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機関誌

2023年9月号バックナンバー

2023年10月24日更新

巻頭言

「会長再任にあたって」

井原 郁夫

昨年度に続き,2023 年度の会長を務めることになりました。再任にあたりご挨拶を申し上げます。

日本非破壊検査協会は昨年,創立70 周年を迎えました。そのような歴史と伝統のある協会の会長職を務めるにあたり,改めてその重責に身の引き締まる思いです。会員の皆様のご支援ご協力のもと,当協会ならびに非破壊検査分野の発展のため,精一杯務めてまいりますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。

当協会では創立70 周年にあたり,ステークホルダーの皆様との一層の交流と連携をはかるべく,昨年から今年にかけてマラソン方式での記念事業を展開し,本年6 月6 日には国内外の関係者を迎えて記念式典,祝賀会ならびに海外招待講演会を開催いたしました。一連の記念事業を通して当協会の70年の歩みを振り返るとき,その草創期において非破壊検査の重要性をいち早く認識し先駆的な取り組みを実践された諸先輩方の先見力と行動力,ならびに高度成長期以降の様々な時代の要請に応じて数々の変革を成し遂げられた歴代会長の決断力とリーダーシップに,改めて深く敬意を表する次第です。

さて,近年の技術革新の進展は目覚ましく,それと相まって,様々な分野にDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)などの社会変革の潮流が広がっています。非破壊検査においても例外ではなく,従来技術を変革し,新たな価値を生み出すことが重要な課題となっています。このような世界規模の社会要請に応えることは,非破壊検査に携わる技術者や研究者にとって大きなチャレンジであると同時に,当協会の新たな飛躍へのチャンスと捉えることができます。一方で当協会のミッションは非破壊検査を通して社会に価値ある安全・安心を提供することであり,それを実現すべく,技術者の啓発,教育,育成,資格認証という重要な社会的使命を果たすことが私達に期待されています。時代を先取りした先駆的な取り組みに着手しつつ,産学官のステークホルダーに有益なサービスを提供し続けるため,これまで同様,JSNDI アクションに基づいた活動を推進していくことが当面の責務であると考えています。

五つのJSNDI アクションのうち,「学術・産業分野の拡大と融合」,「学会機能と業界団体機能のシナジー強化」及び「業界バリューチェーンの構築」の三つは,近年注目されているNDE4.0(Industry 4.0の流れの中で第4 世代非破壊検査として提唱された概念)に関わる活動に取り組むことで,効果的に推進されると考えます。すなわち,NDE4.0 の学際性を踏まえると,その具現化には産学官及び他学協会を交えた異分野連携が重要となるため,NDE4.0 の活動を通して自ずから上記三つのアクションの実践につながると思われます。その活動に際して技術的課題のみならず非技術的課題も視野に入れ,学術,教育,標準化,認証,出版などの各分野への展開を図ることで,当協会内の異分野連携が促進されることも期待されます。なお,今秋,幅広い関係者への共有と啓発のために第1 回NDE4.0 シンポジウムを開催する予定です。

「グローバル展開」に関しては,ASNT をはじめとする各国関連団体との連携活動を継続するとともに,ICNDT やAPFNDT での活動を展開し,ISO/TC 135 においても幹事国としての責務を果たすことで,グローバルネットワークの強化を図っていきます。

「会員活動の活性化」に関しては,会員担当と広報担当との連携体制を整え,情報の収集・発信力を強化するとともに,広報活動にも注力し,当協会のブランド力の向上と会員拡大につなげてまいります。特に,将来の担い手である若手会員の活躍の場を提供する体制を整えることで,若手会員の増強を図りたいと考えています。

今年度はポストコロナ社会での事業活動を展開することになります。その際,事業形態をコロナ禍以前のものに戻すだけではなく,3 年間のコロナ対応で得たノウハウや経験知を活かした新しい形の事業展開もご検討いただければと思います。感染はまだ完全に収まったわけではありませんが,当協会は会員の皆様をはじめとした関係各位が一丸となりコロナ禍の危機を乗り越えたという実績があります。慎重の上にもチャレンジングな活動を展開していただくことを期待しております。

最後に,昨年度の協会運営にご支援ご協力を賜りましたすべての会員の皆様ならびに事務局の方々に心から御礼を申し上げます。引き続き,どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

報告・展望(2022)

放射線による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2022 年度放射線部門主査,東芝IT コントロールシステム(株) 富澤 雅美

Review on Radiographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2022
Toshiba IT & Control Systems Corporation Masami TOMIZAWA

キーワード:非破壊検査,放射線,デジタルラジオグラフィ,X線 CT,中性子イメージング,インライン検査

 

