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機関誌

2014年度バックナンバー8月

2014年8月1日更新

目次

巻頭言

会長再任にあたって  廣瀬 壮一

 平成25 年度会長に引き続き,平成26 年度も会長を務めることになりました。会長再任にあたってご挨拶 申し上げます。
 昨年の8 月号の巻頭言において,私は,安全な社会の基礎を担う非破壊検査の重要性が認識され,非破壊 検査に対して大きな期待が寄せられていると述べました。しかし当時は,政府からメンテナンス元年という キャッチフレーズこそ打ち出されていたものの,これからどのような政策が出されるのか,まだ不透明な状 況でした。それから1 年が経ち,ようやく具体的な動きが出つつあります。例えば,非破壊というキーワー ドを含む研究として,「戦略的イノベーション創造プログラム」において「インフラの維持管理・更新・マ ネジメント技術」に関わる公募が実施されました。また,国土交通省の小委員会では,社会インフラの点検・ 診断に関する資格制度の確立について議論が始まっています。当協会としてもこれらの動きに注目している ところです。私の会長職も2 年目となり,従前より継続すべき活動は確実に実行するとともに,内外の動向 を正確に捉えて,新たな方向性を打ち出さなければならないと思っています。
 まず,学術活動については,最近,春秋の講演大会における論文発表件数が少しずつ減少傾向にあること が懸念されます(2012 年春:67 件/秋:75 件,2013 年春:64 件/秋:60 件,2014 年春:59 件)。学術活 動は当協会の基礎をなすもので,学術なくして,その後の標準化,出版,教育,認証等の活動は成立しません。 日本においては非破壊検査の研究の大部分が大学や国立の研究所で行われているので,学術活動の低下は大 学等の運営に問題があるのかもしれません。しかし,当協会においても学術行事の見直しを行い,事業活動 との連携を強化してその活性化を図る努力が必要です。また学術行事の見直しとともに長期的視点に立った 若手研究者,技術者の参画も奨励してまいります。
 認証活動については,2015 年秋から始まるJIS Z 2305:2013 に基づく認証制度に向けての準備を着実に進め ています。その期間はもう1 年余りしかありません。ご存知の通り,東京地区については亀戸の立花アネッ クスビルに新しい試験センターを開設しました。事務局も同じビルに移転し効率的に運用する予定です。今 後は,西日本支援センター及び大阪地区の試験センターの整備について検討を始めます。認証活動と連動し て教育活動では,テキストの改訂作業を急ピッチで進めるとともに,効率的な教育体制を構築します。また, 出版事業では会員のニーズに合わせた時宜を得た出版物を刊行し,非破壊検査技術の普及活動を推進します。
 国際活動では,まず,昨年11 月に発足したAsia Pacific Federation for Non Destructive Testing(APFNDT, アジア・太平洋非破壊試験連盟)において実質的な対応を取ってまいります。今年の4 月にはAPFNDT Executive Committee(AEC)が開催されて活動の骨子について話し合われました。そして,今年10 月に開催さ れるECNDT に併せてAEC 及びBoard Meeting が開催され,活動方針及び具体的な内容が承認される予定で, そこから実質的な活動がスタートします。当協会はAPFNDT 初代会長及び事務局を担当しており,APFNDT に おける活動の中心的な役割を果たしてまいります。一方で,会長に就任して以来,APCNDT とUS-Japan NDT シンポジウムに参加し,それらの会合で各国の会長や代表などと直接話をする機会をいただきましたが,国際関 係は各国の取り巻く状況に応じて常に動いているという実感を持ちました。当協会はアジア・太平洋地域におけ るリーダーシップをとるべく国際活動を進めてきましたが,APFNDT が設立された今,特にアジア・太平洋地域 における主要国との今後の連携について中長期的な視点から議論し,活動方針を明確にしたいと考えています。
 先の社員総会では今年度の予算案についてご報告し,ご了承を賜りましたが,当協会の財政事情は必ずし も楽観視できません。財政改善に向けてより一層の努力が必要です。事務局も亀戸に移転し,心機一転。効 率のよい協会運営とよりよい会員サービスに努めてまいります。会員の皆様のご協力とご支援をよろしくお 願いいたします。

 

 

展望 報告・展望(2013)

放射線による非破壊試験の活動報告と今後の展望
 脇部 康彦   2013 年度放射線部門主査,新日本非破壊検査(株)

Review on Radiographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2013,
Shin-Nippon Nondestructive Inspection Co., Ltd. Yasuhiko WAKIBE

