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2007年3月25日朝9時42分頃,能登半島沖を震源として輪島市などで最大震度6強を記録した能登半島地震が発生し,建物が多数倒壊しました。 毎年のように日本各地で大きな地震が生じており,まさに日本は地震大国であると実感されます。また,同年3月13日には高知空港で全日空機が胴体着陸しま した。幸い乗客には怪我がなかったようですが,航空機に関わる大小の事故が世界中で生じています。更に,自動車の故障,給湯器の不完全燃焼など,日常生活 でも危険と隣り合わせとなっています。従来の技術開発は社会生活の利便性を高めるためになされてきましたが,今後は日常生活における安全・安心をいかに高 めていくかが技術開発の重要な目標になっていくと思われます。
さて,本協会では,非破壊試験に関する調査・研究を通じて社会の安全・安心を高めるための諸活動に積極的に取組んできております。本特集号では2006 年度における本協会の諸活動の取り組み状況について報告しておりますが,以下に2007年度における本協会の取組みについて述べていきます。
まず,本協会の活動基盤に関わる事項として,公益法人改革法案に対する取組みを強化していきます。すなわち,2006年6月に公益法人制度改革関連の法 律が公布され,早ければ2008年中に法律が施行されます。この法律の施行から5年以内に新たな公益法人に移行する必要がありますが,この移行に向けて, 当協会の定款の見直し,財政内容の見直しなど,検討を本格化していきます。また,すでに東北,中部,関西,九州の4地区に支部が設置され,活動が行われて いますが,会員サービスを全国展開するために全国支部化を推進していきます。
次に学術活動ですが,学術講演大会,分科会,特別研究委員会及び研究会における活動を通じて,非破壊試験技術に関する調査と研究を行っていきます。特 に,分科会・特別研究委員会のあり方について平成18年度から見直し並びに検討を進めてきておりますが,その一環として2006年11月に超音波分科会を 一部オープン化して実施致しました。その結果多数の参加を得ることができ,分科会・特研の今後のあり方に対して一定の方向性が見出されたと思われます。こ のことを踏まえ,2007年度には他の分科会や特別研究委員会においても公開シンポジウムの開催のほか,分科会・委員会のオープン化について検討を進めて いきます。また,技術開発センターでは実機模擬SCC(応力腐食割れ)試験体を製作し,多くの会員が有効に利用できる運用体制を作っていきます。
機関誌の発行では,質の高い学術論文を掲載する一方,特集企画を中心に最先端の非破壊試験技術から基本的な解説まで幅広い記事を掲載し,非破壊検査に関わる研究者並びに技術者に有益な記事を提供するよう努めてまいります。
海外との学術交流では,友好協定締結国及び各国の非破壊検査関連学協会との交流を深め,各国間の学術・技術に関する相互交流を図っていきます。具体的に は,2009年10月に横浜にて第13回APCNDTを開催すべく準備を進めてまいります。また,第4回日米シンポジウムのホスト国として,その開催準備 を開始します。更に,アジア諸国の代表者と意見交換を行うなど,各国との連携強化に努め,アジアの主導的役割を担っていきます。
非破壊試験技術者の認証事業では,JIS Z 2305:2001(非破壊試験−技術者の資格及び認証)に基づく非破壊試験技術者の認証及びNDIS 0602:2003(非破壊検査総合管理技術者の認証)に基づく非破壊検査総合管理技術者の認証を行い,これらの資格を広く産業界へ普及させていきます。 特に,JIS認証では試験問題の統計処理を行うなど,試験問題の質の維持・向上に努力していきます。また,PD認証機関としてNDIS 0603:2005(超音波探傷試験システムの性能実証における技術者の資格及び認証)に基づくPD技術者の認証を継続的に行うとともに,本制度の推進を 図っていきます。国際的認証活動では,カナダとの相互認証を継続するとともに,EUのPEDに関わるBINDTとのPED NDT承認を実施します。また,JIS認証の技術者がASNT-ACCP-PCPによるACCP資格を取得できるように体制を整備していきます。
教育活動では,各NDT方法並びに各レベルごとの技術講習会を開催するとともに,BOK (Body of Knowledge)に基づいた教育訓練カリキュラムの見直し及び普及に努めていきます。また,非破壊試験技術の啓蒙のために技術セミナーを企画し,実施 していきます。
出版事業では,各種非破壊試験技術に関する出版物を発行するとともに,オンデマンド印刷導入の検討を行っていきます。また,非破壊検査の標準試験片に関しては,品質システムを確立して長期的な計画の策定を行うとともにトレーサビリティ証明書の発行を行っていきます。
