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機関誌

2006年度バックナンバー巻頭言7月

2006年7月1日更新

巻頭言

「文化財の製作技術を探る」特集号刊行にあたって 

文化財を自然科学的立場から検討するのは,材質の分析,内部構造の調査,おかれてきた環境,そして保存方法の検討に役立てることであり,これらが考古学, 人類学などの発達,研究に資料を提供していると考えられる。こうした自然科学的調査過程の中で,作られた年代とか当時の技術などが明らかになって報道され るとき,多くの人は古代へのロマンを感じて注目するがそこにいたるまでの努力はあまり知られていない。文化財の調査方法が通常は非破壊的手法であり,その ためにX線やg線,赤外線,分光分析から温度,湿度などの計測装置が利用されるので,私ども非破壊検査関係者はこの点で親しみを感ずるように思う。日本に おいて,文化財保存のために自然科学を積極的に応用し始めたのは高松塚古墳が発見されてからといわれ(註),海外とくらべて歴史は浅いが,世界的レベルで 成果を挙げておりその評価も高い。日本の研究機関が海外の遺跡の調査や保存に協力している実情をニュースでも知ることができる。並行して大学にも保存科学 を専攻する機関がいくつか設置されて学生の教育も行われている。  特集では「文化財の 製作技術を探る」として非破壊的検査(調査)から得られた事実をもとにして先人が作ったモノの製作過程や技術について解説する企画を取り上げた。門外漢の ため,独立行政法人東京文化財研究所 三浦定俊先生にご協力を願って,研究者をご紹介いただき,それぞれの分野で行っている非破壊測定の手法と測定結果か ら判明される先人の製作技術についての解説をお願いした。取り上げた内容はいずれも日本のモノづくりのルーツになるようなもので,とても興味あることが解 説されている。執筆者いずれの方々もご多忙のところ私どもの企画にご協力いただき,刊行できることを喜んでいる。
  はじめの「CRで調べる江戸のモノづくり」(東京文化財研究所 三浦定俊氏)は江戸時代に製作された平賀源内作の自動噴水器,無尽灯,佐久間象山作のエレ キテルなどをコンピューテッドラジオグラフィ(CR)によって調査した報告である。「火縄銃の材質と製作技法」(国立歴史民俗博物館 齋藤努氏)では火縄 銃(鉄砲)に対する西洋と和式との思想の違い,武芸としての砲術,2種類の製作者の存在などが明らかにされている。「CR-AR法を用いた古代ガラス玉の 研究」(奈良文化財研究所 肥塚隆保氏)では材質の推定と加工法が示されている。ガラスはその歴史も古く世界共通で発見される遺物となっている。材質,産 地,製作技法のほかに地域の交流,科学技術の発展の過程なども読み取れるという。材質の分析にはCRとオートラジオグラフィ(AR)を組み合わせた方法を 用いている。次に絵画を取り上げた。「デジタル画像を用いた絵画技法の検証」(東京文化財研究所 城野誠治氏)では作品をカラー撮影,赤外線画像,蛍光画 像などで記録して絵画を分析する手法が紹介されている。最後に「可搬型蛍光X線分析装置と高松塚古墳壁画の調査」(東京文化財研究所 早川康弘氏)では調 査に初めて導入された可搬型蛍光X線分析装置による調査の様子と分析結果例が解説されている。狭く,湿度100%に近い古墳内で,装置は順調に稼動し,顔 料調査の結果Ca, Fe, Cu, Hgなど 7元素が検出されたという。
 先述の三浦先 生によれば,「文化財は安全第一,これに手を加えることは許されず,手間や時間,かかる費用は二次的である」として,文化財調査の4原則といって「壊さな い,傷つけない,汚さない,さわらない」をあげ,さわらないについてご自身は放射線透過試験の有効性を示している。工業界における品質管理,欠陥検査・点 検では多くの場合接触式の検査法が主流でありこうした考えは無理であるが,空中超音波や放射線を応用した非接触式の新しい技術の展開も期待される。
 最後にこの企画を通して先人の日本の技術のいくつかを知るとともに文化財の保存科学にご尽力されている研究者を思い,これまでと違った方面から文化財を理解する一助になれば幸いである。

