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機関誌

2016年7月号バックナンバー

2016年7月1日更新

巻頭言

「近未来の複合材料」 特集号刊行にあたって
  松嶋 正道

 複合材料は異なる材料を組み合わせることにより,各々の特性以上の向上が得られた材料です。強化材は固くて強い性質を持っており,これを樹脂などで固めて成形したものが複合材料と呼ばれています。この特集号では,CFRP カナード翼を模擬した構造部材の強度実験,低コストCFRP 成形技術VaRTM 材を用いた翼模型の強度実験,カーボンナノチューブを用いたCFRP の特性評価,ポリプロピレン樹脂熱可塑複合材料,落花生莢(さや)を用いたパーティクルボード開発などの特集号となっています。非破壊検査評価法として,今回のCFRP カナード翼はヘルスモニタリング機能を具備しており,FBG センサやひずみゲージを用いて計測しています。VaRTM 翼模型の強度実験では衝撃損傷や成形不具合部の検査を超音波探傷とエコサーモ探傷を行った結果などが報告されています。このように,炭素繊維と樹脂を組み合わせたCFRP の非破壊検査法は徐々に進展しています。ところがカーボンナノチューブ複合材料やパーティクルボードの検査はこれからの課題です。
 昨今,FRP 部材非破壊検査の問い合わせが多くあり対応に時間をとられている現状です。GFRP 製品(支柱,ブレード)とCFRP 部材(サンドイッチ構造,フェアリング,レーザ照射)などの問い合わせがあります。前者のGFRP 製品は支柱が耐用年数を迎えての健全性,ブレードの疲労や衝撃を受けたものです。後者CFRP 部材はハニカムサンドイッチや発泡コアサンドイッチ部材の接着不良やはく離の検出,走行中に受けたフェアリング損傷同定,レーザ照射による熱損傷同定などです。検査会社担当者が抱える課題には被検体の素性,被検体サイズ,使用環境や境界条件,損傷履歴,損傷サイズなどが少なくともあると思います。また,CFRP 部材と金属部材結合部に発生する微弱電流による腐食も問題視されています。CFRP の母材にはエポキシ熱硬化樹脂が広く使われていますが損傷を受けた部位の修理は容易ではなく,時間も手間もかかります。修理後の検査・判定も難しい状況です。熱可塑樹脂であれば再融着が可能であり,温度と圧力をかければ修理が可能です,熱可塑樹脂の優位性が理解できればと思っています。今回は,千葉県産業支援研究所細谷主席研究員に県を代表する特産品,落花生の莢を用いたパーティクルボードの開発の執筆をお願いしています,国内生産78%シェアをほこる落花生の廃棄物であった莢を加工して再利用する技術開発も進められています。強度や剛性を向上しようとするときに繊維に最適な樹脂を選択してFRP を成形する方法と樹脂の特性を向上するために強度材を選択するなど,複合材料を作るための技術開発を具体的に執筆いただいたと思っています。被検体の材料特性を理解したうえで最適検査法を選択するときの指標になればと思っています。

 

解説 近未来の複合材料

廃棄落花生莢を用いたパーティクルボードの開発
  千葉県産業支援技術研究所 細谷 昌裕

Development of Particle Board using Discarded Peanut Husk
Chiba Industrial Technology Research Institute Masahiro HOSOYA

