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機関誌

2003年度バックナンバー巻頭言12月

2003年12月1日更新

このページの目次

巻頭言

ガイド波特集号の企画にあたって  超音波分科会主査 川嶋紘一郎

 超音波分科会担当の機関誌特集として,分科会幹事で検討を行った結果,ガイド波(Guided wave)を採り上げることになりました。通常の超音波探傷・評価では,波長に比べて十分大きな測定対象物を扱うので,数学的には無限媒体中を超音波が伝搬するとみなし,縦波,あるいは横波だけを考えます。このとき理想的には,ある一点で励起された波は球面波として広がるので,波のエネルギーは1 / r 2振幅は1 / r(r:距離)に比例して減少します。これに対し,薄板,薄肉円管を伝搬する波(ガイド波)のエネルギーは壁面内に閉じ込められるので,低減衰で遠距離伝搬させることができます。この特長からガイド波は,配管,レールなど長大構造物の非破壊検査への応用が期待されています。また,一般の超音波探触子を用いた配管の腐食検査(肉厚測定)は点測定のため,配管全面の測定には多大の時間を要するのに対し,ガイド波では大きな伝搬路程長にセンサー幅を掛けた面領域を一度に検査できるので,検査時間の大幅な短縮が可能,人が近づくことのできない箇所の遠隔検査が可能という利点があります。  ガイド波とバルク波(縦波・横波)との最大の違いは,ガイド波は板の表面に垂直な応力が存在しないので,代表的なガイド波である板波(Lamb波)を例にとり,その伝搬方向をx,板厚方向をyとして説明すると,板の両表面でsyとtxy = 0という境界条件を満足する固有値に対応するモードの波だけしか伝搬しないということです。ガイド波には,弦や梁の固有振動数や振動モードと同様に複数のモードが存在します。分散性(伝搬速度の周波数依存性)を伴うこれら複数のモードの波が同時に伝搬するので,受信時間波形からモードを識別すること,特定モードの波の振幅を求めることが容易でないため,従来,ガイド波の実構造への適用がそれほど進んでいませんでした。最近,コンピュータを用いた超音波波形の処理,さらにガイド波伝搬の数値解析とその結果の可視化が発展するとともに,日本国内でもガイド波を用いた配管の広領域検査システムの開発も進められるようになりました。ガイド波法は超音波検査では比較的新しい分野であり,本特集では今この分野を積極的に発展させようとしておられる若い方々に執筆をお願いしました。ガイド波法自体がまだ発展途上の技術であり,未解明,未検討の部分も多いのですが,今後UTの不可欠な分野になると想定されますので,非破壊検査の関連する多くの方々に関心を持っていただきたいと思います。最後に,執筆者の方々ならびに本企画の取りまとめを担当された平成14年度超音波分科会運営WGリーダー・高田一氏に感謝いたします。

*名古屋工業大学(名古屋市昭和区御器所町)機械工学科教授
  名古屋大学大学院博士課程修了(1970)。機械工学科において材料力学,弾性波動伝搬の授業。超音波を用いた非破壊材料診断の研究に従事。

 

解説 ガイド波による探傷

非破壊計測のためのガイド波の基礎と展望
  西野 秀郎 東北大学大学院工学研究科

Fundamentals and Applications of Ultrasonic Guided Waves for Nondestructive Inspection
Hideo NISHINO Tohoku University
キーワード ガイド波,円筒波,ラム波,レイリー波,弾性表面波,速度分散,レーザー超音波



