logo

<<2022>>

機関誌

2017年9月号バックナンバー

2017年9月1日更新

巻頭言

「非破壊試験技術者の資格と認証の動向」
―特集号刊行にあたって― 
 井上 裕嗣

 日本における非破壊試験技術者の認証制度は,1969 年に非破壊検査技術者技量認定規程(後のNDIS0601)に基づく技量認定が開始されて以来50 年近くにわたって着実に発展してきました。この間,2003 年にはJIS Z 2305:2001(ISO 9712:1999)に基づく認証制度に移行しましたが,その後10 年以上の期間を経て十分に定着してきました。ところが,2015 年からJIS Z 2305:2013(ISO 9712:2012)に基づく新規試験,2017 年から同規格に基づく再認証試験が開始され,例えばレベル1 と2 の再認証試験が筆記試験から実技試験に変更されるなどの大きな変化がありました。この変化に伴って,NDT 技術者や会員の皆様はもとより,協会内の委員会と事務局においても様々な検討を余儀なくされましたが,幸いにして現時点では大きなトラブルはなく,本年10 月には新しい再認証試験に基づく認証資格が発効となる予定です。その意味において,JIS Z 2305:2013 に基づく認証制度全体がようやく走り始めたことになります。
 そこで,この節目の機会に,非破壊試験技術者認証の現状を把握し,将来に資することを目的として,非破壊試験技術者の認証に関する現在の制度,最近の国際的な動向,及び産業界における現状(認証資格の活用,認証に関連する活動,認証に関わる最近のトピックス)を総括する特集を企画しました。
 まず,JIS Z 2305 に基づくNDT 技術者認証制度そのものの発展の経緯について,国際的な動向と併せて僭越ながら解説いたしました。日本の認証制度の発展は,50 年前から国際的な動向と密接に関連しており,グローバル化の進展に伴って国際的動向はますます無視できなくなっていることをご理解いただければ有り難く存じます。続いて,特に最近の国際的動向について,日本の第一人者である大岡紀一氏に詳細に解説していただきました。会員及びNDT 技術者の皆様には是非とも国際的な動向を十分にご理解いただき,今後一層のご協力を賜りたく存じます。これらに続いて,産業界(重工業分野,発電分野,航空宇宙分野)におけるNDT 技術者認証の動向について,各分野の専門家である八木尚人氏,東海林一氏,與田光恭氏に解説していただきました。分野ごとに様々な発展の経緯や事情があり,様々な分野の全てに対して100%フィットする認証を行うことは必ずしも容易ではありませんが,現状の認証制度は多くの産業分野の基本的ニーズを満たしていると感じられます。これらに加えて,JIS Z2305 に基づくNDT 技術者認証制度をベースにしてさらに高度な技術者認証が行われている事例として,寺田幸博氏には日本溶接協会の溶接構造物非破壊検査事業者認定を,そして田代秀夫氏には日本非破壊検査工業会のインフラ調査士の資格認証を解説していただきました。NDT 技術者認証は,これらの認定・認証制度に対しても重要な役割を果たしていることが理解できます。
 世界的に最も多いNDT 技術者の認証資格件数を有している日本非破壊検査協会には,現在の認証制度を安定に運用させることについて重大な社会的責任があり,そのためには会員及びNDT 技術者の皆様のご協力が必要不可欠です。今回の特集記事が今後の認証制度の発展にわずかながらも役立つことを祈念しますとともに,ご多忙にもかかわらず快くご執筆くださった方々に厚く御礼申し上げます。

 

解説

JIS Z 2305 に基づくNDT 技術者認証
 東京工業大学 井上 裕嗣

Certification of NDT Personnel Based on JIS Z 2305
Tokyo Institute of Technology Hirotsugu INOUE

