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機関誌

2005年度バックナンバー巻頭言4月

2005年4月1日更新

巻頭言

「非破壊検査におけるPDシステムの国内外の動向」
   大岡 紀一

 国内の原子力発電所における機器・配管などの検査の実施に対応した性能実証(PD:Performance Demonstration)制度の準備に,(社)日本非破壊検査協会が協力することで昨年12月から具体的な準備に取り組んでいる。
 圧力容器,配管などの溶接構造物では溶接金属近傍にひび割れ,SCC(Stress Corrosion Cracking,応力腐食割れ)が発生することがある。軽水型原子力発電用機器の場合,この対策として,2000年に,供用期間中に機器・配管などの設 備の健全性評価と維持を目的とした規格として,クラス1容器・配管の欠陥評価規定を含む「発電用原子力設備規格・維持規格」が(社)日本機械学会から発行 された。ここでは,供用期間中にきずが検出されても,破壊力学の手法などで欠陥評価を行って,きずを有する機器の運転継続の可否と補修・取替えの必要性の 有無を判定することを規定している。維持規格が正しく適用されるためには,ひび割れの定量的な評価技術が不可欠であり,信頼される技術者を資格付けし証明 するPD認証制度が必要になってきている。
 PD認証制度の運用には認証規格の制定が必要で,民間規格としてJSNDIで作成が行われている。ここでは,原子力発電設備の検査に適用することに主眼を置くものの,圧力容器などの溶接構造物にも適用範囲が拡げられる認証規格を目指している。
 そこで,本特集号では「非破壊検査におけるPDシステムの国内外の動向」と題して「国内のPD認証制度への取り組み」,「最新の超音波探傷試験技術と供 用期間中検査(ISI)基準の動向」,「超音波探傷試験によるきず(特にSCC)の検出及び寸法測定に関する教育訓練の効果」及び「海外におけるPDの現 状」を取り上げた。
 まず,「国内のPD認証制度への取り組み」では,PDの認証制度に触れ,当協会内に設立された「PD認証制度準備委員会」の発足経緯及び準備状況など, さらにはNDIS 0603「超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証(案)」の規格作成に関して述べている。次に,「最新の超音波探傷試験技術と供 用期間中検査(ISI)基準の動向」では,維持規格が許容欠陥寸法の概念を取り入れた規格であり,検査に関しては,きずの検出だけでなく,きずの寸法をよ り正確に計測することを要求している。換言すれば,維持規格の適用にあたっては超音波探傷試験(UT)によるきず寸法測定技術(欠陥サイジング技術)の信 頼性にかかっている。したがって,ここでは原子炉再循環系配管(PLR配管)のSCCにおけるUTの取り組み, フェーズドアレイ法やモード変換波法などを用いた最新のUTサイジング技術と供用期間中検査(ISI:In-service Inspection)基準についての動向を紹介している。また,「超音波探傷試験によるきず(特にSCC)の検出及び寸法測定に関する教育訓練の効果」 では,UT測定精度の向上ならびに信頼性向上を目的として行われているUT技術者によるきずの検出及び寸法測定に関する教育訓練における成果の一端につい て具体的に述べている。一方,「海外におけるPDの現状」では,特に米国のEPRI(Electric Power Research Institute)におけるPD制度及び欧州におけるENIQ(European Network for Inspection Qualification)さらにISO(International Standard Organization)TC135(非破壊試験関連の専門委員会)で検討している「Performance Based Qualification and Certification of NDT Personnel」の動向について記述している。
 最後に,本制度に対する会員各位の御理解と制度発展への御協力・御支援をお願いするとともに,本特集号を通して原子力発電設備などの安全性確保への技術的寄与と各種構造物へのPDシステムの展開が図られることを期待したい。

*平成10・11年度(社)日本非破壊検査協会会長,ISO委員会委員長,(社)日本溶接協会(101-0025 東京都千代田区神田佐久間町1-11)参与,工学博士

 