標準化活動では,検査技術の標準化のために日本非破壊検査協会規格(NDIS)を制定するとともに,JIS規格の原案作成,改正及び見直しに積極的に取 組み,その普及に努めます。また,ISO規格制定に際して日本の意見を反映すべく,原案の審議段階から積極的に参加していきます。更に,ISO/TC 135幹事国及びISO/TC 135/SC 6幹事国として加盟諸国と連携を保ちながら国際規格の開発を推進するとともに,2007年10月にアルゼンチンのブエノスアイレスにおいて開催される ISO/TC 135総会並びに関連のSC・WGを開催します。
広報活動では,本協会における活動内容及び成果の広報に努めるとともに,次世代を担う若年層に対して非破壊検査に関する興味・関心を喚起するため,新たな企画を計画し,実施していきます。
以上,当協会は財政的な健全性を維持しつつ,諸活動を通じて会員サービスの向上に努めてまいります。会員の皆様におかれましては当協会の諸活動に対してご理解とご協力を賜りますよう,心よりお願い申し上げます。
* 埼玉大学大学院 理工学研究科 人間支援・生産科学部門 教授 (338-8570 さいたま市桜区下大久保255)
1971年東京大学工学部卒。1976年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了,工学博士。
1976年〜埼玉大学に勤務,現在に至る。材料工学,実験力学,材料評価,材料接合,などに関する教育・研究に従事。
Review on Radiographic Testing
Ryoichi TANIGUCHI Chairman of Research & Technical Committee on RadiographicTesting in 2006,Osaka Prefecture University
キーワード 放射線透過試験,放射線画像,デジタルラジオグラフィ,中性子ラジオグラフィ,CT,X線顕微鏡
?
1. はじめに
放射線分科会の活動は,春秋の講演大会及び3回の分科会である。運営上,第2回の分科会は,秋の講演大会にてオーガナイズドセッション「放射線・デジタ ル技術の新しい展開」を主催する形で開催した。他の2回の分科会資料については非公開の論文であることから,講演の概要を掲載することとした。また,春秋 の講演大会の発表論文,オーガナイズドセッション発表論文を含め,最近の放射線透過試験技術動向の全体像を紹介するとともに,今後を展望したい。
2. 分科会の活動
平 成18年度第1回放射線分科会は7月21日,浜松ホトニクス(株)豊岡製作所で開催した。会場は,JR浜松駅より約40分の距離の,天竜川に面した田園地 帯にあり,付近には浜松ホトニクスの事業所が10ヵ所近くも散在している。その中にはカミオカンデのノーベル賞受賞で話題となった直径20インチの超巨大 光電子増倍管の製造拠点もある。これらの装置は,小型の普及品であっても,多くの製造過程に熟練の人手が入り,超高真空技術,微細加工技術等の技術集約製 品であり,この地域は,日本の放射線画像技術の中心的技術拠点の1つと言えよう。研究会では6件の発表があり,参加は36名であった。
Review on Ultrasonic Testing
Tsuyoshi MIHARA Chairman of Research & Technical Committee on Ultrasonic Testing in2006,Graduate School of Engineering, Tohoku University
キーワード 超音波探傷, シミュレーション, 材料評価, TOFD, フェイズドアレイ,ガイド波,コンクリート, 保守検査, 非線形超音波
1. 概要と展望
2006年度は,2002年に原子力発電所の事故隠しに端を発した経年材料の強度保障,特に超音波探傷への信頼性は様々の努力で確認され,一連の騒ぎも 収束するかに見えたが,新たにデータの改ざんや過去に臨界が発生していた問題等,非破壊検査とは別の方向で新しい展開も見せており,SCCを中心とした検 査関連も引き続き社会的な関心を集めざるを得ない情勢が続いている。ただ強度保障の高まりとともに,非破壊検査や非破壊検査技術者に対する理解や待遇が必 ずしも改善されない部分が歯がゆくもあるが,やはり追い風は吹いていると考えられる。春秋の大会の発表内容も,新しい取り組みや,レベルの高い発表が多 く,新しい技術の開発や実用化への取り組みが活発に行われていることを感じられた1年だった。またAPCNDTがニュージーランド,オークランドで開催さ れた。
