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機関誌

2014年度バックナンバー5月

2014年5月1日更新

巻頭言

「X 線の測定と新しいデジタル画像用X 線センサ」特集号刊行にあたって  脇部 康彦

 デジタルラジオグラフィ(Digital Radiography,以下DR という)とは,従来の透過写真に代表される アナログ画像を利用する透過試験法(アナログラジオグラフィ)に対して,透過X 線の情報をデジタル 信号に変換し,再構成して得られたデジタル画像を利用する透過試験法の総称である。X 線I.I.(Image Intensifier)の出力蛍光像をデジタル出力カメラで撮像,またはアナログ出力カメラで撮像しデジタル 画像に変換する透視法や,フィルムデジタイザを用いて透過写真をデジタル化して観察又は保存する こともDR に区分される。画像情報をデジタル化する利点の一つはデジタル画像処理技術を適用できる ことであり,X 線I.I. を用いた透視システムの像質はデジタル画像処理技術によって飛躍的に向上して いる。新しいDR 技術としては,X 線ラインセンサ,FPD(Flat Panel Detector),IP(Imaging Plate) を用いるCR(Computed Radiography)がある。これらは,近年の半導体製造プロセスの進歩,データ 転送インターフェースの高速化,PC の処理速度の高速化と大容量化などにより,性能が向上している。
 工業分野ではフィルムによる直接撮影法(以下フィルムRT という)が主流であるが,フィルムRT を 除いて,ほぼ100%デジタル化されている。また,フィルムRT と同等の検出性能を持つ技術としてCR およびFPD の導入が検討されている。CR とFPD では,ともにフィルムによる透過写真と同様のデジタ ル透過画像が得られ,フィルムRT と比較して,『①現像作業が不要なため廃液が発生しない。②撮影後 (CR はレーザによるIP 読み取り後)即座に画像を見ることができる。③ X 線に対して高感度でありダ イナミックレンジが広い。④画像処理技術によってノイズ低減やコントラスト強調などの画質改善を 行うことができる。⑤画像の保存,複写が容易で検索が早く,画像の転送も容易である。⑥保管・複写・ 転送しても画質が劣化しない。』など多くの利点をもっている。解像度についてはCR とFPD はフィル ムRT に及ばないが,かなり改善されてきている。CR ではレーザによるIP の読み取りピッチが初期で は100 μm であったが,現在は25 μm ピッチで読み取れる装置が開発されている。また,FPD の画像セ ンサは画素ピッチが100 ~ 200 μm のものが一般的であるが,50 μm ピッチのものも開発されている。
 本特集では,DR にとって最も基本的な構成要素である「X 線画像化センサ」を取り上げ,X 線ライ ンセンサ,FPD などのしくみと最新情報などについて解説していただいた。
 DR ではX 線画像化センサの性能が向上し,フィルムRT と比較して少ない照射線量で透過画像を得 ることができるが,撮影に際してはフィルム撮影時と同様に放射線被ばくに対する安全管理が要求さ れる。そこで,X 線量測定についての基本的な内容と線量計の種類,および選定と使用における注意事 項についても技術的な裏付けを分かり易く解説していただいた。
 医療分野ではフィルムRT に代わってDR が急速に普及している。工業分野においてもDR に関する 規格が整備され,DR の普及が進むことを期待するとともに,本特集がその一助となることができれば 幸いである。

 

 

解説 X線の測定と新しいデジタル画像用X線センサ

X線の線量測定 −測定器の種類と特長,測定方法−
 田中  守   日立アロカメディカル(株)

Dose Measurement of X-ray
Hitachi Aloka Medical, Ltd. Mamoru TANAKA

キーワード エネルギー特性,時定数,測定範囲,サーベイメータ,点検校正



1. はじめに
 非破壊検査装置で利用されるX 線エネルギーは検査対象により数k ~数百keV まで広範囲にわたる。一方,X線の照射 時間も数秒以下で利用される場合もあればインライン検査装置のように連続照射する場合もある。
 また,使用形態もX 線を専用の部屋,遮へい箱の中,または野外で照射する場合と様々である。
 本稿では,非破壊検査装置を管理するための代表的な測定器としてサーベイメータを中心にX 線の測定を説明する。
 サーベイメータの指示値をどのようにして読み取るかが測定者に課せられた測定技術である。読み取った瞬間に「指示値」 が「測定値」に変わる。この「測定値」の精度を高くするために,測定の原理,法令との関連,測定に使用する測定器の 特性を述べ,更に最適な測定器の選択,測定の留意点,測定評価,測定器の点検・校正について解説する。