*(註)参考文献:文化財のための保存科学入門,京都造形芸術大学編,角川書店
  特集号編集担当 小堀修身

 

解説 文化財の製作技術を探る

CRで調べる江戸のモノづくり
    三浦 定俊 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所

Research on Museum Objects of Edo Period by Computed Radiography

Sadatoshi MIURA National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo

キーワード 非破壊検査,工業用X線装置,デジタルラジオグラフィー,

放射線透過試験,文化財,科学技術資料,江戸時代



1. はじめに
日本は江戸時代の17世紀初めから19世紀半ばまで約250年間,外国との貿易を原則的に禁止したが,鎖国を解くと西洋文明を積極的に導入して,わずか1 世紀余りで近代化を達成した。このような急速な外来文化の導入が可能だったのも,長い平和の続いた江戸時代に国内で様々な技術が培われていたからである。 その技術のあらわれが,時計,からくり,天文や測量のための器具といえる。
 例えば,伊能忠 敬は江戸時代に世界でも最高水準の日本地図を製作したことはよく知られているが,その完成には忠敬に協力して測量を行った多くの人々と当時広く普及してい た測量器具の存在が大きな役割を果たしていた。元々我が国の測量術は中国の影響を受け,江戸時代の測量術は量地術,町見術,規矩術などと呼ばれていた。オ ランダとの交流で新しい測量術がもたらされ,距離を測るだけでなく作図して地図を作るようになった。距離を測るための道具として,間縄や歩度計,コンパス が用いられていたが,地図を作るためには角度も正確に計らなければならない。そこで角度を測るための道具として,磁石を用いて水平方向の角度(方位)を測 定する方位盤や,垂直方向を指すおもりをつけた象限儀などの測量器具が用いられた。
 伊能忠 敬は,角度を測るための方位盤がいつでも水平を保つように下におもりを入れたり工夫するなど,測量器具の改良も行った1)。伊能忠敬の測量に協力した越中 の石黒信由は,忠敬が考案した方位盤にヒントを受けて新たな測量器具を考案していて,地方の測量家の中からも忠敬の測量器具に刺激を受けて器具の改良を行 う人たちが現れている。また江戸後期の浅草茅町にある店の引札(チラシ)には様々な測量器具が載っていて,一般にも精密な測量用具が市販されていたことが わかる。しかし忠敬らが使用した測量器具は国の重要文化財として指定されているが,その他の測量器具はそれほど重要視されなかったために,散逸して失われ てしまうことが多く,現存する資料は多くない。
 国立科学博物館はトヨタ自動車(株)よ り,2001年に約1,300点の科学技術資料(トヨタコレクション)の預託を受け,東京文化財研究所がそれらの資料を保管して今年の3月まで,文部科学 省の科学研究費補助金(特定領域研究「江戸のモノづくり」)を受けて調査に当たった。現在,このトヨタコレクションは愛知万博を機会に改装された産業技術 記念館(名古屋市)で展示されているが,このコレクションは,からくり,測量・天文器具,銃・大砲,医療器具,書画・絵画,生活用品(時計,ランプなど) など広い分野にわたる質の高い科学技術資料を集めたもので,我が国の科学技術の歴史を知るために欠かせない一級の博物館資料である。
  特定領域研究「江戸のモノづくり」では,江戸から明治にかけた科学技術資料の材料,構造,技法,歴史などに関する調査が,文献と器物の両面から多くの研究 者の参加の下に行われた。筆者を代表とする研究班ではこの調査で,医療分野を中心に使われていたFCR(Fuji Computed Radiography)を文化財に初めて利用し,外から見ただけではわからない,からくりや時計,望遠鏡,顕微鏡など,様々な科学技術資料の構造を詳し く調べ,「江戸のモノづくり」の技術水準の高さを知ることができた2)。ここではその結果について解説するが,まずその調査で使われた手法と歴史から話を 始めたい。

 

 

火縄銃の材質と製作技法
   齋藤  努 国立歴史民俗博物館

Material and Manufacturing-Technique of Japanese Matchlock Guns
Tsutomu SAITO National Museum of Japanese History