X 線 CT,バイオマスプラスチック,複合材料,リサイクル,グリーンコンポジット

1. はじめに
近年,複合材料における天然材料の活用に関しては,天然材料と熱可塑性プラスチックあるいは生分解性プラスチックを複合化させる研究が数多く行われている。例えば,Woodhams ら1)は,Wood パルプ繊維を強化材に用いてポリプロピレン及びポリエチレンとの複合材料を作製し,その組成と力学的特性について検討している。またNetravali ら2),3)は,パイナップル繊維とPHBV(Polyhydroxybutyrate-co-valerate)系の生分解性プラスチックを組み合わせたグリーンコンポジットの界面特性及び力学的特性について検討している。
 千葉県は国内で最大の落花生生産地であり,2013 年度における落花生生産量は約12700 t で,国内生産量16200 t の約78%を占めている4)。国内で唯一の落花生育種を行っている千葉県農林総合研究センターでは,大正時代後期より落花生の系統選抜に取り組んでおり,「ナカテユタカ」,「郷の香」,「おおまさり」等の品種を育成するなど,古くから落花生の品種開発と普及に取り組んでいる。
 収穫された落花生のうち,約50%は莢(さや)を除いたむき身落花生として流通しており,莢付き落花生全質量に対する落花生莢の質量割合が25%程度であるから,むき身加工工程で排出される落花生莢は,千葉県内だけで年間1600 t に上ると考えられる。落花生莢は燃料や堆肥として一部利用されているものの,そのほとんどは産業廃棄物として焼却処分されているのが現状であり,工業用として積極的に利用された例は少ない。
 千葉県産業支援技術研究所では,この廃棄落花生莢を産業資源として有効活用するべく,建築用複合材料を開発することを目的として,2007 年度よりパーティクルボードの開発を行ってきた。建材,家具等に使用されるパーティクルボードは,日本工業規格 A 5908「パーティクルボード」により規定されており,表面状態や曲げ強さ等により区分され,それぞれの要求品質項目が定められている。
 落花生莢を用いたパーティクルボード(以下,PHP ボード)は,図1 に示すように落花生莢粒子の粒状感を残す独特の外観を持つことから,表面性状を生かして主に家具等へ適用することを目指し,表面に化粧等を施さない素地パーティクルボードの成形を目標に,日本大学生産工学部と共同でPHPボードの開発を行ってきた。
 2008 年度までの研究では,粉砕して粒度を選別した落花生莢に,生分解性樹脂で熱水に溶解するという特性を持つポリ・ビニル・アルコール(以下,PVA)樹脂と水を加え,熱プレス機を用いて縦120 mm ×横160 mm ×厚さ4 mm のパーティクルボードを試作したところ,JIS A 5908 に規定される「8 タイプ」(曲げ強さ8 MPa 以上)を満足できることを確認した5)。一方,国内市場で取引されるパーティクルボードは厚さについては10 mm 以上のものが多数を占めており,9 mm 以下のものはほとんど流通していないことから,2010 年度よりボード厚さを10 mm として試作を行った。また,曲げ強さについても家具用ではJIS A 5908 の「13 タイプ」(曲げ強さ13 MPa以上),建築用では「18 タイプ」(曲げ強さ18 MPa 以上)が主流であることから,これをクリアすることを目標に成形方法を検討しところ,2012 年には従来より高密度化を図った3層構造のPHP ボードを開発し,曲げ強さ13 MPa を満足する結果を得た。この3 層構造による成形方法を用いて2013 年度からはボードサイズを縦300 mm ×横300 mm ×厚さ10 mmとした大型ボードの成形を開始し,熱プレスによる成形が可能であることを確認した。
 成形方法については,水を含浸した落花生莢粉末中にPVA樹脂粉末を均一に分散し,これを熱プレスすることにより発生した水蒸気がPVA 樹脂を溶解する。PVA 樹脂は落花生莢粉末をコーティングしつつ落花生莢粒子の空隙から外部に排出され,乾燥状態となって落花生莢粒子を結合する。この成形手順の概略を図2 に示す。

 

 

配向カーボンナノチューブ複合材料の最近の進歩
  東京農工大学 小笠原俊夫

Recent Researches in Aligned Carbon Nanotube/Polymer Matrix Composites
Tokyo University of Agriculture and Technology Toshio OGASAWARA