キーワード:非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,ICNDT,ISO/TC 135

はじめに
 日本非破壊検査協会では,1968 年に「非破壊検査技術者技量認定規程」を制定し,1969 年に最初の資格試験を実施して以来,50 年近くにわたってNDT 技術者の認証を実施してきた。この間,1977 年のNDIS 0601 の制定とその後の数回の改正,2001年のJIS Z 2305 の制定と2013 年の改正などを経て,認証制度は着実に発展してきた。本稿では,認証制度の発展の経緯を振り返り,現状を簡単に説明するとともに,今後の展望について個人的な見解を述べる。なお,本稿における国際的な動向に関する記述は,別稿の大岡紀一氏による解説と重複する部分があると思われるが,説明の都合もあるためご理解・ご容赦いただきたい。

 

非破壊試験技術者の資格及び認証の国際動向
 ものつくり大学特別客員教授 大岡 紀一

International Trend in Qualification and Certification of NDT Personnel
Institute of Technologist, Guest Professor Norikazu OOKA

キーワード: 非破壊試験,NDT 技術者,資格及び認証,ICNDT,WCNDT,ISO 9712,ISO 規格,ISO/TC 135

はじめに
 国内における,非破壊試験技術者の資格認証制度は1968年に(社)日本非破壊検査協会(以下JSNDI:The JapaneseSociety for Non-Destructive Inspection という)でスタートしたのが始まりである。認定委員会で規定が制定され,当初,技術者の資格は個人の非破壊試験・検査に携わったevidenceとして関連学協会などでの発表(論文),業務経験などに関する資料が審査されて付与された。
 国際の場で非破壊試験技術者について討議され,国際的技術者の必要性から非破壊試験技術者の資格認証に関する最初のISO 規格がISO 9712 として制定されたのは1992 年である。これに先立って国際非破壊試験委員会(以下ICNDT:International Committee for Non-Destructive Testing という)が非破壊試験技術者の資格認証に関わるガイドラインの作成に着手し,1985 年にドラフトが出されている。ISO 9712 は1999 年に改正されたが, イギリス,ドイツ,フランス,イタリアの主要国をはじめ欧州諸国ではISO 9712 に対応する規格としてのEN 473(NDT Personnel -Qualification and Certification)を,特に圧力機器関連で適用しているため,ISO 規格との完全整合ではなかった。このような状況で国際的な動きは進捗し,2012 年に,ようやく整合化されて,ISO9712:2012 が発行され,世界の各国で,これに基づいた非破壊試験技術者の資格・認証制度がスタートしている。

 

重工業分野におけるNDT 技術者認証の現状
 三菱日立パワーシステムズ検査(株) 八木 尚人

Current Status of NDT Personnel Certification in the Heavy Industry Sectors
Mitsubishi Hitachi Power Systems Inspection Technologies, Ltd. Naoto YAGI

キーワード: 非破壊試験,資格認証,ISO 9712,JIS Z 2305,ASMEコード

はじめに
 重工業分野においては,構成される各機器のサイズが大きく,かつ種類も多いことから,量産製品のように生産ライン上での連続的な品質管理ができず,作業工程ごとに都度必要な試験検査を実施することが多い。中でも非破壊試験(NDT)はその品質を担保するために重要な位置付けであり,広く活用されている。本稿では重工業製品の中でも,圧力容器溶接部の非破壊試験に関する試験技術者の資格要求事項について解説する。“重工業”に分類される業界は非常に幅が広いので,それぞれの業界によりそのよりどころとなる法律・規格等の要求事項が異なるため,重工業分野全体を俯瞰する内容になっていないかもしれないがご容赦願いたい。

 

発電分野におけるNDT 技術者認証の現状
 (一財)電力中央研究所 東海林 一

Current Status of NDT Personnel Certification in the Electric Power Field
Central Research Institute of Electric Power Industry Hajime SHOHJI

