我が国では,リスク(risk)という言葉が汎用されているが,本質は理解されていない。一般社会でのリスクの出発点は,経済である。リスクには,利益と不利益が含まれる。株の売買に代表されるように,儲けと損がリスクである。儲けと損を扱う経済学(または経営学)が,いちはやく儲けるための数学的手法としてのリスクの概念を導入し,リスクマネージメント(risk management,リスクの経済学,不確実性の経済学)を体系化し,企業経営などに適用してきた。本来のリスクは,企業における開発,生産,販売,投資,保険などの経営の意思決定に関わる利益と不利益を包含するリスクであって,行為の結果としての成功と失敗のリスクにほかならない。我が国では,リスクに危機という訳語を適用するが,危機という訳語に相当するのはクライシス(crisis)である。本来のリスクは成功追求型の正負のリスクで,クライシス(危機)は失敗防御型の負のリスクと理解し,両者を使い分ける必要がある。リスクの本質は,未来を運命(神のお告げ)として受け入れるのではなく,チャンスとして捉え,現在の統制下に置くこと(神への挑戦)にある。リスクを冒せば儲かるかもしれないという当たり前の話である。上記の社会的要請に加えて,産業革命以来の社会は,富を配分する社会(産業社会)に変革し,技術社会はその中核にあった。現在,環境破壊,公害,災害,事故などの問題が一挙に顕在化し,産業社会はリスク(利益のみならず不利益も)を配分し,受容する社会(リスク社会)に変わりつつある。リスクの供給元が技術社会とみなされている。一般社会が技術社会に抱く不信感を払拭するためには,技術社会がリスクを正しく認識し,一般社会の要求に応じてリスク情報を適確に発信する必要がある。これをリスクコミュニケーションという。工学自身の合理性の追求の観点から,経済学がリスクマネージメントに変革したように,工学はリスクベース工学(risk-based engineering)に変身すべきである。工学の3本柱である設計,製造と維持管理のうちで,維持管理に対してリスクベースの適用が最も進んでいる。それがリスクベースメンテナンス(RBM,risk-based mentenance)とリスクベース検査(RBI,risk-based inspection)である。最近では,リスクベース(risk-based)に代わって,リスクインフォーム(risk-informed)も使用されているが,意味は同じである。法規制による安全の確保から,自主規制による安全の確保へと変革しつつある現状において,自主検査の見直しが必要となっている。本来,自主検査では,事業者が適確なリスク評価を行い,検査プログラムを策定すべきである。これがリスクベース検査にほかならない。ただし,事業者が勝手に検査プログラムを策定できる訳ではない。検査の信頼性を確保するために,社会的に公開された検査プログラム策定の基準と手続きが必要である。これがリスクベース検査の基準または指針となる。本協会では,分科会と特別研究委員会を中心として,個別の非破壊検査技術に関しては高度な調査・研究が展開されている。しかし,それらを総合して実際に適用する場とテーマの設定は,必ずしも十分ではない。保守検査特別研究委員会を中心として,リスクベース検査の調査・研究と指針の策定に取り組んでいただくように強く切望する。
Review on Radiographic Testing
Ken-Ichi OKAMOTO Chairman of Research & Technical Committee on Radiographic Testing in 2002,Kyoto University
キーワード 放射線検査,欠陥:きず,デジタルラジオグラフィ(DR),コンピュータ断層撮影(CT),3次元CT,中性子ラジオグラフィ(NR),冷却型CCDカメラ
1. はじめに
002年度より小林信雄先生から主査を引き継ぎ,幹事の皆様や事務局のご協力とご指導のもと,手探り状態ですが放射線分科会の運営に当たらせて戴いております。前主査が設置して下さいました幹事用のメーリングリストにより,幹事会にご出席でない方々への情報の共有化,他委員会等の情報の提供,急を要する確認等々に利用させて戴いております。また,当分科会では幹事の方々の新旧交代時期に当たっておりますので,引き継ぎがうまく行くようにご協力を戴いております。
Review on Ultrasonic Testing
Hiroshi YONEYAMA Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in 2002
Japan Power Engineering and Inspection Corporation
キーワード 非破壊試験,超音波探傷,規格,シミュレーション,探触子,装置,材料評価,TOFDフェーズドアレイ,電磁超音波,ガイドウェーブ,新素材,コンクリート