はじめに
 放射線部門は,放射線を利用する非破壊検査を広く対象とし,放射線とその非破壊検査への利用に関する物理,検査の手法,放射線の線源と検出器などに関して,基礎的な事項の解説,最新技術の紹介,規格の制定と改正の状況と内容など多くの情報を機関誌の特集及び講演会などを通じて提供している。2023 年5 月には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が2 類相当から5 類感染症へ移行され,幅広い医療機関による自律的な通常の対応,個人や事業者の判断に委ねる感染対策などに変化した。2022 年度は,年度末にかけてコロナ禍がようやく明け始めそうな兆しが見えつつも,COVID-19 は2 類相当であったことからも講演会,懇親会などにはそれまでと同様の感染対策と配慮を講じた。

2022 年度の活動として,機関誌71 巻5 号に「放射線による非破壊検査とその最新技術」と題した特集を掲載し,また,その全件を非破壊検査総合シンポジウムにて講演していただいた。そして,秋季講演大会での講演,第2 回放射線部門講演会を実施した。秋季講演大会は日本非破壊検査協会亀戸センターにて対面形式にて開催したが,非破壊検査総合シンポジウムと第2 回放射線部門講演会はCOVID-19 の感染状況からオンラインでの開催とした。

また,2022 年度には,2 回の幹事会(,22 年12 月と,23 年3月にいずれもオンラインにて)を開催し,情報の収集と共有,企画の立案と審議などを行った。

以下に,2022 年度の放射線部門の活動を報告するとともに,機関誌の特集(解説),並びに非破壊検査総合シンポジウム,秋季講演大会,部門講演会での講演内容も参考に技術動向と展望を述べる。

 

超音波による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2022 年度超音波部門主査,JFE スチール(株) 飯塚 幸理

Review on Ultrasonic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2022
JFE Steel Corp. Yukinori IIZUKA

キーワード:超音波探傷,波動伝搬,シミュレーション,ガイド波,フェーズドアレイ,レーザ超音波,電磁超音波,空中超音波,非線形超音波,材料評価,センサ,AI,ICT

 

はじめに
 超音波部門では,超音波による非破壊試験に関する学術的・実用的な情報交換,研究活動,普及活動を担って活動を行っている。活動の中心は部門講演会・シンポジウムの開催,研究委員会,機関誌の特集企画などである。超音波による非破壊試験が関わる学術領域は幅広く,電子情報通信学会「超音波研究会」などの他学会や,非破壊検査協会の研究会「先進センシング技術とデータ処理に関する萌芽研究会」とも連携を取りながら活動を行っている。

本稿では2022 年度の超音波部門における活動実績を報告するとともに,機関誌ならびに各種活動で公表された論文や講演資料から2022 年度の研究開発動向を整理し,今後の展望について述べる。

 

磁粉・浸透・目視試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2022 年度磁粉・浸透・目視部門主査,横浜国立大学 笠井 尚哉

Review on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing in 2022
Yokohama National University Naoya KASAI

キーワード:磁粉探傷試験,浸透探傷試験,目視試験

 

はじめに
 磁粉探傷試験,浸透探傷試験及び目視試験は表面欠陥の探傷に関わる試験として,化学,発電などのプラント設備,鉄鋼,自動車,航空,鉄道などの産業分野をはじめ,社会インフラのメンテナンスにおいても広く用いられている。

当部門は,電磁気応用部門,漏れ試験部門と幹事会をはじめ,研究集会,シンポジウム等の学術活動を合同で行っている。これら3 部門は,表面に発生する欠陥を検出するという共通テーマを有しており,表面3 部門として共同で活動することが,お互いの部門の活性化につながると考えている。

本報告では,2022 年度(2022 年4 月1 日~ 2023 年3 月31 日)の表面3 部門が合同で行ったシンポジウム,秋季講演大会などの概要と磁粉・浸透・目視部門の活動及び今後の展望について述べる。

 

電磁気応用による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2022 年度電磁気応用部門主査,大分大学 後藤 雄治

Review on Electromagnetic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Electromagnetic Testing in 2022
Oita University Yuji GOTOH

キーワード:渦電流,漏洩磁束,表面探傷,材料評価,電磁界解析,逆問題解析

 

はじめに
 電磁気応用部門は磁粉・浸透・目視部門と漏れ試験部門の3 部門による合同で活動を行っており,研究集会やシンポジウムを「表面3 部門」との名称で,合同で実施している。この3 部門の共通点は主に材料の表面きずの探傷を目的としていることであり,それぞれの試験法における最新の研究や情報交流は大変有意義である。

電磁気応用部門では,渦電流探傷試験や磁粉探傷試験など,電磁気現象を利用した試験法や材料評価等の研究を行っている。現在,非接触かつ高速の測定が可能な電磁気を使用した非破壊試験法は,高速かつ非接触で試験が実施できるメリットがあり,鉄鋼プラントや各種発電プラント等の保守検査に広く使用されている。これらの電磁非破試験は,各種センサを試験対象物に接近させ,その表面近傍のきず試験等に多く利用されている。しかし近年,電磁界解析技術や逆問題解析,信号処理技術の高度化に伴い,表面近傍だけでなく内部や裏面きず,または比較的離れた場所からの試験が行えることが明らかとなりつつあり,その適用範囲が広げられる可能性が出てきている。