キーワード: 発電設備,資格試験,PD 認証,規格基準,構造部材

はじめに
 電力分野の特徴は,さまざまな機器や施設によって構成される全国規模の巨大なシステムであること,障害が発生した場合の影響が大きいことが挙げられる。
 送配電分野では,他のインフラ設備と同様に老朽化による補修や点検コストが増加する傾向にある。対象となる構造物が広範囲に広がっていることから,主に目視点検による保守が主となり,一部に送電線に対するサーモグラフィによる発熱の有無の確認などが適用されている1)。また雷等の外的要因も多く,単一の機器の故障で長期にわたる障害が発生しないような系統構成や早期復旧技術に重点が置かれている2)。
 発電設備では特に原子力発電所のような高い信頼性を求められる設備に限らず,火力や水力発電所も,計画外で停止した場合の影響が大きいことから,健全性確認が重要となっている。近年は原子力発電所の運転期間延長認可制度に関連した特別点検3)などもあり,非破壊検査の重要性は増している。今後,増加していくと考えられる風力や太陽光等の再生可能エネルギーには,NDT による信頼性確保のニーズはいまだ小さいが,発電比率の増加や経年に伴い,特に大型風力発電設備などではNDT の重要性が増していくものと考えられる。また再生可能エネルギーは発電出力が天候による影響を大きく受けることから,出力調整を担う水力発電所のみならず火力発電所の負荷増となり,これらに対してNDT による損傷早期検知による安定運転がさらに重要となってきている。
 非破壊検査業界に占める電力関連の割合(売上高)として,原子力関連で5.7%,電力関連で9.0%を占めている4)。加えて重電(同3.4%)や建築(同18.6%)の一部も電力業界に関連すると考えられ,多くの非破壊検査技術者が電力の安定供給に貢献していると言える。

 

航空宇宙分野におけるNDT 技術者認証の現状
 川崎重工業(株) 與田 光恭

Trends of Certification of NDT Personnel in the Aerospace Industry
Kawasaki Heavy Industries, Ltd. Mitsuyasu YODA

キーワード: 非破壊検査,認証,規格,航空機,宇宙機器

はじめに
 航空宇宙分野における非破壊検査については,2014 年に「航空機業界における非破壊検査」として「非破壊検査」第63 巻第2 号に特集号が刊行されており,通常では入手することが難しい航空機業界の非破壊検査に関する幅広い情報が記載されている。その中でNDT 技術者認証についてもページ数を割いて解説されているので一読に値する。
 本解説では,この特集号からNDT 技術者認証に関する話題を体系的にまとめ,2014 年以降の最新情報を加えて現状の航空宇宙分野のNDT 技術者認証について述べる。

 

溶接構造物の非破壊検査事業者認定制度(CIW)
 (一社)日本溶接協会 溶接検査認定委員会 運営委員会委員長,高知工業高等専門学校 寺田 幸博

Certification for Inspection of Welds
The Chairman for Steering Committee of CIW, JWES, National Institute of Technology,
Kochi College Yukihiro TERADA

キーワード:溶接構造物,非破壊検査事業者認定,CIW,WES 8701,認証システム

はじめに
 CIW(Certification for Inspection of Welds)とは,(一社)日本溶接協会が同協会規格WES 8701:2016「溶接構造物非破壊検査事業者等の認定基準」に基づき,溶接構造物の非破壊検査にかかわる事業者(以下,検査会社)を認定する制度で,我が国における唯一の検査会社認定制度である。1963 年に溶接検査認定委員会の前身である「放射線検査委員会」を発足させて以来,約半世紀にわたって,それを発展的に拡大させ現在に至っている。CIW 認定制度については,当運営委員会前委員長の加藤光昭氏が執筆した紹介記事1)−3)があり,CIW認定制度が石油業界や火力原子力分野に寄与しうる可能性,検査業界へのメッセージなどとともに記述されている。本稿はこれらの記事をベースにしていることから,CIW 認定制度への更なる理解には是非参照されたい。

 

「インフラ調査士」資格認証制度
 (一社)日本非破壊検査工業会 田代 秀夫

Qualification and Certification Systems for Infrastructure Testing Personnel
The Japanese Association for Non-Destructive Testing Industry Hideo TASHIRO