1. 概要 2002年度は前年度に引き続き産業界の不況感が強かったが,非破壊検査分野も影響を受けており,分科会活動にもその影響が現れていた。分科会幹事を中心とした関係各位の強力なバックアップが得られたにも拘らず,超音波分科会での発表報告は,昨年度の 56件から52件へと,また参加者も延べ261名から230名へと若干の減少がみられた。しかしながら,分科会・シンポジウムともに,発表者と参加者による質疑応答はこれまで以上に活発であったことが,この一年の強い印象である。超音波分科会の開催状況を表1に示す。超音波分科会は2002年度に3回開催され,そのうち1回は公開シンポジウムであった。前年度と同様に,今年度も「第1回分科会は研究委員会や小委員会の報告を第2回分科会は特別講演を,また,第3回分科会はシンポジウムで研究発表を行なう」を基本とし,第1,2回分科会は,高田 一運営WGリーダを中心に,またシンポジウムは横野泰和研究 WGリーダを中心に進められた。第1回分科会は,2002年7月4,5日の両日にわたり名古屋市の(財)ファインセラミックスセンターで猛暑のなか開催された。発表数18件,参加者数78名を数え,制限時間一杯まで活発な質疑応答がなされ,充実した内容であった。会場の提供,会の運営や施設見学に尽力いただいた(財)ファインセラミックスセンターに深く感謝いたします。また,翌日午後は三菱重工業(株)名古屋誘導推進システム製作所においてH II−Aロケットの第1段及び第2段用エンジンの製造工程及びその非破壊検査設備を見学させて頂き,参加者53名は大満足であった。大勢の見学者受け入れにご尽力頂いた三菱重工業(株)の関係者に深謝いたします。第2回分科会は2002年11月21日に千葉市幕張テクノガーデンCB棟3階大会議室において5件の報告と2件の特別講演,参加者43名で開催された。特別講演1件目は東京大学大学院情報理工学系研究科の篠田裕之助教授による「熱誘起超音波デバイス」であり,“nature”誌にも掲載されて有名なこのデバイスの超音波の放射強度を高めるためのポイントや研究成果が紹介された。2件目は東京大学生産技術研究所海中工学研究センターの浅田昭教授による「海底地形の音響計測技術の高度化」であり,音響マルチビーム測深技術やこれをさらに高分解能化するための開口合成処理技術などが紹介された。海洋の音響計測技術は非破壊検査技術と共通要素が多いので,相互交流による技術向上が期待される。2日目の午前は見学会を開催し,千葉県柏市の(株)日立メディコ医療機器事業本部のご好意による超音波診断装置の最新技術の紹介と参加者2名に対する超音波診断装置の実演が行われた。ご尽力いただいた(株)日立メディコ医療機器事業本部
表1 平成14年度超音波分科会関係活動状況
Review on Magnetic, Electromagnetic, Penetrant and Other Nondestructive Methods
Mitsuo HASHIMOTO Chairman of Research & Technical Committee on Surface Methods in 2002, Department of Electrical Engineering,
Polytechnic University
キーワード 非破壊試験,磁粉探傷,浸透探傷,渦流探傷,漏洩磁束探傷,漏れ試験,サーモグラフィ,目視試験,電位差法
1. 概要
表面探傷分科会は,材料の表面きずを検出する非破壊試験法を主体とし,さらにRT, UT, SMを除く他の試験法も含めて,関連する学術報告,研究委員会,試験方法の普及に関する活動を行っている。以下に2002年度の分科会活動状況について記述する。
Review on Experimental Stress and Strain Analysis
Eisaku UMEZAKI Chairman of Research & Technical Committee on Stress and Strain Analysis in 2002Nippon Institute of Technology
キーワード 実験力学,応力測定,ひずみ測定,コースティックス法,光弾性法
1. 概況
2002年度における日本非破壊検査協会の応力・ひずみ測定分科会の活動状況を述べる。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on Maintenance
Yukio OGURA Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on Maintenance in 2002, Hitachi Engineering Co. Ltd.
