logo

<<2032>>

  • 1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  •  
  • 予定はありません。

機関誌

2009年度バックナンバー1月

2009年1月1日更新

巻頭言

新年のご挨拶 坂  眞澄

 新年明けましておめでとうございます。会員の皆様にはよいお年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 昨年11月,Changeが支持され,新しい米国大統領が選出されました。いかにうまく機能している組織でさえも,改革をしていかないと衰退するとの見 方があります。当協会におきましては,認証,教育,学術をはじめとしまして,長年にわたる会長,理事各位ならびに皆様方のご努力によりまして,各事業共に 健全に活動を展開してきておりますが,一方では改革の努力も鋭意行ってきております。
 学術組織につきましては,昨年度に認められました新学術組織への移行のための手続きの整備を進めております。また新しい公益法人制度に向けた対応に関しましては,近々,皆様方に案をご提案申し上げるべく,種々の面より検討を進めております。
 施設に関しましては,昨年9月に瑞江センターを開設致しました。種々の目的のために,活発にご利用いただけましたならありがたいと思っております。国際 関係につきましては,本年11月に横浜で開催予定の第13回アジア環太平洋非破壊試験会議(APCNDT)の準備を,さらに来年開催予定の第4回日米非破 壊検査シンポジウムの準備を着実に進めております。また,アジア諸国との連携を深めるべく,2007年度に当協会主導で始めましたワークショップを昨年 11月に東京で開催致しました。国際標準化活動では,ISO TC135(非破壊試験)の幹事国業務を引き受けるとともに,各SC委員会にも積極的に参加し,日本の立場を確固としたものにしています。
 認証事業につきましては,2007年度の資格試験において前年を上回る受験申請数となり,年間の総受験申請数が30,000件を超えました。これに伴っ て認証件数も順調に伸びており,2008年4月1日現在で68,720件となっており,そのうち,2003年から実施しているJIS Z 2305による認証は54,099件となっています。残りのNDIS 0601による認証件数14,621件については2010年度中にJIS Z 2305による認証に順次移行していただくことになります。NDIS 0602(非破壊検査総合管理技術者の認証)に基づく資格認証では,資格登録者数は143名となっています。NDIS 0603 によるPD(Performance Demonstration)認証制度につきましては,現在までに24名の認証を行いました。国際認証活動では,カナダ天然資源省(NRCan)との相互 認証に基づく認証として3名6件のJIS Z 2305資格を発行しています。2006年からは英国非破壊試験協会(BINDT)とPED(欧州圧力機器指令)承認制度が開始され,JIS Z 2305とEN473との差を埋めるサプリメント試験に現在までに15名が合格しています。また,米国非破壊試験協会(ASNT)のACCP認証取得のた めの協定締結に向けて活動を行うなど積極的に活動を進めています。
 この他,多くの課題に各理事,各委員会等が全力で取り組んでおります。益々のご協力を宜しくお願い申し上げます。
 最後に,皆様方のご健康とご発展をお祈り致しまして,新年のご挨拶とさせていただきます。

 

 