キーワード 材料評価,拡大撮影,走査型電子顕微鏡,炭素鋼,鍛造品,鍛造,鍛接



1. はじめに
  日本の鉄炮の歴史は,16世紀の半ば,西日本に火縄銃が伝来した時から始まる。なお,現在「てっぽう」には「鉄砲」の漢字が当てられているが,江戸時代の 文献には通常「鉄炮」と記載されているのでここではそれに従う。伝来後およそ20年の間に日本各地で製作されるようになり,16世紀後半の戦乱の拡大に 伴って兵器としての生産が盛んに行われるようになった。この間に100万挺以上が作られたと推定されている。江戸時代になると,平和で安定した社会の中 で,射撃技術を競う武芸として行われた。江戸時代初めには30ほどだった炮術流派は,幕末にはおよそ400を数えるようになる。
  火縄銃は弾込めに時間がかかることから,幕末期の戦争で洋式銃に遅れをとることになり,性能が劣っているような印象をもたれがちである。しかし,武器発達 の背景を考えると,そう簡単に決めつけることはできない。ヨーロッパの火器運用は「敵の行動を阻止するために弾幕をはる」という戦術に基づいて発達してき たため,射撃に精度よりも迅速性が要求された。それに対し,もともと日本の戦いでは一発必中が重視され,江戸時代に武芸として発達していく際の稽古でも標 的射撃が中心であったため,発火時の衝撃が少なく命中精度に優れた火縄銃が使われてきた。つまり両者の違いは運用の思想が根本的に異なっていたためであ り,どちらが優れているという単純な比較はできないのである。
 鉄炮の製作者には大きくわけて2種類あった。一者は鉄炮製作を専門とする鉄炮鍛冶で,有名な製作地としては国友や堺がある。もう一者は鉄炮製作を専門とせず,他の製品を作る副業として鉄炮を作る職人で,これには刀鍛冶や,農具を作る野鍛冶がいた。
  高度な製作技術を要する江戸時代の代表的な鉄製品としては,鉄炮のほかに刀剣がある。刀剣は実用以外に美術品としての価値が認められてきたため,現在も刀 鍛冶の職人は全国に200人以上おり,それぞれの流派で伝統技術を守り伝えている。しかし鉄炮については,明治以降,洋式銃が一般的となり火縄銃の需要は 無くなったため,鉄炮鍛冶の伝承は途絶え,その技術もノウハウも失われてしまった。
 本稿では,江戸時代に作られた鉄炮について,銃身の鉄部分の材質と製作技法を明らかにするために自然科学的な分析を行った結果と,刀剣と比較した時の特徴を紹介する。

 

CR-AR法を用いた古代ガラス玉の研究
    肥塚 隆保 独立行政法人文化財研究所・保存修復科学研究室長

The Application of CR-AR Method to Ancient Glass Beads

Takayasu KOEZUKA  Independent Administrative Institution National Research Institute

キーワード ガラス小玉,ソーダ石灰ガラス,カリガラス,鉛バリウムガラス,CR法,AR法,弥生時代,古墳時代



1. はじめに
 ガラスの歴史は古く,その起源は5000年前あるいはもっと遡るとも言われている。古代ガラスは北アフリカからユーラシア大陸に至る広範な地域から多量に出土する遺物で,長い歴史を有する世界共通の遺物でもあり,古代の歴史を探る最も適した資料でもある。
これらの古代ガラス製品については,古くから考古学・美術史をはじめ,ガラス工芸の分野においては実験的研究も行われ多くの成果が発表されてきた。また, 文化財科学の分野ではガラスの起源,材質,産地,技法等に関する科学的研究も進められ,古代地域間における交流,科学技術の発展の歴史など明らかにされつ つある。
 文化財資料の科学的調査は,非破壊的手法によることが原則とされ,また発掘調査で 発見される膨大な量の資料に対応できることも課題とされ,新しい手法の開発が期待されていた。ここでは,多量の資料に対応できる方法として最近,導入した CR-AR法を用いた調査と研究について,その概要をまとめた。

 

デジタル画像を用いた絵画技法の検証
    城野 誠治 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所