キーワード 放射線透過試験,放射線画像,デジタルラジオグラフィ,中性子ラジオグラフィ,CT



1. はじめに
 放射線部門は,中性子ラジオグラフィを含めた放射線透過撮影及びコンピュータトモグラフィ(CT)による検査を対象としてい る。最近では,国内における社会インフラ・産業インフラの高経年化の問題から,これらの健全性評価に関する研究が増加してい る。また,近年の研究開発は,ほとんどがデジタル技術を背景としたものであるが,国内での放射線透過試験は実務の大半がフィ ルムによる直接撮影法(以下フィルムRT という)であり,研究開発と検査実務にギャップがあるのが現状である。今後,これら のデジタル技術の実務への適用を推進することが,部門活動の活性化につながると考えられる。
 以下に,2013 年度の部門活動を報告するとともに,部門講演会,シンポジウム,春・秋講演大会での発表,機関誌の掲載記事を参 考に,技術動向と展望を述べる。

 

 

超音波探傷試験の活動報告と今後の展望
   西野 秀郎   2013 年度超音波部門主査,徳島大学大学院

Review on Ultrasonic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2013,
Institute of Technology and Science, The University of Tokushima Hideo NISHINO

キーワード 超音波探傷,シミュレーション,ガイド波,フェーズドアレイ,信号処理,イメージング,非線形超音波,
非接触超音波,レーザ超音波,空気超音波,電磁超音波,計測,材料評価,探傷装置,センサ,試験片



1. はじめに
 超音波部門では,超音波探傷試験に関する多くの研究講演活動が行われている。それらは,現場における新たな取り組みに関す るものから,世界的にも最新と思われる内容まで多岐にわたっており,毎年有用な知見が多く見られる。超音波探傷試験に限らず 工学は,現場のニーズの存在やニーズの創造が必須であり,加えてそれを解決することに存在意義が有ると思っている。広く有用 な知見の集まる超音波部門の活動は,技術者と研究者の双方に有用であると思われる。ここに技術項目別に年度分をまとめておく。 今後の超音波探傷技術の発展に寄与することを期待したい。

 

磁粉・浸透・目視試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望
    相山 英明    2013 年度磁粉・浸透・目視部門幹事,北海道立総合研究機構

Review on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing
Secretary of Research & Technical Committee on Magnetic Particle, Penetrant and Visual Testing in 2013,
Hokkaido Industrial Research Institute Hideaki AIYAMA

キーワード 磁粉探傷,浸透探傷,目視検査,非破壊試験



1. はじめに
 磁粉・浸透・目視部門は表面探傷に関わる試験として広く活用されている。近年において,インフラストラクチャのメンテナン ス需要が増加してきている中で,磁粉・浸透・目視試験に関わる探傷技術は重要な位置付けになってきている。
 今年度で,学術部門が従来の表面探傷分科会から,磁粉・浸透・目視部門,電磁気応用部門,漏れ試験部門の三つの部門の体制に 変わり早くも4 年目になる。講演会及びシンポジウムは今年度も従来の表面探傷分科会の踏襲を引き継ぎ,磁粉・浸透・目視部門, 電磁気応用部門,漏れ試験部門の三つの部門合同で行った。これら三つの部門は表面きずの検出という共通テーマを有しており, 今後も共同で活動することが,お互いの部門の活性化にも繋がっていくと考えられる。
 ここでは,2013 年度の表面3 部門合同で行った講演会及びシンポジウムの概要を述べると共に磁粉・浸透・目視部門の活動報告 及び今後の展望について述べる。

 

電磁気応用による非破壊試験の活動報告と今後の展望
    橋本 光男  2013 年度電磁気応用部門主査,職業能力開発総合大学校

Review on Electromagnetic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Electromagnetic Testing in 2013, Polytechnic University
Mitsuo HASHIMOTO