1. はじめに  一般にガイド波とは,物理的な境界により形成された導波路に沿って伝搬する波動のことである。ガイド波は,伝搬モードが無数に存在し,それぞれが速度分散を持つため,取扱い上厄介な問題も発生するが,エネルギーの散逸が少なく遠方まで伝搬可能なため,利用上大きなメリットを有している。この特徴から,超音波の応用以外として,光波では光ファイバーが,電波(マイクロ波)では,導波管等が信号伝送路として身近に広く使われている。本題である超音波のガイド波1)−5) では(以下,単にガイド波と称する時は,超音波のガイド波を示す),材料表面を伝搬するRayleigh波や,板を伝搬するLamb波や SH波が非破壊計測において重要な役割を演じている。さらに,層状の材料を伝搬する一般化Lamb波やLove波,あるいは Stonley波等も存在する。上記のガイド波に加え,本特集号発行の直接の背景ともなっている,パイプを伝搬するガイド波(円筒波)の基礎的な研究は,1959 年にGazis6)によって理論が示されている。1963 年には,実験的検証がFitch7)によって報告され,低次モードの速度分散関係において,理論と実験の一致を示している(各伝搬モードの詳細は,3−3を参照)。その後 1979 年に,Silk らにより,L(0, 1) と F(1, 1) に関する初歩的な実験が行われ,L(0, 1) に比べ F(1, 1)の励振効率が大きいことを示している8)。一方,近年の本格的な非破壊検査のための基礎研究は,1990年代にはいってから英国のCawleyらと,米国のRoseらにより活発に行われており,(1)速度分散が小さなL(0, 2)モードを用いたパルスエコー法による探傷方法の提案9),(2)進行波励振方法を利用した単一指向性のL(0, 2)モードの選択的励振法の提案9),(3)円筒波の実配管での長距離伝搬の実証9),(4)円周方向に適切に配置したセンサーによる高次曲げモードの選択的励振10), (5)欠陥によるL(0, 2)からF(1, 2)へのモード変換11),(6)L(0, 2)モードの周方向欠陥による反射率が欠陥長さに比例すること12),(7)パイプ外周の環境により漏洩減衰が増大すること13)−15),等が報告されている。2000年に入りわが国でも,円筒波の基礎物理メカニズムの再定義16)や,任意断面形状の長尺材料を伝搬するガイド波のシミュレーション手法の研究17)など,基礎的な研究が行われ,非破壊検査のための素地が整いつつある。応用研究としては,複数モードの円筒波を用いた AE の音源位置評定法18),繊維強化複合材料で作製されたパイプの速度分散曲線を簡易的に求める方法の提案19),配管エルボ部での波束の集束現象を用いた計測への応用20),円筒波の第一到達波の群速度から,肉厚の平均値を計測出来る技術21)など,先駆的な研究も行われている。  本稿では,非破壊計測で用いられるガイド波に関して,その物理を少しかみ砕いて解説する。さらに,Rayleigh 波,Lamb 波,そして円筒波に焦点を充てて,それぞれの特徴や,相互の関係を示す。最後に,レーザー超音波法を用いて励起検出した超広帯域 (40 kHz – 40 MHz) 円筒波の時間波形と,その特徴を示す。

 

 

ガイド波伝搬の数値計算シミュレーション
   林  高弘 名古屋工業大学大学院工学研究科

Numerical Simulation of Guided Wave Propagation
Takahiro HAYASHI Faculty of Engineering, Nagoya Institute of Technology
キーワード ガイド波,半解析的有限要素法,シミュレーション,可視化