Verification of Painting Technique Using Digital Image
Seiji SHIRONO National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo
キーワード 文化財,画像処理,可視化,安全性,経年変化



1. はじめに
  文化財の調査は,文化財の保護と文化の継承を行う為に必要な情報の収集が目的である。本稿で述べる手法は,光学的調査法として国内外で利用されている手法 に,文化財では新たな手法を加え,調査による劣化に起因する要因を排除し,また,取得する情報の精度を向上させたものである。取得する情報の範囲は,文化 財の表面付近に限定するが,本稿の主題である絵画作品では,技法の解釈を行う為に,他の調査法では取得出来ない重要な情報が取得出来る事をはじめに書き添 えておく。
 文化財として取り扱われている絵画作品の多くは,制作された当初より鑑賞や崇拝の対象とされたものである。それらの絵画作品は,紙や絹,麻,木などの支持体に彩色が施されている。
彩色材料として,鉱物を粉砕して作られた,岩絵の具(顔料と総称している)や,動植物から抽出した色素の染料,墨,金箔,銀箔など多種多様な素材によって 鮮やかに描かれている。それらの彩色材料は,膠など,天然の定着材で支持体に接着されているが,描かれた彩色面には,細かな凹凸があり,摩擦や衝撃にも弱 く,構造的にはとても繊細である。従って,作品の保存や取り扱いに注意をしても,環境変化や,経年変化による劣化は避けられず,状態を維持することも防ぐ 事の出来ない経年変化や,彩色材料が剥落しそうな箇所は,作品を維持する為に修理を行う。
文化財として取り扱われている作品は,来歴が残されている場合も在るが,修理の記録まで残されていることは希なことである。従って,現在我々が目にする作 品の表面には,制作された当初とは異なる物質が多く存在していると容易に想像できる。表面情報の重要性は,作品の本質を見極める資料として根拠と成りう る,重要な情報である。
 表面の観察を怠たり,成分分析の調査を行っても,結果を見誤り,誤った価値判断をする場合もあるので,測定データを他の情報と共に慎重に解釈するよう心がけたい。

 

可搬型蛍光X線分析装置と高松塚古墳壁画の調査
    早川 泰弘 東京文化財研究所

Portable X-ray Fluorescence Spectrometer and Its Application to

Analysis of the Mural Paintings of Takamatsuzuka Tumulus


Yasuhiro HAYAKAWA National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo

キーワード 蛍光X線分析,高松塚古墳,顔料,非破壊分析,その場分析



1. はじめに
高松塚古墳の発見は,わが国の考古学史上最大の発見といわれている。1972年(昭和47年)に奈良県明日香村において,南北2.655m,東西 1.035m,高さ1.134mの小さな石室が発掘され,その内壁に青龍(東壁),白虎(西壁),玄武(北壁)の四神像(朱雀(南壁)は盗掘による損傷で 欠落),さらには華やかな極彩色で描かれた女子群像,男子群像が発見されたときには,日本中に考古学ブームが沸き起こった。特に,西壁北側に描かれていた 女子群像は,その優美な表情から「飛鳥美人」と呼ばれ,それ以降の歴史教科書には必ず写真入りで紹介されている。
高松塚古墳は7世紀後半から8世紀初頭の古墳と考えられ,その壁画は多彩色の絵画としては,日本絵画史の中で最も初期のものであり,その後の日本美術の変 遷を考える上で極めて重要な位置を占めるものである。現在まで,考古学,歴史学,美術史学などさまざまな学問分野において,高松塚古墳およびその壁画に関 して数多くの論説・解説が提示されてきた。しかし,高松塚古墳壁画に関する彩色材料の調査はほとんど行われたことがなく,2002年(平成14年)から2 カ年にわたる科学的な調査が実施される以前には,1972年の発掘直後に石室内に剥落していた微小片を数片採取して科学的な分析が行われただけで 1)2),それ以降,調査は一切行われていない。
 発見から30年を経過した2002年,高 松塚古墳を管理する文化庁は,壁画の詳細な画像公開と彩色材料の科学的な調査を実施することを決定し,その調査を東京文化財研究所に委託した。調査はすべ て非破壊・非接触が前提であり,狭小な古墳石室内に最小限の最新機器を持ち込んで調査が行われた3)。この調査に用いられたのが,可搬型蛍光X線分析装置 である。蛍光X線分析はこれまでにも文化財の調査に幅広く利用され,可搬型の機器も1990年代後半には開発されているが,バッテリー駆動の可搬型装置の 利用はわが国では初めての例であった。本報告では,可搬型蛍光X線分析装置を簡単に紹介し,これを用いた高松塚古墳壁画の調査結果の概要について説明す る。