キーワード 非破壊試験,保守検査,構造物,品質管理,安全性,信頼性,欠陥評価
1. はじめに
保守検査特別研究委員会は,材料,溶接部,構造物等の健全性評価,予知保全,余寿命診断等に関し,それらの「非破壊検査・計測・評価・診断技術」の研究,調査を行っている委員会である。今年度は,平成14年8月に委員会を兼ねたミニシンポジウムを仙台で,平成15年2月に東京でそれぞれオープン形式のシンポジウムを開催した。他学協会の協賛のもと,保守検査に従事する研究者・技術者が一堂に会し,いずれのシンポジウムも盛大に開催することができた。
近年,マシンビジョン・画像処理技術の非破壊検査,自動監視等への適用に対する期待が高まりつつあり,本委員会はこれに応えるべく活発な活動を行った。特に,一般に言われている非破壊検査というイメージにとらわれない幅広い活動を展開した。委員会には,「NDIイメージングWG」,「リアルタイム画像処理インフラWG」,「溶接作業・検査の画像処理WG」および「食品の非破壊検査画像処理WG」を設置し,これらを研究会の多角的かつアクティブな活動の拠点として機能させた。【資料−1】に本年度の研究会の開催状況を示す。本年度は計5回の研究会を開催し,その発表件数は118件,また参加者数は計約600 名であり,活発な討論が行なわれた。本年度は,関連学協会との連携を重視しつつ,本委員会の幅広い活動の実現を図った。特に,画像処理の広範な分野への実利用化を意識し,ロボットビジョン,パターン計測,外観検査,動画像処理等に関連する研究会を開催し,テーマの広がりを実現することができた。なお,会員の増強を図ることが今後の大きな課題である。次年度(2003年)の活動の概要を【資料−2】に示す。次年度は,従来の活動を維持しつつさらに発展させる計画である。すなわち,独自の委員会を開催すると共に,関連学会との連携を強化・維持するために研究会の共同企画を積極的に行なう方向で運営を進めていく方針である。また,国際的な活動を推進するために画像処理・非破壊検査に関連する国際会議との協賛,本委員会を中心とする特別セッションの設定等,新しい企画を実行していきたいと考えている。なお,一昨年のNDI秋季大会において実現した「赤外線サーモグラフィによる非破壊評価特別研究委員会」との共同企画によるセッションのようにJSNDIの他の委員会との連携を積極的に働きかけたいと考えている。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on Acoustic Emission
Masayasu OHTSU Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2002Graduate School of Science & Technology, Kumamoto University
キーワード AE,診断,非破壊検査
1. はじめに
アコースティック・エミッション(AE)特別研究委員会は,元の006委員会から数えると設置されて30年以上が経過している。この伝統ある委員会の主査を本年度より担当することになったが,本特別研究委員会は世界のAE研究の中心をなす組織として活動している高度な実績があり,責任の重さを痛感している。最近の研究動向によれば,世界的に基礎研究から応用あるいは実用研究へと向かいつつある中で,特に活発な研究を展開しているのが我が国の特別研究委員会と認知されている。その評価を背景に,2002年度の主要行事としては第16回AE国際シンポジウム(IAES – 16)を徳島大学で開催した。その他に定例の委員会及び幹事会を2回開催した。また,会誌2月号に特集企画「アコースティック・エミッション検査による診断への展開」を紹介した。それらの概要を報告する。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on NDE of New Materials
Masamichi MATSUSHIMA Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on NDE of New Materials in 2002 NASDA
キーワード 新素材,複合材,繊維,非破壊検査,インテリジェント,ヘルスモニタリング
1. はじめに
2002年度は,研究委員会を3回行い,航空宇宙技術研究所(東京)と住友金属工業株式会社(大阪)に会場をお願いし,関連施設の見学会も行なった。また,初めての企画としてミニシンポジウムと見学会を産業技術総合研究所(つくば市)で1回行なった。幹事会も3回開催しています。研究委員会を関連機関で開催して施設などの見学する事で,参加者の増加を考えていた。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on NDT of Reinforcing Concrete
Hirotake IKENAGA Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on NDT of Reinforcing Concrete in 2002,Faculty of Engineering, Chiba Institute of Technology
キーワード 非破壊試験,コンクリート,鉄筋コンクリート,維持管理
1. はじめに
2002年度の鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験特別研究委員会(略してRC特研)は,84名の委員で構成されました。会員の皆様には当会の発展にいろいろとご尽力を賜り,この紙面を借りて御礼申し上げます。今年度は,以下に述べる活動を行いました。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on Infrared Thermography
Toshimitsu ISHII Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on Infrared Thermography in 2002,
Japan Atomic Energy Research Institute
キーワード 赤外線サーモグラフィ,非破壊評価,規格化,教育活動,ハンドブック
1. はじめに
赤外線サーモグラフィによる非破壊評価特別研究委員会(以下「特別研究委員会」という)が非破壊検査協会に設立してから7年目に入り,本年度の登録委員数は約50名である。近年,赤外線検出器(センサ)の技術の発展に伴い,赤外線サーモグラフィの小型,軽量化が進められ,さまざまな分野の非破壊試験や温度計測への応用がこれまでに比べて容易になった感がある。このような状況を受けて特別研究委員会では,研究発表を中心とした委員会の他,赤外線サーモグラフィを用いた非破壊試験法の基礎と応用に関する普及啓発を図るため,ハンドブックの作成,標準用語の規格化,教育活動の検討などに力を入れて取り組んだ。
Report of Standardization Committee
Yoshikazu YOKONO Chairman of Standardization Committee in 2002, Non-Destructive Inspection Co., Ltd.