1. はじめに  平板やパイプ,鉄道レールなどの細長い棒状材料表面にハンマーや超音波振動子などで振動を加えると,波長の100倍から1000倍のオーダーの距離を長手方向に伝搬する音響モードが発生する。このような波動形態はガイド波と呼ばれ,長大な構造物の高速非破壊評価を行う手段として近年注目を集めている。特にパイプ中を数メートルから数百メートル伝搬が可能であることが実験的に求められており,長距離パイプの高速診断や,埋設管を掘り起こさずにそのまま検査する手段として大きな期待を集めている1)−6)。しかしながら,ガイド波は一種の共振モードであるため,同じ周波数帯に多くのモードが存在し,それぞれのモードは周波数によって伝搬速度の異なる分散性を示すなど,非常に複雑な挙動で伝搬する。そのため,受信波形を解釈するだけでも非常に緻密な理論に基づいた解析を必要とし,我々ガイド波の研究者の間でも同じ波形を見て解釈が分かれることは多い。このような場合にガイド波伝搬の数値解析および数値計算シミュレーションは非常に大きな役割を果たす。  超音波伝搬のような動弾性問題の数値計算手法として,差分法(FDM)7),有限要素法(FEM)8)−10),境界要素法(BEM)11)−13)が広く用いられてきた。差分法は偏微分方程式である波動方程式をそのまま差分化して解いていくため,理解しやすい反面,曲線(曲面)への適用が困難であることや,境界条件の設定に問題がある場合が多い。有限要素法では,要素をさまざまな形で取ることができるので,差分法よりも汎用的であり,多くの汎用ソフトウェアが開発されている。また要素ごとに材料定数を変えることができるので,複合材料や傾斜材料などを対象とした計算も可能である。境界要素法は,領域周りを囲む境界線(面)を要素で区切り,境界積分方程式に基づき計算を行う。解析次元が1次元下がり,節点数が減るので計算時間が有限要素法に比べて短い。また差分法や有限要素法が領域全体を区切る必要があるのに対し,境界要素法は境界のみの分割であるので初期設定の手間が軽減される。これは初期設定を少しずつ変更して繰返し計算を行う逆問題解析に有効である。また,有限要素法では領域内の要素を非常に細かく分割しなければならなかった鋭角的な亀裂や急激な応力変化のある問題に対して,精度良く計算できる特長を持つ。さらに無限遠方に放射する音響波を取り扱うことができるので,音響問題にしばしば使用される。  このようにさまざまな手法で研究されてきた超音波伝搬数値計算手法であるが,波長の100倍から1000倍の距離を伝搬するガイド波を扱う場合には,節点が膨大な数になるため計算コストの問題が生じる。一般にFDM, FEM, BEMのいずれの手法でも,波動伝搬を正確に表すために1波長に対して少なくとも4節点は必要とされる。長距離伝搬するガイド波を表すためには,伝搬方向に膨大な節点数が必要となり,非常に大きな計算時間とメモリを費やすこととなる。  最近ではこのような大規模計算でも従来型のFEMや市販の汎用FEMソフトウェアを用いることによって,プログラミングの手間を省いて充分な精度の計算結果を出すことができるようになった14),15)。一方で,これらの非常に大きな計算時間と使用メモリを避けるために,ハイブリッド法や半解析的有限要素法のようなガイド波に特化した計算手法が開発されている16)−40)。ハイブリッド法は,Y. Choら16)をはじめとして,M. Koshibaら17)やY. N. Al-Nassarら18)などにより開発・応用されてきた理論解と計算解を組み合わせる手法である。均質一様で損傷のない弾性平板に対して,直交関数展開理論(Normal expansion theory)による解析解を用い,欠陥などの部位に対してのみFEMやBEMを用いるため,計算コストを格段に減少させることが可能となった。半解析的有限要素法は,有限要素法の特殊解法としてY.K. Cheung19),20)によって開発された。長手方向に幾何的形状や材料特性が一定である平板や棒状材料に対して,長手方向の変数分布を直交関数で表すことによって解析次元を1次元下げる手法である。ガイド波への応用は,Dongら21),Kausel 22), Dattaら23)により積層平板中のラム波分散曲線の導出を目的とした研究に始まり,G. R. Liuらによるラム波の過渡的応答波形の導出24),25),N. Rattanawangcharoenら26),W. Zhuangら27)によるパイプ中のガイド波伝搬解析などに見られる。  著者は,これまでガイド波の数値計算をハイブリッド法28)および半解析的有限要素法29)−40)を用いて行ってきた。特に半解析的有限要素法は適用範囲が非常に広く,積層平板29),30),直線パイプ32),34),36),37)曲がり部(エルボ)を有するパイプ33),34),37),38)を対象とした数値計算シミュレーション(任意点の過渡的応答の導出)を実現し,鉄道レールなどの任意断面形状を持つ棒状材料に対して,ガイド波の基本情報である位相速度および群速度分散曲線の理論値を導出した39),40)。今後,半解析的有限要素法はガイド波の数値計算において中心的な役割を果たすと考えている。本報では,半解析的有限要素法について簡単に述べた後,これまでに得られているガイド波伝搬の数値計算結果について示す。

 

 

ガイド波探傷の実用技術
    永井 辰之 非破壊検査(株)  兵藤 雅己  高村 健一 昭和四日市石油(株)


Guided Ultrasonic Testing as a Practical Technology
Tatsuyuki NAGAI Non-Destructive Inspection Co.,Ltd.,  Masami HYODO and Kenichi TAKAMURA Showa Yokkaichi Sekiyu Co.,Ltd
キーワード ガイド波,Torsional-mode,防油堤貫通部,ラック配管,埋設配管,エルボ部,防食テープ



1.  はじめに  石油精製,石油化学等のプラント内には,埋設配管,ラック配管,保温・保冷配管が多数,長距離にわたり敷設されている。こうした配管の腐食を既存の技術で検査するためには,多くの時間を要するとともに,掘削,足場設置,保温材脱着等の附帯工事が必要となり,コスト高が問題となる。本解説では,こうした附帯工事を最小限にして,一度に長距離にわたり配管の検査が可能な,ガイド波を用いた長距離超音波探傷技術の実際のプラントにおける適用事例を紹介し,その特徴,問題点を明らかにする。

 

 

ガイド波探傷システム
   亀山 俊平/三須幸一郎/和高 修三 三菱電機(株)  田中 良秀/小池 光裕/杉元 幸郎 湘菱電子(株)