ここでは,2022 年度に発表された電磁現象を用いた非破壊試験に関する報告や展望について述べる。

 

漏れ試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望

2022 年度漏れ試験部門主査,(国研)産業技術総合研究所 計量標準総合センター 新井 健太

Review on Leak Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Leak Testing in 2022
National Metrology Institute of Japan (NMIJ)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Kenta ARAI

キーワード:漏れ試験,規格,保守,リーク試験法

 

はじめに
 漏れ(リーク)試験は,半導体製造装置,粒子加速器などの真空の維持,原子力産業など放射性物質を外部に漏らさないことの確認,医薬食品など外部から不純物を内部へ混入させないことの確認のために行われる安全・安心を担保する重要な非破壊試験の一つである。その適用範囲の広さから,漏れ試験は真空装置,医薬食品,医療機器,冷凍空調機器,船舶,自動車,航空・宇宙分野,ガスや石油等の備蓄タンク,各種化学プラントやその配管等,非常に広範囲な産業で日常的に実施されている。「漏れ」は,JIS Z2300:2020「非破壊試験用語」において,「壁の両側の圧力差又は濃度差によって液体又は気体が通過する現象。孔,多孔質などの透過性要素が原因となる」と定義されている1)。その漏れは,物質の意図しない流失あるいは流入の原因となり,品質の低下だけではなく,環境汚染,火災・爆発等の事故の原因となりうる。漏れ試験は,生産製造から製品供用中まで様々な段階で漏れを検出して,品質低下や重大な事故を未然に防止するために不可欠な技術であり,我が国の工業の品質,安全,環境等を支えている重要な技術の一つである。

漏れ試験には,対象となる試験体,漏れを検出する方法,ターゲットとする漏れ量の範囲により,様々な方法が開発されている。JIS Z 2330 には,種々ある漏れ試験方法がまとめられている2)。そのうち,主要な漏れ試験方法を,検出対象で分類し表1 にまとめた。

一般的に漏れの大きさはとても小さい。そのため,漏れ試験では何らかの方法で漏れを周囲から際立たせて検出する。例えば,発泡漏れ試験では漏れた気体を泡として,あるいは蛍光染料と現像剤を用いて周囲からの色の変化で検出する。これらの方法はおおむね10−4 Pa m3/s 以上の漏れの検出に適する。10−4 Pa m3/s よりも小さい漏れの場合,人間の五感で検出することは難しいため,漏れ試験に特化した計器であるリークディテクター(リークテスター,漏れ検知器などとも呼ばれる)を用いる。その漏れの検知原理として,トレーサガスや,試験体の圧力変化を用いる試験方法が広く普及している。しかし,リークディテクターがあれば漏れを正確に測定できるかと思えばそうではない。リークディテクターが正しい漏れ量を示したこと(校正),リークディテクターの正しい使い方で使用すること(試験方法),リークディテクターを扱う試験者が適切な技量を持つこと(技量認定)が必要となる。さらに,これら三要素を下から支える教育,研究,規格化活動がある。本稿では,2022 年度の漏れ試験部門の活動と今後の展望について報告する。

 

応力・ひずみ解析の活動報告と今後の展望

2022 年度応力・ひずみ測定部門主査,鳥取大学 小野 勇一

Review on Stress / Strain Measurement
Chairman of Research & Technical Committee on Stress / Strain Measurement in 2022
Tottori University Yuichi ONO

キーワード:応力・ひずみ測定,ひずみゲージ試験,材料評価,強度評価,実験力学

 