キーワード 非破壊検査,規格,JIS,ISO,NDIS
1. はじめに
標準化委員会は,ISO委員会との連携を密にしながら,放射線検査標準化委員会,超音波検査標準化委員会,アコースティック・エミッション(AE)標準化委員会,表面探傷標準化委員会及びひずみ・応力測定標準化委員会の意見を集約して,以下の業務を遂行してきた1)−3)。
(1)非破壊試験に関する日本工業規格(JIS)の原案作成,
見直しについての積極的な協力
(2)日本非破壊検査協会規格(NDIS)の制定・改正作業
(3)関連内外規格の調査・収集
(4)会員への非破壊検査の標準化に関する情報伝達
(5)その他,標準化に関する事項全般
例年,JISの制定・改正が大きな業務の一つであるが,2002年度はこれに加えて特にNDISに対しても全体的体系の見直しを行った。現在,制定されてから20年にもなるNDISも現存しており,これらに対して,内容を確認して継続するもの,改正作業を必要とするもの及びNDISとしての役割を終えて廃止とするものに分類する作業を計画的に実施することにした。また,これらを遂行するに当たって,標準化委員会の関連規格を改正し,来年度以降より積極的な活動及びスムースな作業が行えるようにした。一方,国際協力の面では,引き続きISO/TC135の幹事国業務のほかに,SC6(漏れ試験)の幹事及びコンビナ−,並びにSC7(技量認定)の改正作業に対して積極的に対応してきた。この件に関してはISO委員会の報告を参考にして頂きた
Report of ISO Committee Norikazu OOKA Chairman of ISO Committee in 2002, Japan Atomic Energy Research Institute
キーワード 非破壊試験,ISO,国際規格
1. 概要
前年度に引き続き,ISO(国際標準化機構)規格案件に関する事項を検討,審議及び投票のための集約,さらにTC 44(溶接),TC 17(鋼)等の国内審議団体と密接な連携のもと情報交換等を行った。ISOに関連した会議では, ISO TC135/SC7に関して2003年3月12日から米国フロリダ州のオーランドにおいてASNT(米国非破壊検査協会)の第12回のAnnual Research Symposium 2003に併設した形で3月12日にWG 5,3月14日にWG 6さらに3月15日に第1回WG 7会合が開催された。一方,当協会におけるISO委員会は第1回の本委員会を2002年7月に,これに先立ち第1回の分科会を2002年6月に開催した。引き続き第2回の本委員会を2003年2月,第2回分科会は2002年11月に行った。以下にISOに関連する主な会議の概要及び本委員会等における諸活動について述べる。
Report of International Committee
Takahiro ARAKAWA Chairman of International Committee in 2002, Ishikawajima Inspection & Instrumentation Co., Ltd.