解説 非破壊検査におけるPDシステムの国内外の動向

国内のPD認証制度への取り組み
   戸田 裕己 (社)日本非破壊検査協会 会長

Approach to Performance Demonstration (PD) Certification System in Japan
Hiroki TODA Wakayama university, JSNDI President in 2004-2005
キーワード PD認証制度,改良超音波,き裂高さ



1. PD認証制度準備委員会設立について
 昨年12月1日に「PD認証制度準備委員会」(委員長戸田裕己)が当協会内に設立された。この準備委員会でPD(パフォーマンス・デモンストレーショ ン,性能実証)認証制度を短期間の内に集中的に討議して,平成17年3月末までに規格案の作成,その後のパブリックコメントを経て平成17年度から認証制 度を発足させることを目指している。
 PD認証制度については小林英男前会長が一昨年に新規事業として提案され,当協会内で調査検討が進められてきた。そのころに原子炉のトラブル問題が表面 化したこともあり,平成16年度に入って経済産業省原子力安全・保安院の指導でPD認証制度準備委員会が急遽設立されることになった。PD認証制度の構築 は,中立性,透明性及び関係機関の独立性が確保された委員会で検討するべく関係機関で協議を重ねた結果,JIS Z2305「非破壊試験−技術者の資格及び認証」による認証制度の運営で実績のある当協会内に準備委員会を設置することが決まった。また委員会は,7名の 学識経験者及び関係機関として,原子力安全・保安院,原子力安全基盤機構,電気事業連合会,(財)電力中央研究所,(財)発電設備技術検査協会,(財)電 子科学研究所,(社)日本電気協会,(社)日本機械学会,(社)日本非破壊検査協会からの委員で構成されることになった。
 PD認証制度準備委員会の設立趣旨は,発足時に経産省で発表された広報に説明されており,以下にその概要を記す。
 『配管等におけるひび割れの寸法測定能力を認証するPD認証制度については,総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子炉安全小委員会で了承さ れた報告書「原子炉再循環系配管等の検査への改良超音波探傷試験の適用について」において,「PD制度についても,同制度の中立性,透明性及び関係機関の 独立性が確保される限り,国の認証制度として設ける必要はなく,民間主体で構築,運営されればよい」とし,国の役割として「国は,認証に係る民間規格が適 切であることの確認,PD制度運営関係の委員会等への参加,UTS等の実証試験を通じ蓄積したデータをPD認証における判定基準の検討のために提供する等 によりPD制度が公正かつ適切に運営されるよう関与することが適当」としております。
 PD認証制度は,試験体の調達に多額の費用を必要とする高度な検査技術の確認を行うものである一方,その認証対象は限られることから,単独の機関ではその円滑な実施は困難であります。
 SUS316L系材製の原子炉再循環系配管のひび割れも含めた健全性評価制度が整備され,PD制度の早期発足が各方面から切望されているところでありま す。このため,これを加速させ,前述の中立性,透明性及び関係機関の独立性が確保された制度構築が図られるよう関係機関からなるPD認証制度準備委員会を 発足させることといたしましたので,ご参加をお願いいたします。』

 

 

最新の超音波探傷試験技術と供用期間中検査(ISI)基準の動向
   牧原 善次 (株)日立製作所

The Latest UT Technique & Tendency of ISI Standards
Zenji MAKIHARA Hitachi, Ltd.
キーワード 供用期間中検査,応力腐食割れ,き裂サイジング,超音波探傷試験,モード変換波法,端部エコー法,TOFD法,フェーズドアレイ法



1. はじめに
 国内沸騰水型原子力発電設備(炉内構造物,原子炉再循環系配管(Primary Loop Recirculation : PLR配管))で検出された応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking : SCC)を契機にして,設備の健全性評価と維持を目的とした維持規格1)が導入された。
 維持規格は,許容欠陥寸法の概念を取り入れた規格であり,検査に関しては,きず(欠陥)の検出だけでなく,きず寸法(欠陥寸法)を正確に計測することが 要求される。つまり維持規格適用の成立は,超音波探傷試験(UT)で代表されるきず寸法測定技術(欠陥サイジング技術)の信頼性にかかっていると言える。
 PLR配管でSCCが検出された当初,UTサイジングの信頼性が報道等を通じて問われたことは,記憶に新しいところであり,維持規格の導入に関して大きな障害となった。
 ここでは,PLR配管のSCCにおけるUTの信頼性回復から維持規格の導入に至るまでの取り組み,その成果として確立した最新のUTサイジング技術及び原子力発電設備の維持に関わる基準体系の動向について紹介する。