キーワード 渦電流探傷,漏洩磁束探傷,非破壊材料評価,電磁気数値解析



1. はじめに
 電磁気応用部門は,主に渦電流試験,漏洩磁束探傷及び電磁気を応用した材料診断が対象領域となる。電磁気を応用した非破壊 検査は,電磁気的なカップリングを用いるため,非接触で高速な検査ができることが特徴である。このため,鉄鋼におけるライン の検査や発電・化学プラントにおける熱交換器等の検査に多く用いられている。また,電磁気的な適用の自由度が高いため,それ ぞれの検査に合わせたプローブが開発されている。学術部門が従来の表面探傷分科会から,電磁気応用部門,磁粉・浸透・目視部門, 漏れ試験部門の3 つの部門の新しい体制に変わり4年目になるが,講演会及びシンポジウムは今年度も従来の表面探傷分科会の踏襲 を引き継ぎ,電磁気応用部門,磁粉・浸透・目視部門,漏れ試験部門の3 つの部門合同で行われた。これら3 つの部門は表面きず の検出という共通テーマを有しており,今後も共同で活動することが,お互いの部門の活性化にも繋がっていくと考えている。
 ここでは,2013 年度の日本非破壊検査協会における発表,表面3 部門合同で行った講演会及びシンポジウムの概要を述べると共 に電磁気応用部門の活動報告及び今後の展望について述べる。

 

漏れ試験による非破壊試験の活動報告と今後の展望
 田村 芳一  2013 年度漏れ試験部門主査,元キヤノンアネルバ(株)

Review on Leak Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Leak Testing in 2013, Former CANON-ANELVA Corporation
Yoshikazu TAMURA

キーワード 漏れ試験,表面 3 部門合同研究集会,LT 資格認証



1. はじめに
 漏れ試験とは,密閉容器などからの流体(気体・液体)の意図しない流出・流入を試験する非破壊検査の一つである。もちろん 隔壁や板状素材や溶接部,接着部の貫通欠陥や,シール材の不良箇所も含まれる。
 この漏れ試験技術は,貯蔵容器に入れた水や油の漏れを“しみ”などで検出する方法,煙を使っての方法,パンクしたタイヤを水 に浸けて泡で漏れ箇所を見つけるなど各分野で経験的に利用されていた。近年,産業が高度化する中,製品等の品質確保,安全性 などから各種物質を完全に封じ込める技術,また高度な真空を確保する技術などが要求されるようになってきて,それを支える漏 れ試験技術も数多く提案され,実用化されてきた。その中でも第2 次世界大戦での原子爆弾製造において,質量分析装置を応用し たヘリウムリークディテクタが,最小可検リーク量を大きく前進させることとなった。又漏れ試験は産業界において主に予防処置 技術としての地位を確立しつつある。
 日本非破壊検査協会における漏れ部門は,1978 年8 月の第1回会合から漏れ試験規格の制定・整備のための活動が始まった。 1952 年ごろから活動を開始した他の非破壊検査技術に四半世紀遅れたスタートであった。1990 年,工業技術院から「非破壊評価の 標準化に関する調査研究」が委託され,漏れ試験研究委員会が主体となって規格制定,試験技術の普及(講習会の実施)が行われた。 以降,制定・整備された規格としては,
NDIS 3420:2000 「超音波リーク試験方法」
NDIS 3423:2004 「蛍光染料及び現像剤を使用した液体漏れ試験方法」
NDIS 3431:2010 「漏れ試験方法通則」
NDIS 0605:2011 「非破壊試験-漏れ試験技術者の資格及び認証」
JIS Z 2329:2002 「発泡漏れ試験方法」
JIS Z 2330:2012 「漏れ試験方法の種類及びその選択」
JIS Z 2331:2006 「ヘリウム漏れ試験方法」
JIS Z 2332:2012 「圧力変化による漏れ試験方法」
JIS Z 2333:2005 「アンモニア漏れ試験方法」
がある。このため,学術的意味としては,何かテーマを決めて研究活動を行うということよりも,自分たちの持っている経験の範 疇で規格化の検討を行うという活動を行っていた。

 

応力・ひずみ解析の活動報告と今後の展望
 藤垣 元治  2013 年度応力・ひずみ測定部門主査,和歌山大学

Review on Stress / Strain Measurement
Chairman of Research & Technical Committee on Stress / Strain Measurement in 2013, Wakayama University
Motoharu FUJIGAKI

キーワード 応力・ひずみ測定,材料評価,実験力学,光学的計測,画像・信号処理,バイオメカニクス



1. はじめに
 応力・ひずみ測定部門は,非破壊検査の基礎となる応力・ひずみの測定手法および評価手法,応用開発・技術について研究し, それらの成果の実用化,研究動向,解析結果の情報交換の場として活動している。近年は応力・ひずみ測定の対象が,金属材料ば かりでなく,複合材料,高分子材料,生体材料,生体組織に広がってきている。また,インフラ構造物の健全性評価に関する研究も 増えてきている。計測手法としては,光学的手法やX 線を用いた手法や,デジタル画像を用いた手法などが多く報告されている。 2013 年度における報告を以下に要約する。

 