キーワード 非破壊検査,国際活動,国際会議
1. はじめに
2002年は,当協会の創立50周年に当たり,これの記念式典に併せて第6回極東非破壊試験会議が平成14年10月21日〜24日にアルカディア市ヶ谷(東京)で開催された。これに,多くの各国NDT協会要人の参加もあり,積極的に技術動向などの情報交換も行っている。また,オーストラリア代表と友好協定を締結する話も進み,今年(2003年)11月3日〜7日に韓国(チジュ島)で開催予定の第11回アジア太平洋非破壊試験会議(APCNDT)の際に調印を行うことを決定した。この他,米国非破壊試験協会(ASNT)とのジョイントシンポジウム(第3回日米シンポジウム)の開催日程などの交渉を開始している。
Report of Education Committee
Shinichiro KIMURA Chairman of Education Committee in 2002, Nippon Steel Technoresearch
キーワード 教育委員会,講習会,JIS認証訓練
1. はじめに
JSNDIの教育活動は非破壊試験技術者および研究者の技術水準の向上・普及を推進する活動を行ってきたが2003年度から実施されるJIS認証において,受験者はJIS Z 2305で要求する訓練を受け,受験申請時に訓練を受けた証明書を提出することが必要になる。JSNDIの教育活動はこの機能を果たすことになり,まさに認証制度の一翼を担うことになる。
2002年度はJIS認証試験の実施に向けて各種の準備を推進した。主な項目は以下のとおりである。
(1)JIS Z 2305が要求する訓練内容へのシフト
(2)JIS認証への移行試験,再認証試験の準備講習会
(3)教育用参考書のJIS認証へ対応する改訂
これらを具体的に推進して行くに当り,2002年度は教育委員会を6回開催して必要事項の企画・検討を行ったほか各専門委員会,教育センターにおいてその企画の実行を行った。JIS認証がこれから本格化するに従い,教育活動は今後,さらにJIS認証の一翼として改善が必要になってくる。
Report of Personnel Certification Committee
Mitsuaki KATOH Chairman of Personnel Certification Committee in 2002, Kyushu Institute of Technology
キーワード 非破壊試験,技量認定,JIS Z 2305
1. はじめに
2003年春からJIS Z 2305「非破壊試験−技術者の資格及び認証」に基づく認証制度に一本化することに伴い,2002年度は技量認定試験の最後の年となった。関係各位のご尽力を得て,技量認定委員会の諸事業を順調に終えることができた。
Report of Certification Steering Committee
Hirishi HOSHIKAWA Chairman of Certification Steering Committee in 2002, Nihon University
キーワード 認証,規格,国際規格,ISO9712,JIS Z 2305,NDIS J001,NDIS0601
1. はじめに
本協会は,協会規格NDIS 0601「非破壊検査技術者技量認定規程」に基づいて非破壊試験技術者の認定を行って来ており,30年以上の歴史を経て現在の認定資格を受けている技術者の総数は58,000名以上に達している。資格を取得した技術者は広い分野に渡って活躍しており,非破壊試験技術を通じて工業製品,構造物及び社会基盤の信頼性と安全性とを確保することにより多大なる社会貢献をしておられる。しかし,従来の非破壊試験技術者の認定資格は,一団体である本協会の規格に基づくものであることが理由となって,JISなどの関連文書類に非破壊試験技術者の資格が引用されることが無かった。この結果として非破壊試験技術者の社会的知名度は必ずしも高くなく,非破壊試験の重要性を社会的に認識させることが困難であったために,非破壊試験技術者は社会的に重要な役割を担っているにも拘らずに社会的評価が必ずしも高くないのが現状である。このような背景の下に,非破壊試験の重要性を社会的に認知度を向上させ,非破壊試験技術を通して社会の安全性を高めることを目的として,本協会は技術者資格の認証に関するJISの制定に長年に渡り取り組んで来た。21世紀は物的にも人的にもますます国際交流が盛んになる国際化時代である。この時代には日本固有の国内だけに通用する制度では国際社会から取り残されることになるので,国際的に整合した制度が必要となる。本協会は21世紀における国際化が進む時代に即応する非破壊試験技術者の認証制度が不可欠であると認識し,ISO活動に関しては ISO/TC135(非破壊試験)の幹事国業務を引き受け,また関連のSC6(漏れ試験)の幹事国業務をも引き受けるなど,ISOにおける非破壊試験に関係する規格の制定に積極的に関って来た。本協会における技術者認証の国際化の一環としてISO/DIS 9712 : 1997「Non – destructive testing – Qualification and certification of personnel」の翻訳版を本協会規格NDIS J001 : 1998「非破壊試験−技術者の資格及び認証」として制定し,これに基づいて1998年10月に認証制度を発足している。本協会は,その後も継続的に ISO9712のJIS化に取り組み,その結果として2001年4月にISO9712 : 1999を基礎としたJIS Z 2305「非破壊試験−技術者の資格及び認証」が制定される運びとなった。これを受けて,このJISに基づく認証試験を2003年春から実施することが本協会において決定された。協会規格による認定資格からJISに基づく認証資格に変わることにより,社会的認知度が高まり,各種の文書類における非破壊試験の引用が増加するものと考えられ,非破壊試験技術者の社会的評価が向上すると共に活躍の場が広がるものと期待しながら,本協会はJISによる認証試験の実施に向けて鋭意準備を進めて来た。