複合材料,プラスチック,強度評価,カーボンナノチューブ

1. はじめに
 カーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes(CNT))は高弾性率,高強度を有するため,次世代の複合材料用強化材として期待されている。しかしながらこれまでの国内外における多くの研究によって,粉末状CNT の複合材料用強化材としての効果は極めて限定的であることが明らかになっている1)−5)。たとえば著者らの実験結果では,引張り強度94MPa,ヤング率4 GPa のポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)に対して約15 体積%のCNT を分散した場合でも,引張り強度111 MPa,ヤング率7.6 GPa にしか向上していない5)。力学特性が改善するのはまだ良い方で,逆に引張り強度が低下するという報告も少なからずなされている。
 CNT 複合材料の力学特性の改善には,(1)CNT の配向制御,(2)CNT の均一分散,(3)CNT とマトリクスとの接着性向上,(4)CNT 体積率の向上,を実現する必要があると言われている1),4)。しかしながら,粉末状CNT を用いてこれらの改善を行うことは現実には困難であり,そのため顕著な力学特性の向上は達成できていない。紙漉などの方法でCNTを紙状に成形したシート(バッキーペーパ(Buckypapers))を利用することによって,複合材料を製作する方法なども提案されているが6),7),バッキーペーパを適用しても繊維体積率としては10%程度を達成するのが限界であり,またCNTが面内にランダムに配向していることもあって,期待するほどの特性の改善は報告されていないのが実情である。
 ところで2002 年頃からSi やSiO2 等の基板上に,単層(Single-walled CNT)や多層CNT(Multi-walled CNT,MWCNT)を垂直に配向成長させた「CNT-array 成長技術」が確立されている。垂直配向CNT は,その様相からForest(森林)とも呼ばれ,主に電子デバイスや熱デバイスなど機能材料としての適用が期待されている。CNT-Forest を適用した複合材料の研究も行われているが,CNT 長さが最長でも2 ~ 5 mm であることから,力学特性を評価可能なサンプルを製作することは容易ではなかった。ラボレベルで検討された例として,North Carolina 州立大学のBradford らの研究がある8)。彼らはCNT-Forest を斜め方向に押し倒すことによって,CNT が一方向に配向したシートを製作し,配向CNT/エポキシ複合材料を試作することに成功した。その結果,CNT の重量分率32 wt%のエポキシ複合材料において,引張り強度402MPa,ヤング率22.3GPa という極めて高い値を報告している。前述した著者らのPEEK のデータと比較すればおわかりいただけるように,母材樹脂に対して強度・ヤング率ともに1 桁近く向上しており,格段に優れた力学特性が発現している。清華大学のWang らは,ドミノ倒し法という同様のCNT シート製造方法について報告している9)。これらの研究により,配向CNT の強化材としての潜在能力が次々と確認されるようになってきた。
 これに対して2004 年頃に,CNT-Forest からCNT を横方向に引き出すことによって,配向CNT シートを連続的に製作するという画期的な方法が,Texas 大学のZhang らによって発表された10)。同様の方法によって作られた配向CNT シートを適用した複合材料に関する研究が,清華大学のCheng とFanらのグループによって積極的に行われている11)− 13)。例えば,CNT 16.5 wt%を分散したエポキシ複合材料において,引張り強度230 MPa,引張り弾性率20.4 GPa という優れた特性が得られている。このように多層CNT-Forest からCNT を引き出すことによって得られるCNT シートは複合材料の強化材として有望であるが,紡績可能なCNT を高効率で垂直配向成長させることは,実は容易なことではない。これに対して静岡大学の井上らは,触媒としてFeCl2 を適用し,C2H2 を原料ガスとした熱CVD 法により,短時間で高品質の多層CNT-Forestを成長させる画期的な技術を開発した14)。この方法を適用すると,わずか20 分という短時間で多層CNT を数mm の長さにまで成長させることが可能である。この方法で成長したCNT は図1 に示すように横方向へ連続して引き出すことが可能であり,容易に配向CNT シートを製作することができる15)。この点からも画期的な技術である。配向CNT シートは複合材料の強化材としての応用が十分に期待できる。
 著者らは2010 年頃から,井上らによって開発された高速CNT成長法によって製作された配向CNT シートを適用したCNT 複合材料の試作と評価を進めてきた16)。マトリクス樹脂としては,エポキシ樹脂,ポリプロピレン樹脂(PP),ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS),ポリアミド(PA),ポリ乳酸(PLA),熱硬化性ポリイミド樹脂,熱可塑性ポリイミド樹脂について検討し,いずれも良好な複合材料の試作に成功している。また複合材料プロセスとして,CNT シートに樹脂を予め含浸するプリプレグ法を適用することで,制御されたCNT 体積率を有するCNT 複合材料を安定的に製作することが可能となっている。この製造プロセスは驚くほど簡単で,かつ高品質のCNT 複合材料が容易に得られる。
 そこで本稿では「配向カーボンナノチューブ複合材料の最近の進歩」と題して,著者らのグループで開発したプリプレグ法による配向CNT/エポキシ複合材料およびCNT/PPS 複合材料のプロセスと力学特性について紹介したい。

 