保守検査の活動報告と今後の展望
 笠井 尚哉  2013 年度保守検査部門主査,横浜国立大学

Review on Maintenance Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on Maintenance Inspection in 2013, Yokohama National University
Naoya KASAI

キーワード 保守検査,モニタリング,損傷評価,健全性評価,供用期間中検査



1. はじめに
 当保守検査部門はプラント・設備などの安全性や信頼性を維持・向上させるために,溶接部,応力集中部,腐食等の劣化危険性の 高い部位,高温・高圧設備等の劣化可能性の大きい設備などについて,その劣化程度の検査,信頼性評価,コンディションモニタ リング,及び余寿命評価などを行い,さらに安全性と経済性を総合評価して延命策を検討・実施するための活動を行っている。
 本部門で取り扱う技術は,プラント・設備が使用され始めてから廃棄されるまでの長期間にわたって健全性を確保するため,各 非破壊検査技術だけでなくプラント・設備の管理技術などの関連技術を含む幅広いものである。従って,関連分野の産官学の専門 家と各社の研究者及び技術者とが議論を行うことで,保守検査に関する知識を深め,かつ,その知識を各社で生かすことが重要と 考え,関連分野の専門家を招いて年2 回程度のシンポジウムを実施してきた。
 2013 年度は,2013 年7 月5 日に東京都大田区産業プラザで平成25 年度保守検査ミニシンポジウムを,2013 年11 月11 日に同 会場で第12 回保守検査シンポジウムを開催した。いずれのシンポジウムとも各講演者に話題のテーマ,最新のテーマの内容を講 演していただいた。また,シンポジウムの参加者からも多数の質問をいただき,活発な討論を行った。
 さらに,若手の技術者・研究者を奨励し,部門の活性化を図るために,平成24 年度に引き続き平成25 年度保守検査ミニシンポ ジウムにおいて新進賞コンペティションセッションを設けた。

 

製造工程検査の活動報告と今後の展望
 青木 公也  2013 年度製造工程検査部門主査,中京大学工学部

Review on In-Process Inspection
Chairman of Research & Technical Committee on In-Process Inspection in 2013, Chukyo University
Kimiya AOKI

キーワード 画像処理技術の実利用化,目視検査の自動化,製造工程検査,画像センシング,センサネットワーク



1. はじめに
 計算機・記憶媒体におけるハード・ソフトの発達は目覚ましく,それに伴って,大量の情報を高速に処理する必要がある画像処理 技術の実用化が進んできた。計算機の性能向上とあいまって,ある検査対象に複数の画像処理手法を段階的に適用するなど,単純 な検査であれば,人間より遥かに高速かつ精密な検査も可能である。また,カメラや三次元計測装置等のセンサの低価格化に伴い, 比較的生産規模の小さい現場においても,画像処理による検査システムが導入できる状況となった。このように,検査への画像処 理技術の導入は,あって然るべき時代を迎えて久しい。加えて,かつては,画像検査装置と言えば専用のハードウェアとしてアセ ンブルされたものが殆どであったが,汎用計算機をベースにユーザが自由にカスタマイズすることもできる画像検査ソフトウェア・ ライブラリの普及が進み,画像検査装置開発の裾野は拡大している。しかしながら,各種生産現場における製品や,道路・トンネ ル・橋梁等のインフラやその他構造物など,検査対象は様々であり,かつそれらに発生するきずや欠陥の種類も多種多様であるた め,外観画像や透過画像,三次元画像を利用した検査の自動化は必ずしも容易ではない。また,上記の通り,ハード・ソフトの基 本スペックが向上し,コストも低下したとなれば,これまでは自動化が見送られていた検査事例についても,それが望まれるよう になるのは自然の流れである。製造工程検査における要素技術は多岐に渡るが,以上の画像処理技術を取り巻く状況の中,当部門 では現在までのところ,特に,いわゆるディジタル画像処理による検査の定量化・自動化技術を中心に学術活動を展開している。
 近年,画像処理技術は検査,ロボット,ITS,医療,メディア処理,セキュリティ,インターフェイス等,その応用範囲の拡大 は留まるところを知らず,益々拡大している。つまり,その技術革新は著しく,最新の画像処理技術を当非破壊検査協会の皆様に リアルタイムに紹介することが,製造工程検査部門の存在意義であると考え,活動してきた。そこで,本部門は各種学会・研究委 員会の枠を越えて連携・協力し,広く画像処理・センシングに関するシンポジウムやワークショップを共同企画し,協賛している (年2 ~ 3 回)。これによって,非破壊検査・外観検査・目視検査に関わる画像処理技術に常に新たな風を吹き込み続けている。