解説 状態監視技術の動向

「状態監視技術の動向」特集号の刊行にあたって  望月 正人

原子力発電プラントや石油化学プラント,鉄鋼プラントに代表される大型設備の保全を適切に行うことは,設備や機器の効率的運用や安全性,ひいては環境問題 などにとって重要であることは言うまでもない。ここで,実施すべき保全の方式としては,(1)設備の使用時間や暦時間を元に計画的,定期的に分解点検など の保全を行う時間基準保全,(2)設備診断技術などによって設備の状態を非破壊でモニタリングし,その評価(診断)結果に基づいて保全を行う状態基準保 全,(3)設備が故障した後に保全・補修を行う事後保全,の3種類に大別することができる。
 さて,国内の原子力発電プラントの場合には,これまでの設備ならびに機器の保全方式は時間基準保全が中心であった。時間基準保全では,作業量に応じて相 応の設備信頼度が得られるものの,同時に設備利用率の低下と定検作業線量の増大を招くとともに,場合によっては過度の保全やヒューマンエラーによる信頼度 低下の可能性すら否めない。そこで,信頼性重視保全の考え方および設備診断技術に基づく状態基準保全を積極的に活用することによって,設備利用率や作業線 量を含めた総合的なプラントパフォーマンスを向上させるとともに,信頼度をさらに高めるための「保全プログラム」が導入されようとしている。すなわち,経 済産業省 原子力安全・保安院から,総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部会 検査の在り方に関する検討会での審議内容が,報告書「原子力発電施設に対する検査制度の改善について」として平成18年9月に公開され,「『保全プログラ ム』に基づく保全活動に対する検査制度の導入」が謳われているが,その中で目玉となる重要な技術の一つが「状態監視技術」である。
 状態基準保全は石油化学プラントや鉄鋼プラント,さらに海外の原子力発電プラントで積極的に導入されており,状態監視技術を駆使して効果的に設備診断が 実施されている。国内の原子力プラントにおいても状態監視技術を積極的に活用すべく,(社)日本電気協会 原子力規格委員会 構造分科会の傘下に設備診断検討会が平成18年9月に発足し,これまでに,原子力発電所の設備診断に関する技術指針−回転機械振動診断技術 (JEAG4221-2007),同−潤滑油診断技術(JEAG4222-2008),同−赤外線サーモグラフィー診断技術 (JEAG4223-2008)として,それぞれ規格化が完了している。また,同−放射線肉厚診断技術(仮称JEAG4224-200X)についても,原 子力規格委員会内での審議を終えつつあり,公衆審査に移行後,規格化される予定であり,さらに他の診断技術についても規格化の要否についての検討を進めて いる。
 このような背景の元で,本特集では,主に原子力発電プラントを対象とした状態監視技術について4件の解説記事を,それぞれの分野の専門家に執筆いただい ている。最初に原子力発電プラントにおける保全プログラムと設備診断技術としての状態監視技術について概説いただき,以降,具体的な技術として,振動診断 技術,潤滑油診断技術,赤外線診断技術の詳細についてそれぞれ解説をお願いした構成としている。
 本特集が,いろいろな分野で保全・補修に関わっておられる会員諸氏の皆様の参考になれば幸甚です。また,ご多忙の中にもかかわらず本特集のために執筆の 労をとっていただいた著者の方々にこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。なお,本特集の内容は,2008年1月15〜16日に開催された「第1回 検査・評価・保全に関する連携講演会」(主催:NPO法人 日本保全学会,協賛:(社)日本非破壊検査協会,ほか)のセッション「発電設備の設備診断技術」での講演内容を元にしていることを附記します。

 

 

 

保全プログラム充実と設備診断技術 滝沢 靖史 東京電力(株)

Improvement of Maintenance Program and Condition Monitoring
Yasushi TAKIZAWA Tokyo Electric Power Company

キーワード 保全プログラム,設備診断技術,状態基準保全,信頼性重視保全, 劣化防止型保全


1. はじめに
 1990年代前半まで,日本の原子力発電所は米国の発電所に比べ,年間自動停止回数や設備利用率・定検作業線量等の項目において大きくリードし,その安 全性・効率性を誇っていた。当時の日本や米国発電所の保全は時間基準保全(TBM)が中心で,これは作業量に応じ相当の設備信頼度が得られる一方,応分の 定検期間や作業線量を必要とし,設備利用率の向上にも限界があり,場合によっては過度の保全やヒューマンエラー(HE)による信頼度低下の可能性も指摘さ れていた。
 その後米国では,航空業界を中心に発展してきた信頼性重視保全(RCM)の考え方や設備診断技術を用いた状態基準保全(CBM)を積極的に取り入れて保 全の改善を図った結果,現在では年間自動停止回数こそ日本の成績が良好なものの,設備利用率や定検作業線量を含めた総合的なプラントパフォーマンスでは日 本を大きく引き離す優秀な成績を示すほどになった。
 このような状況に鑑み,日本でも信頼性重視保全(RCM)の考え方や設備診断技術を取り入れた状態基準保全(CBM)を発電所機器の保全に積極的に拡大することで更なる信頼性向上等を目指した「保全プログラムの充実」を行うこととなった。

 

 

 

振動診断技術と回転機械への適用  小林 伸二 JFEメカニカル(株)

 

Vibration Diagnosis Technology and its Application to Rotational Machines
Shinji KOBAYASHI JFE Mechanical Co., LTD