はじめに
 安全・安心な社会の実現のためには,機械・構造物が実働荷重下で破壊しないように強度設計することが重要である。強度設計では,機械・構造物の各構成要素に生ずる応力とひずみを正確に把握する必要があるため,計測とシミュレーションの両者が重要な役割を果たす。特に近年では,現実空間における機械の状態を収集し,デジタル空間に再現して,デジタル空間上で機械の安全性を予測するシミュレーション技術であるデジタルツインと呼ばれる技術が注目を集めている。このような技術の確立のためにも,稼働中の各構成要素に発生する応力・ひずみを正確に計測できる実験技術が重要となる。通常,ひずみ計測には,ひずみゲージが広く用いられているが,応力・ひずみ測定部門では,他の様々な計測手法について活発に研究が行われている。例えば,光学的計測方法であるモアレ法やデジタル画像相関法は,ひずみゲージのような点測定ではなく,全視野のひずみ計測が可能である。また,静的荷重よりも動的荷重である繰返し荷重や衝撃荷重のほうが実働荷重として一般的であるが,このような荷重下での材料の強度は静的強度とは異なることが広く知られている。例えば,材料の降伏点以下の比較的小さい応力でもそれが繰返し作用することにより疲労破壊が生じるため,繰返し荷重下では疲労限度が重要な強度の指標となる。したがって,動的荷重下での応力・ひずみ測定技術が必要とされると共に,最終的には計測された応力とひずみを用いて,材料の強度評価を行うことが重要となる。さらに,疲労強度には材料表面の残留応力が大きく関与するため,X線を用いた残留応力計測法は構成要素の疲労強度評価に有力な手法であるといえる。また,溶接や摩擦圧接に代表される接合技術により接合された材料は,接合時の入熱により,接合界面近傍が母材と異なる機械的性質を示す。したがって,引張試験等の強度試験中に接合部に発生する不均質なひずみや応力を計測して,継手の信頼性を保障することも重要となる。さらに,バイオメカニクスの分野では,金属材料や非金属材料をインプラント材料として扱うだけでなく,生体組織を扱う場合もある。生体組織に生じる応力を有限要素法などのシミュレーションにより計算するためには,弾性係数が必要となるが,生体組織の年齢等によって弾性係数が異なるため,機械材料のように単純ではない。したがって,生体組織の弾性係数を正確に求めるためにも,応力・ひずみ測定技術が必要となる。このように,応力・ひずみ計測法は安全・安心な社会の実現に必要な技術であり,2022 年度も新型コロナウイルス感染症に配慮しながら,活発な研究活動がこれまで通り行われた。

 

アコースティック・エミッションによる非破壊試験の活動報告と今後の展望

2022 年度アコースティック・エミッション部門主査,東北大学 森谷 祐一

Review on Acoustic Emission
Chairman of Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2022
Tohoku University Hirokazu MORIYA

キーワード:アコースティック・エミッション,講演会,国際シンポジウム,ハイブリッド,コロナ

 

はじめに
 アコースティック・エミッション(AE)部門は,アコースティック・エミッション特別研究委員会を母体として組織され活動を開始した。AE 部門はAE 法の進展と普及に貢献することを目的に,日本におけるAE 法の学術研究,技術開発,標準化,技術者養成をけん引する活動を行っている。AE 法は計測対象に本質的な制限がなく種々の環境下で高周波の微弱な信号を扱うことから,部門には機械系,材料系,土木系,資源系,電気系など様々なバックグラウンドをもつ会員が集まり活動をしている。本稿では,2022 年度の活動をまとめる。

 

赤外線サーモグラフィによる非破壊試験の活動報告と今後の展望

2022 年度赤外線サーモグラフィ部門主査,神鋼検査サービス(株) 遠藤 英樹

Review on Infrared Thermographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Infrared Thermographic Testing in 2022
Kobelco Inspection & Service Co.,Ltd. Hideki ENDO

キーワード:赤外線サーモグラフィ,ドローン,テラヘルツ波,教育,認証

 

はじめに
 老朽化した社会インフラや産業インフラが増加する中,これまで以上に非接触で高速な試験が可能な赤外線サーモグラフィ試験への期待が高まっている。最近は,赤外線サーモグラフィ装置を搭載したドローンによって,容易に高所からの撮影が可能となったことから,産業用プラントでは煙突の点検などにも使用されるようになった。

ドローンと外壁調査に関連する2022 年度の大きいトピックスとしては,まず,最初に建築基準法 第12 条に基づく建築物の外壁調査に,赤外線サーモグラフィ装置を搭載したドローンの使用が正式に認められたことがあげられる。ただし,ドローンを無条件に使用できるわけではなく,打診と同等以上の精度を有する試験の実施が求められており,(一財)日本建築防災協会において取りまとめられた「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」に沿って調査しなければならないことに注意が必要である。

次のトピックスとしては,本ガイドラインに赤外線調査を実施する技術者の要件として,「赤外線装置による撮影,診断は,例えば(一社)日本非破壊検査協会が実施しているJIS Z 2305 非破壊試験−技術者の資格及び認証(TT:赤外線試験技術者)の適格性証明(免許証ではない)がある。または,これと同等の赤外線調査に関する知識と技量を有する技術者が実施することが望ましい。」と明確にJIS Z 2305 の記述が盛り込まれたことがあげられる。これまでは,赤外線画像の一見わかりやすいイメージから,赤外線調査を実施する技術者の要件を明確化する必要性が一般に理解されづらかったように思われるが,非破壊試験の一つである赤外線サーモグラフィ試験で適切な試験結果を得るためには,当然,試験を実施する技術者の知識と技量の両方が必要であることを主張した関係者の努力による結果と推察される。

なお,本ガイドラインは,ドローンを使用した外壁調査だけではなく,従来の地上から撮影する外壁調査についても詳細に試験方法が記述されている。当該業務の関係者は本ガイドラインを確認することをお勧めしたい。