 

アコースティック・エミッションによる非破壊試験の活動報告と今後の展望
 若山 修一  2013 年度アコースティック・エミッション部門主査,首都大学東京

Review on Acoustic Emission
Chairman of Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2013, Tokyo Metropolitan University
Shuichi WAKAYAMA

キーワード AE,モニタリング,非破壊検査



1. はじめに
 アコースティック・エミッション(AE)部門は,アコースティック・エミッション(AE)特別研究委員会を母体として組織され, 2010 年度より活動を開始した。AE 部門では,AE 特別研究委員会と同様に,AE 法を基盤とした非破壊検査・非破壊評価技術およ びその応用分野の発展・普及を目的とした活動を行っている。以下に2013 年度の活動などをまとめる。

 

新素材の非破壊評価の活動報告と今後の展望
 志波 光晴  2013 年度新素材に関する非破壊試験部門主査,(独)物質・材料研究機構

Review on Non-Destructive Evaluation of New Materials
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Evaluation of New Materials in 2013,
National Institute for Materials Science Mitsuharu SHIWA

キーワード 先進材料,非破壊計測,高温環境センサ



1. はじめに
 新素材に関する非破壊試験部門では,新素材のみならず,広く素材を対象に材料,構造に関する横断的な非破壊検査法の調査・適用事 例などを目的に委員会やシンポジウムを開催している。本年度は,新素材の評価法として最適な非破壊検査法の調査・適用事例などを目 的に,委員会及びミニシンポジウムを1 回,シンポジウムを1 回開催し,秋季講演大会でのオーガナイズドセッションの企画を行った。ま た,非破壊検査2013 年7 月号において,「先進材料・非破壊計測技術」特集として,解説4 件,トピックス5 件,資料1 件の掲載を行った。

 

鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験の活動報告と今後の展望
 森濱 和正  2013 年度鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門主査,(独)土木研究所

Review on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete
Chairman of Research & Technical Committee on Non-Destructive Testing of Reinforced Concrete in 2013,
Public Works Research Institute Kazumasa MORIHAMA

キーワード 活動報告,鉄筋コンクリート構造物,非破壊・微破壊試験,研究委員会,標準化,講習会



1. はじめに
 部門は,年3 回の行事を開催し,内1 回はオープンな形のシンポジウムを開催することになっている。しかし,鉄筋コンクリー ト構造物の非破壊試験部門(以下,RC 部門)では,これまではシンポジウムを3 年ごとに開催しているのみであり,その間の2 年はクローズドの行事であった。今年度より,シンポジウムの間の2 年はミニシンポジウムを開催することとした。また,他の部 門との合同開催や,各支部の協力を得ながら全国で開催することとした。
 13 年度は4 回の行事が活発に行われた。その概要を報告する。また,学術委員会,標準化委員会,教育委員会,編集委員会と関 連した活動などについてもその概要を報告する。
 さらに春秋大会などで発表された研究の概要及び今後の展望について述べる。

 

赤外線サーモグラフィによる非破壊試験の活動報告と今後の展望
 兵藤 行志  2013 年度赤外線サーモグラフィ部門主査,(独)産業技術総合研究所

Review on Infrared Thermographic Testing
Chairman of Research & Technical Committee on Infrared Thermographic Testing in 2013,
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Koji HYODO

キーワード 赤外線サーモグラフィ試験,TT(Infrared Thermographic Testing),標準化,技術者教育,技術者認証



1. はじめに
  赤外線サーモグラフィ試験は,広範な領域を非接触に評価できる特徴を有しており,装置の急速な高性能化や低廉化とも相まっ て,より広い産業分野での活用が進展している。そして,多岐にわたる製品や設備,社会インフラといった測定対象物の構造や熱 物性,環境条件等を総合的に鑑みた「より正確でより有効な試験・評価方法」の開発と確立,実施がますます重要となっている。
 このため当部門では,赤外線サーモグラフィを用いた温度分布計測に基づく欠陥・損傷検査,及び応力分布計測等を行う非破壊 評価技術の調査研究,ならびに普及を目的とした活動を継続して推進している。また,教育・出版や標準化,さらには技術者認証 を積極的に支援しており,NDIS 0604(JIS Z 2305 準拠)に基づく赤外線サーモグラフィ試験技術者認証も2012 年春期から開始さ れ,180 名超の有資格者が誕生する等,学術的成果の蓄積が広く関連活動にも生かされている。
 本報告では,2013 年度の“学術活動”を中心に広く紹介させていただく。