超音波分科会の開催状況を表1に示す。分科会活動は今年度も,関係各位の献身的な御協力により活発で,例年通り3回開催され,そのうちの一回は公開シン ポジウムであり,分科会での総発表件数と延べ参加者はそれぞれ56件,332名だった。昨年同様,1,2回の分科会は,名取運営WGリーダー,岡運営副 リーダーを中心に,シンポジウムは山田研究WGリーダーを中心に進めていただいた。7月の第一回分科会は,7月10〜11日に鹿児島県市町村自治会館で開 催し,鹿児島県工業技術センターと桜島周辺を見学した。センターでは,地場に密着した製品開発,特に桜島の火山灰を利用した工業製品の開発研究等が成果を 上げており,桜島見学と併せて興味深かった。また今年は,特に11月14日にTFTビルでの第二回分科会において,本協会の計画している学術活動の会員へ のオープン化を先取りする形で,セミオープン形式で「フェイズドアレイの規格化に向けて」のテーマに絞った新しい形式の分科会を試行した。時間の無い中, 計画の立案と実行においては,関係各位上げてのご協力を頂き,フェイズドアレイを製作・販売されている8社のご協力で機器展示を併設できたこともあり,た くさんの方の参加を得て盛会だった。通常の分科会に比べ,実質参加者は3〜4倍で,非分科会メンバーのNDI会員が参加したというよりも,分科会会員の出 席率を上げた意味合いが大きく,分科会の活性化に貢献したと考えられる。参加者のアンケート調査も行っており,次年度以降の,分科会運営や,他分科会や特 研の運営にも生かせるものと期待している。また超音波シンポジウムは,平成19年1月30,31日の両日,きゅりあんで昨年同様開催したが,38件の発表 があり,例年の通り,非会員を含む広い分野の方々と共に活発な発表,討論が行われた。今年度も,十分な講演申し込みがあり,喜ばしいと同時に,さらに講演 数が増加した場合の運営の対応について検討しておく必要がある。
ここでは,本協会の機関誌や学術活動で発表された論文や講演を中心に本年度の動向を振り返る。
Review on Magnetic, Electromagnetic, Penetrant and Other Nondestructive Methods
Junji KOIDO Chairman of Research & Technical Committee on Surface Methods in 2006, Department of Electricand Electronic Engineering, College of Industrial Technology, Nihon University
キーワード 非破壊試験,磁粉探傷,浸透探傷,渦電流探傷,漏洩磁束探傷,漏れ試験,サーモグラフィ,目視試験,電位差法
1. はじめに
表面探傷分科会は,材料表面のきずを検出する方法に関連する検査手法を取り扱うが,放射線試験法と超音波試験法に当てはまらない検査手法はこの分科会で 取り扱うので,検査対象物も検査手法も非常に幅広い。本報告では,2006年度の分科会活動,研究委員会活動などの実績や今後の展望について述べる。
2. 分科会活動
表面探傷分科会は,2006年度中に合計3回開催された。第1回目は,品川区立総合区民会館において開催され,参加者数34名で発表件数は7件であっ た。第2回目は富山県魚津市の北陸職業能力開発大学校において開催され,10件の発表があった。研究発表に引き続き,YKK株式会社のファスナー事業部や 工機事業部がある黒部工場を見学した。また,例年3回開催される分科会の内,3回目はオープンシンポジウムとして開催されるが,2006年度はそれに加 え,日本保全学会との共催という形で実施され,東北大学の高木敏行教授を実行委員長とする実行委員会の方々のご尽力により合計で33件の発表があったが, 通常の分科会と異なり,鋼構造材料の疲労や疲労き裂,溶接部のクリープ損傷などを電気磁気的な手法で検出することについての研究報告などがなされ,活発な 質疑応答が展開された。また,東日本旅客鉄道(株)の瀧川光伸氏による「渦流探傷試験によるレールきしみ割れの検出」,(独)宇宙航空研究開発機構の石川 隆司氏による「航空宇宙構造,特に複合材構造に適用する非破壊評価技術の動向」,(独)原子力安全基盤機構の三原田八水氏の原子力発電所用機器の非破壊検 査技術に関する安全研究(低炭素ステンレス鋼の非破壊検査技術)などの特別講演があった。なお,保全学会会長の宮健三氏から「新しい視点からの構造物の検 査性・健全性・保全性の議論の場の創生」と題し,学会活動の連携について特別提言があった。
分科会の発表について,検査手法別にまとめた状況。本年度も最近の傾向のとおり,渦電流試験に関する研究発表が非常に多く,磁気を用いた方法や電位差法を 含めると,8割を超える。しかし,シンポジウムではその他の手法に関する研究発表が増加しており,他学会などとの共催の形を取ると,通常と異なる分野から 目新しい発表が得られることを示している。浸透と漏れについては,発表がなかった。
研究発表の著者らの頭数について所属機関を調べ,発表件数に換算したもの。これは,昨年度と似た傾向であり,大学・研究機関などの発表が7割を占めている。また,ユーザなどの発表は前年度に比べて倍増しているが,機器メーカや検査会社の発表は少ない。
Review on Experimental Stress and Strain Analysis