Ultrasonic Test Instrument Using Guided Wave Shumpei Kameyama, Koichiro Misu, Shusou Wadaka Mitsubishi Electric Corporation
Yoshihide Tanaka, Mitsuhiro Koike, and Sachiro Sugimoto Shoryo Electronic Corporation
キーワード パイプ,ガイド波,探触子アレー,信号処理



1. はじめに  最近,大規模パイプラインなどにおいて長距離で広範囲にわたってパイプを検査する技術が求められており,ガイド波を用いた探傷方式が使用され始めている1)−3)。ここではガイド波探傷に必要な機能を述べ,これらの機能を備えたシステムを紹介する。このシステムはパイプ外周に沿って複数個の探触子を配置した探触子アレーと,これによって得られる受信波形データを波形処理する機能を有している。このシステムを用いた実験結果を示すとともに,これらを参照してシステム動作原理を説明する。なお,ガイド波のモードの名前は参考文献4)にしたがって記述する。

 

 

 

円管周方向に伝搬するガイド波による配管等の非破壊評価
   永溝 久志 三菱化学エンジニアリング(株)  村瀬 守正 名古屋工業大学大学院工学研究科

Non-Destructive Evaluation of Pipes by Circumferential Guided Wave Hisashi NAGAMIZO Mitsubishi Chemical Engineering Corporation and
Morimasa MURASE Nagoya Institute of Technology
キーワード ガイド波,探触子,腐食,配管,板波



1. はじめに  化学プラントの配管では,配管架台との接触部などにおける隙間腐食,内容物の流動による侵食腐食などが発生するので,減肉を正確に評価し,内部流体の漏れを未然に防ぐことが重要である。腐食による減肉測定には超音波厚さ計が広く用いられているが,極めて狭い範囲の点測定であるため,広範囲の減肉状況を把握するためには多大な時間と労力を必要とする。このため,稼働年数が長いプラントでは配管全体を効率的に検査する方法が求められている。最近では,海外において円筒ガイド波による配管長手方向のガイド波検査法1)が開発され,国内でも検証例が報告2)されている。一方,著者らは配管架台接触部の腐食検査のため,円管周方向に超音波を伝搬させ,配管を一周した透過波の振幅変化により外面腐食深さを推定する方法(以下,円管周方向横波透過法と称す)を考案し3),その波の伝搬挙動を明らかにした4)。また,この方法を内部に液体が満たされた円管に適用した場合,円管内面から液体中に伝搬し再び円管内面に到達した縦波が横波にモード変換後円管壁を伝搬することにより励起される遅れエコーが検出できる5)こと,それを用いて円管内面の腐食程度を識別6)できることを明らかにした。しかし,平面圧電素子を樹脂製楔に貼付けた通常の円管用斜角探触子では,円管外周上の位置に依存して楔から円管への入射角が変化するため,円管断面内に屈折角の異なる超音波ビームが励起されるので,半径方向及び周方向位置により超音波の振幅が変化する。このため,同一の人工欠陥に対する検出感度が半径方向及び周方向位置より異なるという問題が残っている。この問題の解決には,円管断面のいずれの位置に置いても横波の振幅(エネルギー)がほぼ等しくなるように伝搬させればよいと考えられる。そこで,本解説では,楔から円管外面に入射する超音波の入射角が等しくなる探触子を試作し,円管周方向に横波を伝搬させることにより,溝状欠陥の検出感度が改善され,このときに円筒ガイド波が励起されることを実験により検証した結果を紹介する。

 

 

 

連載講座 第1回「鋼材と損傷・破壊」

破壊力学による寿命予測
  小林 英男 東京工業大学大学院


Life Prediction Based on Fracture Mechanics
Hideo KOBAYASHI Tokyo Institute of Technology
キーワード 破壊力学,寿命予測,余寿命予測,き裂,破壊靭性,疲労,応力腐食割れ