 

報告 報告(2013)

学術委員会活動報告
 平尾 雅彦   2013 年度学術委員会委員長,大阪大学

Report of Academic Affairs Committee
Chairman of Academic Affairs Committee in 2013, Osaka University
Masahiko HIRAO

キーワード 学術行事,社会インフラ,表彰実績,研究助成事業・研究奨励金制度,部門予算



1. はじめに
 工業製品や構造物の安全確保のために今日利用されている非破壊検査技術が学術研究に端を発したことを考えると,本協会にお いても学術活動はその基礎をなすものである。学術委員会は,協会の学術活動全般を総括しており,関連する3 名の理事と12 部 門及び3 研究会の主査から構成されている。2013 年度の学術委員会の委員構成は以下の通りであった。
平尾雅彦:委員長(学術担当副会長)
三原 毅:学術担当理事
塚田和彦:学術担当理事
脇部康彦:放射線(RT)部門主査
西野秀郎:超音波(UT)部門主査
伊藤 清:磁粉・浸透・目視(MT/PT/VT)部門主査
橋本光男:電磁気応用(ET/MFLT)部門主査
田村芳一:漏れ試験(LT)部門主査
藤垣元治:応力・ひずみ測定(SSM)部門主査
若山修一:アコースティック・エミッション(AE)部門主査
兵藤行志:赤外線サーモグラフィ(TT)部門主査
青木公也:製造工程検査(IPI)部門主査
笠井尚哉:保守検査(MI)部門主査
森濱和正:鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験(RC)部門主査
志波光晴:新素材に関する非破壊試験(NMT)部門主査
杉浦壽彦:非線形超音波による非破壊評価の高度化研究会主査
小林徳康:電界計測に基づく非破壊評価実用研究会主査
井原郁夫:超音波による非接触センシング・先進評価技術研究会主査
 2013 年度は,8 月及び2 月に定例の学術委員会を開催した。以下に2013 年度の学術活動について報告するが,各部門における 実質的な学術活動の詳細についてはそれぞれの報告・展望を,また国際学術活動については国際学術委員会活動報告をご覧いただ きたい。

 

 

標準化委員会活動報告
 足立 忠晴  2013 年度標準化委員会委員長,豊橋技術科学大学

Report of Standardization Committee
Chairman of Standardization Committee in 2013, Toyohashi University of Technology
Tadaharu ADACHI

キーワード 非破壊検査,規格,NDIS,JIS,ISO



1. はじめに
  日本非破壊検査協会(JSNDI)では,標準化委員会とISO 委員会が協力し,また,経済産業省や日本規格協会等の関連学・協会 との緊密な連携のもと,日本国内外の非破壊試験に関する標準化の一体的な推進を図っている。
 本報告では,標準化委員会の2013 年度の活動として,原案作成や改正に関わる日本工業規格(JIS)及び日本非破壊検査協会 規格(NDIS)の動向および関連の事業について説明する。なお,ISO の動向に関しては,別途ISO 委員会活動報告がなされている。

 

ISO 委員会活動報告
 大岡 紀一  2013 年度ISO 委員会委員長,ものつくり大学特別客員教授

Report of ISO Committee
Chairman of ISO Committee in 2013, Institute of Technologists, Guest Professor
Norikazu OOKA

キーワード ISO/TC 135,ICNDT,資格及び認証,CEN/TC 138



1. はじめに
  前年度に引き続き,ISO(国際標準化機構)規格案件に関する事項を検討,審議及び投票のための集約,さらにTC 44(溶接), TC 17(鋼)等の国内審議団体と連携を取り関連ISO 規格の対応と共に情報交換等を行った。
 ISO/TC 135 の中で各国が最も注目している非破壊試験−技術者の資格及び認証に関しては,長年にわたってTC 135/SC 7 に おける重要案件であり,2009 年スペインのマドリッドにおいてISO 9712:2005 とEN 473-2008 との整合化に向けてISO/TC 135/ WG 3,SC 7 とCEN/TC 138/Adhoc.9 との合同会議がスタートした。2011 年6 月に2 日間にわたってメキシコのカンクンで行われ たISO/DIS 9712:2012 の投票結果におけるコメントへの対応討議が終了して2012 年にISO 9712:2012 が制定された。これを受けて JIS Z 2305:2001 は2013 年6 月にJIS Z 2305:2013 として改正された。
 現在は,ISO 9712:2012 の議論はとりあえず終了し,参考文献として引用されているISO/TR 25107: Non-destructive testing – Guidelines for NDT training syllabuses(NDT トレーニングシラバスのガイドライン)及びISO/TR 25108:Non-destructive testing – Guideline for NDT personnel training organizations(NDT 技術者の訓練組織のガイドライン)の議論が新たにSC 7 内に設けられたWG 9(Revision of Training Guideline)で開始された。これに関しての第1回目の会合が2013年10月にクロアチアのザグレブで開催された。  また,2013 年度はSC 8(Thermographic Testing) が2013年11月にインドのムンバイで開催された。
 一方,国内におけるJSNDI のISO 委員会は2014年3月4日に本委員会,また,これに先立ち2014年2月14日に分科会を開催 した。ここでの報告では上記の諸活動の概要について述べる。