Takashi YOKOYAMA Chairman of Research and Technical Committee on Stress and Strain Analysis in 2006,Okayama University of Science
キーワード 実験力学,破壊力学,バイオメカニスク,応力測定,ひずみ測定,強度評価
1. 概況
2006年度における日本非破壊検査協会の応力・ひずみ測定分科会の活動状況を報告する。
1.1 分科会活動
分科会および講演会の開催回数は例年と同じである。
第 1回目は拓殖大学にて開催し,4件の研究発表と学内見学,会務報告があった。第2回目は,日本原子力研究開発機構(東海研究開発センター)で開催し,4件 の研究発表と建設中のJ-PARC施設見学,会務報告があった。第3回目は,「東京都城南地域中小企業振興センター」(東京都大田区)において「第38回 応力・ひずみ測定と強度評価シンポジウム」として開催し,特別講演1件(東京大学:武田 展雄教授),若手実務者向け入門講義1件,一般講演29件,学生 セッションでは6件の発表があった。今回も学生セッションにコンペを導入し,上位2名に「学生優秀発表賞」を授与した。本表彰制度が定着してきたためか, 内容的にもレベルの高い発表が多かった。
春季(東京)および秋季(名古屋)の講演大会では,「応力・ひずみ測定」のセッションと本分科会の中に設置されている「バイオメカニクス研究委員 会」(新潟大学:坂本信委員長)がオーガナイズド・セッションを企画した。両セッションとも全体として講演件数が増加している。
1.2 研究委員会活動
当分科会には現在2つの研究委員会が設置された。両委員会とも開催回数が増加している。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on Maintenance
Nobuyoshi SATO Chairman of Ad Research & Technical Committee on Maintenance in 2006,Asahikasei Engineering Corporation
キーワード 非破壊試験,保守検査,モニタリング,損傷評価,健全性評価,
圧力容器,供用期間中検査
1. 概要
保守検査特別研究委員会は,各種設備や構造物,プラントなどの安全性や信頼性を維持・向上させるために,溶接部や応力集中部,腐食等の劣化危険性の大き い部位,高温設備,高圧設備等の安全性・信頼性評価,コンディションモニタリング,及び余寿命診断評価技術に関し,それらの「非破壊検査・計測・評価・診 断技術」の研究,調査を行っている委員会である。
2006年度は,2006年10月にミニシンポジウムを北海道室蘭市で,2007年3月には保守検査シンポジウムを東京でそれぞれ開催した。
また,保守検査特別研究委員会として,本格的なシンポジウム開催を始めてから,6年を経過し,この間,多岐にわたるテーマで,大学や研究機関でご活躍の 著名な先生方,企業の幹部としてご活躍の方々,現場の第一線でご活躍の方々等にご講演いいただいた。
保守検査特別研究委員会幹事会では,これらの講演を論文集としてまとめる作業も開始した。2007年度には,保守検査論文集(仮称)として,研究会参加の皆様に配布できるように,幹事会で実行委員会を立ち上げ,鋭意努力中である。
2. 2006年10月ミニシンポジウムの報告
2006年10月5日,6日,北海道室蘭市中小企業センターで本年度最初のミニシンポジウムを,約50名の参加をいただき,10月5日5テーマ,10月 6日5テーマの合計講演10テーマで開催した。講演の内訳は,特別講演4テーマ,一般講演6テーマとした。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on Image Processing
Akira ISHII Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on Image Processing in 2006,
キーワード 画像処理,マシンビジョン,感性情報処理,外観検査,非破壊検査
近年,マシンビジョン・画像処理技術の非破壊検査,自動監視等への適用に対する期待が高まりつつあり,本委員会はこれに 応えるべく活発な活動を行った。特に,一般に言われている非破壊検査というイメージにとらわれない幅広い活動を展開した。【資料−1】に本年度の研究会の 活動状況を示す。研究会は,例年通り関連学協会と連携しつつ,2回開催し,その発表件数は120件,また,参加者数は計624名であり,活発な討論が行わ れた。内容としては,画像処理の広範な分野への実利用化を意識し,ロボットビジョン,外観検査,動的画像処理等に関連する研究となり,テーマの広がりを実 現することができた。次年度(2007年)の活動の概要を【資料−2】に示す。従来の活動を維持しつつ,他の研究会,関連学協会との連携を強化する方向で 運営を進めていく方針である。
【資料−1】平成18(2006)年度委員会の開催記録
1. 平成18年度第1回画像処理特別研究委員会