 

 

デ超音波探傷試験によるきず(特にSCC)の検出及び寸法測定に関する教育訓練の効果
   米山 弘志/杉林 卓也/山口 篤憲 (財)発電設備技術検査協会


Results of UT Training for Defect Detection and
Sizing Technique using Specimens with SCC
Hiroshi YONEYAMA, Takuya SUGIBAYASHI and Atsunori YAMAGUCHI
  Japan Power Engineering and Inspection Corporation NDT center
キーワード パフォーマンスデモンストレーション,超音波探傷試験,応力腐食割れ,技術者教育,端部エコー法,きず高さ測定,供用期間中検査



1. はじめに
 原子力プラントの供用期間中に発生が予想されるきずとしては,オーステナイト系ステンレス鋼(以後,SUS鋼と略す)では疲労き裂及び応力腐食割れ (IGSCC)が主である。原子力プラントに維持基準が適用される1),2)ようになり,ISI等の超音波探傷試験(UT)において,これらのきずの高さ を精度よく測定することが要求されている。しかしながら,従来のUTにおいては,きずの検出及びきず指示長さの測定だけにとどまり,きず高さ測定は行われ ていなかった。そこで,(財)発電設備技術検査協会は,UT測定精度の向上ならびに信頼性向上を目的に,これまで培ってきた豊富なノウハウを活用して,日 本電気協会規格JEAG 4207 – 2004 「軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査における超音波探傷試験指針」及び付録に沿ったUTによるきずの検出及び寸法測定に関する教育訓練を行ってい る3),4)。今回はその成果の一端を紹介する。なお,以後の本文では「きず」「きずの高さ」について,原子力分野で使用されている「欠陥」「欠陥深さ」 と記す。

 

 

海外におけるPDの現状
   笹原 利彦 石川島検査計測(株)  大岡 紀一 (社)日本溶接協会


Present Status of Performance Demonstration (PD) Overseas
oshihiko SASAHARA Ishikawajima Inspection & Instrumentation Co., Ltd. and
Norikazu OOKA The Japan Welding Engineering Society
キーワード 原子力機器,供用期間中検査,技術者教育,認定,超音波探傷試験



1. はじめに
 原子力発電設備においては,その安全性を担保するため定期的に供用期間中検査(ISI:Inservice Inspection,以下「ISI」という)が行われており,このISIでは超音波探傷試験(UT)が主に使用されている。ISIできずが検出された場 合,稼動状態におけるきずの進展を評価し,残存寿命を見極めた上で運転継続の可否を判断するのが合理的であると考えられる。海外ではこの考えに基づ き,1971年に米国で原子力発電プラントの維持規格ASME B&P Code Section XIが規格化された。その後欧州各国でもこの考えが採用されるようになっている。国内でも1970年代から維持規格に関する検討が続けられ,2000年に 日本機械学会より「発電用原子力設備規格 維持規格」が発行されている。
 きずの進展解析により構造物の寿命を評価するためにはその寸法が正しく把握できることが前提であり,維持規格の導入により,きずの検出性に加えて,きず寸法の測定精度とその信頼性が注目されるようになってきた。
 この,きずの検出性と寸法測定精度を担保する手段として主流となっているのが検査における技術の性能実証(PD:Performance Demonstration,以下PDという)である。PDとは「能力の実証」であり,一般的にはISIに使用される超音波探傷装置の性能,検査要領書, および検査員が十分な技量を有していることを証明する仕組みを指している。ここではPDの始まりと推移及び海外におけるPDについて述べる。

 

 