 

国際学術委員会活動報告
 廣瀬 壮一  2013 年度国際学術委員会委員長,東京工業大学

Report of International Committee
Chairman of International Committee in 2013, Tokyo Institute of Technology
Sohichi HIROSE

キーワード 非破壊検査,ICNDT,WCNDT,APFNDT, APCNDT,国際会議



1. はじめに
  国際学術委員会は,国外の非破壊検査法に関する広範な情報の交換・収集及びその国内への普及・広報を通じて関連技術者・研 究者などの相互交流を図り,日本非破壊検査協会(JSNDI)の国際学術活動を推進することを目的とする委員会である。具体的 には,国際非破壊試験委員会(International Committee for Non-Destructive Testing,ICNDT)及びその傘下にあるアジア・太平 洋非破壊試験委員会(Asia-Pacific Committee for Non-DestructiveTesting,APCNDT)における諸活動,並びに諸外国の非破壊試 験協会などとの交流と情報交換が主な所掌範囲である。ただし,ICNDT 及びAPCNDT の活動をはじめとする国際的活動は,学術 のみに留まらず,認証,教育,標準化などが相互に密接に関連しており,JSNDI においても国際学術委員会のほかに国際認証委員 会,ISO 委員会,さらには教育委員会の下の国際教育専門委員会をはじめとする多くの委員会の活動に関連がある。そこで,本稿 では,2013 年度における国際学術委員会関連の活動を中心に,各種委員会などの国際的活動の一部も併せて報告する。
 国際学術委員会の委員任期は2 年である。2012 年度から2013年度の委員構成(委員は50 音順)は以下の通りであった。JSNDI での国際活動は,国内活動とも密接に関連している部分も多いため,教育委員会委員長及び認証運営委員長も委員構成に追加し, 国内との連携を視野に入れて活動している。
廣瀬壮一 委員長,2013 年度会長
大岡紀一 ICNDT 日本代表(2011 年9 月から),
     ICNDT 名誉会員,ICNDT PGP 委員会委員,
     ICNDT WG1 委員,
     APFNDT 会長(2013 年11 月から),
     ISO 委員会委員長,元会長
緒方隆昌 2013 年度国際認証委員会委員長
荻 博次 
落合 誠 LU2013 実行委員会委員長
加藤 潔 国際教育専門委員会委員
加藤 寛 ICNDT 日本副代表(2011 年9 月から),元会長
中村和夫 2013 年度教育委員会委員長
平澤英幸 2013 年度国際教育専門委員会委員長
藤岡和俊 2013 年度認証運営委員会委員長
三原 毅 2013 年度学術担当理事

 

教育委員会活動報告
 中村 和夫  2013 年度教育委員会委員長,非破壊検査(株)

Report of Education Committee
Chairman of Education Committee in 2013, Non-Destructive Inspection Co., Ltd.
Kazuo NAKAMURA

キーワード 教育委員会,教育・訓練,非破壊試験技術講習会,実技講習会,JIS Z 2305,訓練用シラバス



1. はじめに
  教育委員会(以下,「当委員会」という。)は,非破壊検査に従事する技術者の技量向上を目的として各種教育・訓練の計画と実 施並びに関係書籍の編集などを行っている。
 2013 年度は,特に,JIS Z 2305:2013「非破壊試験技術者の資格及び認証」の改正に伴う新認証制度に対応すべく教育体制を検討 した。
 ここでは,2013 年度の当委員会の主な活動実績を報告する。

 

認証運営委員会活動報告
 藤岡 和俊  2013 年度認証運営委員会委員長,(一財)電子科学研究所

Report of Certification Steering Committee
Chairman of Certification Steering Committee in 2013, Electron Science Institute
Kazutoshi FUJIOKA