最後のトピックスとしては,出版が遅れていたJIS Z 2305 のレベル3 テキスト,問題集の編集完了がある。本稿が出版される時には,すでに皆様が購入できる状態になっていると思われるが,TT レベル2 の資格をお持ちの技術者の方でレベル3 の資格を目指そうと考えられている方には,ぜひお手に取っていただきたい。

 

製造工程検査の活動報告と今後の展望

2022 年度製造工程検査部門主査,徳島大学 浮田 浩行

Review on In-Process Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on In-Process Inspection in 2022
Tokushima University Hiroyuki UKIDA

キーワード:画像処理技術,製造工程検査,ViEW2022,DIA2023,画像データセット,機械学習

 

はじめに
 製造工程検査部門は,1981 年に,日本非破壊検査協会の「非破壊検査画像処理特別研究委員会」として発足し,その後,現在の部門名に改め,40 年以上,検査に対する製造現場の要望に応えるため,画像処理技術の実用化を目指した活動を行っている1)。当部門では,広範囲にわたる最新の画像処理技術を当協会会員へ,リアルタイムかつ分かりやすく提供することを大きな役割の一つと位置付けており,そのための活動として,各種学会・研究委員会の枠を越えた連携・協力を行い,画像センシング・画像認識に関するシンポジウムやワークショップを年2 回共同企画して協賛している。この活動によって,製造工程における非破壊検査,外観検査および目視検査に関わるセンシングと画像処理・画像認識技術の情報提供を行うための研究者間の交流の場を設けている。

2022 年度においても,2020 年からのコロナ禍の影響は続いてはいたものの,新型コロナウイルスの変異株(オミクロン株)の出現によって,従来よりも重症化リスクが減るとともに,これまでの自粛状態から,社会活動・経済活動を回していこうというムードが高まっていった。そのため,学会活動においても,これまでのオンラインのみの開催から,徐々に,対面での開催が増えていった。特に,対面とオンラインの両方を交えた「ハイブリッド開催」が導入されるようになり,オンラインの参加者,対面の参加者のどちらもが満足するような学会の開催方法について,様々な学会にて模索・検討されていった。

本稿では,部門活動の報告として,2022 年度に協賛・共同企画した2 件のワークショップについて紹介する。また,2022 年度から「非破壊検査・外観検査画像データセットCOE プロジェクト」を開始したことから,このプロジェクトについての目的や実施状況について説明する。そして,画像技術に関する動向や今後の展望について述べる。

 

保守検査の活動報告と今後の展望

2022 年度保守検査部門主査,明治大学 松尾 卓摩

Review on Maintenance Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on Maintenance Inspection in 2022
Meiji University Takuma MATSUO

キーワード:非破壊検査,ロボット,複合材料,デジタルトランスフォーメーション,AI,ビッグデータ

 

はじめに
 保守検査部門は,産業プラントや社会インフラの構造信頼性を維持し向上させる技術を部門メンバー間で共有することを通じて,信頼性と経済性を両立した保守検査技術の探求と普及を活動目標としている。既存の検査技術の現場適用だけでなく,近年さかんに研究されているロボット,IoT,AI,ビッグデータ,DX を活用した新しい検査技術の情報も共有するために,12 月には保守検査ミニシンポジウムを開催した。また,毎年の機関誌10 月号では,保守検査に関する解説記事を集めた特集号を企画している。今年度は,社会インフラの保守検査技術や保守検査技術に関する最新の基礎研究についての4 つの解説記事を寄稿していただき,特集号を出版した。

 

鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験の活動報告と今後の展望

2022 年度鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門主査,東京理科大学 今本 啓一

Review on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete Structures
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete in 2022
Tokyo University of Science Keiichi IMAMOTO

キーワード:活動報告,鉄筋コンクリート構造物,非破壊・微破壊試験,研究委員会,標準化,講習会

 

はじめに
 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門(以下,RC 部門)では,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,オンライン併用等により学術委員会,標準化委員会,教育委員会,編集委員会と関連し,各種研究委員会,各種NDIS 制定・改定・準備WG が活動を行っていた。しかし最近は感染拡大防止というよりは,オンラインの長所を活かした,オンラインを併用したハイブリッド型による方式を積極的に用いている。

 

新素材の非破壊評価の活動報告と今後の展望

2022 年度新素材に関する非破壊試験部門主査,東北大学 内一 哲哉

Review on Non-Destructive Evaluation of New Materials
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Evaluation of New Materials in 2022
Tohoku University Tetsuya UCHIMOTO

キーワード:先進材料,非破壊計測

 

