logo

<<2078>>

  • 1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  •  
  • 予定はありません。

機関誌

2006年度バックナンバー巻頭言10月

2006年10月1日更新

機関誌「非破壊検査」 バックナンバー 2006年10月度

巻頭言

「第四回学術セミナー ─ 構造関連事故に関わる安全の課題 ─」特集号刊行にあたって  坂  眞澄

ナノテクノロジー,IT産業等,軽薄短小技術分野の研究開発,技術発展あるいは新製品の市場投入には目覚ましいものがあり,世界の主要産業分布が大きく変 わろうとしている。一方,国内の重厚長大技術分野においては,安全に関わる重大な問題,事故が顕在化し,尊い人命が損なわれ始めている。これは,我が国の 重厚長大技術分野においては,産業界の世界的規模の事業競争に対応する構造改革(リストラクチャリング)が必ずしも十分には機能せず,社会インフラを支え る巨大複雑システムをうまく維持・管理できない状況が既に始まっている結果とみることもできる。
 近未来を担う若手研究者の多くが軽薄短小技術分野の研究に携わる時代になっている現状において,重厚長大技術分野における強度信頼性設計あるいは検査な らびに評価技術が衰退し,ひとたび事故が起これば人類社会に甚大な被害がもたらされるのは明らかで,本技術分野は将来においても社会を支える基盤技術とし て不可欠であることは言うまでもない。我が国,そして世界の社会基盤である重厚長大技術分野の安全は確保されなければならない。
 このような背景を踏まえ,(社)日本非破壊検査協会では平成18年3月に,第四回学術セミナー「構造関連事故に関わる安全の課題」を主催した。同セミ ナーでは,(社)日本クレーン協会の橘内良雄氏による失敗事例を活用した機械・構造物の損傷防止対策についての講演,(独)物質・材料研究機構の八木晃一 氏による構造材料の最適な活用のためのリスクベース工学についての講演,(財)航空宇宙技術振興財団の寺田博之氏による保守点検整備とヒューマンファクタ についての講演がなされた。
 これらの講演内容はいずれも,重厚長大技術分野に従事する技術者にとって非常に有益なものであり,セミナー当日の参加者だけでなく,当協会の会員全員に 紹介すべきとの考えから,本特集号が刊行されることとなった。日頃の技術・研究や検査業務に役立てて頂けるものと確信する。
 種々ご努力を賜った関係各位に厚く感謝申し上げる。

*東北大学(980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-01)大学院工学研究科ナノメカニクス専攻・教授
1982年東北大学大学院工学研究科機械工学専攻博士課程後期3年の課程修了。非破壊検査,延性破壊,動的破壊,電子デバイスの強度評価等に関する研究に従事。(趣味)テニス

 

解説 第四回学術セミナー 構造関連事故に関わる安全の課題

失敗事例を活用した機械・構造物の損傷防止対策
   橘内 良雄 (社)日本クレーン協会

Preventive Measures Against Damages to Machines and Structural Components
Using Lessons from the Causes of Failure
Yoshio KITSUNAI Japan Crane Association



1. はじめに
 機械や構造物の破壊事例をみると,学習や経験したことのない新しい要因が背景となって損傷が発生している場合よりも,むしろこれまでの事例から学んだは ずの教訓が有効に生かされずに類似の損傷を招いている場合が少なくない。このような背景として,最近の社会構造の変化から技術の細分化あるいは専門化が進 み,熟練技術者が有する豊富な経験や全視野的な技術を若年技術者に円滑に伝承することが困難になっていることが指摘されている。そこで類似の損傷を防止す るために,近年失敗の原因や経過を分析して,それらを知識(教訓)として共有すると共に第三者に情報を伝達することにより,再発の防止のみならず製品開発 にも積極的に活用することを目的とした「失敗学」が提唱1)されている。
 機械・構造物で発生した損傷の原因を分析した結果によれば,疲労破壊が約60%を占めていることが報告2)されている。本稿では疲労破壊した機械・構造 物を対象にして,社会的に注目を集めた2,3の事例や著者が経験した事例について紹介し,損傷事例に共通する問題点と対策(失敗活用法)について私見を述 べてみたい。

 

 

リスクベース工学に基づく材料の最適な選択
   八木 晃一 (独)物質・材料研究機構

Selection of Suitable Materials Based on Risk-based Engineering
Koichi YAGI National Institute for Materials Science

to top