 

論文

多層ラミネートフィルム製液体包装の瓶口肩部シールの破袋について
    青木 博之/島本  聡/二瀬 克規/鎌田 幸彦

Study of Breakage at Bottleneck Seal

Forming in Liquid Packing Bag with Multi-Layer Laminate Film
Hiroyuki AOKI*, Akira SHIMAMOTO** 

Katsunori FUTASE*, and Yukihiko KAMADA*

Abstract

Increasing concern is focused on the development of measures to avoid breakage of a bottleneck seal subjected to impact peel loading in the liquid packing bag industry. In this study,
two different shapes of liquid-filled packing bags with a flat seal and a bottleneck seal, made from general NY/XA-S film, laminated NY/Alumina-evaporated PET/XA-S film and NY/AL/XA-S film were
tested. In falling-weight impact peel experiments, the relation between sealing forms and bag breakage was determined. It was observed that break,
bags with a bottleneck seal of relatively small radius easily break, but bags with a radius larger than 15 mm were undamaged, as found in those with a flat seal.

Key Words Impact peel testing, Liquid package bag, Composite materials,

Laminate film, Extrusion



1. 緒言
 液体の食品・医薬品・化粧品・詰め替え用洗剤等の包装容器には様々な形態があり,ガラス瓶,缶,ペットボトル,ラミネート液体包装等が挙げられる。しかし少容量の場合は, ガラス瓶,缶,ペットボトル,ブロー成形容器等のリジット包装から,薄いプラスチックフィルムを多層化したラミネートフィルム製による液体包装袋が多く用いられている。特に液体包装袋用ラミネートフィルムは,それぞれ性質の異なるフィルムを貼り合わせているため,機能性・保護性・経済性等に優れた包装である。特別な機能要求のない,いわば一般的なものは2層から3層構成で,特にニーズに応じて機能を付加した4層構成の場合もある。ラミネートフィルムの表基 材(ベースフィルム)として,ナイロン,ポリエステル,ポリプロピレン等があり,ヒートシール材(シーラントフィルム)としては,ポリエチレン等がある。 また酸素,水蒸気,光等を遮断する機能材(バリアフィルム)としてアルミ箔,アルミナ蒸着が注目されている。
近年,液体包装袋内の内容物をそそぎ易くするために,ヒートシールの形状を変え,平シールから円形状の瓶口肩部のシールに変わってきている。しかし,荷物 の輸送および積み降ろし時の落下衝撃等で,液体包装袋の瓶口肩部のシールからの破袋(袋の破損)が多く発生し問題となっており,包装袋の輸送環境計測や, 物理的損傷と密接に関係する動的外力すなわち衝撃に関する研究などが報告されている1)−6)。先に著者ら7)−16)はラミネートフィルムのヒートシー ル部の衝撃剥離荷重について明らかにしたが,瓶口肩部の形状が衝撃剥離および破袋におよぼす影響についての研究は明らかにされていないのが現状である。
  本研究では,食品品質保持等の理由から多く用いられている酸素・水蒸気の機能性(バリア性)を有する多層ラミネートフィルム,機能性(バリア性)を有しな いラミネートフィルムの平シールと瓶口肩部の形状が衝撃剥離および破袋におよぼす影響を明らかにするため,衝撃剥離実験と破袋実験により比較検討を行っ た。

*原稿受付:平成17年11月28日
  大成ラミック(株)(埼玉県南埼玉郡白岡町下大崎873-1)Taisei Lamick Co., Ltd.
  埼玉工業大学(埼玉県深谷市普済寺1690)Department of Mechanical Engineering, Saitama Institute of Technology

 

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