はじめに
 新素材に関する非破壊試験部門では,新素材の非破壊評価に関する研究,調査及び普及を目的とした活動を行っている。特に,様々な非破壊検査技術および非破壊評価技術の応用を横断的に調査していることに本部門の特徴がある。例えば,複合材料の計測技術,積層造形に関連した計測技術や,高温環境における計測技術などを切り口として,他の団体や研究会との連携を積極的に行いながら調査を行っている。コロナ禍によりオンラインでの集会が続いてきたが,ハイブリッド形式にてシンポジウムを1 回開催することができた。以下にその活動の概要をまとめる。

 

報告

学術委員会活動報告

2022 年度学術委員会委員長 塚田 和彦

Report of Academic Affairs Committee
Chairman of Academic Affairs Committee in 2022
Kazuhiko TSUKADA

キーワード:学術活動,非破壊検査,表彰制度,研究助成,研究奨励金

 

はじめに
 学術委員会は,協会の学術活動全般を統括する位置づけであり,関連する3 名の理事と技術開発センター長,12 部門及び2 研究会の主査とから構成されている。2022 年度の学術委員会の委員構成は,表1 のとおりであった。

2022 年度は,学術委員会を7 月,12 月,2 月の計3 回開催した。以下に2022 年度の学術活動の全般について報告するが,各部門における学術活動の詳細については,それぞれの部門の報告・展望を,また国際学術活動については,国際学術委員会活動報告をご覧いただきたい。

 

標準化委員会活動報告

2022 年度標準化委員会委員長,ポニー工業(株) 釜田 敏光

Report of Standardization Committee
Chairman of Standardization Committee in 2022
Pony Industry Co., Ltd. Toshimitsu KAMADA

キーワード:非破壊試験,非破壊検査,規格,NDIS,JIS,ISO

 

はじめに
 日本非破壊検査協会(JSNDI)では,標準化委員会とISO 委員会が協力し,また,経済産業省や日本規格協会等の関連学・協会との緊密な連携の下,日本国内外の非破壊試験に関する検査技術の標準化を図るとともにその普及を推進している。

本報告では,標準化委員会の2022 年度の活動として,日本産業規格(JIS)及び日本非破壊検査協会規格(NDIS)の原案作成や改正に関わる動向及び関連の事業について説明する。なお,ISO の動向に関しては,別途ISO 委員会活動報告がなされている。

 

ISO 委員会活動報告

2022 年度ISO 委員会委員長,(一社)日本非破壊検査協会 顧問 大岡 紀一

Report of ISO Committee
Chairman of ISO Committee in 2022
The Japanese Society for Non-Destructive Inspection Norikazu OOKA

キーワード:ISO/TC 135,CEN/TC 138,ISO/TC 135/SC 7,ISO 9712,ISO 規格,資格及び認証

 

概要
 ISO(国際標準化機構)規格案件に関する事項を検討,審議及び投票のための集約,さらにTC 44(溶接),TC 17(鋼)などの国内審議団体と連携を図って,関連ISO 規格の対応と共に情報交換などを前年度に引き続き実施した。

2021 年10 月11 日(月)に開催されたISO/TC 135 総会の終了後,大岡紀一国際議長が2021 年12 月で退任し,緒方隆昌氏がTMB承認の手続きを経て2022 年1 月から国際議長となった。

ISO 国際会議に関しては,ISO/TC 135 総会及び関連SC すべてが新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大防止の観点から2021 年10 月のオンライン会議以降もCOVID-19が落ち着く状況が見通せなく,対面形式でのTC 135 及び関連SC会議は2023 年度以降の開催となった。そのため,次期開催についてISO/TC 135 大岡昌平国際幹事がISO 中央事務局の高橋真帆プロジェクトマネージャ(TPM)と連絡を取りながら,ISO/TC135 総会及び関連SC についてポルトガルのリスボンで開催されるECNDT 2023 に併設しての会議を予定することで進捗した。

各SC においてはSC 3,SC 6,SC 7 及びSC 9 に設けられているWG が活発にオンライン会議を開催し,各SC で対応した。

国内におけるISO 委員会については,第1 回本委員会を2023年3 月17 日に開催し,分科会については本委員会に先立って第1回分科会を2023 年2 月3 日に開催している。

一方,国内においては,非破壊試験・検査における種々の関連情報を共有する目的で,各種団体会員出席のISO 委員会の第1 回本委員会にて,情報交換を行った。

 

国際学術委員会活動報告

2022 年度国際学術委員会委員長,川崎重工業(株) 緒方 隆昌

Report of International Committee
Chairman of International Committee in 2022
Kawasaki Heavy Industries, Ltd. Takamasa OGATA

キーワード:非破壊検査,ICNDT,WCNDT,APFNDT,ASNT,BINDT,KSNT,TWI,RCNDE,日米非破壊試験シンポジウム,NDE4.0,国際会議

 