論文

ひずみゲージと弾性論を用いた面内荷重を受ける実構造物薄板切欠き部における疲労き裂検知法
   原田 豊満/野口 博司


Fatigue Crack Detection Method with Strain Gages and Theory of Elasticity
for a Notch of Actual Thin Plate Structures under In-Plane Loading
Toyomitsu HARADA* and Hiroshi NOGUCHI**
Abstract
A practical method is proposed for in-situ fatigue crack detection in actual notched structures. This method is available for cases when the initiation position and propagation direction of a crack are uncertain and the load direction or load mode changes. In the present method, the stress fields near a notch root are estimated, using the general stress function in a polar coordinate system and the stress values obtained from strain gages around the notch root. The stress fields are characterized by the residual stress due to plastic deformation around a fatigue crack. Therefore, not only a propagating crack but also a non-propagating crack can be detected from the characteristic stress field. Moreover, the detection limitation is subject to the relative strength of the residual stress field to an elastic stress field due to loads. The fatigue experiment of a notched specimen of steel was carried out, in which a 0.33mm long crack was detected in a notch whose radius was 12.5mm. Key Words Non-destructive Inspection, Notch, Experimental Stress Analysis, Strain Gage, Theory of Elasticity, Crack Detection, Crack Length, Stress Function, Actual Structure, Stress Contour Map



1. 緒言
 機械や構造物のき裂検知を稼働中に適宜行えば,定期検査のため機械を停止する必要もなく,安全で経済的な保守が可能となる。ところで稼働中の機械や構造 物に適用できるき裂検知法には,光ファイバによる方法1)−4),赤外線熱画像法5)−9),電位差法10),11),AE法12)およびひずみゲージ法 13)−17)等がある。
 そのなかでひずみゲージ法には,以下の優れた特徴がある。
(1)材料の導電性等に関係なく,適用できる。
(2)静的荷重,動的荷重のいずれにおいても適用できる。
(3)テレメータ等を用いれば,回転体にも適用できる。
(4)取り扱いが簡単で,測定装置が比較的安価であり,広く一般に普及している。
 これらの特徴を持つひずみゲージをき裂検知に用いれば,その特徴をそのままき裂検知法の特徴にすることができると考えられる。そのため,これまでにひずみゲージを用いたき裂検知法が,種々研究されてきている13)−17)。
 しかしひずみゲージ法は,点のひずみを測定する方法であるため,き裂検知においては,応力状態が既知でしかも変化しないことにより,き裂の発生箇所や進 展方向が,あらかじめ特定できることが前提となる。ところが実際の構造物では,荷重や構造全体の複雑さ,想定外の事態発生の可能性および運転条件の変更等 により,この前提は必ずしも成り立たない。このような場合には,従来のひずみゲージ法によるき裂検知13)−17)では,信頼できる検知結果は期待でき ず,せっかくのひずみゲージ法の特徴が,き裂検知においては活かされないこととなる。
 そこで本研究では,ひずみゲージと応力関数を併用して,領域の応力状態を把握することにより,ひずみゲージ法の欠点を補い,その優れた特徴を活かすことができる,き裂検知法の構築を目的としている。
 また疲労き裂は,切欠き等の応力集中部から発生することが多いので,応力集中部における疲労き裂検知は,きわめて重要である。
 以上のことから本研究では,切欠き縁周辺のひずみゲージ出力と極座標系の一般応力関数を用いて,切欠き部の境界条件を決定し,切欠き部全体の応力状態を 推定することにより,実構造物の切欠き部の疲労き裂を,き裂検査時のみのひずみデータから,稼働中に検知する方法を提案し,その適用限界と有効性について 議論する。

原稿受付:平成16年3月3日
 久留米工業高等専門学校(福岡県久留米市小森野1-1-1)Department of Mechanical Engineering, Kurume National College of Technology
 九州大学大学院工学研究院(福岡市東区箱崎6-10-1)Department of Mechanical Engineering Science, Faculty of Engineering, Kyushu University

 