キーワード:インフラ,維持管理,点検,診断,インフラ調査士

はじめに
 我が国の高度経済成長期に集中的に整備された社会資本ストックのうち道路施設は,道路延長約120 万km,道路橋梁約70 万橋,道路トンネル約1 万本あり,建設後50 年を経過する道路橋,道路トンネルは,10 年後に全体の40%になると予測され,今後急速に老朽化が進むと想定されている。社会インフラの維持管理を適切に実施し,ライフサイクルコストを抑制しながら施設の長寿命化を図ることが,国のみならず社会資本の多くを管理している地方公共団体を含めた,我が国全体の緊急の課題となっている。
 このような背景から(一社)日本非破壊検査工業会(以下,工業会という)は,国の定める法令・技術基準などに基づき点検業務を実施する技術者・技能者の育成,確保を目的に,即戦力となる社会インフラの点検・診断の実務経験者及び非破壊試験技術者を対象とした「インフラ調査士」資格制度を創設し,平成26 年度から「インフラ調査士」講習会と「インフラ調査士」資格認証試験を実施している。本稿では,工業会が創設した「インフラ調査士」資格認証制度の概要について紹介する。

 

論文

点焦点型電磁超音波センサによる探傷とスリット近傍の局所振動
 芦田 一弘,滝下 峰史,坪井 誠也,中村 暢伴,荻  博次,平尾 雅彦

Flaw Detection with a Point-focusing Electromagnetic Acoustic Transducer
and Local Vibration around the Slit

Kazuhiro ASHIDA, Takashi TAKISHITA, Seiya TSUBOI, Nobutomo NAKAMURA
Hirotsugu OGI and Masahiko HIRAO

Abstract
In the previous studies, we developed the point-focusing electromagnetic acoustic transducer (PF-EMAT) for inspecting stainless steel piping, and found that the slit of 0.05 mm depth and artificially introduced stress corrosion cracking of 0.5 mm depth, being close to the weld, were well detectable at the frequency of 2.0 MHz. We also observed that the echo amplitude of SV wave from slits shows oscillation with nearly equal spacing as the slit depth increases. In this paper, we calculate the two-dimensional acoustic field using the finite element method (FEM) to understand this significant behavior. The FEM calculation reproduces the oscillatory amplitude change for the same condition as the experiment. We also calculated resonant frequencies of the two-dimensional models with slit defects and found that there are particular resonant frequencies in the band centered at the excitation frequency. At these frequencies, vibrational energy is highly concentrated to the region around the slits and a distinct node and antinode pattern occurs in the slit faces. We then conclude that the acoustic energy of the incident SV wave is focused at the slit mouth and a part of the energy is spent to excite this local vibration, making the echo amplitude decrease.

キーワード:Point-focusing electromagnetic acoustic transducer, Lorentz force, SV wave,
Slit detection, Finite element method Local vibration, Stainless steel

緒言
 近年,社会インフラ設備に対しての高経年化対策の充実が求められている。特に高経年化対策では進展性を有する割れの検出が重要である。この目的のために,圧電型探触子を用いた超音波探傷試験が広く適用されている1),2)。しかし,試験結果が表面粗さ,接触媒質量,探触子の保持力,探傷現場の環境,試験員の技量等の要因に影響を受けやすい。これらの影響を排除するために,レーザ超音波法3),電磁超音波法4)−7)等の非接触の超音波探傷法が研究されているが,いずれの手法も接触式の圧電型探触子を用いる場合に比べて超音波の送受信効率が低い。このような問題点を解決することを目指して著者らは非接触の超音波センサでありながら,優れた送受信効率を有する点焦点型電磁超音波センサ(以下,Point-Focusing Electromagnetic Acoustic Transducer PF-EMAT とする)の開発8)− 10)に取り組んできた。
 これまでの研究成果として,PF-EMAT は圧電型探触子に比べて反射波振幅の測定再現性が高いことや20 mm 厚さのステンレス鋼板の底面に導入した深さ0.05 mm の人工スリット欠陥を検出できることを確認した8),9)。また,ステンレス鋼配管の溶接部近傍に人工的に導入した応力腐食割れに対しても,深さ0.5 mm の割れを検出することに成功した10)。
 こうしたPF-EMAT を使った研究の中で,ある特異な現象が観測された。圧電型探触子をパルス波で駆動する斜角探傷を行った場合,スリットからの超音波反射信号の強度はおおむねスリット深さに対して単調に増加1)するが,PF-EMATを使った実験では,超音波反射信号の強度はスリット深さに対して振動した10)。割れ等の深さは超音波反射信号の強度から評価されることが多いが,PF-EMAT を使った探傷では割れ深さと超音波反射信号の強度との関係性が単純でないことを示唆している。本研究ではPF-EMAT で励起され,集束していくSV 波がスリットによって散乱される音場を2 次元有限要素法を用いて解析し,スリットの深さと超音波反射信号の強度との関係を解明する。