はじめに
 新型コロナウイルス感染症(以下,「新型コロナ」)が,2020年3 月にパンデミック(世界的な大流行)とみなされ,3 年以上が経過したが,未だに収束する気配はない。海外ではいち早く,新型コロナ禍においても社会活動を阻害しない,いわゆる“with corona(ウィズ コロナ)”あるいは新型コロナを特別視せず,あたかも収束した“post corona(ポスト コロナ)”であるかのような活動に移行している国が多い。我が国においても,これらに後押しされる形で,2023 年5 月には感染法上の分類を5 類に変更し,各種の制限を撤廃あるいは緩和して社会活動を優先する方針に転換した。

このウィズ コロナ及びポスト コロナの概念は,世の中に負の要素をもたらした一方で,従来の常識を覆すパラダイムシフトを世の中に与えた。国際学術活動においても,情報交換,交流などインタラクションの考え方や方法を変えた。

各国の非破壊試験協会は,遠隔地でも多くの人が低コストで参加できるオンライン形式やオンラインと対面交流の良さを併用したハイブリッド開催方式に変わり,それぞれの方式のメリットを取り入れた形へとシフトしてきている。例えば,英語圏を主体に,これまで対面形式主体で発表・発信を行っていたものを,オンライン形式主体に切り替えることで,世界中に広く,しかも高頻度で発信して,その発信力を高めている。また,経営面においてもオンライン形式を採用することで大幅な経費削減を行い,収益率を大幅に向上させている組織もある。また,この幅広い発信力は,従来の非破壊試験分野に留まらない広い学問分野・産業分野の人々の参加も容易にしている。特に,ここ数年で急速に注目を集めているNDE4.0 への人材集積はその例と考えられる。

当協会は,今後のさらなる発展に向けたビジョンとして,“JSNDIミッションステートメント”及び“JSNDI バリュー”を定め,これらを実現する具体的な施策として“JSNDI アクション”を定めている。この中で,国際学術に深く関わるのは,「学術・産業分野の拡大と融合」及び「有効なグローバル展開の強化」が挙げられる。具体的には,他分野との境界・融合領域へ取り組みを広げることや,世界の先端的研究機関・協会などとの相互交流,情報交換等を促進して,グローバルネットワークの強化を図り,グローバル社会における我が国の本分野のポテンシャル向上を目指している。他分野との境界・融合領域については,これまでの機械の状態監視分野,土木・建築分野などに加えて,NDE4.0 が挙げられる。

国際学術委員会は,これらJSNDI アクションを実行し,国外の非破壊試験方法に関する,より広範な学術情報の収集,交換及び相互交流を図る活動を行っている。また,国際非破壊試験委員会(International Committee for Non-Destructive Testing;ICNDT)及びアジア・太平洋非破壊試験連盟(Asia-Pacific Federation for Non-Destructive Testing;APFNDT)の活動をはじめとする国際的活動は,学術のみに留まらず,認証,教育,標準化などが相互に密接に関連していることから,運営委員会の下に国際対応WGを設け総合的な判断を行っている。本稿では,本号における掲載区分の関係上,国際学術委員会活動以外も含むこれら国際活動全般を対象に記載した。

 

教育委員会活動報告

2022 年度教育委員会委員長,三菱重工パワー検査(株) 八木 尚人

Report of Education Committee
Chairman of Education Committee in 2022
Mitsubishi Heavy Industries Power Inspection Technologies, Ltd. Naoto YAGI

キーワード:訓練,講習会,JIS Z 2305:2013

 

はじめに
 教育委員会(以下,「当委員会」という)は,非破壊検査に従事する技術者の技量向上を目的として各種教育・訓練の計画と実施並びに関係書籍の編集などを行っている。

また,JIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」の改正に伴う訓練カリキュラムの見直し等の対応をこれまでに推進してきており,今後,国際相互承認を視野に入れた訓練組織としてのさらなる体制整備を進めていきたいと考えている。ここでは,2022 年度の当委員会の主な活動実績を報告する。

 

認証運営委員会活動報告

2022 年度認証運営委員会委員長,東京工業大学 井上 裕嗣

Report of Certification Steering Committee
Chairman of Certification Steering Committee in 2022
Tokyo Institute of Technology Hirotsugu INOUE

キーワード:非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,NDIS 0602,NDIS 0603,ISO 18436-7,NAS 410

 

はじめに
 日本非破壊検査協会の認証事業の中心はJIS Z 2305 に基づく非破壊試験技術者の認証であり,2003 年に開始されてから20 年近くが経過した。この間,特に2013 年のJIS Z 2305 改正に伴っていくつかの大きな制度変更を行うとともに,2019 年春期からは赤外線サーモグラフィ試験(TT)及び漏れ試験(LT)をNDIS からJIS Z 2305 に移行してきた。2022 年度現在は,8 つのNDT 方法の認証を実施しており,定常的な運用を行っている。