日時:平成18年12月7日(木)〜8日(金)
会場:パシフィコ横浜(横浜)
ViEW2006ビジョン技術の実利用ワークショップ(精密工学会)との共同企画にて開催した。ViEW(Vision Engineering Workshop)は,これまで17年間にわたり「ものづくり」を支える基盤技術としての外観検査の自動化にかかわる画像処理応用技術の発表を中心に交通 から社会システムまで幅広い発表が行われている。今年の参加者は468名と過去最高となった。本ワークショップの特徴としては,シングルセッション2日間 で講演59件,特別講演1件,パネル討論会をこなすための工夫として昨年度より,基調講演,一般講演とハイブリッドオーラル(1件に付き5分間の口頭発表 とインターラクティブセッション発表)からなるハイブリッドセッション(全部で6個)を設けたことである。画像処理に関連する幅広い分野をそれぞれの基礎 から最先端までを知る事ができる。また,嶋正利氏(ビジュアルテクノロジー)の特別講演「マイクロプロセッサの誕生と創造的開発力」では,普段知る事がで きない,日本が世界に誇る画期的な開発を行った経緯が紹介され,大きな反響があった。詳細については,参考文献1),2)を参照のこと。
<基調講演>
(1)超精密3次元形状計測の最新動向
−白色干渉における革新的アルゴリズムの開発とその応用−
北川克一(東レエンジニアリング)
(2)顔画像認識のセキュリティ応用とその展開
山口 修(東芝)
(3)安全・安心を実現する自動車向け画像認識技術
西脇大輔,高橋勝彦,石寺永記,
京 昭倫,岡崎信一郎(NEC)
(4)立体表現と三次元画像計測の歴史と現状課題
白井良明(立命館大学)
(5)社会インフラを支えるビジョンシステム
恩田寿和(明電舎)
など
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on Acoustic Emission
Manabu ENOKI Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on Acoustic Emission in 2006
Graduate School of Engineering, The University of Tokyo*
キーワード AE,診断,非破壊検査
1. はじめに
本年度のAE特別研究委員会においては,第18回国際アコースティック・エミッションシンポジウムの開催,教育委員会におけるレベル1のアコースティッ ク・エミッションのテキスト作成への支援,およびそのテキストをもとにした講習会の実施が主な活動となった。以下にその概要を述べる。
2. 第1回AE特別研究委員会・幹事会
第1回の研究会は,第18回国際アコースティック・エミッション
シンポジウムとして,平成18年7月25日(火)〜27日(木)に青山学院大学において開催した。今回は78名の参加,62件の講演発表があった。暑い時 期の開催ではあったが,海外からも多くの研究者に参加していただき,また非常に活発な質疑が行われた。運営にあたって多大な労をとられた実行委員長の青山 学院大学の竹本幹事に,この場を借りて心より感謝する次第である。シンポジウムの内容は,“Progress in Acoustic Emission XIII, The Japanese Society for NDI, 2006”(ISBN 4-931018-06-8)として出版されているので,詳細は参照をお願いしたい。
7月25日に行われた幹事会においては,第18回国際AEシンポジウムの進捗状況および決算見込みについて報告があった。さらに,レベル1のアコース ティック・エミッションのテキストとして,「アコースティック・エミッション試験?」が出版されたこと,およびこのテキストをもとにした講習会が8月29 日に開催予定であることが報告された。続いて,幹事の見直しについて議論があり,新たな幹事として,結城宏信氏(電気通信大学),蔭山健介氏(埼玉大 学),森谷祐一氏(東北大学),中村英之氏(石川島検査計測)をお願いする件が承認された。また,学術活動の活性化を図るために,現在分科会・特別研究委 員会の組織の見直しが検討されており,オープンな形で運営を行う形に変更する予定であるとの報告があり,AE特研としての対応について議論があった。羽田 野幹事から,ISO/TC 135/SC 9としてAE法に関する小委員会が設立される可能性があることの報告があり,本委員会としても対応していくことが確認された。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on NDE of New Materials
Yukio OGURA Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on NDE of New Materials in 2006,
Japan Probe Co., Ltd.