1. 破壊力学の目的  き裂のない平滑試験片の降伏応力,引張強さ,疲労強度などの強度特性は,いずれも応力(力/断面積)で表示する。機器の構造設計では,使用中に生ずる応力が,これらの値を超えないように制限する。しかし,試験片や部材にき裂がある場合,破壊強度はき裂寸法の増大に伴い低下する。すなわち,き裂がある場合の破壊強度特性は,応力だけではなく,応力とき裂寸法の組合せで表示できると考えられる。  さらに重要なのは,き裂がある場合の破壊強度特性が,平滑試験片の破壊強度特性と逆の傾向を示すことである。図1を参照して,平滑試験片の降伏応力sY または引張強さsB(正確には,後述する有効降伏強度sEY)は,A鋼の方がB鋼よりも高い。すなわち,A鋼は高強度鋼,B鋼は低強度鋼である。一方,それぞれの鋼に同じ寸法のき裂がある場合,破壊強度scはB鋼の方がA鋼よりも高くなる。破壊力学では,B鋼を高靭性鋼,A鋼を低靭性鋼という。強度と靭性は相反する特性であり,A鋼が高強度・低靭性鋼ならば,B鋼は低強度・高靭性鋼となる。したがって,引張強さの高い材料を用い,十分な安全係数を見込んで設計した機器でも,部材にき裂がある場合には,引張強さの高い材料を用いたことは裏目に出て,部材は逆に破壊しやすいという結果になる。破壊力学の目的は以上に述べたとおり,き裂がある場合に,試験片と部材の破壊強度特性を表示する(応力とき裂寸法の組合せの)パラメータを探し,それを用いて機器の破壊強度の評価を行うことにある。

図1 き裂がある場合の破壊強度特性
図1 き裂がある場合の破壊強度特性 

 

 

 

 

資料

非破壊試験によるコンクリート品質,厚さ,鉄筋かぶり・径の計測に関する研究 第2報 電磁波レーダ法および衝撃弾性波法
  非破壊試験によるコンクリート品質,厚さ,鉄筋かぶり・径の計測に関する研究委員会


QStudies on Measurements for Concrete Quality, Thickness, Cover and Diameter of Re-bars in RC Members
Part 2 Results of Electromagnetic Wave and Impact Elastic Wave Method
Research Committee for Studies on Measurements for Concrete Quality, Thickness, Cover and Diameter of Re-bars in RC Members
キーワード コンクリート構造物,検査,電磁波レーダ法,衝撃弾性波法,伝搬速度,厚さ,かぶり,強度



1. まえがき  第1報1)の超音波法に引き続き,電磁波レーダ法(以下,単にレーダ)による電磁波速度(または比誘電率),鉄筋のかぶり厚さ,部材厚さの求め方,衝撃弾性波法(以下,単に弾性波)による弾性波速度,部材厚さ,強度の求め方について検討した結果を報告する。

非破壊試験によるコンクリート品質,厚さ,鉄筋かぶり・径の計測に関する研究委員会委員
非破壊試験によるコンクリート品質,厚さ,鉄筋かぶり・径の計測に関する研究委員会委員 

 

 

論文

疲労損傷過程における実時間超音波測定のための局所水浸法の開発
   閔  小華/加藤  寛/斎藤 博子/蔭山 健介


Development of Local Immersion Method for Real-time Ultrasonic Measurement in Fatigue Process
Xiao-Hua MIN*, Hiroshi KATO**, Hiroko SAITO** and Kensuke KAGEYAMA**
Abstract

A local immersion method of ultrasonic measurement was developed using a water bag for real-time measurement in fatigue testing. Influence of bag material and couplant on the ultrasonic waveform was examined. Using a water bag made of latex rubber and machine oil as the couplant, the ultrasonic waveform measured by the local immersion method was in good agreement with that measured by the conventional immersion technique. During one loading cycle of the low-cycle fatigue testing, the ultrasonic waveform was measured with a probe generating a longitudinal wave of 20 MHz at the center of a specimen made of aluminum alloy ( A2024-T3 ) using the local immersion method. Measured waveforms were analyzed by Fast Fourier Transformation (FFT) to obtain ultrasonic parameters. During one cycle in an early stage of the fatigue testing, these parameters changed sinusoidally with time. These changes were discussed with sinusoidal change in focal position of the probe following the loading cycle.
Key Words Non-destructive testing, Local immersion method, Water bag, Low-cycle fatigue,Real-time measurement, Ultrasonic measurement