低コストVaRTM 成形CFRP
 (国研)宇宙航空研究開発機構 青木雄一郎

Low-cost VaRTM Process CFRP
Japan Aerospace Exploration Agency Yuichiro AOKI

複合材料,航空機,超音波探傷,フェーズドアレイ探傷,サーモグラフィ

1. はじめに
 CFRP をはじめとした複合材の航空機構造への適用は年々増加傾向にあるが,複合材機体を安全に運航するには,機体自体が安全な飛行を維持できるように設計・製造されていることは当然のことながら,機体の適切な運用と整備方法が設定されていることが必要不可欠である。一般的な民間航空機の場合,新規で機体開発する際には,製造国の航空当局が定める型式証明制度に従って型式証明計画を立て,設計・製造方法の適切性を試験により証明していくが,その際には,製造される部品の品質管理と運用中の安全性確保のための検査手法も試験を通してその手法の妥当性を実証しなくてはいけない。しかし,一般的には,機体開発の型式証明計画や実証試験内容が開示されることはなく,複合材のような新規材料を航空機構造へ適用する場合に参考になる実用的研究の例も少なかったことから,JAXA(Japan Aerospace ExplorationAgency:宇宙航空研究開発機構) では,将来的な国産旅客機開発等へのフィードバックを目的として,2004 ~ 2008 年の5年間をかけて「低コスト複合材・製造技術の研究」を実施した1)−6)。この研究では,低コスト製造が期待されるVaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)成形技術を航空機主翼構造へ適用し,VaRTM 成形による航空機主翼構造製造への技術課題を抽出するため,構造寸法を段階的に増加させながら供試体試作を行い強度や品質の評価を実施してきた。本稿では,これらの供試体評価を通して実施された非破壊検査手法の研究について紹介する。

 

自己診断機能を有するCFRP カナード翼
 (国研)宇宙航空研究開発機構 星  光

CFRP Canard Wing with Structural Health Monitoring System
Japan Aerospace Exploration Agency Hikaru HOSHI

CFRP,ビジネスジェット,カナード,SHM,FBGセンサ

1. はじめに
 宇宙航空研究開発機構と首都大学東京では,「航空機用先進複合材構造ならびに次世代航空技術に関する研究」と題した共同研究を行っている。本共同研究では,次世代航空機への適用を目指した先進複合材技術,空気抵抗低減技術,そして本稿で紹介する構造健全性診断技術等を,総研究期間9 年間の計画で実施している。本共同研究は平成28 年度が最終年度であり,これまでに実施してきた研究内容の検証と一般への広報活動を目的として,カナード翼を有するビジネスジェット機の実大部分模型の試作を実施した。本実大部分模型のカナード翼は,複合材の1 種であるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics,以下CFRP と呼ぶ)を用いて試作されており,損傷に対する自己診断機能を有している。本カナード翼の補助的な試作目的の1 つに,光ファイバセンサを用いた構造健全性診断(SHM:Structure Health Monitoring,以下SHM と呼ぶ)システムの複雑構造への適用と,その課題抽出がある。一般的に,研究室レベルでのSHM 適用検討では,単純な試験片や小型な供試体が用いられる。このため,複雑構造へSHM を適用する際の課題抽出にはやや不向きである。他方,大型の実大供試体を試作するには,人員,工期,予算などが問題となる。そこで,本試作研究では,機体規模がさほど大きくないビジネスジェット機を想定機体に選定し,上記問題の解決を企図した。これにより,比較的複雑な複合材構造に対するSHM の適用検討と,一般への啓発事業が同時に実施できた。本稿では,カナード翼構造の試作とSHM の適用を中心に,ビジネスジェット機の実大部分模型の試作について概説する。

 

熱可塑性複合材料
  京都工芸繊維大学 野村 学

Thermoplastic Composite
Kyoto Institute of Technology Manabu NOMURA

複合材料,GFPP,WPC,形状制御,構造形成

1. はじめに
熱可塑性複合材料は,自動車部品やOA 機器などをはじめとした工業材料分野において,無くてはならない素材として多用されている。この複合化の目的は,樹脂の機械的特性(強度,弾性率,耐久性など)の向上,樹脂単独には無い機能性(難燃性,導電性,熱伝導性,遮光性,制振性,磁性,圧電性など)の付与,その他に成形性の改良,寸法安定性の改良,二次加工性の付与など多岐にわたり,複合材料の重要性がわかる。ここでは,熱可塑性樹脂の中で単独樹脂として最も多く使用されているポリプロピレン(PP)を取り上げ,最近の複合化技術について紹介する。PP は安価な汎用樹脂で且つ成形性(流動性),耐薬品性に優れるものの工業材料として使用するには機械的物性が十分とは言い難く,そのため複合化が盛んに検討されてきた。現在では様々なフィラーや強化材を用いた多くの優れた複合材料が開発されており,日本を代表する自動車においてもバンパをはじめ多くの部品の必須の素材となっている。ここでは,多くのPP 複合材料の中から,ガラス繊維強化PP(GFPP)および近年注目され始めた環境を考慮したバイオマスフィラー充填PP を取り上げ,その技術開発状況を紹介する。