 

衝撃弾性波法によるPC シース内空隙の非破壊診断に関する実験と数値解析による検討
 藤岡 豊太,永田 仁史,安倍 正人

Experiment and Numerical Analysis for the Non-Destructive Inspection of a Void in
a PC Sheath by using an Impact Elastic Wave Method
Toyota FUJIOKA, Yoshifumi NAGATA and Masato ABE

Abstract
This paper describes the non-destructive inspection method to detect a void inside the PC grout by using an impulse hammer and accelerometers. We have already proposed the non-destructive inspection method to detect a crack inside a large concrete structure such as a caisson by using an impulse hammer. The proposed method can detect a crack deep inside a large concrete structure because of using low-frequency vibration signals, which are generated by the impulse hammer. Moreover, this method can also use the impulse hammer’s output signal as well as the accelerometers output signal. Therefore, the proposed method can estimate the position and size of a crack by the beam forming method. In this paper, we describe the application of the proposed non-destructive inspection method using an impulse hammer to detect a void inside the PC grout, and we evaluated the proposed application method. To evaluate the performance of the proposed method, we experimented using specimens of a PC-bridge. Moreover, we analyzed the propagation of the impact wave in specimens by FDTD method. From the results of the experiment and analysis of impact elastic wave propagation, we realized that the proposed method could measure the influence of a void inside the PC grout.

キーワード:Non-destructive inspection, Impact elastic wave method,
Finite difference time-domain (FDTD) method, PC grout

緒言
 ダムや防波堤などの大型コンクリート構造体は,地震などの災害による影響だけでなく経年劣化などによっても内部に破損が生ずることがある。また,コンクリート構造物を施工する際にも,内部空隙などの初期欠陥が発生することがある。そのため,大型コンクリート内部の深い位置に生ずる破損を適切に把握するために,破損の有無だけでなく位置・大きさも推定できる非破壊検査技術が強く求められている。そこで,大型コンクリート構造体の深部の破損を推定するための新たな方法として,インパルスハンマと加速度センサ(以下,センサ)を用いた新たな非破壊検査法の研究開発を行っている。本研究では,今までにダムや防波堤のケーソンを対象とした測定実験を行い,提案した非破壊検査法の診断性能の検証を行っている1),2)。
 本論文で診断対象としているコンクリート橋は,生活に身近な大型コンクリート構造物の1 つである。現在,国内において新設されているコンクリート橋の多くはプレストレストコンクリート(PC)を使用したコンクリート橋(以下,PC 橋)であるといわれている3)。PC において,プレストレスの与え方にはプレテンション方式とポストテンション方式があるが,内ケーブル工法によるポストテンション方式で施工されたPC橋の場合,グラウトの未充填によりシース内部に空隙を生ずる場合があり,それがPC 橋の安全性に大きな影響を与える。そのため,グラウトの未充填箇所を正確・簡便に診断できる方法が求められている。
 本論文では,研究開発を行っている大型コンクリート構造体のための非破壊検査法をPC シース内空隙の非破壊診断に適用するため,PC 橋を構成するセグメントにより構築された供試体を用い,非破壊診断のための測定実験,さらに時間領域有限差分法(以下,FDTD 法)を用いた供試体の衝撃弾性波解析から,PC 橋におけるグラウトの未充填によるPC シース内空隙の診断への提案した非破壊検査法の適用についての検討を行った。

 

to top