キーワード 非破壊検査,非破壊試験,技術者認証,ISO 9712,JIS Z 2305,NDIS 0602,NDIS 0603,NDIS 0604



1. はじめに
  非破壊試験技術者の認証は,協会規格NDIS 0601「非破壊試験技術者技量認定規定」から始まり,JIS Z 2305「非破壊試験-技術 者の資格及び認証」へ引き継ぎ40 年を超えた。この間,非破壊試験技術者の登録数も年々増加しており,現在有効な資格証明書 の発行は89000 件を超えている。2011 年度からは,JIS の認証に加えて赤外線サーモグラフィ試験,漏れ試験についてNDIS に基 づく認証制度を開始している。
 一方,世界に目を向けると,欧州では独自のEN 473 に基づく認証を進めてきたが,一昨年EN/ISO 9712:2012 が制定され,新 しい認証スキームによる認証が開始されている。国内においてもISO 9712:2012 に整合させるためにJIS Z 2305 原案作成委員会を立 上げ,関係者の鋭意努力により短期間でJIS Z 2305:2013 を制定することができた。
 また,JSNDI ではこの改定JIS に基づく認証制度の開始に向けた準備を鋭意進めており,改正JIS に基づく認証の開始時期,試 験実施場所など大枠についての方針が固まったが,現段階では読者に具体的な認証スキームを開示するまでには,至っていないの が現状である。 

 

出版委員会活動報告
 三原  毅  2013 年度出版委員会委員長,富山大学大学院

Report of Publication Committee
Chairman of Publication Committee in 2013, Graduate School of Engineering, University of Toyama
Tsuyoshi MIHARA

キーワード 出版,テキスト,問題集,規格



1. 出版委員会
  出版委員会は,非破壊検査技術の出版物の企画,編集,制作及び頒布,管理を行うことを目的とし,非破壊検査関連のテキスト・ 問題集等,先端技術・学術書,入門書・啓蒙書の出版に当たった。図1 に示すように,昨年度も非破壊検査協会の他の活動と密接に 関連,連携しながら,4 回の委員会を開催して,以下の活動を行った。
(1)出版計画書に基づいた出版物の製作審議,管理,頒布。
(2)JIS Z 2305 対応書籍としての出版物の見直し。
(3)原稿の電子化の推進。
(4)インターネット上で書籍の受注を実施。
(5)展示会等で一部書籍の店頭販売を実施。
(6)出版物の英語版発行の検討。
(7)著作権の取り扱いと協会の権利についての検討。
(8)財務体制強化策についての検討。

 

試験片委員会活動報告
 向井 一弘  2013 年度試験片委員会委員長,非破壊検査(株)

Report of Reference Block Committee
Chairman of Reference Block Committee in 2013, Non-Destructive Inspection Co., Ltd.
Kazuhiro MUKAI

キーワード 標準試験片,対比試験片,分類用ゲージ,トレーサビリティ,品質証明



1. はじめに
  機関誌の頒布品リストに掲載されている協会が製造,販売している標準試験片(STB)と対比試験片(RB)は現在,超音波探傷 試験用標準試験片と対比試験片が20 種類,磁粉探傷試験用標準試験片が19 種類,浸透探傷試験用試験片が1 種類,漏れ試験用 試験片が1 種類で,合わせて41 種類に上る。またゲージとしては,放射線透過試験用の透過写真きずの像の分類用ゲージを3 種と, 磁粉探傷試験や浸透探傷試験での活用を目的とした3 種類の目視基準ゲージを取り扱っている。
 これらの試験片とゲージはいずれも高い品質と性能を兼ね備えたもので,非破壊検査の信頼性を確保するために欠くことのでき ないものとして国内に広く普及している。なおこれらの多くは日本工業規格(JIS)に採用されている。またお客様より要請がある 場合は,超音波探傷試験用のSTB については「超音波探傷試験用標準試験片品質証明書」を,超音波厚さ測定用対比試験片と磁 粉探傷試験用標準試験片及び発泡液試験片については「試験片トレーサビリティ証明書」を発行して,それぞれの試験片の品質証 明を実施している。
 STB やRB の使用目的は,試験設備や試験装置の調整ならびに性能評価,試験結果に影響を及ぼす各種因子の評価,試験方法 の標準化,試験結果の定量化など多岐にわたる。このように非破壊試験の実施に際して試験片が果たす役割は非常に大きく,信頼 性

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