 

 

種々のX 線画像化センサのしくみと特徴,および,最近の動向
   富澤 雅美   東芝IT コントロールシステム(株)

The Mechanism, Characteristics and Recent Trend of the Various
X-ray Imaging Sensors
Toshiba IT & Control Systems Corpration Masami TOMIZAWA

キーワード X 線画像化センサ,X 線検出器,ラインセンサ,エリアセンサ,シンチレータ



1. はじめに
 非破壊検査の対象となる被検査物は,素材・食品・自動車部品・電子部品・実装基板・建造物などの多岐にわたり,そ の材質もプラスチックス,アルミニウム・鋼・銅などの金属,セラミックスなどの多岐にわたる。また,その検査の目的は, 欠陥検出・異物混入検査・構造検査・寸法測定などやはり多岐にわたる。これらの検査では主に被検査物を透過した線量 (透過線量率)の分布を画像化している。それぞれの検査対象と目的に合わせて,X 線管の管電圧として20 ~ 450 kV など という広いレンジが使用される。このように千差万別の検査条件に対応し,より良い画質を提供するために様々なX 線画 像化センサが製品化され,また,開発されている。それらは元々医用として開発・製品化されて産業用にも使用されたも の,および,元々産業用として開発・製品化されたものがある。特に近年の半導体製造プロセスの進歩,データ転送イン タフェースの高速化,PC の処理速度の高速化と一度に扱えるデータ量の増大などは,X 線画像化センサの開発にも大きく 寄与し,性能が向上した様々なセンサが開発されている。
 X 線発生装置と相まって画質を決定付ける基本的な要素の一つであるX 線画像化センサについて,X 線像を画像化する 種々のセンサのしくみと特徴,および,最近の動向について解説する。X 線画像化センサには,その材料・設計・製造・ 試験などの随所にわたって,とても多くの技術とノウハウが盛り込まれている。ここで解説できるのはその一端に留まり, また,既知の情報ばかりと感じられる読者もおられるかもしれないが,この機会を借りて技術的に整理しておきたい。なお, X 線像を画像化するセンサは,(X 線)検出器,(X 線)ディテクタと呼ばれることも一般的であるが,本稿では「X 線画像 化センサ」と称する。

 

X 線透視・CT 用FPD の選定ポイントと最近の動向
    高村 建治    イーグル工業(株)ネオプトカンパニー

Points in Adoption and Recent Topics of FPD for Industrial X-ray
Fluoroscopy and CT
Eagle Industry Co., Ltd., Neopt Company Kenji TAKAMURA

キーワード 工業用 X 線装置,フラットパネルディテクタ,シンチレータ,アモルファスシリコン,CMOS



1. はじめに
 X 線画像のデジタル撮影デバイスの中でも,特にX 線CT撮影など1 秒間に複数枚の静止画を撮影する要望にも対応で きるX 線透視・CT 用フラットパネルディテクタ(以下FPD)の基本的な特徴と機種選定にあたって留意すべき点を,弊社 が取り扱っているPerkinElmer 社(以下,PKI 社)製FPDを例に取りながら述べる。

 

X 線ラインセンサカメラの最新情報と今後の動向
    瀧日 真二   浜松ホトニクス(株)

The Latest Information and Future Trends of X-ray Line Scan Cameras
Hamamatsu Photonics K.K. Shinji TAKIHI