キーワード 新素材,複合材料,非破壊評価,損傷評価,非破壊検査,材料評価
1. はじめに
新素材の非破壊評価特別研究委員会は1986年に設置され,以来約20年活動している委員会で,セラミックス,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)な どの複合材料,電子部品に用いられる樹脂,コーティングやスパッタリングなどによる薄膜などを対象とした各種新素材の非破壊検査技術について研究,調査を 行っている。新素材の非破壊検査手法としては,放射線透過試験法,超音波探傷試験法,電磁気を利用した探傷試験法,赤外線サーモグラフィ法などが適用され ている。新素材の場合,一般に検出対象となるきずがき裂状のもので寸法も小さく,また表層および内部に存在することが多い。このため半導体などの電子部品 や複合材料の検査用としてマイクロフォーカスX線透過試験法や高周波集束探触子を用いた超音波水浸探傷法などが適用され,最近では,非接触検査法として, レーザー超音波法や空中超音波法,接合部のマイクロクラックおよび閉じたき裂の検出を目的として,高調波や分調波による非線形超音波法などが鋭意研究され ている。
本研究委員会では,これらの各手法を横断的に捉え新素材の非破壊検査技術を確立すべく情報収集および技術交流を図っている。また,必要に応じてNDIS 化などの標準化作業も適宜行っている。研究委員会は通常3回/年開催し,内1回はオープンシンポジウムを開催している。平成18年度は第1回及び第2回を 東京で開催し,第3回はつくば市の産業技術総合研究所でオープンシンポジウムを開催した。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on NDT of Reinforced Concrete
Yoshitsugu NOZAKI Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on NDT of Reinforced Concrete in 2006,
Musashi Institute of Technology
キーワード 活動報告,特別研究委員会,非破壊試験,鉄筋コンクリート構造物
1. はじめに
鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験特別研究委員会(略称:RC特研)は,2006年度,シンポジウムの開催,研究委員会の開催,土木研究所その他の組 織との共同研究,教育委員会を通した講習会の実施など,活発な活動の一年であった。概要は次のとおりである。
会員数85名(社),幹事19名
2. 研究委員会の開催
本委員会は,コンクリート構造物の非破壊試験についての研究・開発動向,社会の動きやニーズをもとに企画・実施している。2006年度は,3回(内1回はシンポジウム:後述)実施した。
(1)第1回研究委員会は,平成18年7月3日(月)見学会を行っ
た。対象は,第2東名高速道路建設工事の内,猿田川橋・巴川橋架設工事,内牧高架橋(PC上部橋工)架設工事,及び上川高架橋建設工事の状況と,非破壊試験を用いた品質管理の状況である。
JR静岡駅に集合し,午後1:00〜5:00,協会が準備したチャーターバスによって,上記の工事現場の最前線の状況を見学した。工事の内容は,中日本 高速道路(株)(NEXCO)横浜支社静岡工事事務所の協力により詳しい説明があり,また非破壊試験による強度管理,鉄筋探査の状況を見学した。
参加者20名
(2)第2回研究委員会は,第2回シンポジウムであった(内容 は後述)。
(3)第3回研究委員会は,平成19年3月12日(月)13:30〜,
東京理科大学森戸記念会館内会議室で実施した。
参加者24名
内容は,第2回シンポジウムの概要について,湯浅昇実行委員長(日本大学)より報告があった。次に今本啓一先生(足利工業大学)より透気性の試験方法に 関する研究の現状と比較試験結果の紹介,森島弘吉氏(三井造船)よりコンクリート構造物検査へのマルチパス3次元映像化レーダーの適用について,立見英司 氏(三井建設)より衝撃弾性波によるコンクリートの圧縮強度推定法について講演があった。引き続き,森浜和正幹事(土木研究所)より共同研究の進捗状況の 報告および弾性波法に関する新規NDIS制定準備状況の報告があった。最後に,主査より,協会からの情報と,学術組織改革に関する動きなどの紹介があっ た。
Report of Ad Hoc Research & Technical Committee on Infrared Thermography
Takahide SAKAGAMI Chairman of Ad Hoc Research & Technical Committee on Infrared Thermography in 2006, Osaka University
キーワード 赤外線サーモグラフィ,非破壊評価,施設見学会,規格,JICA国際協力
?