当協会では,次のそれぞれの規格に基づく技術者認証を実施している。

  JIS Z 2305 「 非破壊試験技術者の資格及び認証」
  NDIS 0602 「 非破壊検査総合管理技術者の認証」
  NDIS 0603 「 超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証」
  ISO 18436-7 「 Condition monitoring and diagnostics of machines
  – Requirements for qualification and assessment
  of personnel – Part 7: Thermography」

これらに加えて,NAS 410「NAS Certification and qualification of non-destructive test personnel」に基づく認証制度における資格試験機関として,資格試験を実施して適格性証明書を発行している。

JIS Z 2305 に基づく認証は「認証運営委員会」で運営している。また,NDIS 0602 に基づく認証は「非破壊検査総合管理技術者認証委員会」,NDIS 0603 に基づく認証は「PD 認証運営委員会」,ISO 18436-7 に基づく認証は「CM 技術者認証運営委員会」でそれぞれ運営している。さらに,「国際認証委員会」の協力の下で,諸外国との認証資格の相互承認を実施している。

 

出版委員会活動報告

2022 年度出版委員会委員長,(一財)発電設備技術検査協会 古川  敬

Report of Publication Committee
Chairman of Publication Committee in 2021
Japan Power Engineering and Inspection Corporation Takashi FURUKAWA

キーワード:出版,テキスト,問題集,参考書,規格,ゲージ

 

はじめに
 出版委員会は,非破壊検査技術の教育・普及に関する出版物の企画,編集,制作及び頒布を行うことによって,非破壊検査技術水準の向上を図ることを目的として設置された委員会であり,その活動は教育委員会の活動と密接に関係している。そのため,その構成員は,各部門の関係者とともに教育委員会からの派遣委員,理事等で構成されている。図1 に,出版活動の典型的な例を示す。

 

試験片委員会活動報告

2022 年度試験片委員会委員長,JFE テクノリサーチ(株) 高田  一

Report of Reference Block Committee
Chairman of Reference Block Committee in 2022
JFE Techno-research Corporation Hajime TAKADA

キーワード:標準試験片,対比試験片,分類用ゲージ,トレーサビリティ,品質証明

 

はじめに
 当協会では非破壊検査技術の普及及び技術水準の向上に努める活動の一環として,非破壊試験の実施に必要な標準試験片,対比試験片及びゲージを販売している。非破壊試験において,標準試験片,対比試験片及びゲージは,試験装置の調整及び性能確認,試験結果の定量化,試験方法の標準化及び試験結果への影響因子の評価などの重要な業務に用いられる。以下,標準試験片及び対比試験片をまとめて頒布試験片または試験片類と称する。

試験片類及びゲージの販売先は主に国内であり,2022 年度の販売数は,放射線透過試験用ゲージ(以下,放射線ゲージ)が980 枚,超音波関連試験片(以下,超音波試験片)541 体,磁粉探傷試験用標準試験片(以下,磁粉試験片)1563 枚などとなっており,販売総額は約7.7 千万円であった。販売数では,昨年度と比較して,放射線ゲージは増減なし,超音波試験片販売数は30%強増加したが,磁粉試験片販売数は10%強の減少となり,販売総額は15%の増加であった。2022 年度からアフターコロナの動きが見えつつあるなか,磁粉試験片の販売数がさらに落ち込んでいるのにはコロナ禍とは別の要因が潜んでいる可能性が懸念される。

試験片類及びゲージの年間販売数は,コロナ禍の時期を除き,放射線ゲージが1700 枚前後,超音波試験片が600 体前後,磁粉試験片が3000 枚前後の数量で推移してきた。毎年,これだけの数のゲージ及び試験片類を頒布しているのは,国内の非破壊試験業務に当協会の頒布試験片が必要であり,かつ,定着していることの表れであろう。

当委員会の活動の流れや経緯については,過去の報告17)− 24)も参照いただくとして,今回はこの一年の活動の進展状況についてご紹介する。本稿はやや細かすぎるきらいがあるが,委員長の備忘録としての役割もあるので,細かいところは読み飛ばしていただき,概要をつかんでいただければ幸いである。

 

広報活動委員会活動報告

2022 年度広報活動委員会 委員長代理,神鋼検査サービス(株) 遠藤 英樹

Report of Public Relations Committee
Acting Chairman of Public Relations Committee in 2022
Kobelco Inspection & Service Co.,Ltd. Hideki ENDO

キーワード:広報,ホームページ,セミナー,展示会,ノンディ

 

はじめに
 広報活動委員会では,関連委員会と連携し,当協会や非破壊検査の知名度向上を目的とした各種広報活動や会員に向けた情報発信サービスを行っている。当委員会の2022 年度の主な取り組み事項を以下に示す。

・展示会への参加と出展内容の検討
・取材協力等の各種メディア対応
・会員サービス向上のためのホームページ改善
・若年者層に向けた広報活動
・持続可能な開発目標(SDGs)に対する取り組み検討

以下に,2022 年度の主な活動実績について報告する。

 

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