厚肉材に渦電流探傷法を適用するための新しい励磁手法の提唱
   ラディスラブ ヤノーセック/陳  振茂/遊佐 訓孝/宮  健三

A Novel Eddy Current Excitation System to Evaluate Defects in Thick Structures
Ladislav JANOUSEK*, Zhenmao CHEN*, Noritaka YUSA* and Kenzo MIYA*
Abstract
This paper proposes an innovative excitation system for eddy current testing. The key idea of the system is the suppression of eddy currents on the surface of specimens. A new eddy current probe consisting of four coaxial rectangular tangential exciter coils driven by phase-shifted AC currents and a pickup coil is fabricated as the basis of the system; then numerical simulations and experimental verifications are performed. It is demonstrated that the new probe provides 20% difference between signals due to a 15 mm deep notch and those due to a 20 mm deep one although an excitation frequency of 10 kHz is applied. In contrast, a conventional eddy current probe driven with the same frequency showed as little as 1% difference between signals due to the two notches.
Key Words Non-destructive testing, Eddy current probe, Thick materials, Sizing, Depth evaluation



1. 緒言
 渦電流探傷法は表面傷に対して高感度であり,なおかつ高速な探傷を行うことの出来る非破壊検査手法であるが,欠陥形状に関する情報が探傷信号から直接的 には得られるものではないため,従来は主として欠陥位置特定および欠陥長さ同定のための検査手法として用いられてきた。
 しかしながら,数値解析によって渦電流探傷信号から欠陥形状を推定するための研究が近年数多く行われてきており1),これまでのところ,軽水炉蒸気発生 器伝熱管に発生した応力腐食割れの形状再構成についても成功例が報告されている2)。そのため現在では,適切なアルゴリズムを併用することで,渦電流探傷 法は欠陥形状推定のための検査手法としても用いることが出来るものであると認識されるようになってきた。
 しかしながら,現状では薄肉材以外に対しては,渦電流探傷法を検出された欠陥の形状推定までも含めた非破壊検査手法として用いることは困難であるという 問題がある。これは,渦電流探傷時に試験体に誘導された渦電流の強度が,探傷側表面にて最大となり,深部にゆくにつれて指数関数的に減衰するという特徴の ためであり,そのため,ある程度以上の深さの欠陥に対しては,欠陥深さの変化に対する探傷信号の変化の度合が測定出来ない程小さくなり,信号から深さを定 量的に評価することが不可能となってしまうのである。
 試験体内部に誘導された渦電流の減衰の程度は,主として試験体の電磁気的特性および励磁周波数によって決定され,低周波である程渦電流は試験体のより深 い部位にまで浸透することが知られている。しかし,渦電流探傷を低周波を用いて行った場合,信号の強度の低下および位相分離特性の劣化などの問題が生じ る。そのため,欠陥形状推定のために用いることを考えると,現実的には1kHz程度までにしか励磁周波数を下げることは出来ず,周波数を下げることで深い 欠陥に対する定量的評価能を向上させることには限界がある。実際にはさらに励磁コイルの形状や励磁コイルからの距離も渦電流の減衰の度合に影響を与えるも のであるが 3),それらの検討による改善は微々たるものである。
 本研究は以上のような背景により実施されたものであり,極低周波を用いること無くとも試験体深部の情報を取り出すことが出来る新型渦電流探傷プローブの 開発に関するものである。現状では欠陥の形状評価には主として超音波探傷法が用いられているが,超音波探傷法は検査に要する時間が比較的長く,例えば原子 力プラントの様に検査期間の短縮がコストに直結するような構造物においては,必ずしも望ましい検査手法ではない。厚肉構造物に発生した深い欠陥の深さの定 量的評価を行うことが出来るような渦電流探傷プローブが開発されたのであれば,渦電流探傷法を欠陥評価のための検査手法としてより積極的に用いることが出 来,その経済的意義は非常に大きいと言える。

 

原稿受付:平成16年7月6日
 普遍学国際研究所(東京都台東区池ノ端2-7-17-7F)International Institute of Universality

 

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