キーワード 回転機,振動解析,周波数分析,状態監視技術,設備診断


1. はじめに
 設備に異常が発生した場合,それに伴って異常部位の振動値が上昇傾向を示すことは周知の事実である。従来は熟練された保全員が聴音棒などを使用した五感 による点検を行い,「勘」と「経験」に基づいて異常の有無を判断していたが,異常初期状態の把握が困難,判断の個人差が大きい,などの問題があった。これ に対し振動診断は,振動状態の変化を定量的に把握できるので個人差が少ない。また,振動診断による状態監視の効果として,従来の定期的な分解整備による オーバーメンテナンスや突発故障の防止が図れる。さらに,精密診断解析を行うことで異常の内容・程度を把握でき,最適な保全アクションを決定することが可 能となる。
 本稿では振動診断技術の概要,回転機械の診断事例,発電設備への適用について述べる。

* (社)日本非破壊検査協会 会長 埼玉大学大学院 理工学研究科 人間支援・生産科学部門 生産科学領域 (338-8570 さいたま市桜区下大久保255)

 

潤滑油診断技術の発電設備への適用  川畑 雅彦 トライボテックス(株)

 

Application of Lubricating Oil Diagnostic Technology to Power Generation Facilities
Masahiko KAWABATA TRIBOTEX Co., LTD

キーワード 設備診断,潤滑油診断技術,トライボロジー,摩耗,CBM,予防保全,摩耗粒子


1. はじめに
 電力業界における設備保全は,図1に示すように,予防保全を目的に,定期的に点検を実施し健全性を担保するTBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)を主な保守方式としてきたが,最近ではさまざまな設備診断技術を用いて健全性を継続的に評価(Condition monitoring:CM)し,設備機器の状態を科学的・合理的に判断した上で保守を適切に実施する,CBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)へと方式の見直しが図られ,これにより定期点検周期の延伸化や,必要な箇所に絞って適切に保守する保全の最適化に よる保守費用の削減も志向されている。
 設備診断技術の中でも潤滑診断技術は,「機械の血液」とも言える作動油,潤滑油,グリースなどの分析結果から潤滑状態を評価し,転がり軸受やすべり軸 受,或いはギヤなど,回転機器類の摺動面で生じる潤滑状態の変化をいち早く知る手法として注目されている。
 ここでは,潤滑油診断技術の特長とともに,発電設備への適用の有効性を紹介する。

 

 

赤外線診断技術の発電設備への適用  山田 浩文 (株)サーモグラファー

 

An Application of Infrared Diagnosis to Power Station Facilities
Hirofumi YAMADA Thermographers co., Ltd

キーワード 赤外線,サーモグラフィ,CBM,温度,熱


1. はじめに
 安全でコストパフォーマンスの高いCBM(Condition Based Maintenance)に依拠した効率的かつ信頼性の高い保全RCM(Reliability Centered Maintenance)への転進は,産業発展著しいアジア諸国の安価な労働力に対抗するため,国内生産拠点の生産効率を上げるために必要不可欠となって いる。
 国内でも化学プラントや鉄鋼では既に「振動法」や「潤滑油法」といった主に回転機のような動機器へのCBMの適用はあるが,電気設備のような静機器に対してはTBM(Time Based Maintenance)にたよっているのが現状である。
 設備の温度や熱の動態は,CBMにおいて最も重要な要素とおもわれる。何故ならば,物質の温度を変化させる要因としてジュール熱・誘導発熱・高調波の重 畳・摩擦熱・応力発熱・弾性熱・輻射熱・燃焼熱・反応熱・断熱圧縮/膨張熱等があり,これらの物理現象は設備の状態と密接にかかわっているからである。
 本報では,発電設備のCBMにおける赤外線診断技術の導入について述べる。

 

 

論文

連続計測AE波形の解析によるSUS304薄板試験片の塩化物液滴SCCモニタリング
  伊藤 海太/山脇  寿/升田 博之/志波 光晴/榎   学

 

SCC Monitoring of Chloride Droplets on Thin SUS304 Plate Specimens
by Analysis of Continuous Recorded AE Waveform

Kaita ITO*,Hisashi YAMAWAKI**,Hiroyuki MASUDA**
Mitsuharu SHIWA** and Manabu ENOKI*


Abstract


An acoustic emission (AE) monitoring method for chloride stress corrosion cracking (SCC) in SUS304 stainless steel has been proposed to investigate this mechanism. The method combines a droplet SCC monitoring system and an AE system capable of continuous waveform data acquisition and storage. MgCl2 droplets were placed on a thin plate specimen of SUS304 to induce SCC. Since detected AE waveforms had small amplitudes with large noises, a means of noise filtering was developed to extract these features, based on time-frequency analysis of the continuous waveform. About 200 AE events were taken out after filtering. SEM observation showed that the AE source was attributable to transgranular SCC which cannot be detected by conventional AE monitoring systems. Therefore the new method demonstrated high sensitivity for the SCC monitoring.

