されて鍛錬 されてきた2)。そしてこれからも一層の研鑽を積んでいかなければならない。研鑽を積むためには自分自身で広い見識と 堅固な指針を持たなければならず,そのためには画像技術という技術の本性を問う自らの科学技術論の構築が待たれ,更 には画像技術研鑽の場,つまり学協会の在り方(カリキュラム)の構想が期待される。
 本特集全体がこの趣旨に沿って企画されていて,第1 題では人の視覚(Human vision)に学ぶ画像技術(Computer vision)のホットな話題を,第2 題では画像技術の活躍舞台からのメッセージを,第3 題では昨今の画像技術動向の波面を, 第4題では人の目視検査を成功させるという画像技術の新視点を,文字通り多角的に総覧している。
 そこで本第5 題では,これらに通貫して今後に向けて画像技術を考察・展望することを試みる。そのために,2 章では 画像技術はどのような学問かについて,物質科学と非物質科学の関係を省察した物質科学方法論の祖,デカルトの書『方 法序説』(1637)3),4)に目を遣って,その物質科学技術的側面と非物質的・ココロ科学的側面を知り,これらの関係を整 理する。3 章では,それぞれの側面からの今後を展望するために最新の話題を若干紹介する。片方は画像デジタル化の数 理物理的課題と画像特徴について,もう一方は画像検査における視覚機能と検査集中意識のセンシングの試みである。4 章では,このような画像技術の学協会コミュニティの在り方にも言及する。具体的には,画像センシング技術研究会(SSII) と画像応用技術専門委員会(IAIP/JSPE)の活動を事例として紹介して,画像技術の揺籃・協創の場でもあり競争の場でも ある学協会が醸成すべき在り方の一見解を示す。最後に5 章では本稿をむすぶ。

 

論文

異なる二つの磁界強度を用いた漏洩磁束式熱延介在物計の開発
   四辻 淳一/長棟 章生/加藤 宏晴

Detection System for Inclusion Defects in Hot-rolled Steel Plates using MFLT with
Two Different Magnetizing Strengths

Junichi YOTSUJI, Akio NAGAMUNE and Hiroharu KATO


Abstract


Recently, steel can manufacturing requires higher quality steel because otherwise minute non-metal inclusions in thin sheets could cause cracks and result in a burst during the pressurization after the pressing process. Quality testing is already incorporated during the final process in steel plants, but if there was another inspection in an earlier step, at the hot strip mill for example, then the mass manufacture of non-conforming products could be avoided and the maintenance of quality control would be more efficient. Magnetic Flux Leakage Testing (MFLT) has been developed using different magnetizing, in order to detect inclusion defects in hot-rolled steel plates. In the analysis of the noise factors in MFLT, the signals generated from the scale layer on a steel surface were found to be dominant. A different magnetizing force method is used to decrease this overpowering noise level in MFLT. In this paper, it is confirmed that inclusions, larger than 160μm in diameter and less than 0.45mm in depth, can be detected.

Keyword Magnetic flux leakage testing, Non-metallic inclusion, Magnetic force, Quality assurance, Hot-rolled steel



1. 緒言
 鉄鋼製品において,製缶用などのプレス加工を施し内部・外部から圧力のかかる様な鋼板には,加工時もしくは加工後 に割れが発生するので非金属内部介在物欠陥を含まない高い品質が必要である。そのために加工前の生産ラインにて内部 介在物欠陥を検出し,その品質を保証することが重要である。出荷直前の冷延鋼板においては,品質保証用として漏洩磁束 探傷方式の介在物計が以前から使用されており1),2)不良材の流出を防いでいるが,製造過程での品質管理や大量不適合 の抑止という観点では,より前工程で評価することが望ましい。その要望に対し,今回我々は熱延鋼板段階での内部介在 物検出を試みた。実際の介在物の例をFig.1 に示す。熱延鋼板段階で検出後に削り出して撮影したもので,鋼板表面には顕 在化していなかった。この様な介在物の有無について熱延鋼板段階でのオンライン非破壊評価が可能となれば,異常材の 早期検知およびさらに前工程である製鋼工程への早期フィードバックを可能とするため効果が大きい。
 従来試みられてきた非破壊検査としては,超音波探傷や漏洩磁束探傷がある。超音波方式としては表面スケール層を洗 浄する酸洗ラインに設置された装置3),板波探傷にSSP(SplitSpectrum Processing)周波数解析と呼ばれる非線形信号処理 を組み合わせた例4)などがあるが,基本的に水などの媒体が必要で大規模なライン改造が必要もしくは,タイヤ探触子5) など鋼板に接触させる必要がある。非接触という点ではX 線探傷が昨今進化しており,ディジタル撮像と画像処理にて高 速度撮影に対応してきている6)が,内部介在物検出は高出力・高分解能が求められ且つ放射線設備管理の点で適用が困難で ある。

 

 

 

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