Nonlinear Interaction of Elastic Waves and the Stress Effect
Masahiko HIRAO Graduate School of Engineering Science, Osaka University
キーワード 超音波,非線形弾性,音弾性,3波相互作用,共鳴条件
1. はじめに
材料力学のもとになっているフックの法則によれば,応力とひずみ(あるいは,加えた力とそれによる変形量)は比例することになる。これは,金属やセラ ミックスについてよくあてはまるが,ゴムなどの高分子材料で比例しないことは経験するところである。精密な測定をすると,金属の応力−ひずみ関係も特に低 い応力域で下に凸の曲線となり,必ずしも比例しない。このようなとき,応力sijはひずみeklの多項式で表され,
σij = Cijkl εkl+Cijklmn εklεmn+… ………(1)
と なる。Cijklを2次の弾性定数(ヤング率や体積弾性定数などに相当するCijklmnを3次の弾性定数とよんでいる。これらは,ひずみエネルギを微小 量であるひずみで展開したときの2次と3次の項の係数である。金属では,弾性ひずみの大きさは高々10−3であるので,上式第2項以降の非線形弾性は弱い 効果であり,工学的には無視してよいことが多い。しかし,固体材料が非線形挙動を示すことは自然なことであり,線形応答は特殊な場合,あるいはその近似と 考えるべきであろう。ここでは,3次の弾性定数によって代表される非線形弾性の背景について述べ,続いてこの3次の弾性定数を測定するひとつの超音波実験 について紹介する。