1. はじめに
赤外線サーモグラフィによる非破壊評価特別研究委員会を1996年に設立してから,早くも10年が経過した。この間,高度成長期につくられた様々な機 器・構造物の経年劣化による破壊が問題となり,稼働中の機器・構造物を遠隔から検査できる非破壊試験法として,赤外線サーモグラフィ法への注目,期待が急 速に高まってきた。これに応えるべく,赤外線サーモグラフィによる非破壊評価技術は,欠陥検出分解能・精度の向上,適用対象の拡大,適用限界の検討など, 様々な面で研究成果を挙げてきた。一連の成果については,2004年に出版された「赤外線サーモグラフィによる設備診断・非破壊評価ハンドブック」をご覧 いただくとおわかりいただけると思う。2006年度は,赤外線サーモグラフィによる非破壊評価技術のさらなる発展と普及を目指して,2回の定例研究委員会 を開催するとともに,熱弾性応力測定法のNDIS原案作成作業,ならびに赤外線サーモグラフィによる非破壊試験技術者認証制度立ち上げに向けての準備作業 を行った。以下に活動の概要を報告する。
2. 定例研究委員会
2006年度は2回の定例研究委員会を開催した。第1回は(財)鉄道総合技術研究所技術交流会との合同開催,第2回は日本学術会議主催第36回安全工学シンポジウムとの合同開催とした。以下にその概要を示す。
第1回定例研究委員会(2006年5月19日,(財)鉄道総合技術研究所,参加者30名)
・見学会
(財)鉄道総合技術研究所の概要に関する説明のあと,研究所の様々な実験設備の見学を行った。
・講演会
?鉄道総研における非破壊検査技術の紹介
鉄道総研において研究開発が行われている各種構造物の非破壊試験技術に関する紹介があった。赤外線サーモグラフィに関するものでは,大規模キセノン光照 射装置の開発とこれを用いたコンクリート床版下面のアクティブ加熱による剥離欠陥評価に関する講演があった。講演題目は以下のとおりであった。
1)キセノンランプを用いたアクティブ赤外線法
鳥取誠一 (鉄道総研 コンクリート研究室)
2) 打音法によるトンネル覆工調査
榎本秀明 (鉄道総研 地質研究室)
3) BMCシステムによる鋼橋の健全度診断
杉舘政雄 (鉄道総研 鋼・複合構造研究室)
4)IMPACTシステムによる下部工の健全度診断
峯岸邦行 (鉄道総研 基礎・土構造研究室)
5) LDVによる構造物の微動の非接触測定
上半文昭 (鉄道総研 構造力学研究室)
Report of Standardization Committee
Hirotsugu INOUE Chairman of Standardization Committee in 2006, Tokyo Institute of Technology
キーワード 非破壊検査,規格,NDIS,JIS,ISO
1. はじめに
標準化委員会は,我が国における非破壊試験の標準化と普及に寄与することを目的として,日本非破壊検査協会(JSNDI)の行う標準化事業の全てに関与する委員会である。主な活動内容は以下の通りである。
(1)非破壊試験に関する日本工業規格(JIS)の審議及び承認への積極的な協力
(2)日本非破壊検査協会規格(NDIS)の審議,承認及び維持管理
(3)関連内外規格の調査,収集,及び会員への情報伝達
(4)ISO委員会の活動に対する協力
(5)その他
これらの活動を円滑に行うために,標準化委員会には以下の専門別委員会(括弧内は2006年度の専門別委員会委員長,敬称略)が設置されている。
(1)放射線専門別委員会(宮本 宏)
(2)超音波専門別委員会(小倉幸夫)
(3)磁粉専門別委員会(前田宣喜)
(4)浸透専門別委員会(鈴木尚美)
(5)渦電流・漏洩磁束専門別委員会(磯部伸一)
(6)目視専門別委員会(船亦 功)
(7)漏れ専門別委員会(津村俊二)
(8)赤外線サーモグラフィー専門別委員会(兵藤行志)
(9)応力・ひずみ測定専門別委員会(井上裕嗣)
(10)アコースティック・エミッション専門別委員会(湯山茂徳)
(11)鉄筋コンクリート構造物専門別委員会(辻 正哲)
なお,鉄筋コンクリート構造物専門別委員会は,鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験特別研究会の協力を得て,2006年度より新たに設置されたものである。
本稿では,2006年度におけるJIS及びNDISの動向を中心に,標準化委員会の具体的な活動内容を報告する。なお,ISO関連の動向については,別途掲載されているISO委員会の活動報告を参照されたい。
Report of ISO Committee