1. 緒 言  超音波測定法は欠陥検出に多く用いられてきているが,同時に材質評価にも有効であり,この立場での利用も多くなされている。このような測定の多くは,探触子を直接,試験体に接触させる直接接触法によるか,試験体を水中に置き,探触子を水に接触させて測定する水浸法によっている。試験体内部の任意の位置において欠陥検出や材質評価などを行う場合には,超音波を検出位置に集束させる必要があるが,試験体によっては水中に置くことができないものも多く存在している。例えば,大型構造物などには水浸法は適用できず,特別な工夫1)がなされている。  探触子によっては接触用であっても探触子先端に集束用コーンを取り付けたものも市販されているが,集束位置が固定されており,任意に集束位置を変更することができない。また,フェーズドアレイ探触子2)によれば任意の位置への集束が可能であるが,コスト的な問題が残る。また,試験体に探触子を直接接触させない非接触法として,EMAR3),4),5)やレーザー超音波法6)などが知られている。EMARは,超音波減衰を非接触で監視する電磁音響共鳴法であり,集束が困難である。レーザー超音波法は材料表面にレーザーを照射して超音波を励起し,伝播した超音波を

 

 

原稿受付:平成15年3月12日
 埼玉大学大学院理工学研究科(さいたま市桜区下大久保255)Graduate School of Science and Engineering, Saitama University
 埼玉大学工学部機械工学科(さいたま市桜区下大久保255)Department of Mechanical Engineering, Saitama University

 

PVDFフィルムを用いた塗装構造部材の応力モニタリング
   藤本由紀夫/新宅 英司/田中 義和/Gang LIU

Stress Monitoring of Coated Structural Members Using PVDF Film
Yukio FUJIMOTO*, Eiji SHINTAKU*, Yoshikazu TANAKA*and Gang LIU*
Abstract
An efficient and simple stress monitoring method of coated structural members using PVDF film and an electrostatic voltmeter of non-contact type is proposed. PVDF film is a piezoelectric material made of polymer which can be used in strain sensing. An electrostatic voltmeter of a non-contact type can accurately measure the surface potential on PVDF film. In the proposed stress monitoring method, PVDF films are first adhered onto the surface of a structural member. Then the surface is coated with paint. The electric potential of the PVDF film is measured by placing a probe of the electrostatic voltmeter close to the coated surface. The relationship between stress components of structural member and the measuredelectric potentials can be derived based on the piezoelectric constitutive law. Thismeasurement method needs no writing for the PVDF film, so that multi-point stress monitoring can be easily achieved.
Key Words PVDF film, Piezoelectric constitutive law, Stress meaasurement, Coated structural member,Electrostatic voltmeter, Structural monitoring



1. 緒言  構造解析技術や最適化技術が進歩する一方で,構造物に作用する外力の把握にはいまだ精度向上の余地が大きい。このため,機械・構造物の安全性評価や維持管理において,さらに実機情報を将来の設計改善にフィードバックするために,構造モニタリングによる情報収集の必要性が認識されるようになった。  構造モニタリングの一つに応力モニタリングがある。応力モニタリングには従来ひずみゲージが多く用いられてきたが,最近では多数部位の応力測定が望まれるようになった。このため,光ファイバーを用いた線上の応力分布測定1)や,光学手法による面上の応力分布測定2),小型の応力履歴測定装置3)による多点応力測定などが注目されている。  ところで,機械や構造物は一般に塗装が施されるが,塗装は応力モニタリングの弊害になることが多い。ひずみゲージを用いたモニタリングでは,塗装に電気配線を通す穴が必要になり,この部分が塗膜劣化の原因になりやすい。また,電気配線は長期モニタリングにおいて構造物の機能や外観に影響することがある。  勝見ら4)は高分子圧電材料であるPVDFフィルムをひずみ感知センサとして部材に接着し,その表面電位を非接触方式の表面電位計を用いて計測することにより,部材表面の応力分布測定が可能なことを示した。筆者ら5)も同様の方法で軟鋼平滑材および切欠き材の応力測定を行った結果,良好な精度で応力分布が測定できることを確かめた。  振動容量方式で距離補償型の表面電位計は,「被測定面と計測プローブの間の静電容量の影響を打ち消して電位計測する」という測定原理6)に基づいている。この測定原理を利用すると,被測定面とプローブとの間に塗膜のような誘電体が存在しても表面電位が測定可能と考えられる。  PVDFフィルムはセラミクス圧電材料と比較して安価で任意形状に容易に加工できる。また,フィルム自身がごく薄いのでその上面を塗装した後は外観にほとんど影響を与えない。従って,PVDFフィルム片を構造物に多数接着した後,塗装を施した状態で構造物を使用し,非接触方式の表面電位計を用いて多点応力測定が実現できれば,応力モニタリングの一手段になると考えられる。

 

 

原稿受付:平成15年3月26日
 広島大学大学院工学研究科(東広島市鏡山1-4-1)Graduate Shool of Hiroshima University, Dep. of Social and Environmental Enginering

 

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