Keyword Stress corrosion cracking, Droplet, Acoustic emission method, Continuous recording, Time-frequency analysis



1. 緒言
 応力腐食割れ (Stress Corrosion Cracking,SCC) は金属材料の主要な破壊要因の一つとして従来から知られているが,その発生メカニズムには依然として未解明の部分が多く残されている。このことは,海塩粒 子に含まれる塩化物イオンの強い影響によりSCCの誘発が著しい臨海部の工業設備,中でも無塗装かそれに近い表面状態で多用されるステンレス鋼にとっては 重大な問題であるため,早期の解明が望まれている。
 本研究では,このSCCの試験装置として升田が開発した液滴SCC試験装置1) を利用した。本装置は従来のU-bend法や試験片を溶液中に設置する手法と異なり,弾性範囲内の引張応力を受ける試験片の表面に液滴が付着しているとい う,実環境により近い条件での試験が可能である。また,短時間のうちに高い再現性をもってSCCを発生させることができ,さらにSCC発生後の試験片表面 を直接高倍率で観察できるという優れた特徴も持っている。このため,本装置と,広範囲の形状像と表面電位分布像を同時に取得できるスーパーケルビンフォー ス顕微鏡 (Super Kelvin Force Microscope,SKFM) を用いて,ナノオーダの電気化学的アプローチによるSCCメカニズムの解明が進められている2)。
 アコースティック・エミッション (Acoustic Emission,AE) 法は,材料内部における微小欠陥の生成および進展をin-situに捕捉できるユニークな方法として知られている3)。このAE法を利用したSCC計測に 関しては竹本らのグループにより詳細な報告4)−6)がなされており,既に腐食電位揺動 (Corrosion Potential Fluctuation,CPF) とAE計測結果との間に良い対応が見られることや,AE原波形の解析によるSCCの要因やサイズの評価などが報告されている。しかし,微小なSCCの進展 に伴うAEは極めて弱い信号であるため計測は容易でなく,粒界型SCCではAEが検出されるが,孔食を経由しない粒内型SCCではAE事象が検出されない と報告されている4),7),8)。
 そこで本研究では,SCCの発生メカニズムの解明に有用な新しい試験法として,前述の液滴SCC試験装置と伊藤らが開発したAE波形連続計測装置 9),10) を組み合わせたモニタリング手法を提案する。本AE計測装置は試験中の全波形を記録しているため,計測後に波形を観察してその特徴を把握したうえで,最適 なノイズフィルタやAE事象抽出条件などを設定して解析を行うことができる。このため,試験前の予測や反復試験による試行錯誤によって設定した条件に適合 したAE事象しか得られない従来の装置よりも,微弱なAE事象を検出しやすいという特長を有している。

 

 

資料

ICNDTに出席して 加藤 光昭 九州工業大学名誉教授

 

Report on Attendance at ICNDT
Mitsuaki KATOH Kyushu Institute of Technology, Professor Emeritus