Norikazu OOKA Chairman of ISO Committee in 2006, The Japan Welding Engineering Socity, Senior Technical Advisor
キーワード 非破壊試験,ISO,国際規格
1. 概要
前年度に引き続き,ISO(国際標準化機構)規格案件に関する事項を検討,審議及び投票のための集約,さらにTC 44(溶接),
TC 17(鋼)等の国内審議団体と密接な連携のもと情報交換等を行った。ISOに関連した会議では,今年度,ISO/TC 135(非破壊試験)及び関連分科委員会(SC)は開催されなかったが,SC 7/WG 7(Performance Based Nondestructive Testing Personnel Qualification and Certification)及びWG 8(NDT Qualification Examination Specimens)会議が2006年6月29日〜30日にフランスのパリにて開催され,委員である大岡紀一が出席した。
なお,9月に予定された会議は延期となった。
一方,当協会におけるISO委員会は第1回の本委員会を2007年3月16日に,これに先立ち第1回の分科会を2007年2月19日に開催した。以下にISOに関連する主な会議の概要及び本委員会等における諸活動について述べる。
2.TC 135分科委員会(SC)WG
2.1 SC 7/WG 7会合
標記の会議がフランス,パリのAFNOR 650会議室において9:00〜17:00まで開催された。 M. Turnbow(Convenor),J.Thompson, N.Ooka, U.Kaps, R.Murphy, D.Marshal, H.Hatano (Observer)の計7名の出席者の確認を行い,Agendaを承認した。以下に会議の概要を示す。
(1)2005.10.15に開催された米国コロンバスでの会議の議事録について以下の修正をもって承認された。
1)日本における原子力分野でのPD状況とNDIS 0603“Qualification and Certification of Personnel for Performance Demonstration of UT systems”の制定について紹介された。
2)文書Draft #2が検討されたが,Mr.J.Thompson担当の“Exract quajification of procedure and expend”はExpand qualification of procedure and expend とする。
(2)Actionの項目のレビューについては以下のようである。
1)Qualification of procedureについて不可欠な項目に関してはMr.J.Thompson担当であったが,これについては討議の中で決めていくこととする。
2)また,Qualification of procedureの拡大と適用には関連するデータが必要である。
3)欠陥寸法とサイジング(特に欠陥の数とタイプ)に適用するための文書はWG 8にも関係するが,今回の会合には担当のMr.J.Thompsonからは準備されなかった。原子力関連のデータはあるが,数について少なくとも5個程度 は考えているので,十分なデータ数を有している訳ではない。今後検討が必要である。
4) 技能・資格の再認証に関するRecommendationは考慮中で,案としてのまとめには至っていない。
(3)Mr.J.ThompsonのコメントをもとにMr.M.Turnbowが修正したDraft #3 Non-destructive Testing Personnel Performance Based Qualification について Responsibility, Levels of Qualification, Qualification Requirements, Written Practice Requirements, Qualification Requirements, Administration and Grading, Limited Certification, Expiration, Suspension, Revocation and Reinstatement of Certification, Restatement, Recertification, Record/Documentationの検討を行い,全体の確認と取りまとめを次回以降の会合で実施することとなった。
(4)次回会議は2006.9.22にベルリンで開催することを予定し,引き続き検討してまとめることとなったが,次回で最終とする前回の計画は延びそうである。