キーワード 非破壊検査,安全性,可視化,差分法,線質,全数検査



1. はじめに
 製品の安全性を要求する声の高まりは,一般向け製品に留まらず産業を支える生産設備や原材料に至るまで幅広く求め られている。そして,その検査の内容も,それまでの抜き取り検査から全数検査へと,X 線を用いた非破壊検査はその検 出の内容を大きく変更することが求められてきた。また,検査装置自体も取り扱いの安全性が必要とされ,検査装置メー カも取り扱いが簡単で安全性の高いX 線検出器を求めるようになっている。これらの要求に応える為に,広視野,高分解 能,高感度,高速検出の特徴を持つX 線ラインセンサカメラが開発されている。

 

研究速報

壁面登はん装置搭載用打音検査装置の開発
   徳臣佐衣子/森  和也/矢野 恕雅

Development of Impact Acoustic Apparatus for Concrete-Wall-Climbing Robots
Saeko TOKUOMI, Kazuya MORI and Yukimasa YANO

キーワード 非破壊試験,打音検査装置,コンクリート構造物,壁面登はん



1. はじめに
 近年,コンクリート構造物の劣化とその点検が社会的にも関心を集めている。構造物の崩落等の事故は直ちに人身事故 に繋がる可能性があるからである。記憶の新しいところでは,平成24 年12 月2 日に笹子トンネル天井板の落下事故が発生 し,9 名が死亡,2 名が負傷している1)。
 著者らはコンクリート壁面の点検を目的として,Fig.1 に示すような壁面登はん型の打音検査装置の開発に取り組んでい る2),3)。従来開発した打音検査装置は,打撃力が十分ではなく,また,音響収集装置がノイズに対して脆弱であった。そ こで今回,打撃装置と音響収集装置を改良することによって,明確な打撃音が収集できる打音検査装置を開発した。

 

 

 

論文

鋼板厚さ測定におけるパルス渦電流試験の解析と実験からの検討
   小坂 大吾/橋本 光男

Numerical and Experimental Study of Pulsed Eddy Current Testing
in Steel Thickness Measurement

Daigo KOSAKA and Mitsuo HASHIMOTO


Abstract


This paper is concerned with the quantitative non-destructive evaluation of the wall thinning of large-sized steel tubes and / or the outer walls of fuel tanks in oil-refining plants using the Pulsed Eddy Current (PEC) technique. The time variation of the magnetic flux density and eddy current in ferromagnetic metal was revealed using a nonlinear finite element and step-by-step method. The necessary performance of the measuring instrument and apparatus was found and the sizing accuracy for steel plates was examined. In these results, it is shown that it is possible to measure the thickness of steel plates using the time variation in a search coil of proposed sensor.

Keyword Thickness measurement, Steel, Eddy current testing, Pulse induction



1. 緒言
 配管やタンクなどの構造物は,定期的にその厚さの評価が行われている。これには主に超音波を用いた厚さ測定法が使 われている。この手法は十分な精度で鋼材の厚さ測定が可能であるが,錆止め塗料の除去など表面の前処理や接触媒質を 使用する必要がある。
 接触媒質を必要としない厚さ測定法として,リモートフィールド渦電流試験法,磁気飽和渦電流探傷法,パルス渦電流 (Pulsed Eddy Current,以下PEC)1)を用いた手法が知られている。その中でPEC 試験は励磁時間を瞬間的に大きくするこ とが容易であること,励磁波形に広い周波数帯が含まれていること2),3)により,試験体表面から深部の情報を一度の測 定で得ることができる手法である4)。アルミ合金の積層板5)や鋼材6),7)のきず検出,厚さ測定,保温材下の配管腐食の 検出8)の適用例が報告されている。国内外においてPEC 試験のセンサ形状やアプリケーションについて活発な研究が行わ れてきた9)− 11)。一方で,磁性体の試験体内部の渦電流,磁束密度分布の時間変化についての議論は少ない。
 本論文ではPEC 試験の渦電流,磁束密度分布及び検出波形を,数値解析を用いて考察し,最適な鋼板厚さの測定法について検 討した。最初に,数値解析を用いて渦電流と磁束密度分布の時間変化を可視化し,PEC 試験の検出原理を明らかにする。次に, 提案するPEC センサの定量性を評価し,その有用性を示す。

 

 

 

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