キーワード ICNDT,上海,ガイドライン,ACADEMIA NDT International,ワークショップ

1. はじめに
 第17回世界非破壊試験会議(WCNDT)が2008年10月25日から10月28日まで上海(中華人民共和国)で開催されたのに併せて,第32回及び 第33回国際非破壊試験委員会(ICNDT)が開催された。当初は,北京で開催されたオリンピックの直後に開催される予定であったが,四川省で起きた大地 震などの影響もあり,中国政府の指示によって延期されたものである。上海は租界地として発展した歴史をもっており,人口は約1370万人で,面積は群馬県 とほぼ同じ6340km2である。経済規模は中国最大の都市で,上海市一人当たりのGDPは,中国一人当たりの約3.6倍あるという。高層ビルの数も東京 をしのいでいる。現在も発展を続けており,まさに摩天楼が林立しているといっても過言ではないが,少し路地に入ると昔ながらの市民の生活風景が見られ,お 世辞にも美しいとはいえない。上海浦東国際空港から市内までは45km程度で,車であれば渋滞がなければ40〜50分で行くという。便利なのはもちろんリ ニアモーターカーで,地下鉄2号線の龍陽路駅まで(約30km)を約8分弱で結んでいる。
 会場は,上海展覧中心で,中ソ友好ビルとして1955年に建てられ,展示場として使用され,1984年に現在の名称に変更されたという。図1に,開会式 が開催された友好ホールの外観を示す。この建物の表玄関は友好ホールの反対側であるが,そちらは大会の期間中は開放されなかった。
 筆者は,WCNDTと併せて開催された国際非破壊試験委員会(ICNDT)に主に出席する機会を得たため,その概要及び関連行事について紹介する。

 

 

第17回WCNDT参加報告  井上 裕嗣 東京工業大学

 

Report on the 17th WCNDT
Hirotsugu INOUE Tokyo Institute of Technology

キーワード WCNDT,ICNDT,ChSNDT,ISO/TC135



1. はじめに
 第17回WCNDT(17th World Conference on Non-Destructive Testing)は,2008年10月25日から28日の4日間に亘って中国の上海で開催された。WCNDTは,ICNDT(International Committee for Non-Destructive Testing)が開催する国際会議で,NDT分野では世界最大である。表1に示すように,1955年にベルギーのブリュッセルで第1回が開催され,前回 は2004年にカナダのモントリオールで開催されている。
 今回のWCNDTは,中国無損検測学会(Chinese Society for Non-Destructive Testing, ChSNDT)が中心となって開催された。当初は8月27日から30日までの予定であったが,元々北京オリンピックの直後であった上に,5月12日に発生 した四川省を震源地とする大地震によって大幅な混乱が予想されたため,中国政府からの依頼もあって2ヵ月延期された。このことによって,一部にはやむを得 ず参加を取止めた方もいたようだが,幸い気候の面では過ごし易い時季となった。
 会場は,上海市内の中心部にある上海展覧中心(Shanghai Exhibition Center)であった。図1に示すように,高くそびえる尖塔を中心として左右対称に建物が配置されており,典型的なスターリン様式とのことである。 1955年3月に中ソ友好ビルとして建設されたもので,敷地面積は93,000m2,建築面積は80,000m2あり,42の展示室,100以上の会議室 やオフィス等々を有する巨大な施設である。建物内部が比較的複雑である上に,開催前日には直前の別行事の撤収作業とWCNDTの準備作業が並行して混乱し ていたため,参加登録受付にたどり着くのに多くの人が苦労していた。
 参加登録者は,50ヵ国から764名(うち中国は234名)とのことである。これは,第16回(カナダ)の約1,420名(うちカナダは約1,000 名)1),第15回(イタリア)の1,000名超(うちイタリアは397名)2)に比べてやや少ないようである。この原因は不明であるが,延期のために参 加を取止めた方がいたこと,展示会のみの来場者は参加登録者に含まれていないことなどが関係していると思われる。
 JSNDIから派遣された参加者は,加藤光昭(ICNDT日本代表),大岡紀一(APCNDT会長),坂眞澄(JSNDI会長),井上裕嗣 (APCNDT2009実行委員長),阿部節矢(JSNDI事務局長)及び大岡昌平(JSNDI学術部)の6名であった。また,ISO/TC135関連で は,羽田野甫(ISO/TC135議長),土屋武雄(ISO/TC135幹事)及び兵藤行志(ISO/TC135/SC8日本代表)の各氏が参加した。そ のほか,尾上守夫氏(ICNDT PGP名誉メンバー)を初め多数の日本人参加者があった。
 以下では,WCNDTの内容を報告する。なお,10月24日と27日にはICNDTのGeneral Assembly(2回)とWorkshopが開催されたが,これらについては別稿の加藤光昭氏の報告をご覧いただきたい。また,会期中に ISO/TC135/SC7/WG7及びISO/TC135/SC8の会合がそれぞれ開催されたが,これらについても別途報告がなされるので,本稿では割 愛させていただく。

 

 

to top