 

論文

直流電位差法による円管−フランジ溶接部のき裂評価に及ぼす溶接部形状および導電率の影響
  多田 直哉、内田 真、小坂 将樹、室元 貴宏

Effect of Welded Part Geometry and Electrical Conductivity on the Crack Evaluation of Pipe-Flange Welded Part by the Direct-Current Potential Difference Method
Naoya TADA*, Makoto UCHIDA**, Masaki KOSAKA* and Takahiro MUROMOTO***

Abstract
When the crack of the pipe-flange welded part is evaluated by the direct-current potential difference method (DC-PDM), the result is affected by the weld metal geometry and electrical conductivity. In this paper, a pipe-flange welded component was modeled and the detection of the crack by DC-PDM was discussed based on the results of electric field analyses using the finite element method. In the analysis, the depth of crack and the geometry and electrical conductivity of the weld metal were varied. In all conditions, increase in potential difference by the crack took the maximum value near the boundary of the flange and weld metal, and it was high enough for crack detection. Although the potential difference was affected by the weld metal geometry and lectrical conductivity, the normalized potential difference was well correlated with the crack depth ratio, and the relation was ormulated by a cubic equation. Based on the equation, the crack depth was evaluated successfully for all conditions with different weld metal geometries and electrical conductivities.

Direct-current potential dif Key Words ference method, Weld, Pipe, Flange, Crack, Finite element method

1. 緒言
 大型の機械加工設備や化学,発電プラント等では,動力伝達,原料輸送,熱エネルギー移動の目的で多数の金属製配管が用いられている。配管は,ねじや溶接,ボルトとナット等を用いて様々な方式で接合,接続されるが,その代表的な方式の一つに差し込み溶接フランジがある。これは配管の端部をフランジに差し込んで溶接した後,フランジどうしをボルトとナットで接続するものである。これらの溶接部は,溶接時の熱の影響を受けて組織や材質が変化する上,溶け込み不足等の溶接不良,残留応力の存在,部材の曲がりや複雑な形状に起因した応力集中により,他の箇所よりも力学的負荷が集中する傾向にある。したがって,接続機器の機械的振動や内部流体の圧力変動により疲労破壊や不具合が生じやすい1)。
 これらの配管接合部へ適用可能な非破壊評価技術の一つに超音波探傷法がある。本手法は非破壊評価技術として確立されてはいるものの,閉じたき裂に関しては,き裂面に到達した弾性振動の一部が対面するき裂面に伝達するため,危険側の評価結果を与えること2),また,溶接部内のき裂に対して適用する場合は,熱影響部の結晶組織の違いや余盛等による表面の凹凸が原因で,き裂の評価が難しいことなどが明らかとなっている3)。他の非破壊評価手法の一つに直流電位差法(Direct-Current Potential Difference Method;DC-PDM)がある4)。本手法は,欠陥の存在による断面積の減少を電位差の変化によって評価する手法である。原理が簡単で特殊な装置を必要とせず,較正関係が有限要素法などの数値解析により容易に求めることができることから,破壊力学試験におけるき裂長さの測定5),6),発電プラントの配管減肉の評価7),8)にも適用されるようになっており,(一社)日本非破壊検査協会においても関連規格が発行されている9)。
 著者らは,円管-フランジ溶接部材の溶接金属とフランジの接合界面に発生したき裂に対し,直流電位差法を適用することを想定し,有限要素法による3 次元直流電位場解析を実施している10)− 13)。その結果,外側から見えない溶接部の内側にき裂が存在する場合でも,溶接部とフランジ面の境界近傍において電位差が増加し,き裂が検知できること12),溶接部周辺で測定される電位差が溶接部厚さの影響を受けること13)を明らかにしている。しかしながら,溶接部厚さ以外にも溶接部の角度や形状,部材と溶接金属の電気抵抗率も結果に大きな影響を及ぼすと考えられるため,直流電位差法を用いてき裂を精度よく評価するためにはそれらの影響について検討することが必要である。そこで本研究では,有限要素法を用いて3 次元直流電位場解析を実施し,き裂が存在する円管-フランジ溶接部の電位差変化に対して,溶接部の形状および導電率が及ぼす影響について検討した。

 

 

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